【異界の神の落とし子】ウィルバー・ウェイトリーとは?その姿・特徴・伝承を徹底解説!

神話・歴史・伝承

マサチューセッツ州の山奥にある寂れた村で、ある日、奇怪な赤ん坊が生まれました。

その子は生後7か月で歩き始め、11か月で言葉を話し、15歳になる頃には身長が2メートル40センチにも達していたのです。

彼の名はウィルバー・ウェイトリー。人間と邪神の間に生まれた、恐ろしい運命を背負った存在でした。

この記事では、H.P.ラヴクラフトの代表作『ダンウィッチの怪』に登場する半人半神の怪物、ウィルバー・ウェイトリーについて詳しく解説します。

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概要

ウィルバー・ウェイトリーは、1913年から1928年まで生きた、人間と異界の神ヨグ=ソトースの間に生まれた混血児です。

マサチューセッツ州の寒村ダンウィッチで、魔術師の家系に生まれた彼は、異常な速度で成長し、祖父から魔術や呪文を学びました。最終的には、父である邪神を復活させようと企て、その過程で命を落とすことになります。

彼は単なる怪物ではなく、高い知性を持ちながらも人間とは全く異なる思考をする存在として描かれています。クトゥルフ神話における重要なキャラクターの一人であり、人間と邪神の境界線上に立つ悲劇的な存在なんですね。

系譜

ウィルバーの家系図は、まさに呪われた血筋と言えるでしょう。

ウェイトリー家の歴史

ウェイトリー家は、1692年のセイレムの魔女裁判を逃れてダンウィッチに移り住んだ古い家系です。代々近親婚を繰り返し、魔術の研究に没頭していました。

両親について

  • 母親:ラヴィニア・ウェイトリー
    • アルビノで身体に軽い障害があった女性
    • 35歳の時に父親不明の子供(ウィルバー)を出産
    • ピンク色の目を持ち、左右の腕の長さが違っていた
    • 1926年の万聖節前夜に失踪(おそらくウィルバーに殺された)
  • 父親:ヨグ=ソトース
    • 外なる神、旧支配者と呼ばれる異次元の存在
    • 時空を超越した全知の神
    • 1912年の五月祭前夜に祖父ノアが召喚
  • 祖父:老ウェイトリー(ノア・ウェイトリー)
    • 魔術師として恐れられた存在
    • ウィルバーに魔術を教えた
    • 1924年に死去

姿・見た目

ウィルバーの外見は、一見すると奇妙な人間に見えますが、実は恐ろしい秘密を隠していました。

表面的な特徴

ウィルバーが他人に見せていた部分の特徴:

  • 異常な成長速度:15歳で身長約2.7メートル
  • 顔つき:山羊のような頭、貧弱で小さな顎
  • 肌の色:浅黒い、黒ずんだ肌
  • 髪と目:どちらも黒色
  • :人間とは違う発声器官を使っているような奇妙な声

隠された真の姿

常に全身を覆う服を着ていた理由は、下半身が完全に人間ではなかったからです。

死後に明らかになった真の姿:

  • 上半身:ワニのような鱗状の皮膚に黒い毛が生えている
  • 下半身:恐竜の後ろ脚のような形
  • 触手:腹部から赤い吸盤付きの触手が生えている
  • その他:尻にピンクの未発達な目玉のような器官
  • 血液:普通の血ではなくペンキのような粘液

特徴

ウィルバーには、半神半人ならではの特別な能力と特性がありました。

知的能力

  • 超早熟:生後7か月で歩行、11か月で会話
  • 魔術の知識:祖父から受け継いだ膨大な魔術知識
  • 古代言語:ラテン語や16世紀の英語を理解

身体的特性

  • 異常成長:通常の人間の10倍以上の速度で成長
  • 悪臭:ダンウィッチの環状列石と同じ酷い臭い
  • 犬に嫌われる性質:動物本能で危険を察知される

性格と内面

ウィルバーの日記から分かる彼の内面:

  • 祖父の計画への不安を抱いていた
  • 双子の弟がより父親に似ていることに驚いていた
  • 人間を滅ぼしても、人間に近い自分は旧支配者から疎外されると悩んでいた

この最後の悩みが、彼の悲劇性を物語っています。完全な人間でもなく、完全な神でもない、どちらの世界にも属せない孤独な存在だったんですね。

伝承

ネクロノミコン盗難事件

ウィルバーの最も有名な事件は、1928年のミスカトニック大学図書館侵入事件です。

事件の経緯:

  1. 祖父から受け継いだ16世紀版ネクロノミコンには必要な呪文が載っていなかった
  2. ミスカトニック大学のラテン語版を閲覧しようとした
  3. ヘンリー・アーミテッジ博士に危険視され、貸出を拒否される
  4. 他の図書館にも根回しされ、どこからも借りられなくなる
  5. 1928年8月3日夜明け前、盗み出そうと侵入
  6. 番犬に噛み殺される

双子の弟の暴走

ウィルバーには名前のない双子の弟がいました。この弟はウィルバーよりもさらに父親(ヨグ=ソトース)に似た、巨大で不可視の怪物でした。

ウィルバーの死後:

  • 食事(牛の血)の供給が絶たれた弟が暴走
  • ダンウィッチ村を襲い、住民を恐怖に陥れる
  • アーミテッジ博士らによって退治される
  • 最期に「父よ、ヨグ=ソトース!」と叫んで消滅

センティネル丘の予言

祖父の老ウェイトリーは生前、「息子(ウィルバー)がセンティネル丘の上で父親の名前を叫ぶ日が来る」と予言していました。しかし、実際にその丘で父の名を叫んだのは、ウィルバーではなく双子の弟だったという皮肉な結末になりました。

出典

ウィルバー・ウェイトリーが登場する作品:

原作

  • 『ダンウィッチの怪』(The Dunwich Horror)
  • 作者:H.P.ラヴクラフト
  • 執筆:1928年
  • 発表:『ウィアード・テイルズ』1929年4月号
  • クトゥルフ神話の中核作品の一つ

その他の登場作品

  • 映画『ダンウィッチの怪』(1970年、2009年)
  • 各種クトゥルフ神話TRPG
  • ボードゲーム『アーカムホラー』

まとめ

ウィルバー・ウェイトリーは、人間と邪神の間に生まれた悲劇的な存在です。

重要なポイント

  • 1913年生まれ、1928年死亡(わずか15歳)
  • 母は人間、父は外なる神ヨグ=ソトース
  • 異常な速度で成長し、15歳で身長2.7メートル
  • 下半身は完全に人間ではない異形
  • 高い知性を持ちながら、人間とは異なる思考
  • ネクロノミコンを求めて図書館に侵入し、番犬に殺される
  • どちらの世界にも属せない孤独を抱えていた

ウィルバーの物語は、単なるホラーではありません。人間でも神でもない、境界線上の存在が抱える孤独と苦悩を描いた、深い悲劇性を持つ物語なんです。

彼の最期の姿は、白っぽいねばねばした固まりに変化してしまいました。

それは、彼が最後まで、この世界のどこにも属することができなかった証なのかもしれませんね。

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