香港の名前の由来を徹底解説!「芳しい港」と呼ばれた理由とは

世界的な金融都市として知られる香港。
「Hong Kong」という英語表記は有名ですが、実は「香港」という漢字には深い意味があります。

「香」は「かおり」、「港」は「みなと」。
つまり、香港とは「香りの港」「芳しい港」という意味なのです。

でも、なぜ港に「香り」という名前がついたのでしょうか。
実は、香港の名前の由来には複数の説があり、どれが本当なのか今でも議論が続いているのです。

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「香港」の意味と読み方

広東語では「ヒョンゴン」

「香港」という漢字は、北京語(標準中国語)では「シャンガン(Xiānggǎng)」と発音されます。
しかし、私たちが「ホンコン」と呼ぶのは、広東語の発音「ヒョンゴン(Hēunggóng)」に由来しています。

英語の「Hong Kong」も、この広東語の発音を元にしたものです。

意味は「芳しい港」

「香港」を直訳すると「Fragrant Harbour(芳しい港)」「Incense Harbour(香の港)」となります。

この美しい名前には、いったいどんな由来があるのでしょうか。

最も有力な説:沈香木の貿易港

香木「莞香」の一大産地だった

香港の名前の由来として最も有力視されているのが、香木の貿易によって栄えた港だったという説です。

明朝(1368年-1644年)から清朝初期(1636年-1912年)にかけて、現在の香港を含む地域では、「莞香(かんこう)」という高級な香木が盛んに生産されていました。

莞香は、沈香木(じんこうぼく)の一種である土沈香(Aquilaria sinensis)という樹木から採れます。
この木が傷つくと、樹脂が固まって甘い香りを放つ「沈香」ができるのです。

「香の王様」と呼ばれた貴重品

沈香は「香の王様」とも呼ばれ、わずか60グラムで数千ドルもの値がつく高級品でした。

仏教や道教の儀式で焚かれるお香の原料として、また高級な香水や彫刻の材料として、中国本土だけでなく東南アジア、さらにはアラビア地域まで輸出されていたのです。

香木の輸出ルート

当時の香港では、以下のようなルートで香木が輸出されていました。

  1. 沙田(シャティン)や大嶼山(ランタオ島)で香木を生産
  2. 木箱に詰めて陸路で尖沙咀(チムサーチョイ)の埠頭まで運搬
  3. 小型船で石排湾(現在の香港仔/アバディーン)に運搬
  4. 大型船で広州へ、さらに中国各地や海外へ輸出

この石排湾(香港仔)が香木を積み出す港、つまり「香港」と呼ばれるようになったというのです。

今も残る痕跡

沙田の白田村付近には、今でも「香粉寮」という地名が残っています。
これは香木を粉末にする作業場があった場所です。

また、香港政府の公式見解でも、香港という地名は香木の貿易に由来すると説明されています。

その他の興味深い説

紅香炉伝説

香港島の銅鑼湾(コーズウェイベイ)にある天后廟に関する伝説があります。

昔、海に赤い香炉(紅香炉)が流れ着き、人々はこれを天后様の御加護だと信じて廟に祀りました。
この出来事から、この場所は「紅香炉港」と呼ばれるようになったといいます。

「香炉」という言葉は「香(かおり)」と「炉(ろ)」という字で構成されているため、これが短縮されて「香港」になったという説です。

香港島には今でも「紅香炉峰」という山があり、この伝説の名残を伝えています。

香江(こうこう)説

香港島南部の薄扶林(ポクフーラム)には、かつて美しい滝がありました。

この滝から流れ落ちる清らかな水は「香江」または「紅江」と呼ばれ、船乗りたちの貴重な飲料水源となっていました。

1810年代にイギリス東インド会社が香港を調査した際の地図にも「Hong Kong(紅江)」という記載があり、この水の流れが港の名前の由来になったという説もあります。

海賊香姑(こうこ)説

中国史上最も成功した海賊の一人、鄭一嫂(ていいつのそう)という女性がいました。
彼女の本名は「石香姑(せきこうこ)」といい、数年間にわたって香港島を占拠していました。

この海賊の名前から、香港島が「香姑島」と呼ばれ、それが「香島」を経て「香港」になったという説もあります。

ただし、この説はあまり信憑性が高くないとされています。
当時の人々は海賊を嫌っていたため、わざわざ海賊の名前を地名にするとは考えにくいからです。

「Hong Kong」という英語名の誕生

イギリス人が聞いた広東語の発音

1780年、西洋の海図に初めて「He-Ong-Kong」という表記が登場しました。

1840年代、イギリス軍が香港島に上陸した際、現地の水上生活者(疍家人/タンカ人)である陳群という女性が案内役を務めました。

イギリス人が「ここは何という場所か」と尋ねたところ、陳群は疍家語(広東語の一種)で「香港」と答えました。
疍家語の「香港」は「コンゴン」に近い発音だったといわれています。

イギリス人はこの発音を「Hong Kong」と記録し、当初は小さな入り江だけを指していたこの名前を、やがて島全体、そして植民地全体の名称として使うようになったのです。

もともとは香港仔を指す名前だった

実は「香港」という名称が最初に登場するのは、明朝の万暦年間(1573年-1619年)に編纂された『粤大記』という書物です。

この書物に描かれた地図には「香港」という地名が記されていますが、これは現在の香港島全体ではなく、鴨脷洲(アプレイチャウ)という小島を指していました。

その後、香港仔(アバディーン)一帯を「香港」と呼ぶようになり、最終的にイギリスが島全体に「Hong Kong」という名称を適用したのです。

「香港」の別名

香港には、「香港」以外にもいくつかの美しい別名があります。

香江(こうこう)
「香りの川」という意味で、香港の雅称として使われます。
日本を「瑞穂の国」、イギリスを「アルビオン」と呼ぶのと同じような、詩的な表現です。

香海(こうかい)
「香りの海」という意味です。

東方之珠(とうほうのしゅ)
「東洋の真珠」という意味で、現代でもよく使われる愛称です。

現代の香港と沈香

絶滅の危機に瀕する沈香木

かつて香港の名前の由来となった沈香木ですが、現在は深刻な状況に直面しています。

森林伐採と密猟により、沈香木は激減しました。
香港に残る沈香木は300本未満とも言われ、国際自然保護連合(IUCN)によって「絶滅危惧種」に指定されています。

密猟者たちは沈香の樹脂を「森の黒い金」と呼び、数百万ドルの価値があるため密猟が後を絶ちません。

保護活動と復活への取り組み

2017年、香港政府は沈香木の保護計画を発表しました。
残された貴重な木々を鉄柵で囲み、監視カメラを設置して保護しています。

また、2014年には地元農家と協力して1,000本の苗木を植樹するプロジェクトも始まりました。

かつて香港に「芳しい港」という名前をもたらした香木を守り、未来に伝えていこうという取り組みが続いています。

まとめ

香港という名前には「芳しい港」「香りの港」という美しい意味があります。

名前の由来については複数の説がありますが、最も有力なのは沈香木の一大貿易港として栄えた歴史に由来するという説です。

明朝から清朝にかけて、香港では高級香木「莞香」が生産され、中国本土はもちろん東南アジアやアラビア地域まで輸出されていました。
この香木を積み出す港が「香港」と呼ばれるようになり、やがて島全体の名前となったのです。

その他にも、赤い香炉の伝説、清らかな滝の水、海賊の名前など、さまざまな興味深い説が伝えられています。

1780年に西洋の海図に初めて記録された「Hong Kong」という名前は、広東語の発音に由来しています。
イギリス植民地時代を経て、現在は中国の特別行政区となった香港ですが、その名前には数百年の歴史と文化が刻まれているのです。

現在、かつて香港の名前の由来となった沈香木は絶滅の危機に瀕していますが、保護活動により未来へ繋ごうとする努力が続いています。

次に香港を訪れる機会があれば、「芳しい港」という名前の由来を思い出してみてください。
高層ビルが立ち並ぶ現代の大都市の下には、香木が香る豊かな歴史が眠っているのです。

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