白鳥の湖(Swan Lake)のあらすじを徹底解説!登場人物・見どころ・名曲まとめ

神話・歴史・文化

バレエを観に行く前に、ストーリーをざっくり知っておきたい。
そんな方のために、『白鳥の湖(Swan Lake)』のあらすじを、幕ごとにわかりやすく解説します。

チャイコフスキー(Tchaikovsky)の三大バレエのひとつとして世界中で愛されるこの作品。
呪いに縛られた白鳥の王女と、愛を誓った王子の悲恋は、今も多くの人の心を揺さぶります。


スポンサーリンク

『白鳥の湖』とはどんな作品か

『白鳥の湖(Swan Lake)』は、ロシアの作曲家ピョートル・チャイコフスキー(Pyotr Ilyich Tchaikovsky、1840〜1893年)が作曲したバレエ音楽(作品20)です。
ドイツの民話・伝説(ムゼーウスの童話『奪われたヴェール』など)とロシアの民話を下敷きにした台本をもとに制作されたとされています。
ただし直接の原作は明らかでなく、複数の作品から着想を得たと考えられています。

チャイコフスキー自身が初めて手がけたバレエ音楽であり、『眠れる森の美女(The Sleeping Beauty)』『くるみ割り人形(The Nutcracker)』とあわせて「チャイコフスキーの三大バレエ」と呼ばれています。


作品の誕生と歴史

1875年の春、チャイコフスキーはモスクワのボリショイ劇場(Bolshoi Theatre)からバレエ音楽の作曲を依頼されました。
1876年の春に完成させ、翌1877年3月4日にボリショイ劇場でウェンツェル・レイジンゲル(Julius Wenzel Reisinger)の振付により初演されています。

しかし初演の評価はかんばしいものではありませんでした。
振付・演奏・出演者の水準が低く、チャイコフスキーの高度な音楽が当時の観客に十分理解されなかったとされています。
それでも全41回上演され、1883年1月を最後にボリショイ劇場のレパートリーから外されました。

この作品が世界的な名作として知られるようになったのは、チャイコフスキーの没後のことです。
1895年、振付家のマリウス・プティパ(Marius Petipa)とレフ・イワノフ(Lev Ivanov)が大幅な改訂を加え、サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場(Mariinsky Theatre)で上演。
この改訂版が大きな成功を収め、現在上演されている『白鳥の湖』のほとんどはプティパ=イワノフ版を基礎としています。


主な登場人物

名前説明
ジークフリート(Siegfried)主人公の王子。成人を迎え、花嫁を選ぶよう求められる
オデット(Odette)悪魔に呪われ白鳥の姿に変えられた王女。夜だけ人間に戻れる
ロットバルト(Rothbart)オデットに呪いをかけた悪魔。フクロウの姿をしている
オディール(Odile)ロットバルトの娘。オデットと同じ姿に化け、王子を欺く

オデットとオディールは、性格もまったく異なる対照的な役柄でありながら、同じバレリーナが一人二役で演じるのが通例です。
白く純粋な白鳥と、妖艶な黒鳥を演じ分ける技量は、バレリーナの最大の見せ場のひとつとされています。


あらすじ:第1幕〜第4幕

第1幕:王子の宴と白鳥狩り

ある王国の宮廷。
王子ジークフリートの成人を祝う宴が、にぎやかに催されています。

その席に王妃が現れ、「もう成人なのだから、明日の舞踏会で花嫁を選ぶように」と告げます。
王子は急に現実の重さを感じ、気が重くなります。

気分転換のため、王子は弓矢を手にして白鳥狩りへ出かけます。
月明かりの中、白鳥の群れを追って、王子は深い森の奥にある湖へとたどり着きます。

第2幕:湖畔でのオデットとの出会い

湖のほとりに到着した王子が白鳥に弓を向けたそのとき、白鳥が突然、美しい女性の姿へと変わります。
それが白鳥の女王・オデットでした。

驚く王子に、オデットは自分の事情を打ち明けます。
悪魔ロットバルトが呪いをかけ、日中は白鳥の姿にされてしまっていること。
夜の間だけ、この湖のほとりで人間の姿に戻れること。
そして、呪いを解く方法はただひとつ——「真実の愛の誓い」しかないこと。

王子は見る見るうちにオデットに心を奪われ、深い愛を誓います。
湖に映る月明かりの中、二人は寄り添い、束の間の幸福を味わいます。

しかし夜明けが近づくと、白鳥の群れとともにオデットは再び湖へと消えていくのでした。

第3幕:黒鳥の誘惑と王子の誓い

翌日、城では盛大な舞踏会が開かれます。
各国の姫たちが花嫁候補として勢ぞろいするなか、王子はオデット以外の誰にも心が動きません。

そこへロットバルトが、黒い衣装をまとった美しい娘・オディールを連れて現れます。
オディールはオデットと瓜二つの姿に化けており、ロットバルトが魔力で王子の目を欺いているのです。

王子はオディールをオデットだと信じて疑いません。
踊りながらどんどん引き寄せられ、ついには「あなたを花嫁に選ぶ」と誓いを立ててしまいます。

その瞬間、ロットバルトは高笑いし、正体を現します。
遠い湖畔に、絶望したオデットの幻影が浮かび上がります。
王子は自分が欺かれたことを悟り、茫然とします。

第4幕:愛の結末と悲劇

湖畔に駆けつけた王子は、悲しみに暮れるオデットを見つけます。
誓いを破られたオデットは、呪いが永遠に解けなくなったことを知っています。

ここから先の結末は、演出によって二通りが存在します。

悲劇的な結末(多くの版で採用)
オデットは湖に身を投じ、王子もその後を追います。
死をもいとわない二人の愛の力によって悪魔ロットバルトは倒され、二人の魂はあの世で永遠に結ばれます。
水面に静寂が戻り、白鳥の群れが天へと昇っていきます。

ハッピーエンドの結末(一部の版)
王子が悪魔ロットバルトと戦って倒し、呪いが解けてオデットが人間の姿を取り戻します。
二人は晴れて結ばれ、幸福な結末を迎えます。

現在最も多く上演されている版(プティパ=イワノフ版を基礎とする版)では、悲劇的な結末が採用されることが一般的です。


演目の見どころ5選

1. 白鳥の群舞(コール・ド・バレエ)

第2幕に登場する白鳥たちの集団舞踊は、この作品最大の見せ場とされています。
純白のチュチュをまとったバレリーナたちが一糸乱れぬ動きで踊る光景は、バレエ芸術の最高峰と評されます。

2. オデット・オディールの一人二役

清純な白鳥オデットと、妖艶な黒鳥オディールを、一人のバレリーナがどう演じ分けるか。
第2幕から第3幕にかけての変身は、バレリーナの技量と表現力が問われる最大の挑戦です。

3. 四羽の白鳥の踊り

第2幕に登場するこの小品は、4人のバレリーナが手をつないで軽やかなステップを踏む場面です。
息のあった動きが生み出す可愛らしいリズムは、観客の笑顔を誘う名場面として知られています。

4. 32回のグラン・フェッテ

第3幕でオディールが披露する連続32回のグラン・フェッテ(Grands fouettés en tournant)は、バレエ公演のハイライトのひとつです。
目にも止まらぬ回転が次々と決まるたびに、会場全体が沸き立ちます。

5. 白鳥のテーマ

第1幕末尾から第2幕冒頭にかけて奏でられる「情景(白鳥のテーマ)」は、バレエを観たことのない人でも聞き覚えのある旋律です。
オーボエが奏でるもの悲しいメロディは、オデットの哀愁と清らかさを見事に表現しています。


音楽の特徴

チャイコフスキーがこの作品で目指したのは、当時の「踊りをつなぐだけの伴奏音楽」からの脱却でした。
白鳥にはロ短調、悪魔ロットバルトにはヘ短調というように、登場人物と特定の調性を結びつける「ライトモティーフ」の手法を駆使しています。
交響曲にも匹敵する大規模なオーケストラが使用されており、33のナンバー(楽曲番号)で構成されたスコアは当時の先端をいくものでした。


『白鳥の湖』豆知識

チャイコフスキーは1871年に、妹アレクサンドラ・ダヴィドヴァの子どもたちのために小規模な家庭劇『白鳥の湖』を手がけたことがあるといわれています。
ただしこれは本格的なバレエではなく、後の大作とどう関係するかは不明な点が多いとされています。

また、初演版(1877年)の結末は現在の版とは大きく異なり、二人が湖の水の波に飲まれる悲劇的な展開でした。
さらに初演版では悪役は「ロットバルト」ではなく「オデットの継母」とされており、プティパ=イワノフ版への改訂の際にロットバルトという魔法使いへと変更されています。
改訂版では、オデットが自らの意志で湖に身を投じ、王子もその後を追うという形になりました。


まとめ

『白鳥の湖(Swan Lake)』は、1877年に初演されたチャイコフスキーの最初のバレエ作品です。
初演時の不評を乗り越え、1895年のプティパ=イワノフ版によって世界的名作へと生まれ変わりました。

悪魔の呪いで白鳥にされた王女オデットと、愛を誓ったジークフリート王子の悲恋は、時代を超えて人々の胸を打ちます。
白鳥の群舞、一人二役の演じ分け、32回のグラン・フェッテ——それぞれの見どころを頭に入れておくと、バレエ鑑賞がぐっと楽しくなりますよ。


参考情報

この記事で参照した情報源

一次資料・公式資料に相当する情報源

  • 「白鳥の湖」Wikipedia日本語版(出典付き記事)
  • 「白鳥の湖」Wikipedia英語版(英語圏の学術資料に基づく記述)

信頼できる二次資料・学術的解説

  • 渡辺真弓『バレエ名作事典』(2014年)— Wikipedia出典として記載
  • 森田稔(1999年)— Wikipedia出典として記載
  • uDiscover Music「チャイコフスキー:白鳥の湖ガイド」(専門メディア)

参考になる外部サイト

コメント

タイトルとURLをコピーしました