【空気と光を司る古代エジプトの偉大な神】シュウ(シュー)とは?神話での役割と天地分離の物語を解説!

神話・歴史・伝承

古代エジプトの壁画で、天を支える姿で描かれた神を見たことはありませんか?

それは、私たちが呼吸する空気そのものを司る神「シュウ」かもしれません。

エジプト神話において最も重要な役割の一つ、天と地を分離したという壮大な物語の主人公でもあるこの神は、創世神話の中心的存在として今も多くの人々を魅了しています。

この記事では、古代エジプトの大気の神「シュウ」について、その神話的な役割や有名な天地分離のエピソードを分かりやすくご紹介します。

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概要

シュウは、古代エジプト神話における大気と光の神です。

ヘリオポリス九柱神(エンネアド)という、エジプト神話の中心となる9柱の神々の一柱として数えられています。創造神アトゥムから最初に生まれた男神で、私たちが生きるために必要な空気と、太陽の光が地上に届く空間を作り出した存在なんです。

面白いことに、シュウは単なる空気の神ではありません。音や思考も司っているとされ、古代エジプト人が空気と音の関係をなんとなく理解していたことがうかがえます。空気がなければ音は伝わらないという事実を、彼らは神話的に表現していたのかもしれませんね。

系譜

シュウの家系図は、エジプト神話の根幹をなす重要なものです。

シュウの家族関係

  • :創造神アトゥム(後にラーとも同一視)
  • 生まれ方:アトゥムの自慰、または唾から誕生
  • 配偶者:妹でもある湿気の女神テフヌト
  • 子供:大地の神ゲブ、天空の女神ヌト
  • :オシリス、イシス、セト、ネフティス
  • ひ孫:ホルス、アヌビス

この系譜で特に重要なのは、シュウがヘリオポリス創世神話で第2代目の王となったことです。父アトゥムから王位を継承し、世界の秩序を保つ役割を担いました。

姿・見た目

シュウの姿は、基本的には人間の男性として描かれます。

シュウの外見的特徴

  • 基本形態:人間の男性の姿
  • 頭飾り:1〜4本のダチョウの羽根を頭に乗せている
  • 持ち物:生命の象徴である「アンク」を持つ
  • 特殊な姿:戦士や守護者として現れる時は、ライオンの頭を持つこともある

ダチョウの羽根は「軽さ」と「空虚」を象徴しており、まさに空気の神にふさわしい装飾品ですね。また、妻のテフヌトと一緒に描かれる時は、2頭のライオンとして表現されることもありました。

特徴

シュウには、大気の神ならではの特別な能力と役割があります。

シュウの主な能力と支配領域

  • 空気と呼吸:人々に生命の息吹を与える
  • 光と日光:太陽の光が地上に届く道を確保
  • 風と雲:穏やかな気象現象を司る
  • 音と思考:空気が音を伝えることから、聴覚や思考も支配
  • 冷却と鎮静:乾いた空気として、物事を冷やし落ち着かせる

神話での重要な役割

  • 太陽神ラーの船に乗り、悪の蛇アポピスから太陽を守る
  • 冥界で亡者たちを導く指導者の長
  • マアト(真実・正義・秩序)を維持する存在

伝承

シュウの最も有名な伝承は、なんといっても天地分離の神話です。

天と地を分けた物語

シュウの子供である大地の神ゲブと天の女神ヌトは、とても仲の良い夫婦でした。あまりにも熱愛しすぎて、いつも抱き合っていたんです。

ところが、この二人がずっとくっついていると、太陽が通る道がふさがれてしまいました。これでは世界に光が届きません。

そこでシュウは、自らの手で娘のヌトを高く持ち上げ、息子のゲブから引き離しました。こうして天と地の間に空間ができ、太陽が東から西へと移動できるようになり、人間が住める世界が生まれたというわけです。

その他の伝承

テフヌトとの喧嘩
ある時、シュウは妻のテフヌトと大喧嘩をしてしまいます。怒ったテフヌトはエジプトを離れ、ヌビア(現在のスーダン)に行ってしまいました。彼女は獰猛な猫に変身し、近づく者すべてを攻撃したため、知恵の神トートが変装して説得し、ようやくエジプトに連れ戻したという話があります。

出典・起源

シュウ信仰の始まりは、古王国時代(紀元前2686〜2181年)までさかのぼります。

信仰の中心地

  • ヘリオポリス:下エジプト第13ノモスの州都で、シュウ信仰の発祥地
  • レオントポリス:「ライオンの都市」と呼ばれ、シュウとテフヌトが2頭のライオンとして崇拝された
  • オンボス:ひ孫のホルス信仰と結びついて崇拝された

歴史的な変遷

初期のシュウは、ピラミッド・テキストやコフィン・テキストに名前が出てくる程度でした。しかし新王国時代(紀元前1550〜1069年)になると、ヘリオポリス創世神話が民衆に広まり、シュウの地位も向上しました。

興味深いのは、アメンホテプ4世の宗教改革で多くの神々の信仰が禁じられた時も、シュウは太陽神アテンの中に住む存在として、信仰を続けることが許されたことです。

ギリシャ神話との関連

後の時代、ギリシャ人たちはシュウを、天を支える巨人アトラスと同一視しました。どちらも天を支える存在として描かれていたからですね。

まとめ

シュウは、私たちの生命に欠かせない空気と光を司る、古代エジプトの重要な神です。

重要なポイント

  • ヘリオポリス九柱神の一柱で、創造神アトゥムから最初に生まれた男神
  • 大気、光、音、思考など幅広い領域を支配
  • 天と地を分離して、人間が住める世界を作った
  • ダチョウの羽根を頭に乗せた人間の姿で描かれる
  • 太陽神ラーを守り、世界の秩序を維持する役割を持つ
  • 古王国時代から信仰され、新王国時代に地位が向上

天を支える姿で描かれるシュウは、まさに私たちの世界の土台を作った神といえるでしょう。古代エジプト人にとって、空気という目に見えないものを神格化し、天地創造の物語に組み込んだその想像力には、今でも驚かされますね。

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