「あの人、二枚目だよね」「二枚目俳優」といった表現を聞いたことはありませんか? 現代でも使われるこの「二枚目」という言葉、実は江戸時代の歌舞伎から生まれた言葉なんです。
今回は、二枚目の意味、語源、使い方、そして知られざる「一枚目から八枚目」までの全貌を詳しく解説していきます。
二枚目の意味: 基本的な定義
現代での意味
二枚目(にまいめ)とは、美男子やハンサムな男性を指す言葉です。
特に:
- 容姿が整っている男性
- 優男(やさおとこ)のような柔らかい雰囲気の美男子
- 恋愛を得意とする色男
といったニュアンスを持ちます。
辞書での定義
辞書では、以下のように定義されています:
- 歌舞伎の役柄で、主に恋愛場面を見せる美男の立ち役
- 一般に、演劇・映画などの美男役
- 転じて、美男子、やさおとこ
「やさ男(優男)」とは?
二枚目は、単なるハンサムというだけでなく、「優男(やさおとこ)」という言葉で表現されることが多いです。
優男とは:
- 優しい雰囲気を持つ男性
- 柔らかい物腰の美男子
- 女性的な繊細さを持つ色男
つまり、ワイルドな男らしさというより、上品で優雅な美しさを持つ男性を指します。
語源: 歌舞伎の看板から生まれた言葉
江戸時代の歌舞伎小屋
「二枚目」という言葉は、江戸時代の歌舞伎用語から生まれました。
当時の歌舞伎小屋では:
- 芝居小屋の入口前に8枚の看板を掲げていた
- この看板には一座を代表する8人の役者の名前や絵姿が描かれていた
- これを「八枚看板」または「顔見世番付」と呼んだ
看板の配置と役柄
8枚の看板は、向かって右から順に並べられ、それぞれの位置に特定の役柄の役者が配置されていました。
右から2番目、つまり二枚目の看板には:
- 若い色男役の役者の名前
- 恋愛シーンを演じる美男子役者
- 白塗りの化粧をした優男
が書かれることになっていたのです。
なぜ「二枚目」が美男子を意味するように?
歌舞伎では、色男役の役者は:
- 白塗りの化粧で美しく見せていた
- 優しい仕草や言葉遣いをする役を演じた
- 恋愛場面が中心の役どころだった
こうしたイメージから、「二枚目 = 美男子」という意味が一般に広まっていったのです。
一枚目から八枚目: 全8つの役柄
実は、「二枚目」「三枚目」だけでなく、一枚目から八枚目まですべてに意味があります!
一枚目: 主役
一枚目 = 主役
- 物語の主人公
- 「書き出し」とも呼ばれる
- 「一枚看板」「座頭役者」という言葉の由来でもある
最も目立つ位置に配置される、まさに看板役者です。
二枚目: 色男
二枚目 = 色男・美男子
- 恋愛シーンや色事を担当
- 容姿端麗な優男
- 白塗りの化粧で美しさを強調
- 「和事(わごと)」と呼ばれる柔らかい演技が中心
これが現代まで残る「二枚目」の語源です。
三枚目: 道化役
三枚目 = お笑い担当・道化役
- 滑稽な演技で場を盛り上げる
- ひょうきんな役柄
- 物語にコミカルな要素を加える
現代でも「三枚目俳優」「三枚目キャラ」という言葉で使われます。
四枚目: 中軸(なかじく)
四枚目 = まとめ役・中堅役者
- 物語の中軸を担う
- バイプレイヤー(脇役)として物語に安定感を与える
- 中堅どころの実力派役者
五枚目: 敵役
五枚目 = 一般的な敵役
- 主役に立ちはだかる敵
- ライバル的な存在
- 悪役ではあるが、比較的軽めの敵
六枚目: 実敵(じつがたき)
六枚目 = 憎めない敵役
- 敵方ではあるが善良な心を持つ
- 憎めない人物
- 複雑な立場のキャラクター
七枚目: 実悪(じつあく)
七枚目 = 巨悪・ラスボス
- 物語の真の黒幕
- すべての悪事を操る大ボス
- 最大の敵役
現代のアニメやドラマで言う「ラスボス」ですね。
八枚目: 座長(ざがしら)
八枚目 = 一座の元締め
- 役者ではなく、劇団の責任者
- 座組の取りまとめ役
- プロデューサー的な立場
役柄の固定
江戸時代の歌舞伎では:
- 各役者の役柄は固定されていた
- 二枚目の役者が三枚目の役をすることはなかった
- 専門職として分業化されていた
現代の俳優のように「今回はコメディ、次は悪役」といった使い分けはなかったんですね。
現代での使われ方
基本的な用法
例文1: 「彼は二枚目だから、モテるよね」
→ 美男子だから人気がある
例文2: 「二枚目俳優として人気を集めている」
→ ハンサムな役柄を演じる俳優
例文3: 「若い頃は二枚目だったんだよ」
→ 昔は美男子だった
「三枚目」との対比
二枚目は、三枚目と対比して使われることが多いです。
- 二枚目: 美男子、恋愛が得意
- 三枚目: ひょうきん、お笑い担当
例: 「彼は二枚目じゃなくて三枚目キャラだね」
→ ハンサムというより、面白いキャラクター
「二枚目俳優」という表現
映画やドラマの世界では:
- 二枚目俳優: 美男子役を演じる俳優
- 三枚目俳優: コメディ役を得意とする俳優
という使い分けがあります。
現代では二枚目と三枚目以外は使われない
一枚目から八枚目まで存在しますが、現代で一般的に使われるのは二枚目と三枚目のみです。
「四枚目俳優」「五枚目キャラ」といった表現はほとんど聞きません。
なぜかというと:
- 二枚目と三枚目は対照的で分かりやすい(美男子 vs お笑い)
- 容姿や性格という視覚的な特徴に関連している
- 両者を比較する場面が多い
「二枚目半」という派生語
二枚目半とは?
正式な歌舞伎用語ではありませんが、「二枚目半」という言葉も使われます。
二枚目半の意味:
- 二枚目でありながら三枚目もできる役者
- 美男子だけど、コミカルな演技もできる
- シリアスとコメディの両方をこなす実力派
現代の二枚目半俳優
日本の俳優では:
- 堺雅人: 真面目な役も、ひょうきんな役も演じる
- 大泉洋: 整った顔立ちながらコメディも得意
- 小栗旬: 二枚目役もコミカル役もこなす
海外では:
- ジョニー・デップ: 美男子役もクセのある役も演じる
といった俳優が「二枚目半」のイメージに近いでしょう。
「1.5倍の価値」
「二枚目半」は、文字通り解釈すると:
- 2枚目と3枚目の間(2.5枚目)
- 2つの役柄をこなす = 1.5人分の働き
つまり、より幅広い演技ができる実力派という意味合いです。
類語と関連表現
美男子を表す他の言葉
二枚目と似た意味の言葉:
- 美男子(びだんし): もっとも標準的な表現
- ハンサム: 英語由来、昭和から平成にかけて流行
- イケメン: 2000年代から使われる新しい言葉
- イケてる: 「イケメン」の元になった表現
- 優男(やさおとこ): 柔らかい雰囲気の美男子
- 美形(びけい): 美しい容姿
- 男前(おとこまえ): やや古風な表現
- 好男子(こうだんし): 品のある美男子
「イケメン」との違い
イケメン:
- 2000年代から使われ始めた新語
- 「イケてる」+「メン(men/面)」の造語
- よりカジュアルな表現
二枚目:
- 江戸時代から続く伝統的な言葉
- やや格式ばった印象
- 優男のイメージが強い
例:
- 「あの人イケメンだね」→ カジュアルで現代的
- 「あの人は二枚目だ」→ やや古風で上品な響き
英語では何と言う?
「二枚目」を英語で表現すると:
- Handsome man: ハンサムな男性
- Good-looking man: 容姿の良い男性
- Attractive man: 魅力的な男性
- Leading man: (演劇で)主役・二枚目俳優
- Romantic lead: 恋愛役の主演俳優
歌舞伎の文化的背景を説明する場合:
“A handsome male character in Kabuki theater”
(歌舞伎における美男子の役柄)
二枚目のイメージと特徴
外見的特徴
二枚目と呼ばれる人の典型的な特徴:
顔立ち:
- 整った顔の造形
- 品のある雰囲気
- 柔らかい印象
雰囲気:
- 優しげ
- 上品
- 繊細
性格的イメージ
外見だけでなく、性格面でも:
- 優しい
- 穏やか
- 女性に対して紳士的
といったイメージが伴います。
二枚目 vs ワイルド系
注意すべき点として、「二枚目」は:
- ワイルドな男らしさよりも
- 優雅で上品な美しさ
を指すことが多いです。
筋肉質でワイルドな男性は、「二枚目」というより「男前」と表現する方が適切でしょう。
使用上の注意点
1. やや古風な表現
「二枚目」は伝統的な言葉なので:
- 若い世代ではあまり使わない
- フォーマルな場面や文章で使われることが多い
- 日常会話では「イケメン」の方が一般的
2. 男性にのみ使う
「二枚目」は男性の美しさを表す言葉です。
女性の美しさには使いません。女性の場合:
- 美人
- 美女
- べっぴん
などを使います。
3. 本人の前での使い方
直接本人に言う場合:
- 「あなたは二枚目ですね」→ やや不自然
- 「イケメンですね」→ より自然
第三者について話す場合:
- 「あの俳優は二枚目だ」→ 自然
- 「彼は二枚目だよね」→ やや古風だが通じる
歌舞伎での二枚目役者
実際の役柄
歌舞伎における二枚目の代表的な役:
- 『義経千本桜』の佐藤忠信: 義経に仕える美男の武士
- 『助六由縁江戸桜』の助六: 江戸の色男
- 『菅原伝授手習鑑』の梅王丸: 若々しい美男子
化粧と衣装
二枚目役者の特徴:
- 白塗りの化粧: 肌を白く美しく見せる
- 華やかな衣装: 色鮮やかで豪華
- 優雅な所作: 柔らかく美しい動き
まとめ: 二枚目という言葉の本質
二枚目について、重要なポイントをまとめます。
基本的な意味:
- 美男子、ハンサムな男性
- 特に優男(やさおとこ)のような柔らかい美しさ
語源:
- 江戸時代の歌舞伎の看板に由来
- 右から2番目に色男役の役者が配置された
- 白塗り化粧の美男子役者が演じる恋愛シーン
八枚看板の全体像:
- 一枚目: 主役
- 二枚目: 色男(美男子)
- 三枚目: 道化役
- 四枚目: 中軸
- 五枚目: 敵役
- 六枚目: 実敵
- 七枚目: 実悪(ラスボス)
- 八枚目: 座長
現代での使い方:
- やや古風な表現
- 主に文章や格式ばった場面で使用
- 日常会話では「イケメン」が一般的
- 男性にのみ使う表現
類似表現:
- イケメン(現代的)
- ハンサム(昭和〜平成)
- 美男子(標準的)
- 優男(柔らかい美男子)
派生語:
- 二枚目半: 美男子だがコメディもできる実力派
- 三枚目: お笑い・ひょうきん担当(対義語的)
特徴:
- ワイルドよりも上品で優雅
- 外見だけでなく優しい性格のイメージ
- 恋愛が似合う雰囲気


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