「このレストラン、看板に偽りありだね…」
そんなセリフ、聞いたことありませんか? あるいは、自分でも使ったことがあるかもしれません。
「看板に偽りあり」は、日常会話でよく使われることわざの一つです。しかし、正確な意味や正しい使い方、そして実は「看板に偽りあり」という表現自体が本来の形をもじったものだということを知っていますか?
この記事では、「看板に偽りあり」ということわざについて、意味や由来、使い方、類義語、対義語、さらには英語表現まで、分かりやすく徹底解説していきます。
「看板に偽りあり」の意味
「看板に偽りあり」とは、宣伝や外見と実際の内容が異なっていること、つまり「言っていることとやっていることが違う」「見かけ倒し」という意味です。
もう少し詳しく説明すると:
- お店の看板や広告に書いてあることと、実際に提供される商品やサービスが違う
- 外見や宣伝文句は立派だけど、中身が伴っていない
- 期待していたものと実物が大きく異なる
こういった状況を表現する時に使われます。
具体例で理解しよう
例1:レストランの場合
メニューの写真では豪華で大きなハンバーグが写っているのに、実際に注文したら、とても小さくてペラペラのハンバーグが出てきた。
→ これは「看板に偽りあり」です。
例2:商品の宣伝
「使うだけで簡単に痩せる!」と広告していたダイエット器具を買ったけど、全然効果がなかった。
→ これも「看板に偽りあり」です。
例3:人の言動
「いつでも力になるよ!」と言っていた友人が、いざお願いしたら「今忙しいから無理」と断られた。
→ 人の言動についても使えます。
「看板に偽りあり」の由来と語源
実は、「看板に偽りあり」という表現は、もともとは逆の意味の「看板に偽りなし」が元になっています。
「看板に偽りなし」の意味:
看板に書いてあることと実物が一致している、つまり「宣伝に嘘がない」「外見と中身が一致している」という意味です。
この「看板に偽りなし」という表現は、江戸時代から使われていた古い言葉で、1675年の俳諧集『大坂独吟集』に「芝居のしくみ明日はつらみせ 看板に偽のなき神無月」という記述があります。
なぜ「偽りあり」になったのか?
「看板に偽りなし」を皮肉を込めてもじった表現が「看板に偽りあり」です。
本来は「偽りなし=嘘がない」と褒める言葉だったのですが、現実には看板と中身が違うことが多かったため、「看板に偽りなしと言うけれど、実際は偽りありだね」と皮肉っぽく使われるようになり、いつしか「看板に偽りあり」という表現が定着したのです。
つまり:
- 元の形:「看板に偽りなし」(褒め言葉)
- もじった形:「看板に偽りあり」(皮肉や批判)
「看板」の意味
ここで言う「看板」とは、単に店の入り口にかかっている板だけを指すわけではありません。
「看板」が表すもの:
- お店の看板や標識
- メニューや商品の見本
- 広告やキャッチコピー
- 宣伝文句
- パッケージのデザイン
- カタログや写真
- 人が口にする約束や公言
つまり、「外側から見える情報」「事前に伝えられる情報」全般を「看板」と表現しているんです。
「看板に偽りあり」の使い方と例文
それでは、実際にどのように使うのか、例文を見ていきましょう。
商品やサービスに使う例
例文1:
「評判のラーメン屋に行ってみたけど、全然美味しくなかった。看板に偽りありだよ。」
例文2:
「ネットで見た写真ではとても素敵な商品に見えたので注文したけれど、届いてみたら見本とは全く違っていて、看板に偽りありだった。」
例文3:
「この美容院は『親切で丁寧な対応』と大きく広告を載せていたけれど、実際には愛想が悪くて仕事も雑で、看板に偽りありだよ。」
お店や施設に使う例
例文4:
「『高級ホテル』と銘打っているのに、部屋は狭いし設備も古い。まさに看板に偽りありだね。」
例文5:
「看板には『新鮮な魚介類』と書いてあるけど、実際は冷凍ものばかり。看板に偽りありとしか言いようがない。」
人の言動に使う例
例文6:
「彼は『誠実で真面目』が売り文句だったのに、実際は約束を守らない人だった。看板に偽りありだ。」
例文7:
「『いつでも相談に乗る』と言っておきながら、いざとなると逃げるんだから、看板に偽りありもいいところだ。」
注意を促す使い方
例文8:
「君はいつも店頭に並んでいる見本につられてレストランへ入るけれど、看板に偽りありということもあるんだよ。」
例文9:
「うちの店の商品は、見本と同じになるように心がけて作っている。看板に偽りありということになっては、困るからね。」
「看板に偽りあり」の類義語
似た意味を持つ言葉を紹介します。
1. 羊頭狗肉(ようとうくにく)
意味:
羊の頭を看板に掲げておきながら、実際には犬の肉を売ること。つまり、外見は立派だけれど中身が粗末なことのたとえ。
由来:
中国の仏教書『無門関』が出典です。「羊頭を掲げて狗肉を売る」という言葉から生まれた四字熟語で、他にも『後漢書』には「羊頭を掲げて馬肉を売る」、『晏子春秋』には「牛の首を門に掲げて馬肉を内に売る」という似た表現があります。
例文:
「このお菓子は羊頭狗肉ね。パッケージは立派なのに、お菓子はあまりおいしくないわ。」
「とても良い商品だと紹介していたのに、すぐに壊れてしまった。羊頭狗肉だ。」
2. 看板倒れ(かんばんだおれ)
意味:
看板や評判は立派だが、実際の内容がそれに見合っていないこと。
例文:
「有名店と聞いて期待したのに、これでは看板倒れだ。」
3. 羊質虎皮(ようしつこひ)
意味:
外見は虎の皮をかぶっているように立派だが、実際の中身は羊のように弱々しいこと。見かけ倒しのたとえ。
例文:
「あの人は羊質虎皮だね。口では大きなことを言うけど、実力が伴っていない。」
4. 有名無実(ゆうめいむじつ)
意味:
名前ばかりが立派で、実際の内容が伴わないこと。
例文:
「このプロジェクトは有名無実になっていないか? 計画だけが立派で、実行が伴っていない。」
5. 見掛け倒し(みかけだおし)
意味:
外見や表面だけが立派で、中身や実力が伴っていないこと。
例文:
「あの店は見掛け倒しだったよ。内装は豪華だけど、料理は普通だった。」
「看板に偽りあり」の対義語
反対の意味を持つ言葉も覚えておきましょう。
1. 看板に偽りなし
意味:
看板に書いてあることと実物に違いがない。外見と中身が一致している。
例文:
「安くてとても美味しいと評判のレストランに行ってみたけど、本当に美味しくて、看板に偽りなしね。」
2. 看板かくれなし(かんばんかくれなし)
意味:
「看板に偽りなし」と同じ意味で、看板に隠し事がないということ。
例文:
「この老舗は看板かくれなしで、代々評判通りの品質を保っている。」
3. 言行一致(げんこういっち)
意味:
言葉と行動が一致していること。言ったことを実行すること。
例文:
「彼は言行一致の人だから、約束したことは必ず守る。」
4. 名実ともに(めいじつともに)
意味:
名前と実際の内容の両方が優れていること。名前だけでなく実力も伴っていること。
例文:
「彼女は名実ともに優秀なリーダーだ。」
「看板に偽りあり」の英語表現
英語でも似た意味の表現がいくつかあります。
1. False advertising
意味:
虚偽広告、誇大広告
説明:
「false」は「偽りの」、「advertising」は「広告」という意味で、「看板に偽りあり」に最も近い英語表現です。アメリカなどでは法律用語としても使われており、虚偽の広告を出すことは違法とされています。
例文:
“That product was a case of false advertising.”
(その商品は看板に偽りありの典型例だった。)
2. Deceptive advertising
意味:
欺瞞的な広告、人を欺く広告
説明:
「deceptive」は「人を欺く」「惑わす」という意味で、消費者を誤解させる広告を指します。
例文:
“The company was fined for deceptive advertising.”
(その会社は欺瞞的な広告で罰金を科された。)
3. Bait-and-switch
意味:
おとり商法
説明:
魅力的な商品で客を引き寄せておいて(bait=餌)、実際には別の商品を売りつける(switch=切り替える)という悪質な商法を指します。
例文:
“The store’s sale was just a bait-and-switch tactic.”
(その店のセールは単なるおとり商法だった。)
4. To cry up wine and sell vinegar
意味:
ワインを宣伝しておいて酢を売る
説明:
これは英語のことわざで、「看板に偽りあり」と同じ意味です。良いもの(ワイン)と宣伝しておきながら、実際には粗悪なもの(酢)を売るという意味ですね。
例文:
“The restaurant cries up wine and sells vinegar.”
(そのレストランは看板に偽りありだ。)
5. Not live up to the hype
意味:
宣伝文句に見合わない、期待外れ
説明:
「hype」は「誇大宣伝」という意味で、「live up to」は「〜に応える」という意味です。つまり、宣伝ほど良くないという意味になります。
例文:
“The movie didn’t live up to the hype.”
(その映画は宣伝ほど良くなかった。看板に偽りありだった。)
「看板に偽りあり」を使う時の注意点
この表現を使う際には、いくつか注意すべきポイントがあります。
1. 批判的なニュアンスが強い
「看板に偽りあり」は、相手を批判したり非難したりする表現です。そのため、人に対して直接使うと相手を怒らせてしまう可能性があります。
使い方に注意:
- 商品やサービスについて評価する場面では使いやすい
- 人の言動について使う場合は、本人の前では避けた方が無難
- 親しい友人同士の会話や、陰で話す場合に限定する
2. 本当に「偽り」があるか確認する
一時的なミスや、たまたま期待外れだっただけで「看板に偽りあり」と決めつけるのは早計です。
判断のポイント:
- 意図的に嘘をついているか
- 繰り返し同じ問題が起きているか
- 明らかに宣伝と実物が違うか
3. 「看板に偽りなし」とは使わない
冒頭で説明した通り、「看板に偽りなし」が元の形で、「看板に偽りあり」はそれをもじった表現です。
間違った使い方:
× 「このお店は本当に美味しいね。看板に偽りありだよ。」
正しい使い方:
○ 「このお店は本当に美味しいね。看板に偽りなしだよ。」
褒める時は「偽りなし」、批判する時は「偽りあり」と覚えておきましょう。
まとめ:「看板に偽りあり」を正しく理解して使おう
「看板に偽りあり」ということわざについて、詳しく見てきました。最後にポイントをまとめます。
意味:
宣伝や外見と実際の内容が異なっていること。見かけ倒し。
由来:
元々は「看板に偽りなし」(褒め言葉)をもじった表現
使い方:
- 商品やサービスが期待外れだった時
- 人の言動が一致しない時
- 批判的なニュアンスが強いので使う場面に注意
類義語:
羊頭狗肉、看板倒れ、羊質虎皮、有名無実、見掛け倒し
対義語:
看板に偽りなし、看板かくれなし、言行一致
英語表現:
false advertising, deceptive advertising, bait-and-switch, cry up wine and sell vinegar


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