クトゥルフ神話に登場する神々の中でも、ひときわ謎めいた存在がいます。
それがシュブ=ニグラスとヨグ=ソトースという二柱の外なる神です。
実は、この二柱には深い関係があるんです。
彼らは夫婦とされ、その間に生まれた子どもたちが、あの有名なクトゥルフやツァトゥグァに繋がっているとされています。
「外なる神」「旧支配者」「系譜」といった言葉を聞いても、初めての方にはピンとこないかもしれません。
この記事では、シュブ=ニグラスとヨグ=ソトースの関係性、そして彼らから始まる神々の系譜について、わかりやすく解説していきます。
シュブ=ニグラスとヨグ=ソトースは夫婦?

ラヴクラフトが残した神々の系図
H.P.ラヴクラフトは、友人のJ・F・モートンに宛てた手紙の中で、自ら創作した神々の家系図を記しています。
この手紙は「Selected Letters 4.617」として知られており、クトゥルフ神話の系譜を知る上で最も重要な資料となっています。
この系図によると、シュブ=ニグラスとヨグ=ソトースは配偶者(夫婦)の関係にあるとされているんです。
ただし、ここで注意が必要なのは、「夫婦」という表現が人間の概念をそのまま当てはめているにすぎないということ。
彼らは人間の理解を超えた宇宙的存在なので、実際にどのような関係なのかは謎に包まれています。
二柱の出自を確認しよう
シュブ=ニグラスとヨグ=ソトースは、どちらもアザトースという最高神から派生した存在です。
それぞれの出自を整理すると、以下のようになります。
- アザトース(盲目白痴の神・宇宙の中心)
- ナイアーラトテップ(這い寄る混沌)
- 無名の霧 → ヨグ=ソトース(門にして鍵)
- 闇 → シュブ=ニグラス(千匹の仔を孕みし森の黒山羊)
つまり、ヨグ=ソトースは「無名の霧」から、シュブ=ニグラスは「闇」から生まれました。
二柱は兄弟姉妹のような関係でありながら、同時に配偶者でもあるという、人間の感覚からすると不思議な関係なんです。
二柱の間に生まれた「恐ろしき双子」
ナグとイェブとは?
シュブ=ニグラスとヨグ=ソトースの結合(交わり)によって生まれたのが、ナグとイェブという双子の神格です。
この双子は「恐ろしき双子(Twin Blasphemies)」とも呼ばれています。
ラヴクラフトが1936年に友人へ送った手紙によると、ナグとイェブは以下のような特徴を持っているとされています。
- 形状:球形または楕円形
- 大きさ:直径約10フィート(約3メートル)
- 性質:「時々ちょっと破壊的になる」
- 能力:物質を溶解させる力を持つ
母親であるシュブ=ニグラスに似た、不定形で異様な姿をしていると考えられています。
ナグとイェブが生んだ神々
ここからがさらに重要なポイントです。
ナグとイェブは、それぞれ単性生殖(無性生殖)によって、有名な神格を産み出しました。
| 親 | 子 | 備考 |
|---|---|---|
| ナグ | クトゥルフ | ルルイエに眠る大司祭、旧支配者の代表格 |
| イェブ | ツァトゥグァ | ンカイの眠るもの、ナマケモノのようなヒキガエル |
つまり、クトゥルフの祖父母にあたるのがシュブ=ニグラスとヨグ=ソトースということになります。
クトゥルフ神話の名前の由来となったクトゥルフが、実はこの二柱から始まる血統に属しているというのは、神話体系を理解する上でとても重要なポイントなんです。
シュブ=ニグラスってどんな神?
「千匹の仔を孕みし森の黒山羊」
シュブ=ニグラス(Shub-Niggurath)は、クトゥルフ神話における外なる神の一柱です。
最も有名な称号は「千匹の仔を孕みし森の黒山羊(The Black Goat of the Woods with a Thousand Young)」。
この称号が示すように、豊穣と多産を司る女神としての性格を持っています。
外見と特徴
ラヴクラフト自身は、シュブ=ニグラスを「邪悪な雲のような存在」と表現しています。
後の作家たちによって、より具体的なイメージが付け加えられました。
- 巨大で不定形の肉塊
- 無数の黒い触手
- 粘液を垂らす複数の口
- 蹄のついた短い脚
山羊を連想させる姿でありながら、実際には山羊とはまったく似つかない異形の存在です。
複数の配偶者を持つ太母神
シュブ=ニグラスは、ヨグ=ソトース以外にも複数の神格との間に子をもうけています。
| 配偶者 | 子 |
|---|---|
| ヨグ=ソトース | ナグ、イェブ |
| ハスター | イタカ、ロイガー、ツァール |
| イグ | ウトゥルス=フルエフル(長女) |
また、女神でありながら男神としての側面も持つとされ、女性の神格マイノグーラとの間にティンダロスの猟犬を産ませたという説もあります。
まさに「万物の母」と呼ぶにふさわしい存在なんです。
ヨグ=ソトースってどんな神?
「門にして鍵」
ヨグ=ソトース(Yog-Sothoth)は、「門にして鍵(The Gate and the Key)」という称号で知られる外なる神です。
他にも以下のような異名を持っています。
- 全にして一、一にして全
- 門の守護者
- 彼方なるもの
時空を超越した存在
ヨグ=ソトースの最大の特徴は、全時空と同一の広がりを持つという点です。
『ダンウィッチの怪』に登場する有名な一節では、このように記されています。
「ヨグ=ソトースは門を知る。ヨグ=ソトースは門である。ヨグ=ソトースは鍵にして門の守護者なり。過去・現在・未来、すべてはヨグ=ソトースにおいて一つ」
つまり、過去・現在・未来を同時に知覚し、次元間の移動を司る存在なんです。
外見
ヨグ=ソトースは、虹色に輝く球体の集合体として現れるとされています。
ただし、これは三次元の存在である人間が知覚できる姿の一部にすぎません。
本当の姿は、人間の理解を超えた高次元の存在なのかもしれません。
神話体系における二柱の位置づけ
「Call of Cthulhu d20」における三位一体
テーブルトークRPG『Call of Cthulhu d20』では、外なる神の最重要な三柱として以下が挙げられています。
- アザトース:死を象徴
- シュブ=ニグラス:生を象徴
- ヨグ=ソトース:時間を象徴
死・生・時間という宇宙の根源的な概念を、それぞれの神が司っているという解釈です。
シュブ=ニグラスとヨグ=ソトースの結合は、「生」と「時間」の交わりとも捉えられます。
ダーレスによる元素体系
オーガスト・ダーレスは、神格を古典的な四元素に分類しようとしました。
当初、シュブ=ニグラスとヨグ=ソトースは同じ「地」のカテゴリに分類されていました。
しかし後に「第五元素(エーテル)」の概念が加わり、ヨグ=ソトースはそちらに移動。
現在のTRPGでは、両者とも「外なる神」という最上位カテゴリに分類されています。
クトゥルフ神話の神格系譜まとめ
シュブ=ニグラスとヨグ=ソトースから始まる系譜を整理すると、以下のようになります。
アザトース(宇宙の中心)
├── ナイアーラトテップ
├── 無名の霧 → ヨグ=ソトース ─┐
└── 闇 → シュブ=ニグラス ────┴─→ ナグ → クトゥルフ
└→ イェブ → ツァトゥグァ
この系譜を知ることで、クトゥルフ神話の神格たちの関係性がより深く理解できるようになります。
現代作品での描かれ方

ゲームでの登場
シュブ=ニグラスとヨグ=ソトースは、多くの現代作品に登場しています。
- クトゥルフ神話TRPG:外なる神として詳細なデータが設定されている
- モンスターストライク:キャラクターとして登場
- Fate/Grand Order:関連キャラクターのモチーフとして使用
- オーバーロード:「豊穣之王(シュブ=ニグラト)」という能力名として登場
- Quake:シュブ=ニグラスがラスボスとして登場
アニメ・小説での扱い
日本では、『這いよれ!ニャル子さん』をはじめとする作品で、クトゥルフ神話の神格が擬人化されて親しまれています。
シュブ=ニグラスとヨグ=ソトースの関係性も、こうした作品で独自に掘り下げられることがあります。
まとめ
シュブ=ニグラスとヨグ=ソトースは、クトゥルフ神話において最も重要な神格間関係の一つを持っています。
この記事のポイント
- シュブ=ニグラスとヨグ=ソトースは配偶者(夫婦)関係にある
- 二柱の間に「恐ろしき双子」ナグとイェブが生まれた
- ナグからクトゥルフが、イェブからツァトゥグァが誕生した
- シュブ=ニグラスは「生」を、ヨグ=ソトースは「時間」を象徴する
- ラヴクラフトの手紙が、この系譜の最も重要な典拠となっている
クトゥルフ神話の世界観を深く理解するためには、この二柱の関係性を押さえておくことが欠かせません。
神話体系の中心にある家族関係を知ることで、個々の神格の物語がより立体的に見えてくるはずです。




コメント