「九段」という称号、将棋を見ていると頻繁に目にしますよね。
羽生善治九段、谷川浩司九段、そして藤井聡太竜王・名人も実は九段です。
でも、この「九段」って一体どれくらいすごいのでしょうか?
どうすれば九段になれるのでしょうか?
この記事では、将棋における九段の意味から昇段条件、そして故人も含めた九段棋士の全員を一覧で紹介します。
九段とは|プロ棋士の最高段位

九段は、プロ将棋棋士が到達できる最高の段位です。
プロ棋士は四段からスタートし、成績に応じて五段、六段と昇段していきます。
その頂点に位置するのが九段なんですね。
面白いのは、将棋の段位は一度上がったら絶対に下がらないこと。
順位戦のクラスは降級しても、段位は生涯そのままです。
2025年10月時点で、現役中に九段に昇段した棋士は約70名。
プロ棋士全体の約5人に1人という狭き門です。
九段昇段の条件|4つのルート
九段に昇段するためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
| 昇段条件 | 解説 |
|---|---|
| 竜王位2期獲得 | 竜王戦で2回優勝 |
| 名人位1期獲得 | 名人戦で1回優勝 |
| タイトル3期獲得 | どのタイトルでも合計3期 |
| 八段昇段後公式戦250勝 | 八段になってから250勝を積み重ねる |
特徴的なのは「名人1期で九段」というルール。
名人は将棋界で最も権威あるタイトルとされているため、1期獲得だけで九段への切符が手に入ります。
一方、勝数規定の「250勝」はかなりの長丁場。
年間30勝ペースでも8年以上かかる計算です。
タイトルに縁がなかった棋士にとっては、これが九段への現実的なルートとなります。
九段制度の歴史|1958年に誕生
九段という段位が正式に制定されたのは1958年(昭和33年)のこと。
意外と最近なんですね。
それ以前は「名人」そのものが最高位で、段位としての九段は存在しませんでした。
九段制度の変遷
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1958年 | 段位としての九段を創設。名人3期以上などが条件 |
| 1973年 | 「九段昇格規定30点」と「タイトル3期」の条件を追加 |
| 1984年 | 勝数規定(250勝)を追加、30点制は廃止 |
| 現在 | 竜王2期・名人1期・タイトル3期・八段後250勝の4条件 |
30点制とは、タイトル獲得やA級在位などにポイントを設定し、累計30点で九段になれるという制度でした。
現在は廃止されていますが、当時この制度で九段になった棋士も複数います。
特殊な九段称号
通常の昇段以外にも、特別な形で九段を贈られるケースがあります。
贈九段(ぞうくだん)
功績のある棋士に、生前に九段が贈られることがあります。
かつては将棋界への貢献が認められた棋士に対して行われていました。
追贈九段(ついぞうくだん)
亡くなった後に九段が贈られるケース。
惜しまれつつ若くして亡くなった棋士などに贈られています。
追贈九段を受けた棋士:山田道美、板谷進、村山聖、真部一男、中田宏樹
特に村山聖は、29歳で亡くなった天才棋士。
「聖の青春」として映画化もされており、多くの将棋ファンに知られています。
名誉九段
引退後の功績を称えて贈られる称号。
金易二郎、渡辺東一、加藤治郎、高柳敏夫、佐瀬勇次の5名が受けています。
九段の記録|最年少・最速など
最年少九段
| 順位 | 棋士名 | 達成年齢 | 達成年 | 昇段理由 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 藤井聡太 | 18歳11か月 | 2021年 | タイトル3期 |
| 2位 | 渡辺明 | 21歳7か月 | 2005年 | 竜王2期 |
| 3位 | 羽生善治 | 23歳 | 1994年 | タイトル3期 |
| 4位 | 中原誠 | 26歳 | 1973年 | 規定30点 |
| 5位 | 谷川浩司 | 21歳 | 1984年 | 名人1期 |
藤井聡太竜王・名人の18歳11か月という記録は、それまでの記録を大幅に更新するものでした。
2位の渡辺明九段でも21歳7か月ですから、いかに異次元かがわかります。
勝数規定での最速九段
勝数規定(八段昇段後250勝)で九段になった棋士の中で、最も若かったのは広瀬章人九段の36歳。
続いて森下卓九段の37歳となっています。
2025年には山崎隆之八段が43歳で勝数規定により九段に昇段しました。
永世称号を持つ九段棋士
タイトルを規定回数以上獲得すると「永世〇〇」の資格を得ます。
複数の永世称号を持つ棋士は、将棋史に残るレジェンドばかりです。
| 棋士名 | 永世称号 |
|---|---|
| 大山康晴 | 永世五冠(十五世名人・永世十段・永世王位・永世棋聖・永世王将) |
| 中原誠 | 永世五冠(十六世名人・永世十段・永世棋聖・永世王位・名誉王座) |
| 羽生善治 | 永世七冠(十九世名人・永世竜王・永世王位・名誉王座・永世棋王・永世棋聖・永世王将) |
| 谷川浩司 | 十七世名人 |
| 森内俊之 | 十八世名人 |
| 渡辺明 | 永世竜王・永世棋王 |
| 藤井聡太 | 永世棋聖・永世王位(資格保持) |
羽生善治九段は、史上唯一の「永世七冠」達成者。
さらに名誉NHK杯選手権者の称号も持っており、将棋界における通算タイトル獲得数は歴代1位の99期です。
現役九段棋士
2025年1月時点での現役九段棋士を紹介します。
(タイトルホルダーは九段ではなくタイトル名で呼ばれます)
| 棋士名 | 主な実績 | 九段昇段年 |
|---|---|---|
| 谷川浩司 | 十七世名人 | 1984年 |
| 羽生善治 | 永世七冠 | 1994年 |
| 佐藤康光 | 永世棋聖資格 | 1998年 |
| 森内俊之 | 十八世名人 | 2002年 |
| 藤井猛 | 竜王3期 | 2000年 |
| 深浦康市 | 王位3期 | 2010年 |
| 久保利明 | 王将3期・棋王1期 | 2010年 |
| 渡辺明 | 永世竜王・永世棋王 | 2005年 |
| 広瀬章人 | 竜王1期・王位1期 | 2019年 |
| 佐藤天彦 | 名人3期 | 2016年 |
| 豊島将之 | 竜王1期・名人1期 | 2020年 |
| 永瀬拓矢 | 叡王3期・王座2期 | 2020年 |
| 木村一基 | 王位1期 | 2017年 |
| 鈴木大介 | A級在籍 | 2017年 |
| 山崎隆之 | 勝数規定 | 2025年 |
※藤井聡太は竜王・名人のタイトル保持者のため、通常は「九段」とは呼ばれません。
九段棋士一覧表(故人含む)
以下は、九段に到達した棋士の一覧です。
故人も含め、可能な限り網羅しています。
実力制名人・永世称号保持者
| 氏名 | 読み | 生没年 | 称号・備考 |
|---|---|---|---|
| 木村義雄 | きむら よしお | 1905-1986 | 十四世名人・実力制初代名人 |
| 塚田正夫 | つかだ まさお | 1914-1977 | 実力制第二代名人・名誉十段 |
| 大山康晴 | おおやま やすはる | 1923-1992 | 十五世名人・永世五冠 |
| 升田幸三 | ますだ こうぞう | 1918-1991 | 実力制第四代名人 |
| 中原誠 | なかはら まこと | 1947- | 十六世名人・永世五冠 |
| 谷川浩司 | たにがわ こうじ | 1962- | 十七世名人 |
| 米長邦雄 | よねなが くにお | 1943-2012 | 永世棋聖 |
| 羽生善治 | はぶ よしはる | 1970- | 十九世名人・永世七冠 |
| 森内俊之 | もりうち としゆき | 1970- | 十八世名人 |
| 渡辺明 | わたなべ あきら | 1984- | 永世竜王・永世棋王 |
| 藤井聡太 | ふじい そうた | 2002- | 永世棋聖・永世王位(資格) |
タイトル獲得による九段
| 氏名 | 読み | 生没年 | 主なタイトル | 九段昇段年 |
|---|---|---|---|---|
| 二上達也 | ふたかみ たつや | 1932-2016 | 棋聖2期・王将2期 | 1973年 |
| 内藤國雄 | ないとう くにお | 1939- | 王位1期・棋聖2期 | 1974年 |
| 加藤一二三 | かとう ひふみ | 1940- | 名人1期・十段3期 | 1973年 |
| 桐山清澄 | きりやま きよずみ | 1947- | 棋王2期・棋聖2期 | 1984年 |
| 南芳一 | みなみ よしかず | 1963- | 棋聖3期・王将2期 | 1989年 |
| 高橋道雄 | たかはし みちお | 1960- | 王位3期・棋王1期 | 1990年 |
| 島朗 | しま あきら | 1963- | 竜王1期 | 1989年 |
| 塚田泰明 | つかだ ひろあき | 1964- | 王座1期 | 2000年 |
| 丸山忠久 | まるやま ただひさ | 1970- | 名人2期 | 2000年 |
| 郷田真隆 | ごうだ まさたか | 1971- | 王位2期・棋聖1期 | 2001年 |
| 藤井猛 | ふじい たけし | 1970- | 竜王3期 | 2000年 |
| 久保利明 | くぼ としあき | 1975- | 王将3期・棋王1期 | 2010年 |
| 深浦康市 | ふかうら こういち | 1972- | 王位3期 | 2010年 |
| 屋敷伸之 | やしき のぶゆき | 1972- | 棋聖3期 | 2004年 |
| 行方尚史 | なめかた ひさし | 1973- | A級在籍 | 2019年 |
| 糸谷哲郎 | いとだに てつろう | 1988- | 竜王1期 | 2014年 |
| 佐藤天彦 | さとう あまひこ | 1988- | 名人3期 | 2016年 |
| 広瀬章人 | ひろせ あきひと | 1987- | 竜王1期・王位1期 | 2019年 |
| 豊島将之 | とよしま まさゆき | 1990- | 竜王1期・名人1期 | 2020年 |
| 永瀬拓矢 | ながせ たくや | 1992- | 叡王3期・王座2期 | 2020年 |
勝数規定・その他による九段
| 氏名 | 読み | 生没年 | 九段昇段年 | 昇段理由 |
|---|---|---|---|---|
| 丸田祐三 | まるた ゆうぞう | 1919-2015 | 1973年 | 規定30点 |
| 花村元司 | はなむら もとじ | 1917-1985 | 1976年 | 贈九段 |
| 灘蓮照 | なだ れんしょう | 1927-2011 | 1973年 | 規定30点 |
| 有吉道夫 | ありよし みちお | 1935-2021 | 1991年 | 250勝 |
| 大内延介 | おおうち のぶゆき | 1941-2017 | 1984年 | 250勝 |
| 青野照市 | あおの てるいち | 1953-2024 | 1994年 | 250勝 |
| 田中寅彦 | たなか とらひこ | 1957- | 1994年 | 250勝 |
| 淡路仁茂 | あわじ ひとしげ | 1950- | 1996年 | 250勝 |
| 石田和雄 | いしだ かずお | 1947- | 1992年 | 250勝 |
| 森雞二 | もり けいじ | 1946- | 1985年 | 250勝 |
| 勝浦修 | かつうら おさむ | 1946- | 1985年 | 250勝 |
| 森下卓 | もりした たく | 1966- | 2003年 | 250勝 |
| 井上慶太 | いのうえ けいた | 1964- | 2011年 | 250勝 |
| 小林健二 | こばやし けんじ | 1957- | 2002年 | 250勝 |
| 中川大輔 | なかがわ だいすけ | 1968- | 2013年 | 250勝 |
| 先崎学 | せんざき まなぶ | 1970- | 2014年 | 250勝 |
| 阿部隆 | あべ たかし | 1967- | 2014年 | 250勝 |
| 富岡英作 | とみおか えいさく | 1964- | 2024年 | 250勝 |
| 木村一基 | きむら かずき | 1973- | 2017年 | 王位1期 |
| 鈴木大介 | すずき だいすけ | 1974- | 2017年 | 250勝 |
| 三浦弘行 | みうら ひろゆき | 1974- | 2008年 | タイトル3期 |
| 飯島栄治 | いいじま えいじ | 1979- | 2021年 | 250勝 |
| 山崎隆之 | やまざき たかゆき | 1981- | 2025年 | 250勝 |
追贈・贈九段
| 氏名 | 読み | 生没年 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 山田道美 | やまだ みちよし | 1933-1970 | 追贈九段 |
| 板谷進 | いたや すすむ | 1940-1988 | 追贈九段 |
| 村山聖 | むらやま さとし | 1969-1998 | 追贈九段 |
| 真部一男 | まなべ かずお | 1952-2007 | 追贈九段 |
| 中田宏樹 | なかた ひろき | 1964-2020 | 追贈九段 |
名誉九段
| 氏名 | 読み | 生没年 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 金易二郎 | こん やすじろう | 1890-1986 | 名誉九段 |
| 渡辺東一 | わたなべ とういち | 1906-1999 | 名誉九段 |
| 加藤治郎 | かとう じろう | 1910-1998 | 名誉九段 |
| 高柳敏夫 | たかやなぎ としお | 1920-2005 | 名誉九段 |
| 佐瀬勇次 | させ ゆうじ | 1919-2003 | 名誉九段 |
まとめ
将棋の九段について、改めて整理しておきましょう。
- 九段はプロ棋士の最高段位で、約5人に1人しか到達できない
- 昇段条件は「竜王2期」「名人1期」「タイトル3期」「八段後250勝」の4種類
- 1958年に制度化され、現在までに約100名が九段に到達
- 最年少九段は藤井聡太の18歳11か月
- 永世称号を持つ九段は、大山康晴・中原誠・羽生善治など将棋史に名を刻むレジェンド
タイトル保持者は段位ではなくタイトル名で呼ばれるため、藤井聡太竜王・名人のように「九段」と呼ばれない棋士もいます。
しかし、段位としては間違いなく九段。
将棋界の頂点を目指す棋士たちにとって、九段は一つの大きな目標となっているのです。


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