もし夜道を歩いているとき、突然誰かに大切な髪を勝手に切られてしまったとしたら…きっと恐怖で震え上がってしまいますよね。
江戸時代の人々にとって、これは決して想像上の恐怖ではありませんでした。
「髪切り」という妖怪が頻繁に現れ、人々の髪を密かに切り取っていたからです。
この記事では、江戸時代の都市部を恐怖に陥れた不可解な妖怪「髪切り」について詳しくご紹介します。
髪切りってどんな妖怪なの?

「髪切り」は、江戸時代の市街地に頻繁に現れたとされる、人の髪を密かに切る妖怪なんです。
別名「黒髪切り(くろかみきり)」とも呼ばれています。当時の人々にとって、髪は身体の一部として大切にされていたので、勝手に切られるというのは大変な恐怖だったんですね。
姿・見た目
髪切りは絵巻や錦絵で以下のように描かれています。
特徴的な身体的特徴
- 鳥のくちばしのような長い口
- 手がハサミ状になっている
- 『髪切りの奇談』ではまっ黒いシルエット
特徴
髪切りの特徴は、人に気づかれずに髪を切ることです。
夜道で通行人の髷(まげ)や元結(もとゆい)を切るとされています。
しかし、切った髪はそのままにしておくのだそうです。
伝承

昔々、ある屋敷に「ぎん」という名前の女中さんがおりました。
三月十日の夜のこと、時刻は夜九時を過ぎた頃でした。ぎんは用事があって屋敷の便所に向かいました。
すると突然、身も震えるような寒気と共に、何とも言えない不気味な気配に包まれました。次の瞬間、ぎんが大切に結い上げていた髪の毛が、まるで刃物で切られたかのように、ばっさりと切れ落ちてしまったのです。
あまりの恐ろしさに、ぎんは我を忘れて近くの家へと駆け込みました。そして、そのままその場で気を失ってしまいました。
屋敷の人々が慌てて駆けつけ、ぎんを介抱して事の次第を聞きました。そして皆で便所の辺りを調べてみると、確かにぎんの美しい髪の毛が地面に散らばって転がっていました。
この出来事の後、ぎんは病気になってしまい、故郷の両親の元へ引き取られていきました。
それからというもの、「あの便所には髪切り妖怪が出る」という噂が広まり、屋敷の誰もがその便所を使うのを恐がるようになったということです。
正体
髪切りの正体については、いくつもの説があります。
超自然的な説
- 狐が化けて切るという昔話
- カミキリムシ(「髪切り虫」)という昆虫が母体との説
人間による説
- かつら屋がかつらを売るために切ったという説
- 祈祷師がお札を売るために仕組んだ自作自演だったという説
- 異常性癖による人間による犯行という説
まとめ
髪切りは、江戸時代で実際に発生した不可解な現象から生まれた、非常にユニークな妖怪です。
重要なポイント
- 江戸時代に現れた妖怪
- ハサミ状の手と鳥のくちばしのような特異な外見
- 人に気づかれず髪だけを切り取る謎の行動
- 当時の髪への価値観を反映した深刻な被害
- 超自然的説明と合理的説明の両方が存在
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