ティタンとは?ギリシャ神話の巨神族12柱を徹底解説

神話・歴史・文化

ゼウスよりも前に世界を支配していた神々がいた——そう聞いたら、ちょっと気になりませんか?

ギリシャ神話の世界では、オリュンポスの神々が登場する前に「ティタン神族」と呼ばれる巨大な神々が君臨していました。
彼らは天と地から生まれた最初の神々であり、後に自分たちの子孫であるゼウスたちに王座を奪われることになります。

この記事では、ティタン神族とは何者なのか、12柱の神々それぞれの特徴、そしてゼウスとの壮絶な戦い「ティタノマキア」について解説します。


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ティタン神族とは

ティタン(古代ギリシャ語: Τιτάν)は、ギリシャ神話に登場する古い世代の神々です。
日本では「ティターン」「タイタン」とも表記されます。

彼らは天空神ウラノスと大地母神ガイアの子どもたちで、男神6柱・女神6柱の計12柱で構成されています。
オリュンポスの神々が台頭する前の時代、ティタン神族は宇宙を支配する存在でした。

興味深いのは、「ティタン」という名前の由来です。
古代ギリシャの詩人ヘシオドスは『神統記』の中で、ウラノスが子どもたちを「ティタン」と呼んだ理由を説明しています。
「緊張させる(titaino)」と「復讐(tisis)」という言葉から来ているというのです。

つまり「恐ろしいことをした者たち」という意味が込められているわけですね。
何をしたかというと——父ウラノスを去勢して王座を奪ったんです。


ティタン神族の誕生と権力掌握

世界の始まり

ギリシャ神話の世界創造は、混沌(カオス)から始まります。
そこから大地の女神ガイアが生まれ、ガイアは天空神ウラノスを生み出しました。

ガイアとウラノスの間には、12柱のティタン神族、3柱のキュクロプス(一つ目の巨人)、3柱のヘカトンケイル(百の腕を持つ巨人)が誕生します。

父ウラノスの暴虐

ところが、ウラノスは自分の子どもたちを嫌いました。
特にキュクロプスとヘカトンケイルの異形の姿を恐れ、彼らを大地の奥深く(タルタロス)に閉じ込めてしまいます。

これに激怒したのがガイアでした。
彼女はアダマントの鎌を作り、息子たちに復讐を呼びかけます。

クロノスの反逆

しかし、父に立ち向かう勇気を持つ者はなかなかいませんでした。
唯一手を挙げたのが、末っ子のクロノスです。

ガイアはクロノスを待ち伏せに配置し、ウラノスがガイアのもとを訪れた夜、クロノスは鎌で父の男性器を切り落としました。
こうしてウラノスの支配は終わり、クロノスがティタン神族の長として世界を治めることになったのです。


12柱のティタン神族

ティタン神族は、男神6柱と女神6柱で構成されています。
彼らの多くは兄弟姉妹同士で結婚し、次の世代の神々を生み出しました。

男神6柱

オケアノス(Oceanus)

世界を取り囲む大洋を司る神で、ティタン神族の長男とされています。
妻テテュスとの間に3000人の娘(オケアニデス)と3000人の息子(河川の神々)をもうけたと伝えられています。

オケアノスはティタノマキアでは中立を保ち、ゼウス側にも加勢しませんでした。
そのため戦後もタルタロスに落とされることなく、世界の外縁を流れる大河としての地位を守り続けています。

コイオス(Coeus)

知性や探究心を司る神とされ、「問いかける者」という意味を持つ名前です。
姉妹のポイベと結婚し、女神レトやアステリアの父となりました。

レトは後にゼウスとの間にアポロンとアルテミスを生むことになるので、コイオスはオリュンポスの主要な神々の祖父にあたります。

クレイオス(Crius)

星々や星座を司る神とされています。
あまり神話に登場しませんが、彼の子孫には風の神々(アネモイ)や勝利の女神ニケがいます。

ヒュペリオン(Hyperion)

「高みを行く者」という名前を持つ、光と観察を司る神です。
姉妹のテイアと結婚し、太陽神ヘリオス、月の女神セレネ、曙の女神エオスの父となりました。

ヒュペリオンは後世の文学作品では、太陽神ヘリオスと同一視されることもあります。

イアペトス(Iapetus)

死や武器を司る神とされ、人類の祖先とも言われています。
彼の息子たちであるプロメテウス、エピメテウス、アトラス、メノイティオスはギリシャ神話の重要な存在です。

特にプロメテウスは人間に火を与えた神として有名ですね。

クロノス(Cronus)

農耕の神であり、ティタン神族の末弟にして王となった存在です。
父ウラノスを倒して世界の支配権を握りましたが、自らも「子どもに王座を奪われる」という予言を受けることになります。

この予言を恐れたクロノスは、妻レアとの間に生まれた子どもたちを次々と飲み込むという暴挙に出ました。
しかし、末っ子のゼウスだけは密かに隠され、成長後にクロノスを倒すことになるのです。

女神6柱

テイア(Theia)

「輝き」を意味する名前を持つ、光と視覚を司る女神です。
兄弟のヒュペリオンと結婚し、太陽・月・曙という天体の神々を生みました。

古代ギリシャでは、金や銀、宝石が輝くのはテイアの力だと信じられていたそうです。

レア(Rhea)

大地母神的な性格を持つ女神で、「流れ」を意味する名前を持っています。
クロノスの妻として、ヘスティア、デメテル、ヘラ、ハデス、ポセイドン、ゼウスを生みました。

つまり、オリュンポスの主要な神々の母親ですね。
子どもたちがクロノスに飲み込まれる中、末子ゼウスだけはクレタ島に隠して守り抜きました。

テミス(Themis)

法と掟、正義を司る女神です。
「定め」を意味する名前の通り、神々の間の秩序を守る役割を担っていました。

テミスはティタノマキアでゼウス側についた数少ないティタンの一人で、戦後もオリュンポスで地位を保ち続けます。
ゼウスの2番目の妻となり、ホーラ三女神(季節)やモイラ三女神(運命)の母となりました。

ムネモシュネ(Mnemosyne)

「記憶」を意味する名前を持つ、記憶と追憶の女神です。
ゼウスとの間に9柱のムーサ(芸術の女神たち)を生みました。

ムーサたちは文学、音楽、舞踏、天文学などを司り、現代英語の「music(音楽)」や「museum(博物館)」の語源にもなっています。

ポイベ(Phoebe)

「輝く者」「光明」を意味する名前を持つ、予言を司る女神です。
兄弟のコイオスと結婚し、女神レトとアステリアの母となりました。

彼女の名前は孫娘のアルテミスにも引き継がれ、アルテミスは「ポイベ」という別名で呼ばれることがあります。

テテュス(Tethys)

海や川の水源を司る女神で、オケアノスの妻です。
3000人のオケアニデス(海のニンフたち)と、世界中の河川の神々の母とされています。

後世ではテティスという海のニンフ(アキレウスの母)と混同されることもありますが、別の存在です。


ティタノマキア——神々の戦争

戦争の発端

クロノスは父ウラノスから「お前も子どもに王座を奪われる」と予言されていました。
この運命を避けるため、彼は妻レアとの間に生まれた子どもたちを片っ端から飲み込んでいきます。

しかしレアは、6人目の子どもであるゼウスだけは守ろうと決意しました。
彼女はゼウスをクレタ島のイデ山の洞窟に隠し、代わりに石を布でくるんでクロノスに渡したのです。

クロノスはそれをゼウスだと思い込んで飲み込み、ゼウスは無事に成長することができました。

戦いの経過

成長したゼウスは、まず兄姉たちを救い出します。
クロノスに特殊な薬を飲ませ、吐き出させたのです。

解放されたのは、ハデス、ポセイドン、ヘラ、デメテル、ヘスティア。
さらにゼウスは、タルタロスに閉じ込められていたキュクロプスとヘカトンケイルも解放しました。

感謝したキュクロプスたちは、ゼウスに雷霆(らいてい)、ポセイドンに三叉の矛、ハデスに姿を消すことができる兜を贈りました。

こうして始まったのがティタノマキア——ティタン神族とオリュンポスの神々の戦争です。
ティタン側はオトリュス山を、オリュンポス側はオリュンポス山を拠点に、10年にわたる激闘を繰り広げました。

戦争の結末

戦いは長期化しましたが、最終的にはゼウス側が勝利します。
ヘカトンケイルが300本の腕で巨岩を投げつけ、ゼウスが雷霆を放ち、ティタン神族を圧倒したのです。

敗れたティタンの多くはタルタロスの奥深くに封じ込められ、ヘカトンケイルがその番人となりました。
アトラスには特別な罰として、永遠に天空を支え続ける役目が与えられています。

ただし、すべてのティタンが罰せられたわけではありません。
オケアノスやテミス、プロメテウスなど、ゼウス側についた者や中立を保った者は、その後も自由に活動を続けました。


ティタンの子孫たち

12柱のティタン神族だけでなく、彼らの子孫も広い意味で「ティタン」と呼ばれることがあります。
特に有名な存在を紹介しましょう。

プロメテウス(Prometheus)

イアペトスの息子で、「先に考える者」という意味の名前を持っています。
ティタノマキアではゼウス側について戦いましたが、後に人間に火を与えたことでゼウスの怒りを買いました。

罰として、コーカサス山に鎖で繋がれ、毎日鷲に肝臓を食べられるという永遠の苦痛を受けることになります。
肝臓は夜になると再生するため、この責め苦は終わることがないのです。

アトラス(Atlas)

こちらもイアペトスの息子で、プロメテウスの兄弟です。
ティタノマキアでクロノス側の指揮官を務めたため、敗戦後に天空を永遠に支え続ける罰を受けました。

彼の名前は「アトラス山脈」や「大西洋(Atlantic Ocean)」の語源となっています。
また、地図帳を「アトラス」と呼ぶのも、彼が天球を支える姿が地図帳の表紙によく使われたことに由来します。

ヘリオス(Helios)

ヒュペリオンとテイアの息子で、太陽神です。
毎日、黄金の戦車で東から西へと天空を駆け抜けると信じられていました。

後世ではアポロンと同一視されることもありますが、本来は別の神様です。


「ティタン」が残した言葉たち

ティタン神族は神話の中だけの存在ではありません。
彼らの名前は現代の言葉にも深く影響を与えています。

タイタニック(titanic)

「巨大な」「圧倒的な」という意味の英語です。
あの有名な豪華客船「タイタニック号」も、この言葉から名付けられました。

沈まない船として建造されたタイタニック号ですが、1912年に氷山と衝突して沈没。
「titanic」が持つ「巨大だが倒れうる」というニュアンスを、皮肉にも体現してしまったわけです。

チタン(titanium)

軽くて強い金属元素「チタン」も、ティタン神族から名付けられました。
1795年にドイツの化学者クラプロートが命名したもので、「大地の息子たち」であるティタンの強さにちなんでいます。

航空機の部品から医療用インプラント、スポーツ用品まで幅広く使われている素材ですね。

タイタン(土星の衛星)

土星最大の衛星「タイタン」も、もちろんティタン神族に由来しています。
1655年にオランダの天文学者ホイヘンスが発見し、後にこの名前がつけられました。

土星のギリシャ名が「クロノス」なので、クロノスの周りを回る衛星にティタンの名をつけるのは理にかなっていますね。


ティタン12柱一覧表

名前読み方性別司るもの配偶者主な子孫
オケアノスOceanus男神大洋テテュスオケアニデス(海のニンフ3000人)、河川の神々
コイオスCoeus男神知性・探究ポイベレト、アステリア
クレイオスCrius男神星々エウリュビアアストライオス、パラス、ペルセス
ヒュペリオンHyperion男神光・観察テイアヘリオス、セレネ、エオス
イアペトスIapetus男神死・武器クリュメネ/アシアプロメテウス、エピメテウス、アトラス、メノイティオス
クロノスCronus男神農耕・時レアゼウス、ポセイドン、ハデス、ヘラ、デメテル、ヘスティア
テイアTheia女神輝き・視覚ヒュペリオンヘリオス、セレネ、エオス
レアRhea女神大地母神クロノスゼウス、ポセイドン、ハデス、ヘラ、デメテル、ヘスティア
テミスThemis女神法・掟・正義ゼウスホーラ三女神、モイラ三女神
ムネモシュネMnemosyne女神記憶ゼウスムーサ9柱(芸術の女神)
ポイベPhoebe女神光明・予言コイオスレト、アステリア
テテュスTethys女神海・川の水源オケアノスオケアニデス、河川の神々

まとめ

  • ティタン神族は、ウラノスとガイアから生まれた古代の神々で、男神6柱・女神6柱の計12柱
  • 末弟クロノスが父ウラノスを倒して世界を支配したが、息子ゼウスに王座を奪われた
  • ティタノマキアは10年間続いた神々の戦争で、オリュンポス側が勝利
  • 敗れたティタンの多くはタルタロスに封じ込められた
  • 「タイタニック」「チタン」など、現代の言葉にもティタンの名が残っている

ゼウスたちオリュンポスの神々が華々しく活躍する前に、世界を治めていた古の神々——それがティタン神族です。
彼らの物語は、権力の移り変わりと世代間の争いという普遍的なテーマを伝えてくれますね。

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