【大晦日にやってくる鬼の神様】トシドンとは?その正体・特徴・年もちの秘密をやさしく解説!

神話・歴史・伝承

大晦日の夜、もし「〇〇はおるかー!」という大きな声が聞こえてきたら、どうしますか?

鹿児島県の下甑島では、この声の主はトシドンという鬼の顔をした神様なんです。

悪いことをした子供を叱りに来るけれど、最後には「年もち」という特別なお餅をくれる不思議な存在。

この記事では、日本版サンタクロースとも言われる来訪神「トシドン」について詳しくご紹介します。

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トシドンってどんな存在なの?

うぃき野郎 – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=112319348による

トシドンは、毎年大晦日の夜にやってくる来訪神(年に一度、人間の世界を訪れる神様)です。

普段は天上界から子供たちの行動を見守っていて、年末になると首のない馬に乗って山から降りてきます。そして家々を回り、その年に悪さをした子供を叱り、良いことは褒めてくれるんです。最後に「年もち」という特別なお餅を渡して帰っていきます。

秋田県のナマハゲと似た存在で、鹿児島県薩摩川内市の下甑島に伝わるものが特に有名です。

起源

トシドンの正確な起源は分かっていませんが、江戸時代から続く伝統行事だといわれています。

「年殿」とも書き、もともとは年神様(新年を運んでくる神様)の一種と考えられています。
昔から子供の教育や農耕儀礼として大切にされてきました。

実は南九州には、トシドンのような仮面をかぶった来訪神がたくさんいるんです。

南九州の来訪神たち

  • トイノカンサマ(屋久島)
  • トシトイドン(種子島)
  • メンドン(指宿市)
  • 八朔メン(硫黄島)

これらの存在は、ポリネシアの島々の祭礼とも共通点があるといわれ、南方文化の影響を受けている可能性もあります。

姿・見た目

トシドンの姿は、まさに「鬼」そのものです。

子供たちが一目見て恐れるような、迫力満点の外見をしています。

トシドンの恐ろしい外見

  • 顔:鬼のような恐ろしい顔(長い鼻が特徴)
  • 口:耳元まで裂けている
  • 顔色:真っ赤
  • 服装:シュロの皮やソテツの葉で作った蓑(みの)
  • 全身:黒いマントをまとうこともある

現在の行事では、色を塗った段ボールの面を使い、地元産の植物で飾られた衣装を着ます。この衣装作りは秘密にされていて、写真撮影も禁止。行事が終わると、すべて燃やしてしまうんです。

特徴

トシドンには、他の妖怪や神様にはない特別な特徴があります。

まず最大の特徴は、子供の行いをすべて知っていることです。「いつも天から見ているぞ」と言って、その年の悪いことを具体的に指摘します。実は事前に親が教えているんですけどね。

トシドンの行動パターン

  1. 戸口を叩いて子供の名前を呼ぶ
  2. 悪いことを叱る(約15分間)
  3. 良いことは褒める
  4. 歌を歌わせたり、片足跳びをさせる
  5. 年もちを与える
  6. 来年も良い子でいることを約束させて去る

そして何より重要なのが「年もち」です。これを食べると一つ歳をとることができるという不思議なお餅で、もらわないと年をとれないと信じられています。現在のお年玉の原型ともいわれているんです。

伝承

下甑島では、トシドンは今も生きた伝統として続いています。

現代のトシドン行事

大晦日の夜、地元の青年や年配の人がトシドン役になります。

3~8歳くらいの子供がいる家を訪問し、その子が年内にした悪いことを叱ります。子供は恐怖におののきながら反省し、「もうしません」と約束。でも、トシドンは叱るだけじゃありません。勉強を頑張ったことなど、良いことはちゃんと褒めてくれるんです。

年もちの儀式

最後にトシドンは年もちを渡します。

面白いのは、子供を四つん這いにさせて、その背中にお餅を乗せ、親のところまで運ばせること。これは子供の成長を願う儀式の一部なんです。

昔、米は貴重品で生命の源と考えられていました。だから年もちは、子供の魂を健康に成長させる大切なものとされています。

通過儀礼としての意味

島の子供たちにとって、トシドンは避けて通れない通過儀礼です。

適齢期になると5年間、毎年トシドンがやってきます。幼い子供をしっかりとした少年・少女に成長させたいという、大人たちの願いが込められた行事なんですね。

まとめ

トシドンは、鹿児島県下甑島に伝わる大晦日の来訪神です。

トシドンの重要ポイント

  • 大晦日に首なし馬に乗ってやってくる
  • 鬼の顔で子供を叱るが、最後は褒める
  • 年もちをもらわないと歳をとれない
  • お年玉の原型となった伝統
  • 子供の成長を願う通過儀礼

西洋のサンタクロースが良い子にプレゼントをくれるのに対し、トシドンは悪い子を叱ってから年もちをくれます。厳しくも優しい、日本らしい神様といえるでしょう。もし下甑島を訪れる機会があれば、この不思議な伝統に触れてみるのも面白いかもしれませんね。

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