「未亡人」はなぜ女性だけ?語源から見る問題点と正しい呼び方

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「未亡人」という言葉の意味

「未亡人(みぼうじん)」とは、夫に先立たれて再婚していない女性を指す言葉です。

しかし、この言葉には深刻な問題が含まれています。
現代では使うべきではない言葉として認識され、多くのメディアでも使用を避けるようになっています。

では、なぜ「未亡人」という言葉が問題なのでしょうか?
そして、なぜ女性にだけ使われるのでしょうか?

「未亡人」の語源に隠された衝撃の意味

「未亡人」という漢字を分解すると、「未だ亡くならない人」という意味になります。

つまり、「本来なら亡くなっているはずなのに、まだ死んでいない人」という意味なんです。

古代中国の殉葬という習慣

この言葉の起源は、古代中国にあります。

かつて中国では、夫が亡くなったら妻も命を絶つ「殉葬(じゅんそう)」という習わしがありました。
夫が死んだとき、妻もそれに従って死ぬべきだという観念があったんです。

この恐ろしい習慣に背いて生き続ける女性は、自分のことを謙遜して「未亡人」と呼びました。
「夫が死んだのに、恥ずかしながら私はまだ生きています」という意味で使っていたんです。

元々は自称の言葉だった

重要なポイントは、「未亡人」は本来、本人が自分を謙遜して使う言葉だったということです。

他人が呼ぶべき言葉ではなかったんですね。

しかし時が経つにつれて、「夫に先立たれた女性」という意味だけが残り、他人がそのような人を指す言葉としても使われるようになりました。

なぜ女性だけに使われるのか

「未亡人」が女性にだけ使われる理由は、この言葉が生まれた背景にあります。

家父長制社会の名残

古代中国や日本の伝統的な社会では、家父長制(パターナリズム)という考え方が支配的でした。

家父長制とは:

  • 家の中で男性(父親・夫)が絶対的な権力を持つ制度
  • 女性は男性に従属する存在とされた
  • 女性の価値は夫や家との関係で決まるとされた

このような社会では、「女性は夫に尽くすべき」「夫のために生き、夫のために死ぬべき」という価値観が当然とされていました。

明治民法と家長権

日本では、明治時代に制定された民法に「家長権」という制度がありました。

家長権とは:

  • 戸主(家長)に家の統率権限を与える制度
  • 原則として男性が戸主になる
  • 女性の地位は男性よりも低く設定された

このような法制度のもとで、男性の持つ権力はさらに大きくなり、女性は夫に従属する存在として扱われました。

男性には同じ言葉がない理由

逆に、妻に先立たれた男性を「未亡人」とは呼びません。

なぜなら、家父長制社会では「夫が死んだら妻も死ぬべき」という観念はあっても、「妻が死んだら夫も死ぬべき」という観念は存在しなかったからです。

つまり、「未亡人」という言葉の存在自体が、男女不平等の証なんです。

男性の場合は何と呼ぶ?

では、妻に先立たれた男性のことは何と呼ぶのでしょうか?

正式な呼び方

妻を亡くした男性には、以下のような呼び方があります:

寡夫(かふ)

  • 「寡」は「少ない」「配偶者がいない」という意味
  • 法律用語や公的書類で使われる
  • 「寡婦(かふ)」の男性版

鰥夫(やもお / かんぷ)

  • 「鰥」は妻のいない男性を表す漢字
  • 日常ではほとんど使われない

男やもめ(おとこやもめ)

  • 最も一般的な呼び方
  • 「やもめ」に「男」をつけた形

「やもめ」という言葉

「やもめ」は、もともと配偶者を失った人を指す言葉でした。

語源には諸説ありますが、「屋守(やもり)」、つまり独りで家を守る人という意味が有力です。

「やもめ」の特徴:

  • 本来は女性を指す言葉だった
  • 平安時代から男性にも使われるようになった
  • 現代では男女両方に使える
  • ただし「男やもめ」「女やもめ」と区別することが多い

日常では区別しない

興味深いことに、妻を亡くした男性を特別に呼び分ける習慣は、日本社会にあまり定着していません

これも、家父長制社会において「女性の立場」だけが特別視され、「男性の立場」は標準として扱われたことの表れと言えます。

英語では男女で言葉が違う

英語では、配偶者を亡くした人を男女で区別して呼びます。

widow(ウィドウ)

夫を亡くした女性を指します。

古英語の「widewe」から来ており、インド・ヨーロッパ語根では「空っぽ」という意味があります。

widower(ウィドワー)

妻を亡くした男性を指します。

興味深いことに、この言葉は14世紀に作られました。
それまでは「widow」が男女両方に使われていたんです。

中英語では「widewer」または「wedewer」という形で、「widow」に男性を表す接尾辞「-er」を付けた言葉として登場しました。

英語でも女性形が先

英語でも、女性形の「widow」が先に存在し、男性形の「widower」は後から作られたという点が重要です。

そして歴史的に、「widow」の方が「widower」よりもはるかに多く使われてきました。

その理由:

  • 女性の方が長生きする傾向がある
  • 男性の方が再婚しやすい
  • 歴史的に若い女性が年上の男性と結婚することが多かった
  • 戦争で男性が死ぬことが多かった

なぜ「未亡人」は差別表現なのか

「未亡人」という言葉が差別表現とされる理由をまとめましょう。

1. 女性の命を軽視している

「本来なら死ぬべきだったのに生きている」という意味は、女性の生きる権利を否定しています。

夫が死んだら妻も死ぬべきという前提そのものが、女性蔑視です。

2. 女性を夫の従属物として扱っている

「未亡人」という言葉は、女性の価値を夫との関係でのみ定義しています。

女性が一人の独立した人間として存在するのではなく、「夫の妻」としてのみ存在価値があるという考え方が背景にあります。

3. 男性には同等の言葉がない

男性には「未亡人」に相当する言葉がありません。

これは男女を対等に扱っていない証拠です。

4. 語源を知らなくても不快感を与える

多くの人は語源を知らなくても、「未亡人」という言葉を聞いて何となく嫌な気分になると言います。

それは、言葉に使われている漢字から女性に対する差別的な意味を無意識に感じ取っているからかもしれません。

辞書でも「失礼な言い方」と明記

現代の辞書の多くが、「未亡人」の問題点を指摘しています。

三省堂国語辞典(第8版)では、「未亡人」について「失礼な言い方」と明記されています。

これは、辞書という公的な資料が、この言葉の使用を推奨していないことを意味します。

代わりに何と言えばいいのか

では、夫を亡くした女性のことを何と呼べばいいのでしょうか?

公的な場面

寡婦(かふ)

  • 法律用語や公的書類で使用
  • 税制(寡婦控除)や年金(寡婦年金)などで使われる
  • 夫と死別または離婚して再婚していない女性を指す
  • ただし、直接人に対して「あの人は寡婦だ」と言うのは避けるべき

日常会話

実は、日常会話で特定の呼び方を使う必要はありません

具体的な状況説明で十分です:

  • 「夫を亡くされた〇〇さん」
  • 「夫に先立たれた方」
  • 「配偶者を亡くされた方」

本人の意向を尊重する

最も大切なのは、本人がどう呼ばれたいかを尊重することです。

多くの女性は、夫を亡くした後も「未亡人」と呼ばれることを嫌がります。
自分のアイデンティティを夫との関係だけで定義されたくないからです。

「やもめ」は差別用語ではないが…

「やもめ」という言葉自体は、「未亡人」のような差別的な意味はありません。

ただし、配偶者を失うというデリケートな状況を指す言葉なので、使い方には注意が必要です。

直接面と向かって「やもめ」と呼ぶのは、失礼な印象を与える可能性があります。

社会の変化と言葉の変化

言葉は社会の価値観を反映します。

「未亡人」という言葉が問題視されるようになったのは、男女平等の意識が高まった証拠です。

現代社会では:

  • 女性も男性も対等な存在として尊重される
  • 女性の価値は夫との関係で決まるものではない
  • 結婚していても、していなくても、一人の独立した人間として扱われる

こうした価値観の変化に伴い、「未亡人」のような古い価値観を含む言葉は、自然と使われなくなっていくでしょう。

まとめ

「未亡人」について、重要なポイントをおさらいしましょう:

  • 意味:「未だ亡くならない人」=本来死ぬべきだったのに生きている人
  • 語源:古代中国の殉葬の習慣(夫が死んだら妻も死ぬべき)
  • なぜ女性だけか:家父長制社会で女性だけが夫に殉じるべきとされた
  • 男性の場合:寡夫、鰥夫、男やもめ(一般的な呼び方はあまり定着していない)
  • 英語:widow(女性)、widower(男性)
  • 問題点:女性蔑視、男女不平等、女性の生きる権利の否定
  • 現代の認識:差別表現として使用を避けるべき
  • 代替表現:「夫を亡くされた方」など状況説明で対応

言葉の背景を知ることで、私たちは無意識に使っている表現が持つ意味に気づくことができます。

「未亡人」という言葉は、かつての社会がどれほど女性を不当に扱っていたかを示す、歴史の証人とも言えるでしょう。

現代を生きる私たちは、こうした言葉を使わないことで、より平等で思いやりのある社会を作っていくことができるのです。

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