漫画原稿用紙の端に印刷されている「L字型の線」や「十字のマーク」を見たことがあるだろうか。
これらをまとめて「トンボ」と呼ぶ。
漫画を描き始めたばかりの人には馴染みが薄い言葉だが、印刷所への入稿に欠かせない重要な目印だ。
この記事では、トンボの意味・語源・種類・役割をわかりやすく解説する。
トンボの意味と読み方
「トンボ」の読み方は 「とんぼ」 だ。
英語では「トリムマーク(trim mark)」または「レジスターマーク(register mark)」とも呼ばれ、AdobeのIllustratorなどのソフトでは「トリムマーク」と表記されている。
漫画・印刷業界における「トンボ」とは、原稿用紙に書き込まれた位置確認用の目印のことだ。
印刷所が原稿を断裁(紙を切る)したり、多色刷りの際に版を正確に合わせたりするために使用する。
漫画原稿に限らず、チラシ・雑誌・書籍など、あらゆる印刷物の原稿に使われている業界共通の仕組みだ。
トンボの語源と由来
「トンボ」という名前の由来は、センタートンボ(十字形のマーク)の形が昆虫のトンボに似ているからとされている。
翅(はね)を広げて飛ぶトンボの姿と、横と縦に交差する十字形のマークが重なって見えることから、この名前が定着した。
グラウンド整備に使うT字型の道具や、クレープを焼く際のT字型のスプレッダーも同じ理由で「トンボ」と呼ばれており、形からイメージされた名称が広く使われている例だ。
トンボの種類
日本の印刷業界では主に以下の4種類のトンボが使われている。
コーナートンボ(角トンボ)
原稿の四隅に配置されるL字型の二重線だ。
内側の線(内トンボ)と外側の線(外トンボ)の2本で構成されており、それぞれ異なる役割を持つ。
内トンボは仕上がりサイズの目安を示す線で、印刷所はこの線を基準に断裁を行う。
外トンボは塗り足し(裁ち落とし)の目安を示す線だ。
内トンボと外トンボの間隔は通常3mmで、この3mmの領域を「ドブ」または「塗り足し幅」と呼ぶ。
センタートンボ(十字トンボ)
原稿の天地(上下)・左右の中央に配置される十字形のマークだ。
昆虫のトンボにもっとも形が近いのがこのセンタートンボで、名前の由来ともなっている。
2つの役割があり、1つ目は原稿の中心位置を確認するため、2つ目は多色刷りの際に版のズレを確認するため(見当合わせ)だ。
カラー印刷では、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4版を重ね刷りするため、各版のズレを確認する指標として非常に重要な役割を持つ。
折りトンボ
三つ折りリーフレットや冊子など、折り加工を伴う印刷物に使われるトンボだ。
紙を折る位置を示すもので、コーナートンボやセンタートンボと異なり、ソフトウェアで自動生成できないため、デザイナーが手動で作成する必要がある。
漫画原稿には基本的に使用しない。
トンボが必要な理由
断裁のズレを防ぐため
印刷会社では仕上がりサイズよりも大きな用紙に大量の原稿を印刷し、その後まとめて断裁機で仕上がりサイズに切り出す。
この断裁工程では、用紙のセット位置や用紙の微妙な収縮などによって、ミリ単位のズレが生じることがある。
トンボがあれば印刷所が正確な位置を把握して作業できる。
さらに、塗り足し(外トンボまで絵を描いておく部分)があることで、断裁時に多少のズレが生じても、仕上がった印刷物の端に白い余白が生まれるのを防げる。
多色刷りの版ズレを防ぐため
カラー印刷では複数の版を重ね合わせて色を再現する。
各版のズレを確認・修正する際に、センタートンボが基準点として使われる。
版がズレると色がぼやけたり、意図しない色になってしまうため、センタートンボは印刷品質を保つうえで非常に重要だ。
漫画原稿用紙の各枠との関係
漫画原稿用紙には、トンボ以外にも複数の基準線が引かれている。
それぞれとトンボの関係を整理すると以下のようになる。
| 名称 | 別名 | 役割 |
|---|---|---|
| 基本枠 | 内枠 | セリフや重要な絵を収める安全圏。製本後も確実に見える範囲 |
| 仕上がり枠 | 外枠・内トンボ | 製本後の本のサイズになる枠 |
| 裁ち落とし幅 | ドブ・塗り足し | 内トンボ〜外トンボ間の3mm。断裁ズレに備えた予備範囲 |
| トンボ | コーナートンボ | 断裁・塗り足しの目印。内トンボ+外トンボで構成 |
| センタートンボ | 十字トンボ | 原稿の中心と版合わせの目印 |
漫画家がトンボについて知っておくべきこと
トンボ線を絵や塗りで隠さない
トンボは印刷所が断裁位置を確認するための目印だ。
ベタ塗りやトーンなどでトンボ線が見えなくなると、印刷所が正確な位置を判断できなくなる。
原稿を描く際はトンボ線にかからないよう注意が必要だ。
裁ち落とし(タチキリ)の絵は外トンボまで描く
コマが仕上がり枠よりも外まで広がるレイアウト(タチキリ)にする場合は、絵を外トンボ(塗り足し幅)まで描く必要がある。
仕上がり枠のギリギリまでしか描かないと、断裁後に端に白い余白が出てしまう可能性がある。
セリフと顔は基本枠の中に収める
どんなに迫力ある構図でタチキリを使う場合でも、キャラクターの顔やセリフは基本枠の内側に収めることが基本だ。
基本枠の外にセリフを置くと、製本後に切れてしまったり、ノド(綴じ側)に寄りすぎて読みにくくなることがある。
デジタル原稿の場合
CLIP STUDIO PAINTなどのソフトでデジタル原稿を作成する場合、テンプレートを使うと最初からトンボが設定されている。
商業誌に入稿する際はトンボを表示した状態で入稿するのが原則だ。
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