私たちが毎日食べるごはん、着る服、住む家。
こうした「衣食住」は私たちの暮らしの基本です。
日本の神話では、こうした人々の暮らしの「食」を守り、豊かな恵みをもたらす女神として「トヨウケノオオカミ(豊受大神)」という存在が信仰されてきました。
伊勢神宮の外宮に祀られ、日本人の生活を古くから見守ってきたこの神様について、分かりやすく解説します。
トヨウケノオオカミの名前の意味

まずは「トヨウケノオオカミ(豊受大神)」という名前に込められた意味を紐解いてみましょう。
この名前は三つの要素から成り立っています:
- 「トヨ(豊)」:「豊か」という意味で、たくさんの恵みや潤沢さを表します。
- 「ウケ(受)」:古語で「食物」や「食べ物」を意味します。
- 「オオカミ(大神)」:「偉大な神様」を意味します。「オオ(大)」は「大きい」「偉大な」、「カミ(神)」は神様です。
これらを合わせると、トヨウケノオオカミは「豊かな食べ物の偉大な神様」という意味になります。
名前そのものに、「食の神様」「恵みをもたらす女神」としての性格が込められているのです。
トヨウケノオオカミの系譜と由来

トヨウケノオオカミの系譜(どのような神様からうまれたか)についても見ていきましょう。
系譜まとめ
伝承によれば、トヨウケノオオカミはワクムスビ(稚産霊神/わくむすびのかみ)の子とされています。
ワクムスビは、五穀や養蚕を司る神様です。
伊勢神宮との関係
トヨウケノオオカミは、高天原(たかまがはら:神々の住まう天上界)において、天照大神(あまてらすおおみかみ:太陽神であり、皇室の祖神)の食事を司る役割を担っていました。
現在、トヨウケノオオカミは伊勢神宮の外宮(げくう)に祀られています。
一方、天照大神は内宮(ないくう)に祀られています。
これはアマテラスが1人では寂しいのを理由に、トヨウケノオオカミを呼んだからです。
神格と特徴

トヨウケノオオカミには、2つの神格がある。
- 食物の神
- 穀物の神
どちらにせよ食べるものに関連した神格を持っているのが特徴。
トヨウケノオオカミに関する神話と伝承

トヨウケノオオカミに関する最も有名な神話は、「伊勢神宮・外宮への奉仕」にまつわるもので2つあります。
伊勢神宮外宮の社伝のあらすじ
- 天照大神は伊勢の地の内宮(ないくう)に祀られることになりました
- しかし、天照大神は自分1人の食事が寂しくなった
- そこで天上界から、トヨウケノオオカミが呼ばれました
- トヨウケノオオカミは外宮に鎮座し、天照大神に食事・恵みを献上する役割を担うことになりました
『丹後国風土記』の神話のあらすじ
- 天女8人が水浴び
- その内の1人の羽衣を老夫婦が隠す
- 1人だけ天に帰れなくなり、彼女は老夫婦のもとで暮らすことに
- 天女は万病に効く酒を造り老夫婦を裕福にした
- 金持ちになった老夫婦は天女を追い出した
- 天女は放浪の旅に出かけ、最終的に奈具村に居着いた
- 天女が死んだ後、彼女は奈具社の神として祀られた
この物語に登場する「奈具社の神」がトヨウケノオオカミだとされ、後に彼女は伊勢神宮で迎え入れられた。
トヨウケノオオカミを祀る神社とご利益

トヨウケノオオカミを祀る神社の中で、最も有名なのは三重県伊勢市にある伊勢神宮の外宮(正式名称:豊受大神宮)です。
主な神社
- 伊勢神宮 外宮(豊受大神宮/三重県)
- 奈具社(京都府)
- 籠神社(京都府)
ご利益
トヨウケノオオカミにお参りすると、以下のようなご利益があるとされています:
- 農産業守護
- (衣食住にまつわる)諸産業守護
- 開運招福
- 災難よけ
まとめ
トヨウケノオオカミについて様々な角度から見てきました
まとめポイント
- トヨウケノオオカミは、「豊かな食物の女神様」であり、名前自体に役割が込められています
- 系譜は、ワクムスビ神の子とされ、天照大神の食事係として高い地位を持ちます
- 神格は、食物と穀物
- 伊勢神宮外宮に祀られ、国家と人々の生活を支える女神として信仰されています
- ご利益は、農産業守護、(衣食住にまつわる)諸産業守護、開運招福、災難よけなど、暮らしの基盤に関わるものです
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