【エジプト最初の女神】テフヌトとは?獅子頭の湿気の女神の姿と神話をやさしく解説!

神話・歴史・伝承

水滴のように降り注ぐ朝露、霧に包まれた幻想的な朝の風景…これらの湿った空気は、古代エジプトでは女神の息吹だと考えられていました。

エジプト神話の中でも特に古い起源を持つ女神テフヌトは、創造神話において最初に生まれた女性神として、エジプトの宇宙観の根幹を支える重要な存在なんです。

この記事では、湿気と水分を司る獅子頭の女神テフヌトについて、その神秘的な姿や特徴、興味深い神話をわかりやすくご紹介します。

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概要

テフヌトは、古代エジプト神話において湿気と水分を司る女神です。

ヘリオポリス九柱神(エネアド)という、エジプト創世神話の中心となる9柱の神々の一人として数えられています。創造神アトゥムから生まれた最初の男女神のうちの女性側で、つまりエジプト神話における最初の女神という特別な立場にあるんですね。

双子の兄であり夫でもあるシューが乾いた空気を司るのに対し、テフヌトは湿った空気を担当。二人で一組となって、世界の大気バランスを保っているとされました。

系譜

テフヌトの家系図は、エジプト神話の根幹そのものなんです。

テフヌトの家族関係

  • :創造神アトゥム(またはラー・アトゥム)
  • 配偶者:大気の神シュー(双子の兄弟)
  • 子供:大地の神ゲブ、天空の女神ヌト
  • :オシリス、イシス、セト、ネフティス、(時にホルス)

面白いのは、テフヌトの誕生方法です。アトゥムが自慰行為をして生み出したとも、くしゃみや唾から生まれたとも言われています。ちょっと変わった誕生話ですが、これは「無から有を生み出す」という創造の神秘を表現しているんですね。

姿・見た目

テフヌトの姿は、雌ライオンの頭を持つ女性として描かれることが多いんです。

テフヌトの外見的特徴

  • 頭部:雌ライオンの頭、または人間の頭
  • :ウラエウス(聖蛇)と太陽円盤を載せた冠
  • :人間の女性の体
  • 動物形態:完全な雌ライオンの姿になることも

ライオンの姿は、エジプトでは強さと守護の象徴でした。特に雌ライオンは子供を守る母性的な強さを表すと同時に、怒らせると恐ろしい破壊力を持つ存在として恐れられていたんです。

アマルナ時代(紀元前14世紀頃)には、頭に植物が芽吹く低い冠をかぶった人間の姿で描かれることもありました。これは生命を育む湿気の恵みを表現していたのかもしれません。

特徴

テフヌトには、水と湿気の女神ならではの特別な力があります。

テフヌトの主な能力と役割

  • 湿気の創造:雨や朝露、霧などの水分を生み出す
  • 植物の成長促進:湿った空気で植物を育てる
  • 太陽神の眼(ラーの眼):太陽神の力の一部として機能
  • ウラエウスへの変身:怒ると炎を吐く聖蛇に変身
  • 世界の安定維持:夫シューと共に天地を支える

性格の特徴

テフヌトは激情的で気まぐれな性格の持ち主でした。

普段は夫のシューと仲睦まじく世界を支えているのですが、一度怒ると手がつけられません。家出してヌビア砂漠まで逃げてしまい、獰猛な雌ライオンとなって暴れ回ったという伝承もあるくらいです。

しかし同時に、生命を育む母なる存在でもありました。彼女の涙は香り高い植物に変わり、その湿った息吹は砂漠に恵みの雨をもたらしたとされています。

伝承

テフヌトにまつわる神話で最も有名なのが「さまよえるラーの眼」の物語です。

ラーの眼の家出事件

ある日、テフヌトは父である太陽神ラーのもとを離れ、雌ライオンの姿でヌビア砂漠へ逃げ出してしまいました。太陽神の眼として重要な役割を持つ彼女がいなくなったことで、世界は大混乱に。

困ったラーは、知恵の神トトと、後に夫となるシューを派遣します。トトは巧みな話術と魔法でテフヌトを説得し、なんとかエジプトへ連れ戻すことに成功しました。

ウラエウスの起源

連れ戻されたテフヌトでしたが、新たな問題が発生します。

なんと、ラーが彼女の不在中に新しい眼を作ってしまっていたんです。自分の居場所がなくなったことに激怒したテフヌトは、炎を吐く蛇に変身して大暴れ。

困り果てたラーは、彼女を自分の額につけることにしました。これがファラオの額飾り「ウラエウス」の起源だとされています。王権の象徴として有名なあの蛇の飾りは、実はテフヌトの怒りの姿だったんですね。

天地創造の助力

別の神話では、テフヌトは夫シューと共に天地分離の大仕事を成し遂げます。

彼らの子供であるゲブ(大地)とヌト(天空)が抱き合って離れなかったため、シューが二人の間に入ってヌトを高く持ち上げました。テフヌトはこの大事業を助け、その際に流した汗や涙が雨となって大地を潤したとされています。

出典・起源

テフヌト信仰の起源は、エジプト最古の宗教都市の一つヘリオポリスにあります。

信仰の中心地

  • ヘリオポリス:テフヌト信仰発祥の地、九柱神の聖地
  • レオントポリス:ライオン神信仰の中心地
  • カルナック神殿:ファラオの健康祈願で崇拝

歴史的記録

テフヌトに関する最古の記録は、ピラミッド・テキスト(紀元前24-22世紀)に見られます。そこでは彼女が「純粋な水を生み出す女神」として描かれています。

名前の由来は諸説ありますが、古代エジプト語の「テフ(吐く)」という音から来ているという説が有力です。アトゥムが吐き出した唾から生まれたという神話と結びついているんですね。

他の女神との習合

時代が下ると、テフヌトは他の女神と同一視されるようになりました。

  • バステト:猫の女神(同じくライオン系の姿)
  • セクメト:戦いと疫病の女神(獅子頭の女神)
  • ハトホル:愛と美の女神(ラーの眼としての役割)

ローマ支配時代には、ギリシャ神話の月の女神アルテミスと同一視されることもありました。

まとめ

テフヌトは、エジプト創世神話の根幹を成す最初の女性神です。

重要なポイント

  • エジプト神話最初の女神として誕生
  • 湿気と水分を司り、生命を育む存在
  • 雌ライオンの頭を持つ強く美しい姿
  • ラーの眼として太陽神の力の一部を担う
  • ウラエウス(王権の象徴)の起源となった
  • 激情的だが母性的な二面性を持つ

朝露に濡れた草花、霧に包まれた幻想的な朝の風景…これらはすべて、太古の女神テフヌトの恵みだったのかもしれませんね。

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