クトゥルフ神話の作品やTRPGで「深きもの」「ショゴス」「バイアクヘー」といった名前を見かけたことはありませんか?
これらはすべて、奉仕種族(Servitor Race) と呼ばれる存在です。
邪神たちに仕え、彼らの意志を地上で実行する恐ろしい怪物たち。
でも、「名前は聞いたことあるけど、どんな生物なの?」「それぞれの違いがよくわからない」という方も多いでしょう。
この記事では、クトゥルフ神話に登場する主要な奉仕種族を、仕える神格や特徴とともに詳しく解説します。
奉仕種族とは何か?

基本的な定義
奉仕種族とは、特定の神格(外なる神や旧支配者)に仕える種族のことです。
TRPG『Call of Cthulhu(クトゥルフ神話TRPG)』で体系化された分類で、神話生物は主に以下の3つに分けられます。
- 奉仕種族:特定の邪神に仕える種族
- 独立種族:特定の神に仕えない自由な種族
- 神格:外なる神、旧支配者、旧神などの神々
奉仕種族の役割
奉仕種族は、主人である邪神のために様々な任務を遂行します。
- 暗殺者として敵対者を排除
- 使者として命令を伝達
- スパイとして情報を収集
- 信者の護衛や儀式の補助
- 封印を解くための活動
興味深いことに、同じ邪神を崇拝していても、奉仕種族同士が仲が良いとは限りません。
むしろ、ハスターに仕える者とクトゥルフに仕える者は敵対関係にあることが多いのです。
クトゥルフに仕える奉仕種族
クトゥルフは最も有名な旧支配者であり、多くの奉仕種族を従えています。
深きものども(Deep Ones)
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初出作品 | 『インスマスの影』(1931年) |
| 創造者 | H.P.ラヴクラフト |
| 居住地 | 海底都市、沿岸部の町 |
| 仕える神格 | クトゥルフ、ダゴン、ハイドラ |
外見と特徴
深きものどもは、魚と人間の特徴を併せ持つ水棲種族です。
その姿は実に不気味なんです。
- 鱗に覆われた緑がかった肌
- 飛び出した魚のような目
- 水かきのある手足
- エラによる水中呼吸が可能
人間との混血
深きものどもの最も恐ろしい特徴は、人間と交配できるという点です。
混血児は最初は普通の人間に見えますが、中年期になると「インスマス面」と呼ばれる特徴が現れ始めます。
目が飛び出し、肌が鱗状になり、最終的には海へ帰って不死の深きものとして生きるようになるのです。
「フングルイ・ムグルウナフ・クトゥルフ・ルルイエ・ウガナグル・フタグン」
これは深きものどもがクトゥルフに捧げる有名な祈祷文です。
意味は「ルルイエの館にて死せるクトゥルフ夢見るままに待ちいたり」。
クトゥルフの星の落とし子(Star-Spawn of Cthulhu)
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初出作品 | 『クトゥルフの呼び声』(1928年) |
| 創造者 | H.P.ラヴクラフト |
| 居住地 | ルルイエ、深海 |
| 仕える神格 | クトゥルフ |
外見と特徴
クトゥルフ本人に似た姿をした巨大な存在です。
タコのような頭部、鉤爪のある手、細い翼を持っていますが、クトゥルフよりは小さいサイズとなっています。
ルルイエが海に沈んだとき、多くの星の落とし子も共に封印されました。
しかし一部は深海の溝に逃れ、深きものどもに世話されながら今も存在しているとされます。
ハスターに仕える奉仕種族
ハスターは「名状しがたきもの」「黄衣の王」として知られる旧支配者です。
クトゥルフとは敵対関係にあるとされています。
バイアクヘー(Byakhee)
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初出作品 | 『祭祀』(1923年)※原型 |
| 創造者 | H.P.ラヴクラフト、オーガスト・ダーレス |
| 居住地 | 星間宇宙 |
| 仕える神格 | ハスター |
外見と特徴
バイアクヘーは星間宇宙を飛行する奇怪な生物です。
カラス、モグラ、バズードのような鳥、コウモリ、そして腐敗した人間の特徴が混じり合った、正視に耐えない姿をしています。
宇宙を駆ける能力
バイアクヘーの最大の特徴は、宇宙空間を光速の400倍で飛行できるという点。
体内にある「フーネ」という器官が銀河の磁場に同調し、この驚異的な飛行を可能にしています。
召喚者は「宇宙の蜜酒(Space Mead)」を飲むことで、バイアクヘーに乗って宇宙を旅することができるのです。
ただし、バイアクヘーは吸血生物でもあり、獲物に噛みつくと血を吸い続けます。
シュブ=ニグラスに仕える奉仕種族
シュブ=ニグラスは「千匹の仔を孕みし森の黒山羊」と呼ばれる外なる神です。
豊穣と多産を司る恐ろしい女神として知られています。
黒い仔山羊(Dark Young of Shub-Niggurath)
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初出作品 | 『無人の家で発見された手記』(1939年)の原型 |
| 創造者 | ロバート・ブロック |
| 居住地 | 深い森 |
| 仕える神格 | シュブ=ニグラス |
外見と特徴
黒い仔山羊は、樹木のような姿をした怪物です。
- 3〜4メートルの高さ
- 枝のような触手を多数持つ
- 幹には巨大な口がある
- 根が蹄になって歩行する
- 全体的に黒く、粘液に覆われている
狩りの方法
普段は森の中で大木のふりをして獲物を待ち伏せしています。
触手で捕らえた獲物の体液や内臓を貪り食うのです。
シュブ=ニグラスへの生贄を捧げる儀式でも重要な役割を果たします。
ニャルラトホテプに仕える奉仕種族
ニャルラトホテプは「這い寄る混沌」「千の貌を持つ者」として知られる外なる神です。
他の外なる神と違い、積極的に人間界に関わり、混沌を楽しむ存在として描かれます。
狩り立てる恐怖(Hunting Horror)
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初出作品 | 『未知なるカダスを夢に求めて』(1927年) |
| 創造者 | H.P.ラヴクラフト |
| 居住地 | 宇宙空間、暗闘 |
| 仕える神格 | ニャルラトホテプ |
外見と特徴
狩り立てる恐怖は、巨大な黒い蛇のような生物です。
- 体長は数十メートルにも達する
- 蝙蝠のような翼を持つ
- 体は常に変化し、輪郭が定まらない
- 日光を極端に嫌う
執拗な追跡者
一度標的に定められると、どこまでも追いかけてきます。
その名の通り「狩り立てる」ことに特化した、ニャルラトホテプの暗殺者なのです。
シャンタク鳥(Shantak)
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初出作品 | 『未知なるカダスを夢に求めて』(1927年) |
| 創造者 | H.P.ラヴクラフト |
| 居住地 | ドリームランド、レンの高原 |
| 仕える神格 | ニャルラトホテプ |
外見と特徴
シャンタク鳥は象よりも大きな鳥のような生物です。
- 馬に似た頭部
- 鱗に覆われた体
- 巨大な翼
- 羽毛はない
ドリームランドを飛び回り、ニャルラトホテプの命令を実行します。
興味深いことに、シャンタク鳥はナイトゴーントを恐れているとされます。
ツァトゥグァに仕える奉仕種族
ツァトゥグァは「ンカイの眠るもの」として知られる旧支配者です。
クラーク・アシュトン・スミスによって創造されました。
無定形の落とし子(Formless Spawn)
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初出作品 | 『サタンプラ・ゼイロスの物語』(1931年) |
| 創造者 | クラーク・アシュトン・スミス |
| 居住地 | ンカイの地下世界 |
| 仕える神格 | ツァトゥグァ |
外見と特徴
無定形の落とし子は、漆黒の液体のような生物です。
- 決まった形を持たない
- 自由に形を変えられる
- どんな隙間からでも侵入できる
- 複数の目を形成できる
ショゴスに似ていますが、より知性的で呪文を使うこともできるのです。
ツァトゥグァの神殿を守る番人として、侵入者を容赦なく襲います。
古のもの(Elder Things)が創造した種族
古のものは厳密には神格ではなく独立種族ですが、彼らが創造した奉仕種族は神話において重要な位置を占めています。
ショゴス(Shoggoth)
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初出作品 | 『狂気の山脈にて』(1936年) |
| 創造者 | H.P.ラヴクラフト |
| 居住地 | 南極、深海 |
| 創造者 | 古のもの(Elder Things) |
外見と特徴
ショゴスはクトゥルフ神話で最も有名な怪物の一つです。
- 直径約5メートルの巨大なアメーバ状の存在
- 虹色に輝く黒いゼリー状の体
- 表面に無数の目を形成する
- 自由に触手や器官を生成できる
「テケリ・リ!テケリ・リ!」
ショゴスが発する不気味な叫び声です。
この言葉はエドガー・アラン・ポーの『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』から借用されています。
反乱の歴史
もともとショゴスは古のものによって、海中建設作業のために創造された奴隷種族でした。
しかし時が経つにつれ知性を獲得し、ついには主人である古のものに反乱を起こしたのです。
この反乱が古のもの文明崩壊の一因となりました。
現在、ショゴスの一部はウボ=サスラという原初の神を崇拝しているとされます。
その他の重要な奉仕種族
炎の吸血鬼(Fire Vampires)
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 仕える神格 | クトゥグァ、フサッグア |
| 特徴 | 炎の精霊のような存在 |
星間宇宙に住む炎の生命体です。
光る点のような姿で現れ、獲物に触れると体を燃やしながら記憶を吸い取ります。
水に弱いという弱点を持っています。
星の精(Star Vampire)
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初出作品 | 『恐怖の山』(1936年) |
| 創造者 | フランク・ベルナップ・ロング |
| 特徴 | 普段は透明、吸血後に可視化 |
普段は完全に透明で見えません。
嘲笑するような音を発しながら獲物に近づき、血を吸います。
血を吸うと赤く染まって姿が見えるようになるのです。
チョー・チョー人(Tcho-Tchos)
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初出作品 | 『恐怖の山』 |
| 居住地 | ミャンマー、マレー半島 |
| 仕える神格 | ロイガー、ツァール、チャウグナー・フォーン |
ミャンマー奥地に住む小人族です。
身長は最大でも1.2メートルほど。
祖先はチャウグナー・フォーンが創造した「ミリ・ニグリ」という種族が人間と交配して生まれたとされています。
様々な邪神を崇拝し、周辺住民から恐れられている危険な種族です。
奉仕種族と独立種族の違い
分類の基準
TRPGでは、神話生物を以下のように分類しています。
| 分類 | 特徴 | 代表例 |
|---|---|---|
| 奉仕種族 | 特定の神格に仕える | 深きもの、バイアクヘー、ショゴス |
| 独立種族 | 特定の神に仕えない | グール、ミ=ゴ、イースの大いなる種族 |
境界線は曖昧
実は、この分類は作者や作品によって異なることがあります。
例えばミ=ゴは、独立種族とされることもあれば、ニャルラトホテプやシュブ=ニグラスの奉仕種族とされることもあるのです。
クトゥルフ神話は多くの作家によって拡張されてきたため、設定に揺れがあるのは当然のことといえます。
奉仕種族一覧表
主要な奉仕種族と仕える神格
| 奉仕種族 | 仕える神格 | 特徴 |
|---|---|---|
| 深きものども | クトゥルフ、ダゴン | 半魚人、人間と交配可能 |
| 星の落とし子 | クトゥルフ | クトゥルフに似た巨大生物 |
| バイアクヘー | ハスター | 星間飛行能力を持つ |
| 黒い仔山羊 | シュブ=ニグラス | 樹木状の怪物 |
| 狩り立てる恐怖 | ニャルラトホテプ | 巨大な黒い蛇 |
| シャンタク鳥 | ニャルラトホテプ | 象より大きな鳥 |
| 無定形の落とし子 | ツァトゥグァ | 黒い液体状の生物 |
| ショゴス | 古のもの→ウボ=サスラ | アメーバ状の巨大生物 |
| 炎の吸血鬼 | クトゥグァ | 炎の精霊 |
| チョー・チョー人 | ロイガー、ツァール | 小人族 |
TRPGでの奉仕種族の使い方
シナリオでの活用
奉仕種族は、TRPGシナリオにおいて非常に使いやすい存在です。
使いやすい理由
- 神格よりもステータスが低く、戦闘が成立する
- 正気度(SAN値)減少も控えめ
- 人間社会に紛れ込める種族もいる
- 神格への導入として最適
段階的な恐怖の演出
ベテランのキーパー(ゲームマスター)は、奉仕種族を段階的に登場させることで恐怖を演出します。
- まず奉仕種族の痕跡や噂を示す
- 奉仕種族との遭遇
- 奉仕種族の背後にある神格の存在を匂わせる
- 最終的に神格の影響を感じさせる
いきなり旧支配者を出すよりも、この流れの方が恐怖が増していくのです。
まとめ
クトゥルフ神話の奉仕種族は、邪神と人間世界をつなぐ重要な存在です。
主要な奉仕種族の特徴
- 深きものども:クトゥルフに仕える半魚人、人間と交配可能
- バイアクヘー:ハスターに仕える星間飛行生物
- 黒い仔山羊:シュブ=ニグラスの子供たち
- ショゴス:古のものが創造した反乱奴隷種族
これらの怪物たちは、単なる敵キャラクターではありません。
宇宙の真の支配者である邪神たちの意志を地上で実行する、恐るべき使者なのです。
TRPGをプレイする際は、奉仕種族の背後に控える神格の存在を意識すると、より深い恐怖を味わえるでしょう。
クトゥルフ神話の世界は深く、まだまだ多くの奉仕種族が存在します。
興味を持った方は、ラヴクラフトの原作や『マレウス・モンストロルム』などの資料集を手に取ってみてください。
ただし、知れば知るほど正気を失うかもしれませんが。


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