平安京の朱雀門に、双六(すごろく)が大好きな鬼がいたって知っていますか?
この鬼は人間に化けて双六の名人と勝負し、負けたら死体から作った美女を渡すという、なんとも奇妙な賭けをしたんです。
しかも笛の演奏もできる文化的な鬼だったとか。恐ろしいけれど、どこか人間くさい存在でした。
この記事では、平安時代の朱雀門に住んでいたという双六好きの鬼について詳しくご紹介します。
朱雀門の鬼ってどんな妖怪なの?

朱雀門の鬼は、平安京の正門である朱雀門に住んでいたとされる鬼です。
この鬼の最大の特徴は、双六(古代のボードゲーム)が大好きだったこと。
平安時代の文人・紀長谷雄(きのはせお)と双六勝負をして負け、約束通り美女を渡したという不思議な伝説が『長谷雄草紙』という絵巻物に残されています。
平安京の多くの鬼の中でも特に恐れられた存在でしたが、笛をたしなむなど芸術的な才能も持っていたんです。
起源
朱雀門の鬼の伝説は、平安時代の都の文化と深く結びついています。
朱雀門は平安京の南の正門で、都の顔ともいえる重要な門でした。
幅約35メートルの巨大な門で、二階建ての楼門だったといわれています。
朱雀門に鬼が住むようになった背景
- 平安時代中期には門の周辺が荒廃
- 夜は人通りが少なく不気味な場所に
- 都市伝説として鬼の話が生まれた
- 双六は当時の貴族の娯楽として人気
実は朱雀門の鬼の話は、羅城門の鬼より古い記録に残っているんです。
『十訓抄』という13世紀の書物にも登場し、平安京の鬼伝説の中でも特に古い部類に入ります。
姿・見た目
朱雀門の鬼の姿は、人間に化けることができました。
長谷雄と出会った時は普通の男の姿で現れています。でも、その正体は恐ろしい鬼。
朱雀門の鬼の外見的特徴
- 人間の男に完璧に化けられる
- 何の足がかりもなく門を登れる超人的能力
- 人間を軽々と担ぎ上げる怪力
- 本当の姿は詳しく記録されていない
興味深いのは、鬼の本来の姿があまり描写されていないこと。
人間に化けた姿ばかりが記録に残っているんです。
特徴

朱雀門の鬼には、他の鬼にはない独特な特徴がありました。
まず双六の腕前。人間の名人と対等に勝負できるほどの実力を持っていました。
さらに芸術的才能もあり、笛の演奏が上手だったと伝えられています。
朱雀門の鬼の特殊能力
- 双六の高い技術
- 笛などの楽器演奏
- 完璧な変身能力
- 死体から美女を作り出す不思議な力
- 100日で人形を本物の人間にする魔力
特に注目すべきは、死体の良い部分を集めて美女を作るという、現代でいう「フランケンシュタイン」のような点。
100日経てば本物の人間になるという設定も独特です。
伝承

朱雀門の鬼と紀長谷雄の物語は、平安時代の不思議な出来事として語り継がれています。
運命の双六勝負
ある夕暮れ、双六の名手として有名だった紀長谷雄のもとに、見知らぬ男が現れました。
男は双六勝負を申し込み、長谷雄を朱雀門の楼上へ連れて行きます。
男は何の足がかりもなく門を登り、登れない長谷雄を担ぎ上げました。
この時点で、男が普通の人間でないことは明らかでした。
勝負の賭けは、長谷雄が全財産、鬼が絶世の美女。結果は長谷雄の勝利!
100日の約束
負けた鬼は約束通り美女を連れてきましたが、条件を付けます。
「100日間は女に触れてはならない」
最初は我慢していた長谷雄でしたが、80日目についに我慢できずに女を抱いてしまいました。
すると女の体は水となって流れ去ってしまったんです。
実はこの女は、鬼が死体から作った人形で、100日経てば本物の人間になるはずだったのに…。
鬼の復讐と救い
3ヶ月後、怒った鬼が長谷雄を襲います。
約束を破ったことを責める鬼に、長谷雄は必死に北野天神に祈りました。
すると天から「そこを去れ」という声が響き、鬼は消えていったといいます。
まとめ
朱雀門の鬼は、平安京に住んでいた文化的で不思議な鬼です。
朱雀門の鬼の重要ポイント
- 朱雀門に住み双六が得意
- 紀長谷雄と双六勝負をして敗北
- 死体から作った美女を渡す奇妙な能力
- 笛をたしなむ芸術的な一面も
- 平安京の鬼の中でも特に古い伝説
恐ろしい鬼でありながら、双六や音楽を愛する文化的な存在。
朱雀門の鬼は、平安時代の都市文化と妖怪伝説が融合した、とても興味深い存在といえるでしょう。
現在の京都には朱雀門跡の碑が残るだけですが、かつてそこに住んでいた双六好きの鬼の話は、今も私たちを楽しませてくれます。
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