「今年一番のクソゲーを決めよう」——そんな企画があると聞いたら、あなたはどう思いますか?
実は2004年から約20年間、インターネット上でひっそりと、しかし熱狂的に行われてきた「裏の祭典」が存在します。その名もクソゲーオブザイヤー(KOTY)。
ゲーム好きなら一度は耳にしたことがあるかもしれないこの企画。しかし、「名前は知っているけど詳しくは知らない」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、クソゲーオブザイヤーの歴史から、歴代大賞作品の詳細、そして2023年の活動休止に至るまでを網羅的にご紹介します。
- クソゲーオブザイヤー(KOTY)とは?
- KOTYの4つの時代
- 据置機部門 歴代大賞一覧
- 2004年:ゼノサーガ エピソードII 善悪の彼岸(PS2)
- 2005年:ローグギャラクシー(PS2)
- 2006年:ファンタシースターユニバース(PS2/PC)
- 2007年:四八(仮)(PS2)
- 2008年:メジャーWii パーフェクトクローザー(Wii)
- 2009年:戦極姫〜戦乱に舞う乙女達〜(PS2/PSP)
- 2010年:ラストリベリオン(PS3)
- 2011年:人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ(Wii)
- 2012年:太平洋の嵐〜戦艦大和、暁に出撃す!〜(PS3)
- 2013年:ビビッドレッド・オペレーション -Hyper Intimate Power-(PS3)
- 2014年:仮面ライダー サモンライド!(PS3/Wii U)
- 2015年:アジト×タツノコレジェンズ(Xbox One)
- 2016年:古き良き時代の冒険譚(PS4/PS Vita)
- 2017年:RXN -雷神-(Nintendo Switch)
- 2018年:SHOOT THE BALL(Nintendo Switch)
- 2019年:該当作なし(選評未提出による審議不成立)
- 2020年:ファイナルソード(Nintendo Switch)
- 2021年:バランワンダーワールド(PS4/PS5/Switch他)
- 2022年:大賞なし
- なぜKOTYは休止したのか?
- KOTYが遺したもの
- 据置機部門 歴代大賞一覧表
- まとめ
クソゲーオブザイヤー(KOTY)とは?

基本情報
クソゲーオブザイヤー(Kuso-game Of The Year、略称:KOTY)は、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)のゲーム板で2004年から行われてきた企画です。
その目的は単純明快——その年に発売されたゲームの中で、最も「クソ」だった作品を決めるというもの。
名前の由来は、優れたゲームに与えられる「ゲーム・オブ・ザ・イヤー(GOTY)」をもじったもの。いわば「逆表彰」として始まったわけですね。
選考方法
KOTYの選考は、単なる投票で決まるわけではありません。
選評制度と呼ばれる独自の仕組みがあり、以下のような流れで大賞が決定されます。
- 「選評」と呼ばれる詳細なレビューが住民から投稿される
- スレッド住民による議論と検証が行われる
- 年末に「総評」がまとめられ、大賞が決定する
重要なのは、実際にプレイした人による客観的な評価が求められる点。「嫌いだから」「期待外れだから」という主観的な理由だけでは、候補にすら挙がりません。
部門について
KOTYには複数の部門が存在していました。
| 部門名 | 対象 | 活動期間 |
|---|---|---|
| 据置機部門 | PS、Wii、Xbox等 | 2004年〜2022年 |
| 携帯機部門 | PSP、DS、3DS等 | 2007年〜2017年 |
| エロゲー部門 | 成人向けPC用ゲーム | 2008年〜現在 |
| 乙女ゲー部門 | 女性向け恋愛ゲーム | 2007年〜2015年 |
本記事では、最も歴史が長く知名度の高い据置機部門を中心に解説していきます。
KOTYの4つの時代
クソゲーオブザイヤーの歴史は、大きく4つの時代に分けることができます。
第1期:大作ガッカリゲー時代(2004年〜2006年)
初期のKOTYは、現在とはかなり異なるスタイルでした。
この時期は投票制が採用されており、「期待外れだった大作」が選ばれる傾向がありました。売れた本数が多い=被害者が多い、という論理ですね。
選ばれた作品も『ゼノサーガ』『ローグギャラクシー』『ファンタシースターユニバース』といった、知名度の高いRPGが中心でした。
第2期:面白バグ時代(2007年〜2009年)
2007年、すべてを変える作品が登場します。
『四八(仮)』——この作品の登場により、KOTYの評価基準は根本から見直されることになりました。この衝撃は「四八ショック」と呼ばれ、投票制から選評制への移行のきっかけとなったのです。
翌2008年には「七英雄」と呼ばれる7本ものクソゲーが登場。映像で確認できるバグの面白さも評価されるようになり、動画文化との融合が進んだ時期でもあります。
第3期:ストロングスタイル時代(2010年〜2012年)
2010年代に入ると、笑えるバグではなく「純粋につまらない」作品が台頭してきます。
これを住民はストロングスタイルと呼びました。バグで笑わせるのではなく、ゲームとしての根本的な欠陥で勝負する——まさに「正面突破」のクソゲーたちです。
第4期:虚無時代(2013年〜2022年)
大手メーカーのクオリティ管理が向上し、致命的なバグは減少。アップデートで修正される時代になりました。
結果として、KOTYに登場するのは中小メーカーやインディーズの「語るべきことがない」虚無ゲーが中心に。スレッドの活気も次第に失われていきました。
据置機部門 歴代大賞一覧

それでは、据置機部門の歴代大賞作品を年代順に見ていきましょう。
2004年:ゼノサーガ エピソードII 善悪の彼岸(PS2)
初代KOTY大賞作品。前作から大幅に変更されたシステムと、短いボリュームが批判を浴びました。
ただし、この時期は投票制であり、現在の厳格な基準とは異なります。「遊べるけど期待外れ」という作品も選ばれていた時代でした。
2005年:ローグギャラクシー(PS2)
レベルファイブとスクウェア・エニックスによる大作RPG。
発売前の過剰な宣伝と実際の内容との落差が問題視されました。総評では「さあ、ふるえるがよい」という宣伝コピーが皮肉として引用されています。
2006年:ファンタシースターユニバース(PS2/PC)
セガの人気オンラインRPGシリーズの新作。
発売3日でロールバック(セーブデータ巻き戻し)という前代未聞の障害が発生。総評の結句は「全てのクソゲーを過去にする」でした。
2007年:四八(仮)(PS2)
KOTY史上最大の衝撃作。「四八ショック」「ヨンパチショック」と呼ばれる大事件を引き起こしました。
問題点
- 47都道府県の怪談を題材にしながら、内容がスカスカ
- 進行不能になる致命的なバグが多発
- 「住民移動」という苦行システム
- クリア条件が「シナリオを48回プレイする」だけ
- メーカーがお詫びにハンカチを送付
この作品を境に、KOTYの選考基準は大幅に厳格化。「四八と戦えるか?」が一つの指標となりました。
総評の結句は「で、製品版の正式タイトルはいつ決まるんすか?」——タイトルの「(仮)」を皮肉ったものです。
2008年:メジャーWii パーフェクトクローザー(Wii)
四八ショックでハードルが上がった翌年、なんと7本ものクソゲーが登場。「七英雄」と呼ばれる伝説の年となりました。
七英雄一覧
- メジャーWii 投げろ!ジャイロボール!!
- 奈落の城 一柳和、2度目の受難
- 大奥記
- ジャンライン
- 神代學園幻光録 クル・ヌ・ギ・ア
- プロゴルファー猿
- メジャーWii パーフェクトクローザー(大賞)
大賞の『パーフェクトクローザー』は、野球漫画「MAJOR」を原作としたゲーム。
伝説のバグたち
- 打者と審判が背を向ける
- センター前ヒットがキャッチャーゴロになる
- フリーズでWii本体が故障する事例も
- 開発がたった3人のプログラマーで行われていた
総評の結句「メーカーをタカラトミーに、開発をドリフにされたら…ゲームにならねーんだよ!」は、原作主人公の名セリフのパロディです。
2009年:戦極姫〜戦乱に舞う乙女達〜(PS2/PSP)
エロゲー版KOTYから移植されてきた「刺客」。
据置機・携帯機の両部門で大賞を獲得するという前代未聞の二冠を達成しました。
バグの嵐と、修正パッチの内容がさらに酷いという「修羅の国」らしい作品でした。
2010年:ラストリベリオン(PS3)
日本一ソフトウェアと日本ファルコムの合作RPG。
バグではなく純粋なゲームバランスの崩壊で勝負した「ストロングスタイル」の先駆者。
「物理」で全てを解決できてしまう虚無なゲーム性が問題視されました。
2011年:人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ(Wii)
タカラトミーの『人生ゲーム』シリーズ。なんとWii版だけで3年連続ノミネートという記録を持つ常連でした。
前年の「ハッピーファミリー」に「ご当地ネタ」を追加しただけの焼き直し。追加要素も不評で、価格は据え置き。
選評では「これならまだ自分の人生のほうがおもしろい」と評されました。
2012年:太平洋の嵐〜戦艦大和、暁に出撃す!〜(PS3)
PCゲームの移植作。グラフィック・操作性・UI・システム・音響・AI・ゲームバランスの全てがクソという「全方位型」のクソゲー。
チュートリアルなし、説明不足、初代PlayStation以下のグラフィック……。「ゲー無」ならぬ「ゲー霧」と呼ばれました。
2013年:ビビッドレッド・オペレーション -Hyper Intimate Power-(PS3)
アニメのキャラクターゲーム。バンダイナムコ発売。
語るべき内容がないほどの「虚無ゲー」。
この年からKOTYは徐々に活気を失っていきます。
2014年:仮面ライダー サモンライド!(PS3/Wii U)
フィギュアとゲームを連動させる「Toys to Life」ジャンルの作品。
フィギュアがないと進めないゲームデザインと、その収集にかかる莫大な費用が批判されました。バンダイナムコ、2年連続の受賞です。
2015年:アジト×タツノコレジェンズ(Xbox One)
秘密基地作成シミュレーションとタツノコプロのコラボ作品。
- 戦闘中セーブでクラッシュ
- 送り出した戦闘員が行方不明になるバグ
- 施設が勝手に壊れる
返品レベルのバグの嵐で、ゲーム内容以前の問題でした。
2016年:古き良き時代の冒険譚(PS4/PS Vita)
ファンタジーRPG。選評が3本と少ない年でしたが、その中でも抜きん出た虚無さで大賞に。
結句「ささやき — 祈り — 詠唱 — 念じろ!……過去の亡霊たちは 今度こそ 埋葬されました」は、往年の名作『ウィザードリィ』の呪文詠唱をもじったものです。
2017年:RXN -雷神-(Nintendo Switch)
「雷電」シリーズ開発者による縦スクロールシューティング。
横長画面で縦シューティングという謎の仕様。
10周年記念作品でありながら、「これまでの常識を疑う」と謳った結果、ゲームとして成立しない代物が誕生しました。
2018年:SHOOT THE BALL(Nintendo Switch)
低価格インディーズゲームの台頭を象徴する作品。
価格300円、プレイ時間わずか数分。
「これをフルプライスのゲームと比較するのか」という議論を巻き起こし、KOTYの存在意義が問われ始めた年でした。
2019年:該当作なし(選評未提出による審議不成立)
ついにKOTY史上初めて、大賞なしの年が発生。
選評自体が提出されず、審議が成立しませんでした。
2020年:ファイナルソード(Nintendo Switch)
韓国のインディー開発者による3DアクションRPG。
KOTYに久々の「愛されクソゲー」が登場しました。
話題になったポイント
- 「ゼルダの伝説」シリーズのBGMを無断使用(後に差し替え)
- 「自信があります 心配しないでください」という謎の安心感
- プレイヤーが竜に変身できる……が、操作は人間のまま
- RTA in Japan 2021でトリを飾る
笑えるバグと愛すべき拙さから、「クソゲーブーム」を巻き起こした作品です。ファンからは温かい目で見守られ、続編制作も発表されました。
2021年:バランワンダーワールド(PS4/PS5/Switch他)
『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の生みの親・中裕司氏がスクウェア・エニックスで手がけた3Dアクション。
問題点
- アクションボタンが1つだけという謎の操作性
- 80種類以上のコスチューム(衣装)があるのに差別化が不十分
- 発売前にディレクターが外される社内トラブル
- 令和のゲームとは思えない古臭い設計
「ストロングスタイル」の復活として話題になりました。
バグではなく、純粋につまらない——それが大賞の理由です。
2022年:大賞なし
選評は提出されたものの、大賞に値する作品がないと判断されました。次点は『RPGolf Legends』。
そして同年、2023年からの活動休止が発表されます。
なぜKOTYは休止したのか?

約20年続いたKOTYが休止に至った理由は、複数の要因が重なっています。
ゲーム業界の変化
- 大手メーカーの品質管理向上:致命的なバグは発売前に発見される時代に
- アップデート文化:発売後に修正されるため、選評が無効化される
- インディーズの台頭:低価格ゲームが溢れ、全てをチェックすることが不可能に
盛り上がる場所の変化
2020年の『ファイナルソード』は大いに話題になりましたが、その盛り上がりはKOTYスレッドではなくYouTube動画やSNSでした。
KOTYが「低評価ゲームのキュレーション機能」を失い、人々は別の場所で情報を得るようになったのです。
スレッド運営の困難
選評を書くハードルの高さ、荒らしへの対応、そして住民の高齢化……。
匿名掲示板文化そのものの衰退も影響していたと考えられます。
KOTYが遺したもの
KOTYは単なる「悪口大会」ではありませんでした。
選評という文化
ゲームを客観的に評価し、文章で伝える——この作法は、現在のYouTubeゲームレビューにも受け継がれています。
名文・迷文と呼ばれる数々の総評は、読み物としても面白く、ゲーム批評の一つの形を示しました。
「クソゲー」の定義を深めた
「つまらない」「期待外れ」だけでは、KOTYでは通用しません。
- バグでゲームとして成立していないのか
- 純粋にゲームデザインが破綻しているのか
- 制作姿勢に問題があるのか
こうした視点でゲームを見ることは、逆説的に「良いゲームとは何か」を考えることにも繋がります。
語り継がれる伝説
『四八(仮)』『メジャーWii パーフェクトクローザー』『ファイナルソード』……。
これらの作品は「伝説のクソゲー」として、今なおゲーム配信者たちにプレイされ、語り継がれています。お笑い芸人の陣内智則さんがこれらをプレイする動画も話題になりました。
据置機部門 歴代大賞一覧表

| 年度 | 大賞作品 | 機種 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 2004 | ゼノサーガ エピソードII | PS2 | 期待外れRPG |
| 2005 | ローグギャラクシー | PS2 | 過剰宣伝との落差 |
| 2006 | ファンタシースターユニバース | PS2/PC | 発売3日でロールバック |
| 2007 | 四八(仮) | PS2 | 四八ショック |
| 2008 | メジャーWii パーフェクトクローザー | Wii | 七英雄の頂点 |
| 2009 | 戦極姫〜戦乱に舞う乙女達〜 | PS2/PSP | 据置・携帯二冠 |
| 2010 | ラストリベリオン | PS3 | ストロングスタイル先駆者 |
| 2011 | 人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ | Wii | 3年連続ノミネートシリーズ |
| 2012 | 太平洋の嵐〜戦艦大和、暁に出撃す!〜 | PS3 | 全方位型クソゲー |
| 2013 | ビビッドレッド・オペレーション | PS3 | 虚無ゲー |
| 2014 | 仮面ライダー サモンライド! | PS3/Wii U | フィギュア商法の闇 |
| 2015 | アジト×タツノコレジェンズ | Xbox One | バグの嵐 |
| 2016 | 古き良き時代の冒険譚 | PS4/PS Vita | 虚無ゲー |
| 2017 | RXN -雷神- | Switch | 横画面縦シューティング |
| 2018 | SHOOT THE BALL | Switch | 低価格インディー |
| 2019 | (審議不成立) | — | 選評未提出 |
| 2020 | ファイナルソード | Switch | 愛されクソゲー |
| 2021 | バランワンダーワールド | PS4/PS5/Switch他 | ストロングスタイル復活 |
| 2022 | (大賞なし) | — | 該当作なし |
まとめ
クソゲーオブザイヤーは、2004年から約20年にわたってインターネット上で行われてきた、ゲーム文化の一つの形でした。
押さえておきたいポイント
- KOTY(クソゲーオブザイヤー)は5ちゃんねるで行われた「その年最もクソだったゲームを決める」企画
- 投票ではなく選評制による客観的な評価が特徴
- 2007年の『四八(仮)』が転換点となり、評価基準が厳格化
- 2008年には「七英雄」と呼ばれる7本ものクソゲーが登場
- 2020年の『ファイナルソード』は久々の「愛されクソゲー」として話題に
- 2023年より活動休止
KOTYは「クソゲーが出ないことは良いこと」という精神を持っていました。
企画は休止しましたが、ゲームを客観的に見つめ、言葉で伝えるという文化は、形を変えて受け継がれていくことでしょう。
そして何より——これらの「伝説のクソゲー」たちは、今なお多くの人々に笑いと学びを与え続けています。

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