クトゥルフ神話TRPGをプレイしていると、「テケリ・リ!テケリ・リ!」という不気味な言葉を目にすることがありませんか?
この奇妙な響きを持つ言葉は、神話生物ショゴスの鳴き声として知られています。
でも、「そもそもテケリ・リって何語なの?」「どういう意味があるの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
実はこの言葉、クトゥルフ神話が生まれるよりもずっと前、別の作家の小説から借用されたものなんです。
この記事では、テケリ・リの意味や起源、そしてショゴスとの関係について詳しく解説していきます。
テケリ・リとは?基本情報

テケリ・リ(Tekeli-li) は、クトゥルフ神話に登場する神話生物「ショゴス」が発する独特の鳴き声です。
笛の音にも風の唸りにも聞こえるような、人間には理解できない不気味な響きを持っています。
テケリ・リの基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 表記 | Tekeli-li(英語) / テケリ・リ(日本語) |
| 発声者 | ショゴス(主な発声者) |
| 初出作品 | エドガー・アラン・ポー『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』(1838年) |
| クトゥルフ神話での初登場 | H.P.ラヴクラフト『狂気の山脈にて』(1936年) |
テケリ・リの元ネタはエドガー・アラン・ポー
テケリ・リという言葉は、実はラヴクラフトのオリジナルではありません。
エドガー・アラン・ポーが1838年に発表した冒険小説『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語(The Narrative of Arthur Gordon Pym of Nantucket)』が元ネタとなっています。
ポーの小説での登場シーン
この小説は、若者アーサー・ゴードン・ピムが船に密航し、南極へと向かう冒険物語です。
物語の終盤、ピムたちは南極付近の島「ツァラル島」にたどり着きます。
ここで奇妙な現象が起きました。
島の原住民たちは、白い色のものを極端に恐れていたのです。
白い布切れを見せると、彼らは恐怖に震えながら「テケリ・リ!」と叫び声を上げました。
さらに物語のクライマックスでは、巨大な白い鳥たちが「テケリ・リ!テケリ・リ!」と鳴きながら飛び去っていく場面が描かれています。
ポーの小説では、この言葉の具体的な意味は明かされていません。
謎めいた恐怖の象徴として使われているんです。
ラヴクラフトがクトゥルフ神話に取り入れた経緯
ラヴクラフトはポーの作品を深く愛読していました。
1936年に発表した代表作『狂気の山脈にて(At the Mountains of Madness)』で、このテケリ・リをショゴスの鳴き声として採用したのです。
『狂気の山脈にて』でのテケリ・リ
物語の舞台は、ポーの小説と同じ南極大陸。
ミスカトニック大学の探検隊が、太古の都市遺跡を発見するところから物語は展開します。
主人公のダイアー教授とダンフォースが地下迷宮を探索していると、突如として不気味な音が聞こえてきます。
「テケリ・リ!テケリ・リ!」
その声の主は、漆黒の玉虫色に光る巨大な不定形生物——ショゴスでした。
ラヴクラフトの巧みな仕掛け
面白いのは、ラヴクラフトが作中で「ポーは実際にこの声を聞いて小説に書いたのではないか」と仄めかしていることです。
作中でダイアー教授は、ポーが「禁断の資料を用いて執筆したのではないか」と推測しています。
つまり、ポーのフィクションが実は真実だったという設定を匂わせているんですね。
これはラヴクラフトがよく使う手法で、現実とフィクションの境界を曖昧にすることで恐怖感を増幅させています。
テケリ・リを発するショゴスとは?

テケリ・リを理解するには、それを発するショゴスについて知る必要があります。
ショゴスの基本情報
ショゴスは、太古の地球に飛来した宇宙生物「古のもの(Elder Things)」によって創造された人工生命体です。
外見の特徴
- 漆黒の玉虫色に光る粘液状の体
- 表面に無数の目が浮かんでいる
- 不定形で、必要に応じて自在に形態を変えられる
- タールでできたアメーバのような外見
- 大きさは約4〜5メートル(中には地下鉄車両ほどの個体も)
ショゴスの歴史
ショゴスは当初、知能を持たない奴隷として都市建設などの労働に使役されていました。
しかし、長い年月をかけて徐々に知性を発達させていきます。
そして約2億5千万年前、ついに創造主である古のものに対して反乱を起こしたのです。
反乱は何度も鎮圧されましたが、古のものたちはショゴスに労働力を依存していたため、完全に滅ぼすことはできませんでした。
現在も南極の地下や深海に生き残りが潜んでいるとされています。
なぜショゴスはテケリ・リと鳴くのか?
ショゴスがテケリ・リと鳴く理由には、神話的な設定があります。
古のものの言葉を真似たもの
ショゴスは元々、発声器官を持っていませんでした。
しかし、主人である古のものの言葉を聞き続けるうちに、その発声を真似て声帯器官を発達させたのです。
つまりテケリ・リは、古のものが使っていた言語の一部なんですね。
人間には意味がわからない
古のものの会話も、人間の耳には「テケリ・リ」としか聞こえません。
知性を持ったショゴスは、実際には意味のある言葉を話している可能性があります。
でも人間には、ただ不気味な鳴き声にしか聞こえないのです。
これがテケリ・リの恐ろしさでもあります。
何か意味があるのかもしれないけれど、人間には決して理解できない——そんな宇宙的恐怖(コズミック・ホラー) が込められているんです。
他の作品でのテケリ・リ
テケリ・リは、ラヴクラフト以降の作家たちにも引き継がれています。
ダーレスによる拡張
オーガスト・ダーレスは『ハスターの帰還』という作品で、旧支配者のひとりハスターがテケリ・リと叫ぶシーンを描きました。
これにより、テケリ・リはショゴスだけでなく、より広い神話生物の共通要素となっていきました。
クトゥルフ神話TRPGでの扱い
クトゥルフ神話TRPGでは、テケリ・リはショゴス遭遇時の重要な演出要素として使われています。
暗闘の中から「テケリ・リ!テケリ・リ!」という声が聞こえてきたら、それはショゴスが近づいている証拠。
プレイヤーキャラクターにとっては、逃走を考えるべき合図なのです。
テケリ・リにまつわる謎
テケリ・リには、今なお解明されていない謎がいくつかあります。
具体的な意味は不明
ポーの小説でもラヴクラフトの作品でも、テケリ・リの具体的な意味は一度も明かされていません。
- 単なる鳴き声なのか?
- 何かの警告なのか?
- 古のものの言語で意味のある言葉なのか?
これらは読者の想像に委ねられています。
なぜ「白」を恐れるのか
ポーの小説では、テケリ・リは白い色への恐怖と結びついていました。
一方、ラヴクラフトの作品ではその設定は引き継がれていません。
この不一致も、神話ファンの間で議論されるポイントのひとつです。
現代文化への影響
テケリ・リは、クトゥルフ神話ファンの間でアイコニックなフレーズとなっています。
ネット文化での浸透
SNSやネット掲示板では、クトゥルフ神話ネタとして「テケリ・リ」が使われることがあります。
特にクトゥルフ神話TRPGのセッションでは、ショゴス登場時のお約束フレーズとして親しまれています。
日本での人気
日本では、TRPGシナリオ「居酒屋テケリリ」のようにタイトルに使われることもあります。
また、漫画『栞と紙魚子』(諸星大二郎)に登場する「クトルーちゃん」がテケリ・リと叫ぶシーンも有名です。
まとめ
テケリ・リは、クトゥルフ神話においてショゴスの象徴的な鳴き声として知られています。
テケリ・リのポイント
- 元ネタはエドガー・アラン・ポーの小説(1838年)
- ラヴクラフトが『狂気の山脈にて』(1936年)でショゴスの鳴き声として採用
- 古のものの言語を真似たものとされる
- 具体的な意味は今なお不明
人間には理解できない、異質な存在の声。
それがテケリ・リの本質なのかもしれません。
ショゴスに遭遇してこの声を聞いたら、即座に逃げ出すことをお勧めします。
あの声の正体を確かめようとした者で、正気を保てた人間はほとんどいないのですから。
テケリ・リ!テケリ・リ!



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