もしあなたの家の猫に、ある日突然翼が生えてきたら……どう思いますか?
実は19世紀から現在まで、世界中で「翼の生えた猫」の目撃報告が140件以上も寄せられているんです。
写真やビデオにも記録され、博物館に剥製が保存されているものまであります。おとぎ話のような存在に思えますが、実際に確認されている不思議な現象なんですね。
この記事では、天使のような翼を持つ謎の生物「翼ネコ」について、その姿や特徴、世界各地の伝承、そして科学的な正体まで、わかりやすくご紹介します。
概要

翼ネコは、肩や腰のあたりに翼のようなものが生えた猫のことです。
別名として「天使猫」(中国)や「空飛び猫」(日本)、「コウモリネコ」とも呼ばれています。
1800年代のイギリスを中心に世界各地で目撃されるようになり、現在まで続く不思議な現象として知られているんです。
目撃の記録
これまでに確認されている記録はこちらです。
- 目撃件数:130~140件以上
- 写真・ビデオ:20件以上
- 目撃地域:イギリス、アメリカ、カナダ、ロシア、中国、日本など世界各地
- 記録の時期:1800年代から現在まで
未確認動物(UMA)として扱われることもありますが、実際に捕獲されたり、剥製として保存されたりしている点が、他の未確認生物とは大きく異なります。
姿・見た目
翼ネコの見た目は、基本的には普通の猫と同じなんです。
ただし、背中や肩、腰のあたりに翼のようなものがついているのが最大の特徴になります。
基本的な外見
翼ネコの身体的特徴
- 体長:50cm~3m(通常は普通の猫と同じサイズ)
- 翼の長さ:10~30cm程度
- 翼の位置:肩の後ろ、または腰あたり
- 翼の色:体毛と同じ色の毛が生えている
- 翼の形状:個体によって様々(鳥の羽のようなもの、コウモリの翼のようなものなど)
サイズのバリエーション
記録に残っている翼ネコのサイズは、かなり幅があります。
最小のものは普通の猫サイズ(約50cm)ですが、最大のものでは体長3メートルという報告もあるんです。1905年にイギリスの天文雑誌『ザ・カンブリアン・ナショナル・オブザーバー』で紹介された個体は、黒い翼を持つ体長3メートルの巨大な生物だったとされています。
ただし、写真に残っている翼ネコのほとんどは、通常の猫ほどの大きさです。
翼の動き
興味深いことに、翼を自由に動かすことができる個体もいるという報告があります。
中には、猫が走るときに翼を上下にばたばたと動かすものや、翼を体の上に持ち上げることができるものもいたそうです。これは翼の中に筋肉組織が含まれている可能性を示唆しています。
特徴

翼ネコの最大の疑問は、「本当に空を飛べるのか?」ということですよね。
飛行能力について
結論から言うと、実際に空を飛んだという確実な記録はほとんどありません。
ほとんどの翼ネコは、普通の猫と同じように地上を歩いたり走ったりするだけです。
翼があっても、鳥のように羽ばたいて飛ぶことは基本的にできないんですね。
ただし、わずかながら飛行したという目撃例もあります。
飛行が報告された事例
- 1889年:イギリス・サマセット州で発見された個体が「鶏のように翼をばたばたさせて移動した」
- 1966年:カナダで15~20メートル上空を飛んで逃げる翼ネコが目撃された
- 1897年:イギリス・マトロックで射殺された個体は、翼を広げることで速く走ったとされる
性格と行動
翼ネコの性格は、基本的に普通の猫と変わりません。
人に危害を加えたという報告はほとんどなく、危険な生物ではないとされています。むしろ、人間に飼われている個体が多く、ペットとして普通の生活を送っていたケースがほとんどなんです。
翼の実用性
実は、猫にとって翼が生えるメリットはほぼないと考えられています。
飛べないのであれば、重くて邪魔なだけですよね。
そのため、「思いもよらず背中の骨や皮膚が盛り上がってしまった猫」というのが現実的な説明になります。
伝承

世界各地には、翼ネコにまつわる興味深い記録がたくさん残っています。
イギリスでの目撃例
翼ネコの記録が最も多いのがイギリスです。
1889年:最初の詳細な記録
アメリカの作家ヘンリー・デイビッド・ソローの記述に、1842年に目撃された翼ネコの詳しい記録があります。その猫は濃い茶灰色で、喉と足に白い斑点があり、冬になると毛が厚くなって翼のような形になったそうです。
持ち主が翼を保存していて、「膜のようなものは見当たらない」と記録されています。
1900年:見世物としての「トーマス・ベッシー」
ウエスト・ヨークシャーのリーズで発見された翼ネコは「トーマス・ベッシー」と名付けられ、見世物小屋などで公開されていました。この翼ネコは死んだ後も剥製にされて保管されているといいます。
1933年:オックスフォード動物園での展示
オックスフォード動物園の園長W・E・ゾーヤが捕らえた翼ネコが、タブロイド紙『ザ・デイリー・ミラー』で紹介されました。この白黒の猫は15cmほどの翼を持ち、長距離ジャンプに使っていたとされています。
日本での記録
日本でも翼ネコの記録が複数残っています。
1826年:駿河国での捕獲
駿河国有渡郡小鹿村(現在の静岡県)で、顔が猫で翼の生えた動物が捕獲されたという記録があります。これが日本最古の翼ネコの記録とされています。
1876年:東京での逃走事件
東京新宿の大宗寺で、イギリス人が翼ネコを見世物にしていたところ、帰り道に逃亡してしまったと『東京日日新聞』(現在の毎日新聞の源流)が報じました。明治時代の日本では「空飛び猫」と名付けられ、逃走して各地で暴れる様子が新聞に載り、大きな話題となったんです。
1884年:宮城県での捕獲
宮城県桃生郡馬鞍村(現在の石巻市)の山奥で、翼を広げて飛び回る黒猫が捕らえられたと『奥羽日日新聞』で報じられました。
中国での記録
中国では翼ネコを「天使猫」と呼び、縁起物として珍重されていました。
2008年:四川省の事例
中国四川省で飼われているオス猫に羽根が生えたというニュースが世界中で報じられました。この羽根は最初は背中にこぶのようなものとして現れた後に成長して、毛に覆われた翼のような形に変化したそうです。
興味深いことに、この猫は羽が生える直前に、発情した複数のメス猫に執拗に追い立てられていたという報告があります。
アメリカでの記録
1959年:所有権を巡る裁判
ウェストバージニア州パインズヴィル山中で、少年により翼を持ったペルシャ種に似た猫が発見されました。新聞が報じて全米で有名となった後、所有者を名乗る女性が現れ、所有権を巡って裁判沙汰にまで発展したんです。発見者はその猫を「トーマス」と名付けましたが、女性は自分の失踪した猫「ミッツィ」だと主張しました。
ロシアでの記録
2004年:クルスクでの悲劇
ロシア中央部のクルスクで、翼を持つ猫「ヴァスカ」が発見されました。しかし、迷信深い村人たちにより溺死させられてしまったと地元の新聞が報じています。悪魔の使いだと恐れられたのかもしれません。
ヨーロッパでの伝承
中世ヨーロッパでは、猫とコウモリはどちらも悪魔と結びつけられることがありました。
翼のある猫は「悪魔の使い」として恐れられた時期もあったんです。1667年には、アタナシウス・キルヒャーという学者の版画に、猫の頭とコウモリの翼を持つ悪魔的な生物が描かれています。
起源
では、翼ネコの翼は一体何なのでしょうか?
現代の科学では、翼ネコの正体について3つの主な原因が特定されています。
原因1:毛皮が固まったもの
最も一般的な原因は、毛が絡まって固まってしまうことです。
特に長毛種の猫で起こりやすい現象で、適切にグルーミング(毛づくろい)されないと、抜け毛が新しい毛に絡みついて大きな塊になってしまいます。この塊が肩や腰の部分にできると、猫が走るときに上下に動いて、まるで翼のように見えるんですね。
ただし、短毛種でも報告例があるため、毛玉だけではすべての翼ネコを説明できません。
原因2:猫皮膚無力症(ネコひふむりょくしょう)
猫皮膚無力症(Feline Cutaneous Asthenia)という遺伝性の皮膚病が、翼ネコを生み出す主な原因とされています。
病気のメカニズム
この病気はコラーゲンの欠陥によって起こります。
コラーゲンとは、皮膚細胞をつなぎとめる役割を持つタンパク質のことです。このコラーゲンが正常に働かないと、皮膚が異常に伸びたり、もろくなったりしてしまうんですね。
その結果、肩や腰のあたりの皮膚が垂れ下がって、翼のような形になることがあります。
特徴
猫皮膚無力症による翼の特徴はこちらです。
- 皮膚が異常に伸びて翼状になる
- 翼の中に筋肉繊維が含まれることがあり、動かすことができる
- 皮膚が非常にもろく、簡単に裂けてしまう
- 軽く触っただけでも皮膚が裂けることがある
獣医による実例
1970年に獣医のピーター・ピッチが、5歳のメスのブチ猫の手術を試みたところ、麻酔注射をしただけで近くの皮膚がはがれてしまったという記録があります。毛を剃ろうとするたびに皮膚がはがれ、最終的には何か所も縫合しなければならなかったそうです。
1974年には、コーネル大学の獣医科大学で4歳のオス猫が調査されました。その猫は非常に薄く柔らかい皮膚を持ち、血液サンプルを取るために前足の毛を刈り取っただけで皮膚が裂けてしまったんです。
この病気は人間にも存在し、エーラス・ダンロス症候群と呼ばれています。
原因3:副肢(ふくし)
3つ目の原因は、副肢という先天的な奇形です。
副肢とは、本来あるべき4本の足以外に、余分な肢(手足)が生えてしまう現象のこと。
人間でいう多指症(指が6本ある状態)に似た現象ですね。
この余分な肢が肩や背中の近くに生えると、毛に覆われた翼のように見えることがあります。これらの肢は機能しないか、ほとんど動かせないことが多いです。
遺伝的要因
興味深いことに、翼を形成するような劣性遺伝子は、シャム猫および関連種の猫に見られるという報告があります。
特定の品種に翼ネコが現れやすい可能性があるんですね。
神話との関連
科学的な説明とは別に、翼のある大型猫は古代から神話や伝説に登場しています。
古代の翼のある猫
- グリフォン:ライオンの体とワシの翼を持つ伝説の生物(ギリシャ神話)
- スフィンクス:ライオンの体と人間の顔を持ち、時に翼を持つ(エジプト神話)
- ラマッス:翼のあるライオンの体と人間の顔を持つ守護神(メソポタミア文明)
- 聖マルコのライオン:翼のあるライオンで、キリスト教の象徴
- アク・バルス:翼のある雪豹の伝説(トルコ・ブルガル系)
これらの神話的な存在が、翼ネコの目撃談に影響を与えた可能性もあります。古代から人々は、翼のある猫という存在に特別な意味を見出してきたんですね。
まとめ
翼ネコは、19世紀から現在まで世界中で目撃されている不思議な現象です。
重要なポイント
- 140件以上の目撃報告があり、写真やビデオにも記録されている
- 体長は50cm~3m、翼の長さは10~30cm程度
- イギリス、アメリカ、日本、中国、ロシアなど世界各地で目撃されている
- 実際に空を飛べる個体はほとんどいない
- 翼の正体は主に3つの原因がある
- 毛皮が固まったもの
- 猫皮膚無力症(コラーゲン欠陥による皮膚病)
- 副肢(先天的な奇形)
- 中国では「天使猫」、日本では「空飛び猫」と呼ばれる
- ヨーロッパでは悪魔の使いとして恐れられた時期もある
- 古代神話にも翼のある大型猫が多数登場する
おとぎ話のように思える翼ネコですが、実際に存在する医学的現象なんですね。
もしあなたの猫に翼のようなものが生えてきたら、それは珍しい遺伝子疾患のサインかもしれません。獣医さんに相談することをおすすめします。
翼があっても飛べない翼ネコ。でも、その不思議な姿は、今でも多くの人々を魅了し続けています。


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