「人生って何のためにあるんだろう?」「正しいことって何だろう?」
こんな疑問、一度は頭をよぎったことがありませんか?実はこういった問いに、何千年も前から真剣に向き合ってきた人たちがいます。それが哲学者たちです。
哲学と聞くと「難しそう」「自分には関係ない」と思うかもしれません。でも実は、私たちの日常的な判断や価値観の多くは、どこかの哲学的な考え方に根ざしているんですね。
この記事では、古代ギリシャから現代まで、世界中で生まれてきた哲学の考え方を一覧で紹介します。「へぇ、そんな考え方もあるんだ」という発見があるはずですよ。
哲学の「考え方」とは?

哲学の考え方とは、世界や人生をどう捉えるかという「ものの見方」のことです。
例えば「人間は理性で真実にたどり着ける」と考える人もいれば、「いやいや、経験からしか学べないでしょ」と考える人もいます。どちらが正解というわけではなく、それぞれに理由があるんですね。
哲学の考え方は大きく分けると、「知識とは何か」を考える認識論、「正しさとは何か」を考える倫理学、「存在とは何か」を考える形而上学、そして「どう生きるべきか」を考える人生哲学などに分類できます。
知識に関する哲学
合理主義(ラショナリズム)
「真実は、頭で考えればわかる」
合理主義は、人間の理性を信頼する考え方です。経験しなくても、論理的に考えれば真実に到達できると主張しました。
代表的な哲学者はデカルト。「我思う、ゆえに我あり」という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。すべてを疑ってみても、「疑っている自分」の存在だけは疑えない。ここから確実な知識を積み上げていこう、というわけです。
数学や幾何学のように、論理だけで真実を導き出せる分野では、この考え方が特に力を発揮します。
経験主義(エンピリシズム)
「知識は経験から生まれる」
合理主義とは反対に、経験主義は「人間の知識はすべて経験から得られる」と考えます。
ジョン・ロックは、人間の心は生まれたとき「白紙(タブラ・ラサ)」の状態だと主張しました。そこに経験が書き込まれることで、初めて知識が形成されるというわけです。
科学的な実験や観察を重視する現代の考え方は、この経験主義の流れを受け継いでいます。
懐疑主義(スケプティシズム)
「本当に確かなことなんて、あるの?」
懐疑主義は、知識の確実性そのものを疑う立場です。私たちが「知っている」と思っていることは、本当に正しいのか?感覚や理性は、どこまで信用できるのか?
古代ギリシャのピュロンに始まり、近代ではデイヴィッド・ヒュームが有名です。ヒュームは因果関係すら「習慣的な期待に過ぎない」と主張して、当時の思想界に衝撃を与えました。
倫理・道徳に関する哲学

功利主義(ユーティリタリアニズム)
「最大多数の最大幸福を目指せ」
功利主義は、行動の正しさを「結果」で判断します。より多くの人に幸福をもたらす行為が、より正しい行為だという考え方ですね。
18世紀にジェレミー・ベンサムが提唱し、ジョン・スチュアート・ミルが発展させました。ベンサムは快楽を数値化できると考え、ミルは「快楽には質的な違いがある」と主張しました。知的な喜びは本能的な快楽より価値が高い、というわけです。
現代の政策決定でも「費用対効果」という形で、功利主義的な考え方は生き続けています。
義務論(デオントロジー)
「結果に関係なく、守るべきルールがある」
義務論は、行為そのものの正しさを重視します。結果が良くても、嘘をつくことは許されない。そういう考え方です。
カントの「定言命法」が有名ですね。「自分の行動原理が普遍的な法則になっても問題ないか」を基準にせよ、というものです。例えば、嘘をついてもいいというルールが全員に適用されたら、社会は成り立たなくなりますよね。だから嘘はダメ。
功利主義が「結果よければすべてよし」なら、義務論は「やり方が大事」というスタンスです。
徳倫理学
「どんな人になりたいか、が大事」
徳倫理学は、行為そのものよりも「人格」を重視します。勇気、節制、正義、思慮深さといった「徳」を身につけた人間になることが、良い人生につながるという発想です。
アリストテレスがその代表格。彼は「中庸」を重視しました。勇気は無謀と臆病の中間にある。どんな徳も、極端に走ることなくバランスを保つことが大切なんですね。
存在・人生に関する哲学
実存主義
「人生の意味は自分で作るもの」
実存主義は、20世紀に大きな影響を与えた思想です。「実存は本質に先立つ」というサルトルの言葉が核心を表しています。
人間は生まれたときに「こう生きるべき」という設計図を持っていない。だからこそ、自分の選択で人生を作り上げていく自由がある。同時に、その選択には責任が伴う。
自由って実は重いんですね。キルケゴール、ニーチェ、ハイデガー、サルトル、ボーヴォワールなど、多くの思想家がこのテーマと格闘しました。
虚無主義(ニヒリズム)
「人生に意味なんてない」
虚無主義は、客観的な意味や価値の存在を否定します。ニーチェの「神は死んだ」という言葉が象徴的ですね。
宗教的な価値観が揺らいだ近代、人々は「じゃあ何を信じればいいの?」という問題に直面しました。虚無主義はその問題を突きつけますが、ニーチェ自身は虚無主義を乗り越えて「超人」を目指すべきだと考えていました。
「全部無意味だからどうでもいい」という投げやりな態度は、実は虚無主義の誤解なんです。
不条理主義(アブサーディズム)
「意味を求める人間と、意味のない世界。このギャップが人生だ」
アルベール・カミュが提唱した考え方です。人間は意味を求めてやまない。でも世界にはもともと意味がない。この矛盾こそが「不条理」であり、それを受け入れることで逆に自由になれるとカミュは主張しました。
カミュは「シーシュポスの神話」で、永遠に岩を山頂まで転がし続ける刑罰を受けた男を例に挙げます。それでも「シーシュポスは幸福であると想像しなければならない」と。不条理を直視しながら、それでも生きていくこと。それがカミュの答えでした。
古代ギリシャ・ローマの哲学
ストア主義(ストイシズム)
「自分でコントロールできることに集中せよ」
ストア主義は、今また注目を集めている古代の哲学です。マルクス・アウレリウス、セネカ、エピクテトスといったローマの哲学者たちが有名ですね。
核心は「コントロールできるものとできないものを区別する」こと。天気は変えられない。他人の行動も変えられない。でも自分の反応は変えられる。だから自分の心に集中しよう、というわけです。
シリコンバレーの起業家やプロスポーツ選手にも実践者が多いのは、不確実な状況でも平静を保つ知恵として有効だからでしょう。
エピクロス主義(快楽主義)
「静かな心の平安こそ、最高の快楽」
エピクロス主義というと「享楽的」なイメージがあるかもしれませんが、実際は真逆です。エピクロスが追求したのは、豪華な食事やぜいたくではなく、心の平穏(アタラクシア)でした。
欲望を追い求めると、かえって苦しみが増える。シンプルな生活で、友人と哲学を語り合う。それが最も幸福な人生だとエピクロスは考えました。
「足るを知る」という東洋的な知恵とも通じるところがありますね。
シニシズム(犬儒学派)
「社会のルールなんて、くだらない」
ディオゲネスに代表されるシニシズムは、社会的な慣習や物質的な豊かさを徹底的に否定しました。ディオゲネスは樽の中で暮らし、アレクサンダー大王に「日光を遮るな」と言い放ったという逸話が有名です。
自然に従って生きること、自給自足であること。社会が求める「成功」を追い求めない勇気。現代の「ミニマリズム」にも通じる精神かもしれません。
形而上学・世界観に関する哲学
観念論(アイデアリズム)
「世界は心や精神が作り出している」
観念論は、物質的な世界よりも精神や意識を根本的なものと考えます。プラトンの「イデア論」がその源流ですね。私たちが見ている世界は、完全な「イデア」の影に過ぎないという考え方です。
ヘーゲルやカントもこの系譜に連なります。「私たちが認識できるのは、あくまで私たちの心を通して構成された世界であって、世界そのものではない」というのがカントの立場でした。
唯物論(マテリアリズム)
「存在するのは物質だけ。心も脳の働きに過ぎない」
唯物論は、観念論とは反対に、物質こそが唯一の実在だと考えます。心や意識も、突き詰めれば脳という物質の活動に還元できるという立場ですね。
マルクスの唯物史観もこの流れを汲んでいます。人間の思想や文化は、経済的な土台によって規定される。精神よりも物質が先にある、というわけです。
実践・行動に関する哲学
プラグマティズム(実用主義)
「使えるかどうか。それが真理の基準だ」
プラグマティズムは19世紀アメリカで生まれた思想です。「それは本当か?」と問う代わりに「それは役に立つか?」と問う。真理は抽象的なものではなく、実践の中で検証されるものだと考えました。
ウィリアム・ジェイムズやジョン・デューイが代表的な思想家です。教育や民主主義の実践にも大きな影響を与えました。
東洋の哲学
儒教
「人として正しく生きる道を学べ」
孔子を始祖とする儒教は、東アジアの文化に深く根付いています。仁(思いやり)、義(正義)、礼(礼節)、智(知恵)、信(信頼)という「五常」が基本的な徳目です。
家族を大切にすること、目上の人を敬うこと、学び続けること。こうした儒教的な価値観は、日本人の行動様式にも影響を与えています。
道教(タオイズム)
「自然に逆らわず、流れに身を任せよ」
老子を開祖とする道教は、「無為自然」を説きます。人為的な努力よりも、自然の流れに従うことを重視するんですね。
「道(タオ)」とは、言葉で説明できない宇宙の根本原理のこと。それと調和して生きることが、最も賢い生き方だと道教は教えます。「柔よく剛を制す」という言葉も、道教的な発想から来ています。
仏教
「苦しみから解放される道がある」
仏教の出発点は「人生は苦である」という認識です。しかしその苦しみには原因があり、原因を取り除けば苦しみから解放される。その方法が「八正道」などの実践です。
執着を手放すこと、今この瞬間に意識を向けること。仏教の教えは、現代のマインドフルネスとしても再評価されています。
哲学の考え方一覧表
| 名称 | 読み方 | 核心 | 代表的な思想家 |
|---|---|---|---|
| 合理主義 | ごうりしゅぎ | 理性で真実に到達できる | デカルト、スピノザ、ライプニッツ |
| 経験主義 | けいけんしゅぎ | 知識は経験から得られる | ロック、ヒューム、バークリー |
| 懐疑主義 | かいぎしゅぎ | 確実な知識は存在しない | ピュロン、ヒューム |
| 功利主義 | こうりしゅぎ | 最大多数の最大幸福を追求 | ベンサム、J.S.ミル |
| 義務論 | ぎむろん | 結果に関わらず守るべき義務がある | カント |
| 徳倫理学 | とくりんりがく | 人格・徳を磨くことが大切 | アリストテレス |
| 実存主義 | じつぞんしゅぎ | 人生の意味は自分で作る | キルケゴール、サルトル、ボーヴォワール |
| 虚無主義 | きょむしゅぎ | 客観的な意味や価値は存在しない | ニーチェ |
| 不条理主義 | ふじょうりしゅぎ | 意味を求める人間と無意味な世界の矛盾 | カミュ |
| ストア主義 | すといしゅぎ | 自分でコントロールできることに集中 | セネカ、エピクテトス、マルクス・アウレリウス |
| エピクロス主義 | えぴくろすしゅぎ | 心の平静こそ最高の快楽 | エピクロス |
| シニシズム | しにしずむ | 社会的慣習を否定し自然に生きる | ディオゲネス |
| 観念論 | かんねんろん | 精神・意識が世界の根本 | プラトン、ヘーゲル、カント |
| 唯物論 | ゆいぶつろん | 物質が唯一の実在 | マルクス、エピクロス |
| 二元論 | にげんろん | 心と物質は別の実体 | デカルト |
| プラグマティズム | ぷらぐまてぃずむ | 真理は実践で検証される | ジェイムズ、デューイ |
| 構造主義 | こうぞうしゅぎ | 人間の行動は社会構造に規定される | レヴィ=ストロース |
| 現象学 | げんしょうがく | 意識に現れる現象をありのままに記述 | フッサール |
| 儒教 | じゅきょう | 仁義礼智信の徳を修める | 孔子、孟子 |
| 道教 | どうきょう | 自然に従い無為を貴ぶ | 老子、荘子 |
まとめ
この記事では、哲学の主要な考え方を一覧で紹介しました。ポイントを振り返ってみましょう。
- 哲学は「知識」「道徳」「存在」「人生」など、さまざまなテーマについて深く考える学問
- 合理主義と経験主義、功利主義と義務論のように、対立する考え方が存在する
- ストア主義やエピクロス主義など、古代の知恵が現代でも役立つ
- 東洋哲学は西洋とは異なる視点で人生を捉えている
どの哲学が「正解」というわけではありません。大切なのは、いろいろな考え方を知った上で、自分なりの生き方を見つけていくことではないでしょうか。
この記事が、哲学への第一歩になれば幸いです。


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