夜道を歩いていて、突然上から何かに蹴り飛ばされたら、どう思いますか?
福岡県や山口県には、木の枝や垣根から突然現れて、通行人を蹴り飛ばすという不思議な妖怪の話が伝わっています。
それが「馬の足」なんです。
この記事では、夜道に潜む奇妙な妖怪「馬の足」について、その正体と伝承を詳しくご紹介します。
馬の足ってどんな妖怪なの?

馬の足(うまのあし)は、福岡県や山口県に伝わる不思議な妖怪です。
夜道を歩いているときに突然遭遇するといわれ、木の枝や垣根から馬の足だけがぶら下がったり突き出したりする姿で現れます。
この妖怪の恐ろしいところは、下を通ろうとした人を蹴り飛ばしてしまうというところなんです。
主な特徴
馬の足には、次のような特徴があります。
- 出現場所:大木の枝、垣根、竹垣など
- 出現時間:夜、特に暗い雨の夜
- 姿:馬の足だけがぶら下がっている、または突き出している
- 被害:気づかずに下を通ると蹴り飛ばされる
- 正体:狸の仕業とされることが多い
馬の体全体が現れるわけではなく、足だけというのが何とも不気味ですよね。
伝承

馬の足にまつわる伝承は、主に九州と中国地方で語り継がれてきました。
久留米市原古賀町の事例
福岡県久留米市原古賀町には、特に有名な馬の足の話が残っています。
この地域にはかつて多くの木々が茂っていましたが、後に切られて根ばかりになった場所がありました。
そこにあった大きな榎(えのき)の木から、真夜中になると長さ約3メートルもの馬の足がぶら下がったというんです。
この馬の足は、下を通る人に向かって降りてきて、よく驚かせていたそうです。
地元の人々は、これを狸のしわざだと考えていました。
山口県岩国の事例
山口県岩国の怪談を集めた『岩邑怪談録』という古い本には、別のパターンが記録されています。
安達氏という家の門の左右には竹で作った垣根がありました。
雨が降って暗い夜には、この垣根の破れたところから馬の足が突然突き出したというんです。
こちらは上からぶら下がるのではなく、横から突き出すタイプですが、ほぼ同じ妖怪だと考えられています。
似た妖怪たち
実は、馬の足と似たような妖怪の話は他の地域にも伝わっています。
- 鹿児島県:馬のクソ(馬の首が大木にぶら下がる)
- 岡山県苫田郡:馬の目玉
- 岡山県:さがり(榎から馬の首がぶら下がる)
どれも馬の体の一部が不自然にぶら下がるという点で共通していますね。
妖怪誕生の背景
昔は街灯もなく、道も狭かったので、夜道を歩くのは大変危険でした。
木の枝が顔の高さに垂れ下がっていることもよくあったでしょう。
暗闇で歩いていて、いきなりそういうものにぶつかると、まるで馬の足で蹴り飛ばされたような気分になったと想像できます。
こうした実体験が、馬の足という妖怪の伝承を生み出したのかもしれません。
まとめ
馬の足は、夜道の恐怖を象徴する九州・中国地方の妖怪です。
重要なポイント
- 福岡県・山口県を中心に伝承される妖怪
- 木の枝や垣根から馬の足だけが現れる
- 下を通ると蹴り飛ばされる恐ろしい存在
- 約3メートルの長さがあったという記録も
- 狸の化けた姿とされることが多い
- 暗い夜道の危険性が生んだ妖怪
今は街灯があって夜道も明るくなりましたが、昔の人々にとって夜道はまさに恐怖の世界だったんですね。
もし夜道を歩いていて、上から何か垂れ下がっているものを見つけたら…それは本当にただの枝でしょうか?


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