【元天界のエリート武将が豚の妖怪に!】猪八戒(ちょはっかい)とは?その姿・特徴・伝承をやさしく解説!

神話・歴史・伝承

もしあなたが天界のエリート武将だったとして、酔った勢いで月の女神にちょっかいを出したら、豚の妖怪にされてしまったら…どうでしょう?

そんな波乱万丈な運命をたどったのが、中国の四大奇書『西遊記』に登場する「猪八戒(ちょはっかい)」なんです。

三蔵法師の旅のお供として知られる猪八戒は、実は元々は天界で8万の水軍を率いる偉い武将だったんですよ。

この記事では、人間くさくて憎めない豚の妖怪「猪八戒」について、その複雑な姿や特徴、興味深い伝承を分かりやすくご紹介します。

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概要

猪八戒は、16世紀の中国で成立した『西遊記』に登場する主要キャラクターの一人です。

三蔵法師が天竺(インド)へ経典を取りに行く旅の仲間として、孫悟空、沙悟浄とともに旅をする妖怪なんですね。

名前の「猪」は中国語ではブタを意味します(イノシシではありません)。「八戒」は仏教の八つの戒めを守るという意味があります。

面白いのは、猪八戒は単純な悪役ではなく、とても人間くさい性格を持っていること。食いしん坊で、女好きで、怠け者という欠点だらけですが、なぜか憎めない愛されキャラクターなんです。

系譜

猪八戒の前世と転生の物語は、まさに天国から地獄への転落劇といえるでしょう。

天界時代の輝かしい経歴

もともと猪八戒は「天蓬元帥(てんぽうげんすい)」という立派な肩書きを持っていました。

天蓬元帥の地位と職務:

  • 天の川を管理する最高責任者
  • 8万人の天界水軍の総司令官
  • 北極紫微大帝の配下として活躍
  • 玉皇大帝(天界の最高神)から直接任命された武将

つまり、天界でもかなり偉い武将だったわけです。

転落の原因

ところが、ある宴会での出来事が彼の運命を変えてしまいます。

蟠桃会(ばんとうえ)という天界の重要な宴会で、酔っ払った天蓬元帥は月の女神「嫦娥(じょうが)」の美しさに心を奪われ、強引に言い寄ってしまったんです。

これが大問題に!玉皇大帝は激怒し、天蓬元帥に厳しい罰を与えました。

受けた罰:

  • 鉄の鎚で2000回打たれる刑罰
  • 天界から追放
  • 地上で転生を繰り返す運命

豚の妖怪への転生

地上に落とされた天蓬元帥は、人間に生まれ変わろうとしましたが、なんと間違えて雌豚の胎内に入ってしまったんです!

生まれてきた姿は黒豚の妖怪。母豚の腹を食い破って生まれ、群れの豚も皆殺しにして、福陵山で人食い妖怪「猪剛鬣(ちょごうりょう)」として暴れまわることに。

その後、観音菩薩に出会い、「猪悟能(ちょごのう)」という法名をもらい、改心への道を歩み始めます。三蔵法師に弟子入りしてからは「猪八戒」と名付けられ、ついに贖罪の旅が始まったのです。

姿・見た目

猪八戒の見た目は、まさに豚そのものといった感じなんです。

身体的特徴

  • 顔: 豚の顔で、長い鼻と大きな耳
  • 牙: 口から鋭い牙が突き出ている
  • 体型: 太鼓腹でずんぐりした体型
  • 肌: 黒い剛毛に覆われた体
  • 身長: 人間とほぼ同じくらい

日本では時々イノシシと間違えられることがありますが、中国では明確にブタの妖怪として描かれています。垂れた耳と丸い鼻が特徴的で、威圧感よりも愛嬌を感じさせる姿なんですね。

服装

旅の途中では僧侶の衣を着ていますが、戦闘時には元帥時代の面影を残す勇ましい姿になることもあります。

4. 特徴

猪八戒には、元天界の武将らしい能力と、豚の妖怪らしい性格の両方があります。

戦闘能力

九歯釘鈀(きゅうしていは)という特別な武器

  • 9本の歯がついた熊手のような農具型の武器
  • 太上老君(道教の最高神)が作った神器
  • 重さは約3トン(!)
  • 振るうと火炎旋風を巻き起こす

水中戦闘のエキスパート
元水軍の総司令官だけあって、水中での戦いは孫悟空よりも得意。川や海での戦いでは頼りになる存在です。

雲に乗って飛ぶ能力
孫悟空ほど速くはありませんが、雲を操って空を飛ぶことができます。

性格の特徴

猪八戒の性格は、まさに人間の煩悩そのものを表現しています。

長所:

  • 素直で正直
  • 楽観的で明るい
  • 仲間思い
  • 意外と優しい

短所:

  • 大食い(底なしの食欲)
  • 女好き(美女を見ると目がない)
  • 怠け者(すぐサボろうとする)
  • 臆病(危険を避けたがる)

でも、この欠点だらけの性格が、逆に親しみやすさを生んでいるんですね。完璧な英雄である孫悟空とは対照的に、弱い部分を持った愛されキャラとして人気があります。

伝承

三蔵法師との出会い

猪八戒が三蔵法師の弟子になるまでには、面白いエピソードがあります。

高老荘という村で、猪八戒は高太公という金持ちの娘・翠蘭(すいらん)に無理やり婿入りしていました。よく働くのは良かったんですが、あまりにも大食いで、しかも正体が豚の妖怪とバレてしまい、村人たちは困り果てていたんです。

そこへ三蔵法師一行がやってきて、孫悟空と激しい戦いに。でも、観音菩薩から聞いていた取経者だと分かると、すぐに降参して弟子入りを願い出ました。

旅での活躍と失敗

活躍したエピソード:

  • 流沙河での沙悟浄との戦い
  • 水中の妖怪退治で大活躍
  • 重い荷物を運ぶ力仕事

失敗したエピソード:

  • 美女に化けた妖怪に何度も騙される
  • 食べ物の誘惑に負けて仲間を困らせる
  • 孫悟空の悪口を三蔵に告げ口して仲違いさせる

旅の終わりと成仏

長い旅の末、ついに天竺で経典を手に入れた一行。釈迦如来から功績を認められ、それぞれに位が与えられました。

仲間たちの成果:

  • 三蔵法師:旃檀功徳仏(せんだんくどくぶつ)
  • 孫悟空:闘戦勝仏(とうせんしょうぶつ)
  • 沙悟浄:金身羅漢(こんじんらかん)
  • 猪八戒:浄壇使者(じょうだんししゃ)

猪八戒だけ「使者」なのを不満に思いましたが、これはお供え物の処理係という意味。つまり、お供え物を好きなだけ食べられる役職だったんです!大食いの猪八戒にぴったりの褒美でした。

出典・起源

『西遊記』の成立

猪八戒が登場する『西遊記』は、16世紀の明の時代に呉承恩によって書かれたとされる中国四大奇書の一つです。

ただし、猪八戒のような豚の精霊の話は、それ以前から存在していました。元代の戯曲や、敦煌の壁画にも豚の姿をした従者が描かれているんです。

民間伝承との関係

中国では古くから豚は身近な家畜で、豚にまつわる民話や伝説がたくさんありました。

  • 豚は中国で最初に家畜化された動物の一つ
  • 知能が高く、人間に近い存在として認識
  • 豊かさと多産の象徴

これらの文化的背景が、猪八戒というキャラクターを生み出したと考えられています。

日本での受容

日本に『西遊記』が伝わったのは江戸時代。最初は「猪」を「イノシシ」と訳していましたが、1931年の弓館小鰐の翻訳で初めて正しく「ブタ」と訳されました。

現在では、アニメやマンガ、ゲームなどで広く親しまれているキャラクターですね。

まとめ

猪八戒は、天界のエリートから豚の妖怪へと転落した、波乱万丈な運命をたどったキャラクターです。

重要なポイント

  • 元は天蓬元帥という8万の水軍を率いる天界の武将
  • 酔って月の女神に言い寄り、豚の妖怪に転生
  • 豚の顔と体を持つが、人間的な感情が豊か
  • 九歯釘鈀という3トンの武器を振り回す怪力
  • 大食い、女好き、怠け者だが憎めない性格
  • 最後は浄壇使者として、お供え物を食べる役職を得る

猪八戒の魅力は、その人間くさい弱さにあります。完璧な英雄ではなく、誰もが持っている欲望や弱さを素直に表現する姿は、現代の私たちにも共感できる部分があるんじゃないでしょうか。

中国では孫悟空以上の人気を誇るというのも、納得できますね。失敗しても、叱られても、めげずに前向きに生きる猪八戒の姿は、私たちに「完璧じゃなくてもいいんだ」と教えてくれているのかもしれません。

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