「自分」って何だろう?
時間はどこに消えていくのか?
この世界は本当に存在しているのか?
夜中、ふと考え出すと止まらなくなる——そんな経験、ありませんか?
それはまさに「哲学の問い」に足を踏み入れた瞬間なんです。
この記事では、古代ギリシャから現代まで、人類を悩ませ続けてきた哲学の問いを一覧で紹介します。答えがないからこそ面白い。頭がグルグルする感覚を、ぜひ楽しんでください。
哲学の問いとは?

哲学の問いには、大きな特徴があります。
「正解がない」ということです。
数学なら答えが出ます。科学なら実験で検証できます。でも哲学は違う。「正義とは何か?」「幸せとは何か?」と問われても、万人が納得する答えは存在しません。
だからこそ、2400年以上も前からソクラテスやプラトンが考え、現代の私たちもまだ同じ問いに向き合っているわけですね。
哲学の問いは、大きく分けると以下のジャンルに分類できます。
- 存在・自己の問い:私とは何か?なぜ世界は存在するのか?
- 倫理・道徳の問い:何が正しいのか?善悪の基準は?
- 認識・知識の問い:私たちは何を知ることができるのか?
- 意識・心の問い:意識とは何か?心はどこにある?
- 自由意志の問い:人間に自由意志はあるのか?
- 人生・幸福の問い:生きる意味とは?幸福とは?
それぞれのジャンルから、特に面白い問いをピックアップして紹介していきます。
存在・自己の問い
テセウスの船——「変わり続ける私」は同じ私?
古代ギリシャの英雄テセウスが乗っていた船。長い年月の間に、腐った木材が一本ずつ新しい木材に交換されていきました。やがて、すべての部品が新品に入れ替わった。
さて、この船は「テセウスの船」と呼べるでしょうか?
面白いのは、この問いが私たち自身にも当てはまることです。人間の細胞は約7年ですべて入れ替わると言われています。10年前のあなたと今のあなたは、物質的には完全に別人。それでも「同じ自分」だと言えるのはなぜでしょう?
スワンプマン——完璧なコピーは「本人」か?
ある男が雷に打たれて死亡した瞬間、偶然の化学反応で、その男と原子レベルまで完全に同一の存在が沼から生まれたとします。記憶も性格も、何もかも同じ。
この「沼男(スワンプマン)」は、死んだ男と同一人物でしょうか?
友人や家族には区別がつきません。沼男自身も「自分は本物だ」と確信している。でも、元の男が持っていた「経験」は、沼男にはない。彼の記憶は「本物の記憶」なのか、それとも「記憶のコピー」なのか——考えれば考えるほど、頭がこんがらがってきます。
倫理・道徳の問い
トロッコ問題——5人を救うために1人を犠牲にできる?
暴走するトロッコが5人の作業員に向かって走っています。あなたの目の前にはレバーがあり、引けばトロッコは別の線路に逸れる。ただし、その先には1人の作業員がいます。
レバーを引きますか?
多くの人は「5人を救うために1人を犠牲にするのは仕方ない」と答えます。では、こんなパターンはどうでしょう。橋の上から太った男を突き落とせば、その体でトロッコを止められる。結果は同じ「1人の犠牲で5人を救う」なのに、こちらには抵抗を感じる人が多いんです。
「何が」違いを生んでいるのか。これが倫理学の面白さであり、難しさでもあります。
ギュゲスの指輪——誰も見ていなくても正しく振る舞える?
古代ギリシャの羊飼いギュゲスは、透明になれる指輪を手に入れました。誰にも見られない力を得た彼は、やがて王宮に忍び込み、王を殺して権力を奪ってしまいます。
もしあなたが透明になれたら、どうしますか?
バレなければ何をしてもいいのか。それとも、見られていなくても道徳は守るべきなのか。この問いは「道徳の根拠は何か」という深い問題につながっています。
認識・知識の問い
水槽の脳——あなたが見ている世界は本物?
あなたの脳が実は培養液に浮かんでいて、コンピュータから電気信号を送られているだけだとしたら?今見えている景色、触っている感覚、すべてが「作られた幻」だとしたら、それを否定する方法はあるでしょうか?
映画『マトリックス』の元ネタとも言われるこの思考実験。実は完全に否定することは不可能なんです。私たちが「現実」と呼んでいるものの正体を、改めて考えさせられます。
世界5分前仮説——宇宙は5分前に始まった?
この世界が5分前に、偽の記憶も含めてすべて作られたとしたら?あなたの「昨日の記憶」は本当に昨日起きたことの記憶でしょうか。それとも、5分前に植え付けられた偽物でしょうか。
バカバカしく聞こえるかもしれません。でも、この仮説を論理的に否定する方法は存在しないんです。
意識・心の問い
中国語の部屋——AIは「理解」しているのか?
英語しか話せない人が部屋に閉じ込められています。部屋には中国語で書かれたメモが差し入れられ、マニュアルに従って返答を書けば、外の人は「この人は中国語がわかる」と思う。でも、本人は一文字も理解していません。
これは、AIが「意味を理解している」とは限らないことを示す有名な思考実験です。ChatGPTが流暢に会話しても、それは「理解」なのか、それとも「高度なパターンマッチング」なのか。AI時代の今、ますます重要な問いになっています。
メアリーの部屋——知識と経験は同じ?
メアリーは白黒の部屋で生まれ育ち、一度も色を見たことがありません。しかし彼女は、色に関するあらゆる科学的知識を持っています。光の波長、網膜の反応、脳の処理——すべてを完璧に理解している。
彼女が初めて部屋を出て「赤」を見たとき、何か新しいことを知るでしょうか?
もし「何か新しいことを知る」なら、科学的知識だけでは捉えられない「何か」が存在することになります。それは「クオリア(主観的体験)」と呼ばれ、意識の謎に深く関わっています。
自由意志の問い
ラプラスの悪魔——未来は決まっている?
もし宇宙のすべての原子の位置と運動を完璧に把握できる存在がいたら、未来は完全に予測できるのではないか?これがフランスの数学者ラプラスが提唱した思考実験です。
物理法則に従って原子が動く。脳も原子でできている。だとすれば、あなたの「決断」も、ビッグバンの瞬間からすでに決まっていたのでは?
量子力学の発展で「完璧な予測は不可能」とわかりましたが、「自由意志は本当にあるのか」という問いは今も続いています。
ビュリダンのロバ——選択できないと死ぬ?
1匹のロバの前に、全く同じ量の干し草が2つ、全く同じ距離に置かれています。どちらを選ぶ理由もない。結果、ロバは決断できずに餓死してしまう——という寓話です。
「そんなバカな」と思うかもしれません。でも、完璧に合理的な判断をしようとすると、同じ選択肢を選ぶ理由がなくなることがある。「なんとなく」や「直感」で選ぶことの価値を、逆説的に教えてくれる問いです。
人生・幸福の問い
シーシュポスの岩——意味のない人生を肯定できる?
ギリシャ神話のシーシュポスは、永遠に岩を山頂まで転がし続ける罰を受けています。岩は頂上に着くと転がり落ち、また最初からやり直し。終わりのない、無意味な労働。
哲学者カミュは言います。「シーシュポスは幸福だと想像しなければならない」と。
意味がなくても、それでも生きる。その姿勢こそが人間の尊厳だという主張です。「人生に意味はあるのか」という問いへの、ひとつの答え方ですね。
経験機械——幸福の「感覚」だけで満足?
最高に幸せな人生を疑似体験できる機械があるとします。接続すれば、恋愛も成功もすべて「本当に経験している」と感じられる。機械の中にいることは忘れてしまう。
あなたは接続しますか?
多くの人は「いや、それは本当の幸せじゃない」と感じます。でも、なぜでしょう?感覚としては同じ幸福なのに。私たちが求めている「幸福」とは、単なる快楽ではない何かなのかもしれません。
哲学の問い一覧表

本文で紹介しきれなかった問いも含めて、ジャンル別に一覧表でまとめました。
存在・自己に関する問い
| 問い | 概要 |
|---|---|
| テセウスの船 | 部品をすべて交換した船は同じ船か? |
| スワンプマン | 完全なコピーは本人と同一か? |
| なぜ何もないのではなく、何かがあるのか? | 存在そのものの根本を問う形而上学の究極問題 |
| 私とは何か? | 自己同一性の根拠を問う |
| 分離脳の問題 | 脳を分割したら「私」は2人になるのか? |
| 瞬間移動のパラドックス | 転送後の人間は「本人」か? |
| 砂山のパラドックス | 砂を一粒ずつ取っていくと、いつ「山」でなくなるか? |
倫理・道徳に関する問い
| 問い | 概要 |
|---|---|
| トロッコ問題 | 5人を救うために1人を犠牲にすべきか? |
| 臓器くじ | 1人を殺して5人に臓器を移植するのは正しいか? |
| ギュゲスの指輪 | 誰も見ていなくても道徳を守るべきか? |
| カルネアデスの板 | 生き残るために他人を犠牲にすることは許されるか? |
| 功利の怪物 | 1人の幸福が全人類の幸福より大きければ、その1人を優先すべきか? |
| バイオリニストの問題 | 他者の生存のために自分の自由を犠牲にする義務はあるか? |
| 囚人のジレンマ | 協力と裏切り、どちらが合理的か? |
| 善悪の基準は普遍的か? | 文化によって善悪は変わるのか? |
認識・知識に関する問い
| 問い | 概要 |
|---|---|
| 水槽の脳 | 私たちが見ている現実は本物か? |
| 世界5分前仮説 | 世界が5分前に作られたことを否定できるか? |
| プラトンの洞窟 | 私たちは影を現実と勘違いしているのでは? |
| 帰納法の問題 | 過去の経験から未来を予測できる根拠は? |
| モリニュー問題 | 生まれつき目が見えない人が視力を得たら、形を見分けられるか? |
| 不可知論 | 神や真理は人間に認識できるのか? |
| ゲティア問題 | 「正当化された真なる信念」は本当に知識か? |
意識・心に関する問い
| 問い | 概要 |
|---|---|
| 中国語の部屋 | AIは言葉を「理解」しているのか? |
| メアリーの部屋 | 科学的知識だけでは捉えられない「何か」はあるか? |
| クオリア問題 | 他人が見ている「赤」と自分の「赤」は同じか? |
| 他我問題 | 他人に意識があることを証明できるか? |
| 哲学的ゾンビ | 意識がないのに人間と同じ行動をする存在は可能か? |
| 心身問題 | 心と体はどのように関係しているか? |
| カブトムシの箱 | 他人と同じ言葉を使っていても、同じものを指しているか? |
| 無限のサル定理 | 偶然から意味は生まれるか? |
自由意志に関する問い
| 問い | 概要 |
|---|---|
| ラプラスの悪魔 | 未来は物理法則で完全に決まっているか? |
| ビュリダンのロバ | 合理的すぎると決断できなくなる? |
| 決定論と自由意志 | 自由意志と因果法則は両立するか? |
| 道徳的責任の根拠 | 自由意志がなければ責任を問えるか? |
人生・幸福に関する問い
| 問い | 概要 |
|---|---|
| シーシュポスの岩 | 無意味な人生にも価値はあるか? |
| 経験機械 | 幸福の「感覚」だけで十分か? |
| 人生の意味 | 人生に客観的な意味はあるのか? |
| 幸福とは何か | 快楽か、達成か、それとも別の何かか? |
| 死の悪さ | 死は当人にとって悪いことか? |
| 反出生主義 | 生まれてくることは良いことか? |
その他の問い
| 問い | 概要 |
|---|---|
| 神は存在するか? | 宗教哲学の根本問題 |
| 悪の問題 | 全能で善なる神がいるなら、なぜ悪が存在するのか? |
| 時間とは何か? | 時間は実在するか、それとも人間の認識に過ぎないか? |
| 美とは何か? | 美的価値は客観的か主観的か? |
| 言語と思考の関係 | 言葉がなければ思考できないのか? |
| 科学と宗教の関係 | 両者は対立するのか、共存できるのか? |
まとめ
哲学の問いについて、ジャンル別に紹介してきました。
- 哲学の問いには「正解」がない
- 存在、倫理、認識、意識、自由意志、人生——多様なジャンルがある
- 古代から現代まで、同じ問いが問われ続けている
- 答えを出すことより、考えるプロセス自体に意味がある
哲学の問いに触れると、日常が少し違って見えてきます。当たり前だと思っていたことが、実は全然当たり前じゃなかった——そんな発見があるかもしれません。
今夜、眠れなくなっても責任は取れませんが、ぜひいろいろな問いと向き合ってみてください。


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