【千匹の仔を孕む母なる神】シュブ=ニグラスとは?クトゥルフ神話の豊穣神を徹底解説!

神話・歴史・伝承

深い森の奥から、何千もの生命がうごめく気配を感じたことはありませんか?

もしかしたらそれは、あらゆる生命を生み出し続ける母なる神「シュブ=ニグラス」の存在かもしれません。

彼女は恐ろしくも慈愛に満ちた、クトゥルフ神話における最も謎めいた女神の一柱なんです。

この記事では、「千匹の仔を孕みし森の黒山羊」と呼ばれる豊穣の女神シュブ=ニグラスの正体について、その系譜から姿、特徴、そして恐ろしくも魅力的な伝承まで詳しくご紹介します。

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概要

シュブ=ニグラスは、H.P.ラヴクラフトが創造したクトゥルフ神話に登場する神格です。

彼女は「外なる神」と呼ばれる宇宙的な存在の一柱で、豊穣と母性を司る女神として知られています。「千匹の仔を孕みし森の黒山羊」という異名が示すように、絶え間なく新たな生命を生み出し続ける存在なんです。

興味深いのは、彼女が単なる破壊の神ではなく、むしろ生命の創造者として描かれていること。古代ムー大陸では地母神として公然と崇拝され、信者たちに実際の恩恵を与えていたという記録もあります。

系譜

シュブ=ニグラスの家系図は、まさに宇宙規模の複雑さです。

主な配偶者と子供たち

ヨグ=ソトースとの間に:

  • 双子の神「ナグとイェブ」を出産
  • この系譜はクトゥルフやツァトゥグァへと繋がる

ハスターとの間に:

  • イタカ、ロイガー、ツァールという三柱の神を産む

その他の神々との関係:

  • イグとの間にウトゥルス=フルエフルを産む(長女とされる)
  • 女神マイノグーラとの関係でティンダロスの猟犬たちを生み出す

ラヴクラフトが友人に送った手紙によると、彼女はアザトースの系譜に連なる存在で、「闇」から生まれたとされています。まさに、あらゆる邪神たちの母として君臨しているんですね。

姿・見た目

シュブ=ニグラスの姿は、文献によってさまざまに描写されています。

主な外見的特徴

雲のような姿:
ラヴクラフト自身は友人への手紙で「恐ろしい雲のような存在」と表現しました。泡立ち爛れた肉塊のような、定まった形を持たない姿です。

山羊の要素:

  • 黒い山羊のような蹄を持つ短い足
  • 山羊を思わせる慈愛に満ちた瞳
  • しかし全体的には山羊とは似ても似つかない

その他の特徴:

  • 無数の黒い触手がのたうつ
  • 粘液を滴らせる巨大な口
  • 巨木の幹のような胴体
  • 多くの瞳を持つ

面白いことに、完全な姿を見た者はほとんどいません。彼女は直接姿を現すことを好まず、代わりに「黒い仔山羊」と呼ばれる眷属を送り込むことが多いんです。

特徴

シュブ=ニグラスには、母なる神ならではの独特な能力と性質があります。

主要な能力

無限の生命創造力:
絶え間なく新しい生命を生み出し続ける能力を持っています。他の邪神の遺伝子を使って新たな神格を創造することも可能です。

眷属の生成:
「黒い仔山羊」と呼ばれる分身を常に生み出し続けています。これらは樹木のような姿で、山羊のような蹄を持つ異形の存在です。

信者への恩恵:
飢えた者に黒い仔山羊を食料として与えたり、霊感という形で呪文を伝授したりと、崇拝者に対して実際的な恵みを与えます。

性格と役割

彼女は破壊よりも創造を好む神格です。古代において豊穣の女神として崇拝されたのも、この生命を育む側面があったから。ただし、その恩恵は必ずしも人間が望む形で与えられるとは限りません。気まぐれで予測不可能な部分もあるんですね。

伝承

シュブ=ニグラスにまつわる伝承は、世界各地に残されています。

古代ムー大陸での崇拝

太古のムー大陸では、彼女は公然と地母神として崇拝されていました。

石化の邪神ガタノトーアがムー大陸を襲った際、シュブ=ニグラス神殿の神官たちに対抗呪文を伝授し、人々を救ったという記録があります。このように、彼女は必ずしも人類の敵ではなく、むしろ守護者として振る舞うこともあったんです。

サバトとの関連

中世ヨーロッパで恐れられた魔女のサバト(黒ミサ)は、実はシュブ=ニグラス崇拝の儀式だったという説があります。

深い森の奥で行われる儀式では、巨大な黒山羊の姿をした存在が現れ、生贄を受け取ったとされています。これが彼女の眷属「黒い仔山羊」だったのではないかと考えられているんです。

黒聖母信仰との繋がり

興味深いことに、キリスト教圏における「黒聖母」信仰も、古代のシュブ=ニグラス崇拝が形を変えて生き残ったものかもしれません。

豊穣と母性を司る女神への信仰が、キリスト教化の波の中で聖母マリア信仰に偽装されたという説です。特に深い森のある地域で、この傾向が強く見られます。

出典

シュブ=ニグラスが最初に登場したのは、H.P.ラヴクラフトの作品です。

初期の登場作品

『闇に囁くもの』(1930年):
「千匹の仔を孕みし森の黒山羊」という呼び名が初めて登場。深い森での不気味な儀式の場面で言及されます。

『ダンウィッチの怪』(1928年):
ネクロノミコンの引用文の中で「イア!シュブ=ニグラス!」という崇拝の言葉が登場。

『永劫より』:
古代ムー大陸での崇拝について詳しく描写。ナグとイェブという子神の存在も明らかに。

後の発展

オーガスト・ダーレスによってクトゥルフ神話が体系化されると、彼女は「地」を象徴する神として位置づけられました。

現在のTRPG『クトゥルフの呼び声』では外なる神の一柱として扱われ、アザトース(死)、ヨグ=ソトース(時間)と共に三位一体を成す「生」の神とされています。

まとめ

シュブ=ニグラスは、クトゥルフ神話における最も複雑で魅力的な神格の一つです。

重要なポイント

  • 豊穣と母性を司る外なる神で、絶え間なく生命を創造し続ける
  • 「千匹の仔を孕みし森の黒山羊」という異名で恐れられる
  • 多くの邪神たちの母として、宇宙的な系譜の中心に位置する
  • 古代では地母神として公然と崇拝され、信者に恩恵を与えた
  • 中世のサバトや黒聖母信仰との関連が指摘される
  • 姿は雲のような不定形で、山羊の要素を持つ異形

恐ろしくも慈愛に満ちた存在、それがシュブ=ニグラスなのです。彼女は単なる破壊の神ではなく、生命の源泉として、今もどこかで新たな命を生み出し続けているのかもしれませんね。

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