もしもあなたが美しい女性に出会って、その人が袖をまくり上げた瞬間、腕一面にびっしりと目玉が並んでいたら…想像しただけでゾッとしませんか?
それこそが今回ご紹介する妖怪「百々目鬼(どどめき)」なんです。
この記事では、美しさと恐ろしさを併せ持つ百々目鬼について詳しくご紹介していきます。
概要

百々目鬼(どどめき)は、鳥山石燕の『今昔画図続百鬼』に登場する妖怪です。
この妖怪の最大の特徴は、一見すると美しい女性なのに、腕には無数の目玉があるという衝撃的なギャップ。
石燕が江戸時代に創作した妖怪で、昔のお金「鳥目(ちょうもく)」と深い関係があるんです。
百々目鬼の基本情報
- 出典: 鳥山石燕『今昔画図続百鬼』
- 読み方: どどめき(一般的)、とどめき、どうめき
- 姿: 美しい女性の妖怪
- 特徴: 腕に無数の目玉がある
- 由来: お金を盗んでいた女性への戒め
創作妖怪としての特徴
興味深いことに、百々目鬼は石燕が創作した妖怪である可能性が高いんです:
- 同時代の他の文献には登場しない
- 石燕以前の目撃談や伝承が確認されていない
- 言葉遊びや洒落から生まれた可能性
それでは、そんな百々目鬼の印象的な見た目について詳しく見ていきましょう。
姿・見た目
百々目鬼の最大の特徴は、その美しさと恐ろしさの対比です。
基本的な姿
- 顔: とても美しい女性
- 体格: 普通の人間と同じ
- 服装: 江戸時代の一般的な女性の着物
- 手: 生まれつき長めで器用
腕の恐ろしい秘密
百々目鬼の一番の特徴は、やはり腕にびっしりと並んだ目玉です:
目玉の特徴
- 数: 百個以上とも言われる無数の目
- 配置: 腕全体に規則正しく並んでいる
- 由来: 盗んだお金「鳥目」が変化したもの
- 動き: それぞれが独立してまばたきする
隠された正体
普段は美しい女性として生活しているため、正体がばれることはめったにありません:
隠し方
- 長い袖で腕を覆っている
- 手袋や腕輪で目立たないようにする
- 人前では袖をまくらない
正体発覚のタイミング
- わざと腕を見せつけて人を驚かせる時
- 着替えや入浴の際に偶然見られる
- 自ら正体を明かして相手を威嚇する時
百々目鬼の見た目の秘密が分かったところで、次はその行動や特徴について見ていきます。
特徴
百々目鬼には、その出生と深く関わる特徴的な行動パターンがあります。
主な行動と性格
1. 盗みの天才
百々目鬼の元となった女性は、非常に手先が器用な泥棒でした:
- 「手長」と呼ばれる熟練の泥棒
- 他人のお金を巧妙にすり取る技術
- 生まれつき手が長く、盗みに適した体つき
2. 人を驚かせる行為
妖怪になった後の主な行動:
- 突然腕を見せて相手をびっくりさせる
- 予想外のタイミングで正体を明かす
- 恐怖で相手を混乱させることを楽しむ
鳥目(お金)との深い関係
百々目鬼を理解するには、「鳥目」について知ることが重要です:
鳥目とは
- 昔のお金の呼び名
- 真ん中に四角い穴が開いている銅銭
- 穴が鳥の目に似ていることから命名
- 現代の硬貨とは全く違う形
お金から目玉への変化
- 盗みを重ねる: 女性が他人のお金を盗み続ける
- 体にくっつく: 盗んだ鳥目が腕に張り付いてしまう
- 目玉に変化: 鳥目の穴が本当の鳥の目になってしまう
- 妖怪化: 人間ではない恐ろしい存在になる
これらの特徴を理解したところで、次は具体的な伝承について見ていきましょう。
伝承
百々目鬼には、江戸時代から現代まで語り継がれる興味深い物語があります。
鳥山石燕による原典
『函関外史』の記録
石燕の解説によると、百々目鬼の物語は以下の通りです:
あらすじ
- 器用な女性: 生まれつき手が長く、とても器用な女性がいた
- 盗みの常習: この女性は人のお金を盗むことを繰り返していた
- 突然の変化: ある日突然、腕に百個の鳥の目が現れた
- 鳥目の精: これは盗んだ「鳥目」の精の仕業だった
- 妖怪の誕生: この女性が「百々目鬼」と呼ばれるようになった
創作妖怪としての側面
現代の研究では、百々目鬼には創作的な要素が多いことが分かっています:
石燕の言葉遊び
- 「鳥目」と「目玉」の関連: 銭の穴と鳥の目の類似性
- 地名との関連: 各地の「百目」「百々目」という地名から着想
- 洒落の要素: 「おあし」(お金)から「足が付く」という洒落
『函関外史』の謎
- この書物の実在は確認されていない
- 石燕が創作した可能性が高い
- 「奇書」という表現が遊び心を示している
まとめ
百々目鬼は、見た目の衝撃だけでなく深い意味を持った妖怪なんです。
百々目鬼の重要なポイント
外見的特徴
- 美しい女性の姿をした妖怪
- 腕に無数の目玉がびっしりと並んでいる
- 普段は袖で隠しているが、時々見せて人を驚かせる
- 盗んだ「鳥目」が目玉に変化したもの
文化的意義
- 江戸時代の鳥山石燕による創作妖怪
- 昔のお金「鳥目」との巧妙な関連付け
- 現代まで語り継がれる道徳的メッセージ
- 日本の妖怪文化の代表例
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