この記事では北欧神話の中でも特に勝利を象徴する神様、テュールについて紹介します。
オーディンやトールほど有名ではないかもしれませんが、その勇気ある行動と信念は、北欧神話の中でも最も心を打つ物語の一つです。
名前の意味

「テュール(Týr)」という名前、実はすごく意味深なんです。
この名前の元になったのは「ティワズ(Tiwaz)」という古い言葉で、なんと「神」そのものを意味していました。
つまり、テュールという名前は「神様」という意味そのもの!
それだけ昔は重要な神様だったということなんですね。
また、テュールの名前はゼウス(ユピテル)やディヤウスなどの天空神たちと同じ語源を持っている。
そこから元々は最高神だったのではないかとも考えられている。
ゲルマン神話(北欧神話のもとになった神話)では、テュールは主に戦いの神として知られていました。
豆知識: 英語の「Tuesday(火曜日)」は、元々「Tyr’s day(テュールの日)」だったんです!「Thursday(木曜日)」がトールの日であるように、テュールも曜日の名前に残っています。今でも私たちは知らないうちにテュールの名前を口にしているんですね。
テュールの出自と家族
テュールがどんな家族の出身なのかは、ちょっと謎めいています。
テュールの出自について:
- 巨人ヒュミルの子ども
- 一説では、オーディン(北欧神話の最高神)の息子とされています
どちらの説が正しいのかははっきりしていませんが、間違いないのは、テュールがアース神族(アースガルズという神々の世界に住む神々のグループ)の重要なメンバーだということです。
テュールの見た目

テュールの外見について詳しく描写した古い文献はあまり残っていませんが、一つだけ特徴的なことがあります。
それは…右手がないということ。
テュールの最も象徴的な特徴は、片手しかないという点です。
これは、後で紹介する有名な神話「フェンリル捕縛作戦」の物語で、巨大な狼に手を食べられてしまったからなんです。
テュールは一般的に:
- 勇敢な戦士らしい強い体つき
- 片手で剣や槍を持って戦う姿
- 堂々とした態度と毅然とした表情
で表現されることが多いです。
片手を失ってもなお戦い続けるテュールの姿は、約束を守り、正義のために犠牲を払う勇気の象徴なんです。
テュールの力と役割
テュールは北欧神話の中で、独特な役割を持っていました。
テュールの主な役割と特徴:
- 勝利の神
- 戦いの神(軍神)
- 法と正義の神
かつては、武器にテュールの名を刻み、彼の名を2回唱えると勝利できるとされていた。
テュールの有名な物語
テュールの有名な神話を2つ紹介する。
フェンリル捕縛作戦

テュールに関する神話の中で、最も有名でドラマチックなのが「フェンリルを縛る話」です。
この物語は、テュールの勇気と自己犠牲を最も象徴するエピソードとして知られています。
フェンリルとは、トリックスターの神・ロキの子どもで、とてつもなく巨大な狼です。
神々の予言によると、このフェンリルは成長するにつれてとても強くなり、いずれ神々に危害を加えるとされていました。
神々はフェンリルが小さいうちに捕まえておこうと考え、特別な魔法の鎖「グレイプニル」を作りました。
しかし、フェンリルは疑り深く、「もしこの鎖が外せないなら、僕を騙したことになる。誰か一人、僕が鎖を切れないなら手を失うという保証をしてほしい」と言いました。
そのとき、勇敢なテュールだけが前に進み出て、自分の右手をフェンリルの口の中に差し入れました。
結果、鎖はフェンリルを縛ることに成功しましたが、怒ったフェンリルはテュールの右手をかみ切ってしまいました。
テュールは痛みに耐えながらも、神々と世界の安全のために自分の手を犠牲にしたのです。
ラグナロクでの最期
「ラグナロク」とは北欧神話における世界の終末の戦いのこと。
この最後の戦いで、テュールは「ガルム」という名の恐ろしい冥界の番犬と対決します。
激しい戦いの末、テュールとグルームは相打ちになります。
まとめ
最後にテュールについてまとめてみましょう。
- 名前: 「神」そのものを意味し、火曜日の語源になっている
- 出自: オーディンの息子という説もあれば、巨人の息子という説もある
- 特徴: 右手を失ったことが最大の特徴
- 役割: 勝利、戦い、法廷を守る精神の象徴
- 物語: フェンリルに右手を差し出した行為は、彼の地位や死に直結する
コメント