「泥酔」の読み方、知っていますか?
「泥酔」という言葉を見たことがありますか?
お酒を飲みすぎた人の状態を表す言葉ですが、正しく読めますか?
「どろよい」と読んでしまった方、実は間違いです。
正しくは「でいすい」と読みます。
「泥」を訓読みの「どろ」ではなく、音読みの「でい」で読むんですね。
「泥酔」の意味
「泥酔」とは、正体をなくすほどひどく酔うことを意味します。
具体的には:
- 意識がはっきりしない
- まともに立てない
- 何もわからなくなる
- 記憶がなくなる
こうした、非常に危険な状態のことを指します。
医学的な定義
医学的には、血中アルコール濃度が0.31~0.40%の状態を泥酔と呼びます。
一人で立てず、支離滅裂なことを話しているような状態です。
これは法律で定められた酒気帯び運転の基準(0.15%)の約2倍以上にあたります。
なぜ「泥」なのか?驚きの語源
さて、ここからが本題です。
なぜ酔っぱらうことを「泥酔」というのでしょうか?
「泥のように酔う」だから、グデングデンに酔っ払った様子が泥のように見えた?
実は、違うんです。
「泥」は虫の名前だった!
「泥酔」の「泥(でい)」は、中国の古典『異物志(いぶつし)』に出てくる空想上の虫の名前なんです。
土を意味する「泥(どろ)」ではありません。
「泥(でい)」という名前の虫のことなんです。
『異物志』に記された伝説の虫
中国の『異物志』には、次のような記述があります:
「南海有虫無骨、名曰泥、在水則活、失水則酔如一堆泥」
現代語に訳すと:
「南海に骨のない虫がいて、名を泥(でい)という。水の中にいれば活発に動くが、水がなくなると酔ったように泥土の塊のようになる」
つまり:
- 「泥(でい)」は南海に住む虫
- 骨がない
- 水中でしか活動できない
- 水がなくなると、酔ったようにぐにゃぐにゃになる
- その様子がまるで泥のようになる
この虫がぐにゃぐにゃになる様子が、ひどく酔っている人の状態に似ていることから、「泥酔」という言葉が生まれたのです。
杜甫の詩にも登場
この表現は、中国の唐代(618年~907年)の詩人・杜甫の詩にも「酔如泥(酔うこと泥の如し)」として登場します。
つまり、「泥酔」という表現は、少なくとも唐代には中国で広く使われていたことがわかります。
日本での使用
日本でも、平安時代頃の書物から、酒に酔った状態のことを「泥の如し」と表現した例が見られます。
中国から伝わったこの表現が、日本にも定着したんですね。
もう一つの説:異説もある
実は、「泥酔」の語源には異説もあります。
泥がぐにゃぐにゃで正体がわからないところから、泥酔者の正体のなさをこれに例えたという説です。
つまり:
- 虫の「泥(でい)」説(有力)
- 土の「泥(どろ)」のぐにゃぐにゃ説
ただし、有力なのは虫の「泥(でい)」説です。
『異物志』という明確な出典があることや、杜甫の詩にも登場することから、こちらが定説とされています。
泥酔の危険性
語源の話から離れますが、「泥酔」がいかに危険な状態かを知っておくことも大切です。
命に関わる危険性
泥酔状態では、以下のような危険があります:
- 急性アルコール中毒:命に関わる
- 窒息:吐いたものを気管に詰まらせる
- 昏睡状態:意識を失う
- 転落事故:まともに歩けず転ぶ
- 凍死:路上で寝て体温が下がる
- 交通事故:判断力がなくなる
警察による保護
警察官職務執行法第3条では、泥酔者は保護しなければならないと定められています。
これは「保護できる」ではなく「保護しなければならない」という強制力のある規定です。
泥酔者が拒否しても、警察は保護する義務があります。
「泥酔」の類語と酔いの段階
酔いの程度には段階があります。
順番に見ていきましょう。
1. ほろ酔い
- 気分が良くなる
- 少し陽気になる
- 血中アルコール濃度:0.05~0.10%
2. 酩酊(めいてい)
- 千鳥足になる
- 呂律が回らなくなる
- 判断力が低下する
- 血中アルコール濃度:0.11~0.30%
3. 泥酔(でいすい)
- 正体をなくす
- まともに立てない
- 記憶がなくなる
- 血中アルコール濃度:0.31~0.40%
4. 昏睡(こんすい)
- 揺すっても起きない
- 呼吸が深くゆっくりになる
- 失禁することもある
- 血中アルコール濃度:0.40%以上
- 非常に危険な状態
その他の酔いを表す言葉
日本語には、酔った状態を表す表現がたくさんあります。
ぐでんぐでん
酔ってぐったりしている様子。
擬態語です。
べろべろ
酔っ払って呂律が回らない様子。
「べろんべろん」とも言います。
へべれけ
ひどく酔っている様子。
語源は諸説ありますが、ロシア語の「ペリペレチ(酔っ払い)」から来たという説が有力です。
れろれろ
酔ってだらしない様子。
酔いどれ
いつも酒を飲んで酔っている人。
千鳥足
酔って足元がふらつき、千鳥(チドリという鳥)のようにジグザグに歩くこと。
英語での表現
英語では、泥酔状態を何と言うのでしょうか?
dead drunk(デッド・ドランク)
「死んだように酔っている」という意味です。
この表現は1590年代から使われている古い言葉です。
blackout drunk(ブラックアウト・ドランク)
「記憶喪失を伴うほど酔っている」という意味です。
「blackout」は記憶が途切れることを指します。
血中アルコール濃度が0.16%以上でブラックアウトが起きると言われています。
中世ヨーロッパの4段階説
興味深いことに、中世ヨーロッパの民間伝承では、酔いの段階を動物に例えて4段階に分けていました:
- 羊(sheep):おとなしい酔い方
- ライオン(lion):攻撃的な酔い方
- 猿(ape):ふざけた酔い方
- 豚(sow):汚らしい酔い方
文化が違っても、酔いの段階を何かに例えて表現しようとするのは同じなんですね。
泥酔を防ぐために
最後に、泥酔を防ぐための方法をご紹介します。
基本的な予防策
- 無理強いをしない、されない
- イッキ飲みをしない、させない
- 自分のペースで飲む
- 食べながら飲む(空腹時の飲酒は危険)
- 水分も一緒に取る
- 適量を守る
体質の違いに注意
- 女性は男性より血中アルコール濃度が上がりやすい
- 高齢者も血中アルコール濃度が上がりやすい
- 体格の小さい人も注意が必要
- アルコールを分解する能力には個人差がある
もし泥酔した人を見かけたら
- 一人にしない(非常に危険)
- 横向きに寝かせる(吐いたものが詰まらないように)
- 顔色が悪い場合はすぐに救急車を呼ぶ
- 無理に起こそうとしない
- 体を冷やさない
まとめ
「泥酔」について、重要なポイントをおさらいしましょう:
- 読み方:でいすい(どろよいではない)
- 意味:正体をなくすほどひどく酔うこと
- 語源:中国の『異物志』に出てくる虫「泥(でい)」
- 虫の特徴:骨がなく、水がないと酔ったようになる
- 血中アルコール濃度:0.31~0.40%
- 危険性:急性アルコール中毒、窒息、昏睡など命に関わる
- 英語:dead drunk、blackout drunk
「泥酔」の「泥」が虫の名前だったとは、驚きですよね。
中国の古典に由来する言葉が、現代日本でも使われ続けているのは興味深いことです。
ただし、語源の面白さとは別に、泥酔は非常に危険な状態です。
お酒は適量を守って、楽しく安全に飲みましょう。
「ほろ酔い」くらいで止めておくのが、一番楽しいお酒の飲み方かもしれませんね。

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