「トラトラトラ」って聞いたことありますか?
映画のタイトルにもなっているこの言葉、実は第二次世界大戦の歴史を変えた重要な暗号なんです。
でも、その本当の意味を知っている人は意外と少ないかもしれません。
トラトラトラの意味
結論から言うと、「トラトラトラ」は「ワレ奇襲ニ成功セリ」という意味の日本軍の暗号です。
1941年12月7日(現地時間)、真珠湾攻撃を指揮した淵田美津雄中佐が、ハワイ上空から母艦「赤城」に向けて発信したものなんですね。
ただし注意したいのは、これは「攻撃が成功した」という意味ではないということ。
正確には「奇襲攻撃を開始できる状態である」ことを伝える暗号でした。
敵の防御が効力を発揮する前に攻撃できると判断した時に使われる、作戦開始の合図だったんです。
この暗号が生まれた背景
真珠湾攻撃の計画が進められていた1941年11月、日本海軍の第一航空艦隊は北海道の単冠湾に集結していました。
ここで作戦説明が行われた際、通信計画を担当していた小野寛治郎通信参謀が「トラトラトラ」という暗号を作ったとされています。
なぜ「トラ」だったのか?
実は「突撃雷撃」の頭文字を取った略語という説があります。
「突撃」の「ト」、「雷撃」の「ラ」を組み合わせたというわけです。
当時の日本軍では、さまざまな作戦に暗号が使われていました。
例えば「ニイタカヤマノボレ一二〇八」は「12月8日午前零時をもって対米英開戦」を意味する暗号でした。
「ト」連送(トトトト…)は「全員突撃せよ」の意味でした。
こうした暗号の中で、「トラトラトラ」は奇襲成功を伝える重要な役割を担っていたんですね。
運命の12月7日
1941年12月7日の朝(現地時間)、淵田中佐率いる攻撃隊は空母6隻から発進し、ハワイ・オアフ島に接近しました。
午前7時52分、真珠湾上空に到達した淵田中佐は、眼下に広がる静かな湾を確認します。
アメリカ軍の戦闘機は一機も飛んでいない。
防空態勢も取られていない。
完全な奇襲が成功した——。
その瞬間、淵田中佐はモールス信号で「トラトラトラ」を発信しました。
この電文は旗艦「赤城」だけでなく、3500海里(約6500km)も離れた広島の柱島に停泊していた連合艦隊旗艦「長門」でも受信されていたといいます。
淵田中佐は後に、作戦説明で「トラトラトラ」という暗号を知った時、自分が寅年生まれだったこともあり、これは縁起がいいと感じたと語っています。
「千里往くトラ、千里を帰る」——そんな連想も働いたそうです。
よくある誤解
「トラトラトラ」については、いくつか誤解されやすいポイントがあります。
誤解1:動物の「虎」を意味する暗号
日本語の「トラ」は確かに動物の虎を意味しますが、この暗号はそれとは関係ありません。
たまたま同音だったため、後から様々な俗説が生まれただけなんです。
アメリカ側では「Tiger Tiger Tiger」と訳され、「タイガーのように襲いかかる」という解釈もされていました。
でも実際には、軍事的な符号として決められた略語だったんですね。
誤解2:攻撃の成功を伝える暗号
「トラトラトラ」は攻撃が成功したことを伝えるものではなく、奇襲攻撃が可能な状態であることを示す暗号でした。
実際、第二次攻撃隊の友永丈市大尉は、最初の攻撃が不十分だったことを伝えるために「カワ・カワ・カワ」という別の暗号を打電しています。
もし攻撃成功を伝えるなら、この暗号は必要なかったはずです。
また、作戦中止の場合は「トネガワクダレ」という暗号が用意されていました。
誤解3:暗号はアメリカに筒抜けだった?
戦後、日本軍の暗号はアメリカ側にほとんど解読されていたという説が広まりました。
確かにアメリカ軍は暗号解読に力を入れており、「エニグマ」を元にした日本の暗号機「九七式」を解読する「パープル」という機械を開発していました。
ただし、真珠湾攻撃を事前に知っていたかどうかは議論が分かれています。
アメリカ側は公式には否定しており、真相は今も完全には明らかになっていません。
映画『トラ・トラ・トラ!』
1970年、この暗号をタイトルにした日米合作映画『トラ・トラ・トラ!』が公開されました。
この映画は、真珠湾攻撃を日米両方の視点から描いた作品です。
アメリカ側をリチャード・フライシャー監督が、日本側を舛田利雄監督と深作欣二監督が担当しました。
当時としては珍しい試みでしたが、史実に基づいた描写と迫力ある戦闘シーンで高く評価され、アカデミー視覚効果賞を受賞しています。
1994年のアリゾナ記念館での調査では、アメリカ人の真珠湾攻撃に関する知識の最も一般的な情報源がこの映画だったことが分かっています。
歴史に残る一言
「トラトラトラ」——わずか9文字の暗号が、太平洋戦争の始まりを告げました。
この暗号が発信された瞬間、アメリカは第二次世界大戦に参戦することになり、世界の歴史は大きく動き出したんです。
真珠湾攻撃では2400人以上のアメリカ人が犠牲になり、多数の戦艦が沈没または大破しました。
現在、真珠湾には戦艦アリゾナの上に建てられた記念館があり、年間180万人が訪れています。
沈んだアリゾナからは今も1日2クォート(約1.9リットル)の油が浮き上がり、「アリゾナの涙」と呼ばれているそうです。
参考情報
この記事の作成にあたり、以下の情報源を参照しました。
Web資料
- Wikipedia「トラトラトラ」 – 基本情報と歴史的背景
- Wikipedia「トラ・トラ・トラ!」 – 映画に関する情報
- Weblio辞書「トラトラトラ」 – 暗号の詳細な説明
- レファレンス協同データベース – 日本軍の暗号に関する資料
- JBpress – 真珠湾奇襲を描いた名作の意味深な場面 – 真珠湾攻撃の背景
- カー・アンド・ドライバー – 暗号「トラトラトラ」の真意 – モールス信号の解説
- Wikipedia “Tora! Tora! Tora!” (English) – 英語圏での解釈
- Association for Asian Studies – Teaching tool about Pearl Harbor – 映画の教育的価値
さらに深く知りたい方へ
- ゴードン・ウィリアム・プランゲ著『At Dawn We Slept – the Untold Story of Pearl Harbor』(1981年) – 真珠湾攻撃の詳細な研究書
- 淵田美津雄の著書 – 実際に暗号を発信した当事者の回想
まとめ
「トラトラトラ」とは:
- 1941年12月7日、真珠湾攻撃時に使われた日本軍の暗号
- 意味は「ワレ奇襲ニ成功セリ」(奇襲攻撃が可能な状態)
- 淵田美津雄中佐が発信した歴史的な暗号
- 「突撃雷撃」の略という説が有力
- 動物の「虎」とは直接関係ない
- 1970年の映画タイトルにもなった
この暗号が発信された瞬間、太平洋戦争が始まり、世界の歴史が大きく動き出しました。
わずか9文字の暗号に込められた重みを、今も私たちは忘れてはいけないのかもしれませんね。


コメント