インド神話に登場する女神タパティは、太陽神スーリヤの娘として知られる美しい女神です。彼女は月の王朝のサムヴァラナ王と結婚し、インド最大の叙事詩『マハーバーラタ』に登場するクル王朝の始祖・クル王を生んだ重要な存在なんです。
この記事では、タパティの名前の意味、家族関係、サムヴァラナ王との出会いの物語、そしてタピー川との関係まで、詳しく解説します。
タパティの基本情報
タパティは、インド神話において太陽神スーリヤと影の女神チャーヤーの間に生まれた女神です。
名前の意味
タパティ(Tapati、サンスクリット語:तपती)という名前は「熱する者」「灼熱の者」を意味します。
サンスクリット語の動詞語根「tap(熱する、燃やす)」に由来し、太陽の熱を象徴する名前なんですね。
家族関係
父母:
- 父:スーリヤ(太陽神)
- 母:チャーヤー(影の女神)
兄弟姉妹:
- 兄:ヤマ(死神)※異母兄
- 兄:シャニ(土星神)
- 姉:ヤミー/ヤムナー(ヤムナー川の女神)※異母姉
スーリヤには複数の妻がおり、最初の妻サンジュニャーとの間にヤマとヤムナーが生まれました。サンジュニャーは太陽の強烈な光に耐えられず、自分の影であるチャーヤーを身代わりに残して去ってしまいます。スーリヤはチャーヤーをサンジュニャーだと思い込み、その間にシャニとタパティが生まれたのです。
夫と子:
- 夫:サムヴァラナ王(月の王朝の王)
- 子:クル王(クル王朝の始祖)
クル王は『マハーバーラタ』に登場するパーンダヴァ兄弟とカウラヴァ兄弟の共通の祖先です。つまりタパティは、インド最大の叙事詩の登場人物たちの先祖なんですね。
サムヴァラナ王との出会いと結婚
タパティとサムヴァラナ王の恋物語は、『マハーバーラタ』のアディ・パルヴァ(第1巻)第160-163章に詳しく描かれています。
森での出会い
ある日、月の王朝の王サムヴァラナは狩りに出かけました。森の中で馬が死んでしまい、彼はひとりで山中を歩くことになります。
そこで彼は、日光の中で水浴びをする美しい女性を見かけました。その輝くような美しさに心を奪われたサムヴァラナは、彼女に近づいて名を尋ねます。
するとタパティは「私は太陽神スーリヤの娘、タパティです」と名乗り、「私と結婚したいなら父に許しを求めてください」と言って姿を消してしまいました。
ヴァシシュタ仙の仲介
サムヴァラナは恋の病に陥り、食事も睡眠もとれなくなってしまいます。そこで彼は2週間にわたって、自分の師であるヴァシシュタ仙のことを瞑想し続けました。
サムヴァラナの苦しみを知ったヴァシシュタ仙は彼のもとに現れ、天界へと昇ってスーリヤ神にタパティとの結婚を申し込みます。
スーリヤは快く承諾し、ヴァシシュタ仙はタパティを連れて地上に戻りました。こうしてサムヴァラナとタパティは結婚し、山中で12年間幸せに暮らしたのです。
王国の危機と帰還
しかし、サムヴァラナが王国を離れている間、国は深刻な干ばつに見舞われました。雨の神インドラが12年間も雨を降らせなかったため、人々は苦しみました。
ヴァシシュタ仙はサムヴァラナとタパティを見つけ出し、王国への帰還を促します。二人が都に戻ると、インドラは再び雨を降らせ、国は繁栄を取り戻しました。
その後、タパティはクル王を出産します。クル王は後にクルクシェートラという聖地を創設し、クル王朝の始祖となったのです。
タピー川との関係
タパティは、インド中部を流れるタピー川(Tapti River)の女神としても崇拝されています。
タピー川は、マディヤ・プラデーシュ州のムルタイという場所を源流とし、西へ流れてアラビア海に注ぐ全長約724キロメートルの川です。多くのインドの川が東へ流れるのに対し、タピー川は西へ流れる珍しい川なんですね。
ヒンドゥー教の伝承では、スーリヤ神が自分の熱から人々を守るため、娘タパティを地上に川として降臨させたとされています。タパティという名前が「熱する者」を意味することから、彼女が河神として人々に涼しさをもたらす存在になったというわけです。
タピー川のほとりには、タパティ女神を祀る寺院があり、今でも多くの巡礼者が訪れます。
象徴と意義
タパティは以下のような象徴性を持つ女神です:
熱と情熱:
名前の通り、太陽の熱を体現する存在として、情熱や活力を象徴します。
王朝の母:
クル王の母として、インド神話における重要な王朝の起源に関わる存在です。
聖なる川:
タピー川として、生命を育む水の恵みをもたらす女神でもあります。
美と魅力:
サムヴァラナ王を虜にした美しさで知られ、『マハーバーラタ』では「最も美しい女性」と称されています。
まとめ
タパティについてのポイントをまとめると:
- 太陽神スーリヤと影の女神チャーヤーの娘
- 名前の意味は「熱する者」「灼熱の者」で、太陽の熱を象徴
- 月の王朝のサムヴァラナ王と結婚し、クル王を生んだ
- クル王は『マハーバーラタ』の主人公たちの共通の祖先
- タピー川の女神としても崇拝されている
- 『マハーバーラタ』では「最も美しい女性」と讃えられている
タパティの物語は、神々の世界と人間の世界、太陽の熱と川の涼しさ、天上の美と地上の愛といった対照的な要素が交錯する、インド神話ならではの豊かな物語です。彼女はクル王朝の母として、インド最大の叙事詩『マハーバーラタ』の歴史を支える重要な存在なんですね。


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