スプリガンとは?コーンウォールに伝わる「財宝の守護者」を解説

神話・歴史・文化

普段は小さいのに、怒らせると巨人サイズに膨れ上がる——。
そんな厄介な妖精がイギリスの片隅にいるって知っていましたか?

その名はスプリガン
イングランド南西部・コーンウォール地方で語り継がれてきた伝説の存在です。

ゲーム『The Elder Scrolls』シリーズでは森の精霊として登場し、日本では漫画『SPRIGGAN』の元ネタとしても知られていますよね。

この記事では、スプリガンの正体や伝承、そして現代作品への影響までわかりやすく解説していきます。


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スプリガンの概要

スプリガンは、イングランド南西部のコーンウォール地方に伝わる妖精の一種です。

同じコーンウォールの妖精「ピクシー」のいとこ的な存在ですが、ピクシーが「いたずら好きだけど愛嬌がある」のに対して、スプリガンは「本気で危険なやつ」という位置づけ。
妖精界の「ボディーガード」や「戦闘部隊」と呼ばれることもあります。

彼らは古代の遺跡や墳墓(バロウ)、環状列石(ストーンサークル)などに住み着いていて、そこに眠る財宝を守っているとされています。


名前の意味と由来

「スプリガン(Spriggan)」という名前、実は発音に注意が必要です。

英語のスペルを見ると「スプリガン」と読みたくなりますが、本来は「スプリジャン」に近い発音だったとか。
これはコーンウォール語の「spyrysyon(スピリジョン)」が語源で、意味は「精霊たち」「魂たち」。

つまり「スプリガン」という言葉自体が、もともと複数形だったんですね。
ラテン語の「spiritus(スピリトゥス=霊)」と同じルーツを持つ言葉です。


スプリガンの姿

見た目は、とにかく「醜い」と伝えられています。

シワだらけの老人のような姿で、体は痩せこけているのに頭だけが異様に大きい。
肩は傾き、腕は膝まで垂れ下がり、足はカエルのように平べったいという説もあります。
指が6本以上あることもあるとか。

普段は小柄な姿をしていますが、彼らには特別な能力があります。
それが巨大化

怒ったり戦闘モードに入ったりすると、歩くたびに体がどんどん大きくなっていき、最終的には巨人サイズになるといわれています。


巨人の幽霊という説

なぜスプリガンは巨大化できるのでしょうか?

実は「スプリガンの正体は、古代に滅びた巨人たちの幽霊だ」という説があります。

コーンウォール地方には、ストーンヘンジのような巨石遺跡がたくさん残っています。
昔の人々は「こんな巨大な石を動かせるのは巨人しかいない」と考えました。

その巨人たちは、ブリトン人(ケルト系民族)に滅ぼされたフォモール族だという伝承もあります。
肉体は滅びても魂は故郷に留まり続け、自分たちが築いた遺跡と、そこに埋められた財宝を守っている——。

だから普段は小さな姿でも、本気を出せば本来の巨人の力を発揮できるというわけですね。


スプリガンの悪行

スプリガンは、はっきり言って「嫌なやつ」です。

伝承で語られる彼らの悪行は多岐にわたります。

突然の突風を起こして旅人を驚かせる、嵐を呼んで農作物を台無しにする、家に侵入して物を盗む、建物を倒壊させる、家畜を連れ去る……。

何か不幸なことが起きると「スプリガンの仕業だ」と言われるほど、災いの象徴だったようです。

中でも恐れられていたのが「取り替え子(チェンジリング)」。
人間の赤ん坊をさらって、代わりに自分たちの醜い子どもを置いていくという行為です。

これは他の妖精にも見られる習性ですが、スプリガンは特に好んで行ったとされています。


財宝を守る妖精

一方で、スプリガンには「守護者」としての側面もあります。

彼らは古代の墳墓や遺跡に埋められた財宝の番人。
宝を狙ってやってきた人間には容赦なく襲いかかります。

有名な伝承にこんな話があります。

レラントという村の鉱夫が、3日連続で同じ夢を見ました。
「トレクロベン丘の城跡に、金貨の壺が埋まっている」という夢です。

鉱夫は月明かりの夜、掘りに行きました。
2〜3時間掘り続けると、中が空洞の平らな石に当たった。

「見つけた!」と思った瞬間、天気が急変。
風が岩の間を唸り、見上げると何百ものスプリガンが岩陰から這い出てきて、こちらに迫ってくる……。

鉱夫は道具を投げ捨てて全速力で逃げ帰り、その後何週間も寝込んだそうです。
後日その場所に戻ると、穴は完全に埋め戻されていたとか。


スプリガンを撃退する方法

そんなスプリガンにも弱点はあります。

ある老婆がスプリガンの集団に遭遇したとき、咄嗟に服を裏返しにして着たところ、彼らは退散したという話があります。

「服を裏返す」という行為は、妖精除けとして聖水や鉄と同じくらい効果的だと信じられていました。
なぜ効くのかは諸説ありますが、「左右を逆にすることで妖精の魔力が混乱する」といった説明がされることもあります。

また、敷居にミルクやパンをお供えすることでなだめたり、聖人の名を唱えてお祓いをしたりする方法も伝えられています。


コーンウォールの他の妖精たち

コーンウォール地方には、スプリガン以外にもさまざまな妖精がいます。
簡単に比較してみましょう。

名前特徴
ピクシー(ピスキー)いたずら好きだが基本的には陽気。旅人を道に迷わせることも
スプリガン凶暴で危険。財宝を守り、チェンジリングを行う
ノッカー鉱山に住む妖精。鉱夫を助けることもあれば危険を知らせることも
ブッカ海や鉱山に関わる精霊。ノッカーと同一視されることも
ポベル・ヴェアン「小さな人々」の意。より小さく美しい姿とされる

スプリガンはこの中でも特に「戦闘的」「攻撃的」な存在として描かれてきました。
妖精たちの「護衛役」を務めることもあったようです。


現代作品に登場するスプリガン

スプリガンは現代のゲームや小説、漫画にも数多く登場しています。

The Elder Scrollsシリーズ

『Skyrim』などで有名なこのシリーズでは、スプリガンは樹木のような姿をした森の女性精霊として登場。
原典の「醜い老人」とはだいぶ違いますが、「自然を守る存在」「怒ると危険」という点は受け継いでいます。

北欧神話の女神キナレス(カイネ)に創られた存在という設定もあり、ゲーム内では錬金術の素材「タップルート」を落とします。

漫画『SPRIGGAN』

たかしげ宙・皆川亮二による日本の漫画作品。
主人公たちが所属する組織「アーカム財団」の特殊工作員が「スプリガン」と呼ばれています。

「古代遺産を守る」という使命を帯びている点で、コーンウォールの伝承における「財宝の守護者」というイメージをそのまま受け継いでいますね。
2022年にはNetflixでアニメ化もされました。

その他の作品

作品名登場の形態
ダンジョンズ&ドラゴンズフェイ(妖精)クリーチャーとして1980年代から登場
World of Warcraftドラストに仕える暗い妖精の種族として登場
ベイブレードバースト蒼井バルトのベイブレード「スプリガン」シリーズ
Fate/Grand Order妖精國ブリテン編でキャラクター・エネミーとして登場
軌跡シリーズ(黎の軌跡)主人公ヴァン・アークライドの通称として使用

まとめ

スプリガンについて、要点を振り返りましょう。

  • コーンウォール地方に伝わる妖精で、名前は「精霊たち」を意味するコーンウォール語が語源
  • 普段は醜い小柄な老人の姿だが、怒ると巨人サイズに膨れ上がる
  • 正体は「古代に滅びた巨人たちの幽霊」という説がある
  • 遺跡や墳墓で財宝を守っており、近づく者には容赦なく襲いかかる
  • チェンジリング(取り替え子)を行い、嵐を呼ぶなど、多くの災いの元凶とされた
  • 妖精界の「ボディーガード」的な存在で、他の妖精を守ることも
  • 撃退方法は「服を裏返す」「聖水や鉄を使う」など
  • 現代ではゲームや漫画で「森の精霊」「遺跡の守護者」として登場することが多い

可愛らしいイメージの「妖精」とは一線を画す、ダークで危険な存在——それがスプリガンです。
もし古い遺跡を訪れることがあったら、彼らの縄張りを荒らさないように気をつけてくださいね。

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