釣りをしていたら、海の底から白い影が浮かび上がってきた…そんな不気味な体験をしたらどうしますか?
新潟県の佐渡島には、数年に一度だけ海に現れる謎の妖怪の伝承があります。
白髪を乱した老婆のような姿で、何かを背負いながら海を泳ぎ回るその姿は、見た者に強烈な印象を残したそうです。
この記事では、佐渡島の海に伝わる不思議な妖怪「臼負い婆」について、その姿や特徴、江戸時代の目撃談を詳しくご紹介します。
概要

臼負い婆(うすおいばば)は、新潟県佐渡島の怪談集『佐渡怪談藻汐草』に記録されている妖怪です。
別名で「白負い婆(うしおいばば)」とも呼ばれています。
佐渡島南端の小木町宿根木(現在の佐渡市)にある「あかえの京」という海域に現れる、海の妖怪の一種とされているんです。
臼負い婆の基本情報
- 出現場所:佐渡島南端の「あかえの京」という海域
- 出現頻度:2~3年、または4~5年に一度
- 分類:海のあやかし(妖怪)の一種
- 特徴:老婆の姿で何かを背負っている
- 危険度:特に人に害を与えることはない
磯女や濡女といった、他の海に現れる妖怪の仲間ではないかと考えられています。
伝承

臼負い婆の目撃談は、江戸時代の記録に詳しく残されているんです。
丸重右衛門の目撃談
佐渡国(現在の新潟県佐渡市)の宿根木に住んでいた侍、丸重右衛門という人物が、仲間と一緒に釣りをしていた時の出来事です。
目撃当日の状況
その日、重右衛門たちは赤えい(エイの一種)がよく集まる「あかえの京」で釣りをしていました。
- しとしとと雨が降り出し、膝鰤(ひざぶり)という小雨になった
- まだ午後4時過ぎなのに、あたりが薄暗くなってきた
- 魚はまったく釣れなかった
それでも釣りを続けていると、海の底から白いものがゆっくりと浮かび上がってきたんです。
臼負い婆の姿
海面に現れたその化け物の特徴はこうでした:
外見的特徴
- 年を経た老婆のような姿
- 水に濡れた白髪を乱している
- 口からは牙のようなものがはみ出している
- 目つきが鋭く、こちらを睨んでいる
- 足の裏が真っ白だった
行動の特徴
- 両手を背中に回して、何かを背負っているような姿勢
- 背負っているのは臼(うす)ではないかと言われている
- 海面をしきりに泳ぎ回る
- 人々を睨みつけた後、また海底へと沈んでいく
重右衛門が思わず声を上げるほど驚いたそうですが、釣り仲間は冷静に「黙って見ていろ」と言いました。
地元の人々の認識
仲間が重右衛門に教えたところによると:
- この化け物は「臼負い婆」または「白負い婆」と呼ばれている
- 数年に一度の頻度で現れる
- 「あかえの京」では昔からよく目撃されている
- 特に心配することはない(人に害を与えない)
つまり、地元の人々にとっては珍しいけれど危険ではない、よく知られた存在だったんですね。
出現の前兆
臼負い婆が現れる前には、ある現象が起こるとされています:
- 周囲が不自然に薄暗くなる
- まだ夕方でないのに、まるで夜のようになる
この現象が起きたら、臼負い婆が現れる合図かもしれません。
あかえの京について
目撃場所の「あかえの京」は、現在の小木海中公園があるあたりの海域です。
佐渡島の南端部に位置し、赤えい(エイ)がよく集まる釣りの好ポイントとして知られていました。
この海域は古くから漁師や釣り人に親しまれており、臼負い婆の目撃談も複数伝えられているんです。
まとめ
臼負い婆は、佐渡島の海に数年に一度だけ現れる、不思議だけれど無害な妖怪です。
重要なポイント
- 新潟県佐渡島の『佐渡怪談藻汐草』に記録される海の妖怪
- 白髪を乱した老婆の姿で、何かを背負っている
- 「あかえの京」という海域に2~5年に一度現れる
- 海を泳ぎ回った後、また海底へと帰っていく
- 人に危害を加えることはない
- 磯女や濡女などの海の妖怪の仲間と考えられる
- 地元では昔からよく知られた存在
現代では目撃談はほとんど聞かれなくなりましたが、もし佐渡島の「あかえの京」で釣りをする機会があったら、もしかしたら数年ぶりに臼負い婆が姿を現すかもしれませんね。ただし出会っても、地元の人々の言葉通り「心配することはない」そうですよ。


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