漫画を読んでいると、キャラクターの影や髪の色、服の柄などがグレーっぽく表現されているのに気づいたことはありませんか?
実はあのグレーの部分、よく見ると細かい点や模様が並んでいます。
それが「トーン(スクリーントーン)」と呼ばれる漫画の画材です。
この記事では、トーンの意味や種類・使い方を、漫画を読むだけの人でもわかるようにかんたんに解説します。
スクリーントーンとは
スクリーントーン(Screen-tone)は、もともとイギリスのレトラセット社が商標登録した画材の名前です。
現在は同種の製品も含めて「スクリーントーン」あるいは略して「トーン」と呼ぶのが一般的です。
ひと言でいうと、「細かい点や模様が印刷された、透明な粘着フィルムのシート」です。
このシートを漫画の原稿に貼りつけることで、白と黒だけのモノクロ原稿の上に、グレーや柄・質感を表現できます。
漫画の印刷はモノクロが基本なので、写真のような「グレー」を普通に塗ることができません。
そのかわり、細かい黒い点を集めることで「グレーに見える」ように錯覚させているのです。
これが、トーンの基本的な仕組みです。
スクリーントーンの歴史
トーンがもともと使われていたのは漫画ではなく、新聞・建築設計図・グラフィックデザインの世界でした。
日本に持ち込まれたのは1950年代のことで、1954年(昭和29年)ごろ、漫画家の永田竹丸がはじめて自分の漫画に使用したとされています(永田本人の証言による)。
それをきっかけに漫画業界へ一気に広まり、現在の日本漫画の表現スタイルに欠かせないものになりました。
日本漫画がカラーではなくモノクロ中心で発展してきたこともあり、トーンは日本独自の進化を遂げてきた画材です。
スクリーントーンの主な種類
トーンには数百種類以上のバリエーションがあります。
ここでは代表的なものをまとめて紹介します。
アミトーン(網点トーン)
最もよく使われる基本的なトーンです。
細かい水玉模様(網点)がびっしり並んでいて、影・肌・髪など幅広い場面で活躍します。
各トーンには「線数(L)」と「濃度(%)」が表記されており、たとえば「60L30%」という場合、1インチの幅に60個の点があり、黒い部分の面積が30%を占めることを意味します。
線数が大きいほど点が細かくなり、遠くにあるものや繊細な表現に向いています。
濃度が高いほど濃いグレーに近づきます。
グラデーショントーン
点の密度が端から端へ向かって徐々に変化するトーンです。
自然な影の表現や、空・背景の奥行き感を出したいときに使われます。
砂目トーン(ざらめトーン)
不規則な点が散らばったトーンで、ざらっとした質感を表現できます。
服の素材感や自然物(土・岩・木など)の表現に向いています。
柄トーン
チェック・花柄・迷彩など、具体的な模様が印刷されたトーンです。
キャラクターの服やインテリアの柄を手書きせずに表現できるため、作業時間の短縮に役立ちます。
効果トーン
集中線・カケアミ(格子状の線)・流線など、漫画特有の表現効果を印刷したトーンです。
本来は漫画家が手で描くものですが、トーンを使うことで素早く均一な効果を加えられます。
背景トーン
空・雲・木・星空など、背景として使える柄が印刷されたトーンです。
細かく書き込む必要のある背景を効率よく仕上げるために使われます。
ホワイトトーン
通常のトーンは透明フィルムに黒いインクで印刷されていますが、ホワイトトーンは白いインクで印刷されています。
すでに黒いインクで描かれた絵の上や、濃いトーンの上に重ねて使うことで、ハイライトや光の表現ができます。
アナログでのトーンの貼り方
アナログ漫画の場合、以下の手順でトーンを貼ります。
- ペン入れ・ベタ塗り・消しゴムがけを終えた原稿の上に、トーンシートをのせる
- 貼りたい部分よりも少し大きめにトーンナイフでカットする(台紙は切り込まないように注意)
- 台紙からはがし、原稿の上に直接のせる
- あて紙(白い紙など)をかぶせ、トーンヘラで軽くこすって圧着する
- 余分な部分をトーンナイフで丁寧に切り取る
- 再びあて紙をしてヘラでしっかり圧着して完成
また、トーンをナイフや砂消しゴムで削ることで、ハイライトや独自のグラデーションを表現するテクニックもあります。
デジタルでのトーンの使い方
現在は漫画制作のデジタル化が進み、CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)などのソフトでも同様のトーンが利用できます。
デジタルの場合は、メニューからトーンを選んでレイヤーに適用するだけで済むため、カット・貼り付けといったアナログ作業は不要です。
また、後からトーンの種類や濃度を変更することも簡単に行えます。
注意点:モアレとは
トーンを使うときに気をつけたいのが「モアレ」と呼ばれる現象です。
線数の異なるトーンや、角度がずれたトーンを重ねてしまうと、意図しない干渉縞(縞模様のようなもの)が発生します。
これがモアレで、印刷やデジタル表示の際に画面が乱れて見える原因になります。
アナログでは、同じ線数・同じメーカーのトーンを重ねることでモアレを防ぎやすくなります。
デジタルでは、線数と角度が同じトーンを重ねればモアレを避けられます。
まとめ
スクリーントーンは、モノクロ漫画の世界に「グレー・質感・模様・効果」を表現するための画材です。
1954年ごろから日本漫画に取り入れられ、現在に至るまで独自の発展を遂げてきました。
アミトーン・グラデーショントーン・効果トーンなど種類は数百以上あり、貼り方や削り方の工夫によって、表現の幅が大きく広がります。
デジタル化が進んだ今でも、アナログ・デジタルの両方で欠かせない存在であり続けています。
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