【中国神話最恐の4体】四凶とは?渾沌・饕餮・窮奇・檮杌の恐ろしい姿と伝承を解説!

神話・歴史・伝承

もし神の子として生まれながら、その性格があまりにもひどかったら、どうなると思いますか?

古代中国では、そんな「神の不肖の息子たち」が怪物になったという恐ろしい伝説が残っています。彼らは「四凶(しきょう)」と呼ばれ、人々に災いをもたらす存在として恐れられてきました。でも実は、追放された後に守護者へと変わったという、意外な一面も持っているんです。

この記事では、中国神話で最も恐れられた4体の怪物「四凶」について、それぞれの姿や特徴、興味深い伝承を分かりやすくご紹介します。


スポンサーリンク

概要

四凶(しきょう)とは、古代中国で最も恐れられた4体の邪悪な怪物の総称です。

中国語では「四凶(スーシォン)」と呼ばれ、『春秋左氏伝』や『史記』といった歴史書に登場します。四凶を構成するのは以下の4体なんです。

  • 渾沌(こんとん):秩序を嫌う混沌の化身
  • 饕餮(とうてつ):何でも食べつくす貪欲の怪物
  • 窮奇(きゅうき):善悪が逆転した人喰い獣
  • 檮杌(とうこつ):死ぬまで戦い続ける凶暴な魔獣

面白いのは、この4体がみな神や帝王の子孫だったということ。神の血を引きながらも、その性格があまりにも悪かったため、怪物として恐れられるようになったんですね。


四凶のメンバー

それでは、四凶を構成する4体の怪物をそれぞれ見ていきましょう。

渾沌(こんとん)―混沌の化身

渾沌は、まさに「わけがわからない」を体現した存在です。

渾沌の特徴

項目内容
姿袋のような形、または毛の長い犬のような姿
目・耳・鼻・口の七つの穴がない
性格善人を嫌い、悪人を好む
起源帝鴻氏の不肖の子

渾沌の名前は「混沌」と同じ意味を持ち、宇宙が形になる前の原始の状態を表しています。天地が分かれる前、すべてが混じり合っていた世界そのものを妖怪として表現したものなんですね。

有名な伝説として「七つの穴の物語」があります。親切な神々が渾沌に穴を開けてあげたところ、七日目に渾沌は死んでしまったという悲しい結末。ありのままを変えようとすることの危険性を教えてくれる話かもしれません。


饕餮(とうてつ)―貪欲の化身

饕餮は、底なしの食欲と貪欲を象徴する怪物です。

饕餮の特徴

項目内容
姿牛か羊の体、人間のような顔、虎の牙
性格食べ物と財産を際限なく貪る
別名狍鴞(ほうきょう)
起源縉雲氏の不肖の子(炎帝の子孫)

「饕」は財産を貪る、「餮」は食物を貪るという意味。まさに名前通りの怪物なんです。働かずに他人のものを奪い取り、強いものには媚びを売り、弱いものはいじめるという最悪の性格でした。

興味深いことに、饕餮は殷・周時代の青銅器に「饕餮文(とうてつもん)」として刻まれていました。何でも食べるので「魔物すら食べてしまう」と考えられ、逆に魔除けのシンボルになったんですね。恐ろしい存在が守護者に転じるという、まさかの展開です。


窮奇(きゅうき)―善悪逆転の怪物

窮奇は、善と悪の価値観が完全に逆転した恐ろしい存在です。

窮奇の特徴

項目内容
姿翼のある虎、または針鼠の毛を持つ牛
鳴き声犬のような吠え声
性格善人を食べ、悪人を助ける
起源少昊の不肖の子

窮奇の行動パターンは人間の常識とは正反対。誠実な人を見つけるとその鼻を食べ、悪人を見つけると獣を捕まえて贈り物をするという、まさに悪を助長する存在でした。

しかし『後漢書』には、悪鬼払いの儀式で悪鬼を退治する善神として登場するという記述もあります。悪を助ける怪物が悪鬼を退治する神にもなるという、矛盾した二面性を持っているのが窮奇の不思議なところです。


檮杌(とうこつ)―凶暴の化身

檮杌は、究極の頑固者であり戦闘狂として知られています。

檮杌の特徴

項目内容
姿人間の顔、虎の体、約40cmの長い毛
約5.4メートルもの長さ
性格頑固で凶暴、死ぬまで戦い続ける
起源顓頊帝の不肖の子

「檮杌」という名前には「教え導くことができない頑固者」という意味があります。別名は「難訓(なんくん=教え難い)」「傲狠(ごうこん=傲慢で狂暴)」。どんなに説得しても無駄で、暴力でしか物事を解決しようとしない存在でした。

日本の『和漢三才図会』には「戦いで死んでも闘争心を失わないのは檮杌だけ」と記されるほど。その凶暴さは四凶の中でも際立っています。


四凶の起源

四凶には、興味深い共通点があります。

神の不肖の子たち

四凶はみな、古代中国の神や帝王の子孫だったとされています。

四凶
渾沌帝鴻氏
饕餮縉雲氏(炎帝の子孫)
窮奇少昊
檮杌顓頊帝

神の血を引きながらも、信義を裏切り、悪を称賛し、善人を陥れた。だからこそ人々から恐れられ、怪物として語り継がれるようになったんですね。

これは単なる怪物の話ではなく、権力者の堕落への警告として語り継がれてきた可能性があります。どんなに高貴な血筋でも、行いが悪ければ怪物と同じだという教訓が込められているのかもしれません。

三凶から四凶へ

歴史書の記述を見ると、最初は渾沌・窮奇・檮杌の「三凶」だけが存在し、後から饕餮が加わって四凶になったと考えられています。饕餮は「三凶と並べて」恐れられるようになったという記述が『春秋左氏伝』に残っているんです。


伝承

四凶にまつわる最も有名な伝説は、聖王・舜による追放劇です。

舜帝による追放

古代中国の伝説的な聖王・舜(しゅん)が天下を治めたとき、四凶は人々を怯えさせ、大地を荒廃させていました。それぞれが大罪や不道徳をもたらし、人間界にいるだけで人々を堕落させたといわれています。

そこで舜帝は四凶を四方の辺境に追放しました。

四凶の追放先

  • 渾沌 → 北方
  • 饕餮 → 西南方
  • 窮奇 → 西方
  • 檮杌 → 西方

守護者への転身

興味深いことに、追放された後の四凶には意外な役目が与えられました。

辺境に追いやられた四凶は、そこで魑魅魍魎(ちみもうりょう)から人々を守る存在になったというのです。『春秋左氏伝』には「四凶を投じて四裔に至らしめ、以て魑魅を御す」という記述があります。

悪として追放された存在が、結果的に国境を守る守護者になる。なんとも皮肉な運命ですが、これは悪にも役割があるという古代中国人の深い思想を反映しているのかもしれません。


四神との対比

中国神話には、四凶と対をなす存在として四神(しじん)がいます。

四凶(災いをもたらす)四神(守護する)
渾沌玄武(北)
饕餮白虎(西)
窮奇朱雀(南)
檮杌青龍(東)

四神が徳を体現し人々を守護する存在であるのに対し、四凶は災いと不道徳を象徴する存在。この対比は、古代中国人が善と悪、秩序と混沌のバランスを重視していたことを示しているんですね。


まとめ

四凶は、中国神話が生んだ最も恐ろしい4体の怪物です。

重要なポイント

  • 渾沌・饕餮・窮奇・檮杌の4体で構成される
  • すべて神や帝王の不肖の子が怪物化した存在
  • 舜帝によって四方の辺境に追放された
  • 追放後は魑魅魍魎を防ぐ守護者になったという伝承もある
  • 四神と対をなす存在として語られる
  • 権力者の堕落への警告として語り継がれてきた

四凶は単なる怪物ではなく、善と悪、秩序と混沌、そして権力の堕落について深く考えさせる存在です。

神の子でありながら悪行によって怪物となり、追放されて守護者に転じる。この複雑な物語は、物事には必ず二面性があるという中国の深い知恵を教えてくれているのかもしれませんね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました