【吸血鬼・狼男・フランケンシュタイン】世界三大怪物とは?その起源と伝承を徹底解説

神話・歴史・伝承

ハロウィンの仮装でおなじみの吸血鬼、狼男、そしてツギハギだらけの人造人間。

この3体の怪物は、映画やゲーム、アニメなど現代のエンターテインメントに欠かせない存在になっています。でも、なぜこの3体が「世界三大怪物」と呼ばれるようになったのか、知っていますか?

実は、古代から語り継がれてきた恐ろしい伝説が、20世紀のハリウッド映画によって世界中に広まったんです。

この記事では、世界三大怪物それぞれの起源や伝承、そして恐ろしくも悲しい物語について詳しくご紹介します。


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概要

世界三大怪物とは、以下の3体の怪物を指します。

  • 吸血鬼(ヴァンパイア):蝙蝠を従え、夜の支配者として君臨する不死の存在
  • 狼男(ウェアウルフ):満月の夜に人から獣へと変身する悲劇の獣人
  • フランケンシュタインの怪物:稲妻の力で蘇った、巨大な人造人間

もともと西洋にこうした呼び方があったわけではありません。

この名称は、1920年代から1950年代にかけて、アメリカの映画会社ユニバーサル・ピクチャーズが製作したホラー映画シリーズがきっかけで生まれました。『魔人ドラキュラ』(1931年)、『フランケンシュタイン』(1931年)、『狼男』(1941年)などの作品が世界的に大ヒットし、この3体の怪物が特に高い人気を獲得したんです。

日本では、藤子不二雄Aの漫画『怪物くん』(1965年連載開始)によって、この3体の知名度が大きく上がりました。現在でもハロウィンの定番仮装として親しまれています。

なお、同じユニバーサル映画に登場する半魚人ミイラ男を加えて「四大怪物」「五大怪物」と呼ぶこともあります。


吸血鬼(ヴァンパイア)の伝承

東欧に伝わる恐怖の存在

吸血鬼は、人間の血を吸って永遠に生きる不死の怪物です。

もともとは東ヨーロッパ(セルビア、ルーマニア、ポーランドなど)の民間伝承から生まれた存在でした。死んだ人間が墓から蘇り、生きている人の血を吸うという恐ろしい言い伝えが、何世紀にもわたって語り継がれてきたんです。

「ヴァンパイア」という言葉自体は、セルビア語の「vampir」が起源とされています。

18世紀の吸血鬼パニック

1720年代から1730年代にかけて、東ヨーロッパで「吸血鬼パニック」と呼ばれる集団ヒステリーが起きました。

セルビアでは、ペータル・ブラゴイェヴィッチという男性が死後、息子のもとに現れて食べ物を求めたという話が広まります。息子がこれを拒むと翌日死亡し、その後も村人が次々と血を失って亡くなっていきました。

役人が調査のために墓を開けると、死体は腐敗しておらず、口から血が流れていたといいます。この事件は公式記録に残され、吸血鬼の存在がヨーロッパ中に知れ渡るきっかけになったんです。

ドラキュラ伯爵の誕生

現在私たちがイメージする「貴族的で知的な吸血鬼」は、1897年に発表されたブラム・ストーカーの小説『吸血鬼ドラキュラ』の影響が強いんです。

トランシルヴァニア(現在のルーマニア)の古城に住むドラキュラ伯爵は、黒いマントに身を包み、礼儀正しい紳士として振る舞います。しかしその優雅な外見の裏には、人間の血を求める恐ろしい本性が隠されていました。

ドラキュラのモデルは、15世紀に実在した人物ヴラド・ツェペシュ(串刺し公)だとされています。ただし、彼は残虐な処刑で有名でしたが、吸血鬼だったわけではありません。

吸血鬼の能力と弱点

主な能力

  • 不死性(永遠に生きる)
  • コウモリや狼への変身
  • 催眠術で人を操る
  • 超人的な力と速さ

弱点

  • 太陽の光
  • 十字架と聖水
  • ニンニク
  • 心臓に杭を打たれる
  • 流れる水を渡れない
  • 招待なしには家に入れない

狼男(ウェアウルフ)の伝承

古代ギリシャから続く獣人伝説

狼男は、人間が狼に変身する、または狼と人間の中間的な姿になる伝説上の存在です。

英語では「ウェアウルフ」(werewolf)、学術的には「リカントロープ」(lycanthrope)と呼ばれます。「ウェアウルフ」の「ウェア」は古い英語で「男」、「ウルフ」は「狼」を意味するので、直訳すると「男狼」となるんですね。

ギリシャ神話のリュカオン王

最も古い狼男伝説の一つが、リュカオン王の物語です。

アルカディア地方の王リュカオンは、神々の王ゼウスが人間に変装して訪れた際、本当に神かどうか試そうとしました。なんと人間の子供を殺して、その肉をゼウスに差し出したんです。

激怒したゼウスは、罰としてリュカオンを狼に変えてしまいました。この神話から、狼に変身する現象は「リカントロピー」と呼ばれるようになったんですね。

中世ヨーロッパの狼男裁判

14世紀から17世紀にかけて、ヨーロッパでは魔女狩りと同時に狼男狩りも行われました。

1589年、ドイツのベットブルクで起きたペーター・シュトゥンプ事件が有名です。この男性は25年間も狼に変身して16人の子供を殺害したとして処刑されました。彼は悪魔から魔法のベルトをもらい、それを身に着けると狼に変身できたと証言しています。

この事件をきっかけに、ドイツやフランスで狼男への恐怖が広まり、多くの人が狼男として告発されることになりました。

北欧の狼戦士

北欧神話には「ウールヴヘジン」と呼ばれる狼の毛皮をまとった戦士が登場します。

主神オーディンに仕える特別な戦士で、戦場では狼のように獰猛に戦い、痛みを感じなかったといいます。彼らは自らの意思で狼の力を借りる、いわば「聖なる狼男」でした。

狼男の変身条件と弱点

変身のきっかけ

  • 満月を見る(最も有名だが、実は映画での創作)
  • 狼の毛皮や特別なベルトを身に着ける
  • 悪魔との契約
  • 狼男に噛まれる(感染する)
  • 呪いをかけられる

弱点

  • 銀の武器(銀の弾丸が有名)
  • 朝になると人間に戻る
  • 変身後は記憶を失うことが多い

フランケンシュタインの怪物の伝承

18歳の女性作家が生んだ不朽の名作

フランケンシュタインの怪物は、1818年にイギリスの作家メアリー・シェリーが発表した小説『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』に登場する人造人間です。

実は「フランケンシュタイン」という名前、怪物の名前じゃないんです。これは怪物を作った大学生ヴィクター・フランケンシュタインの名前で、怪物自体には名前がありません。

作者のメアリー・シェリーも、舞台版の台本で怪物の名前が「____」(アンダーバー)になっているのを見て喜んだという記録が残っています。

ディオダティ荘の怪奇談義

1816年の夏、スイスのジュネーヴ湖畔で起きた出来事が、この物語の始まりでした。

詩人バイロン卿の別荘に集まった若者たちが、雨で外出できない退屈しのぎに「みんなで怪談を書こう」と提案したんです。この「ディオダティ荘の怪奇談義」と呼ばれる出来事で、18歳のメアリーが悪夢から着想を得て書き上げたのが『フランケンシュタイン』でした。

物語のあらすじ

スイスの名家出身の青年ヴィクター・フランケンシュタインは、ドイツのインゴルシュタット大学で自然科学を学んでいました。生命の謎に取りつかれた彼は、墓を暴いて死体を集め、それをつなぎ合わせて「理想の人間」を作ろうとします。

11月のある夜、ついに人造人間の創造に成功。しかし、その醜い姿に絶望したヴィクターは、怪物を残して逃げ出してしまいます。

捨てられた怪物は人間の言葉を学び、知識を身につけていきますが、どこへ行っても醜い姿のために迫害されました。孤独に苦しんだ怪物は創造主に「自分と同じ女性の怪物を作ってくれ」と懇願します。しかし、ヴィクターが約束を破ったことで、怪物は復讐の鬼と化しました。

最後は北極海まで追跡劇が続き、ヴィクターは力尽きて死んでしまいます。創造主の死を嘆いた怪物は、「北極点で自ら焼け死ぬ」と言い残して姿を消しました。

プロメテウスとの関連

副題の「現代のプロメテウス」は、ギリシャ神話で人類に火をもたらした神プロメテウスになぞらえています。

プロメテウスが神の領域を侵して火を盗んだように、フランケンシュタインは生命創造という神の領域に踏み込んだことを表しているんです。

怪物の姿と能力

外見的特徴

  • 身長2メートル以上の巨体
  • 複数の死体をつなぎ合わせた、つぎはぎだらけの体
  • 黄ばんで透けて見える皮膚
  • くすんで濁った目

能力

  • 超人的な体力と怪力
  • 高い知性(わずか数ヶ月で複数の言語を独学でマスター)
  • 人間と同じ感情を持つ
  • 過酷な環境でも生き延びる強靭な生命力

三大怪物に共通するもの

悲劇的な存在

世界三大怪物には、ある共通点があります。それは、単なる恐怖の対象ではなく、悲劇的な存在として描かれているということです。

  • 吸血鬼:永遠の命と引き換えに、人間性と太陽の光を失った
  • 狼男:自分の意思とは関係なく、愛する人を傷つけてしまう
  • フランケンシュタインの怪物:醜い外見のせいで誰からも愛されなかった

どの怪物も、人間社会から排除された孤独な存在なんです。だからこそ、恐ろしいだけでなく、どこか同情を誘う魅力があるのかもしれません。

ユニバーサル映画の功績

1931年の『魔人ドラキュラ』でベラ・ルゴシが演じたドラキュラ、同年の『フランケンシュタイン』でボリス・カーロフが演じた怪物、1941年の『狼男』でロン・チェイニー・ジュニアが演じた狼男。

これらの俳優たちが作り上げたイメージは、現在でも各怪物の「定番」として受け継がれています。特にボリス・カーロフが演じた、四角い頭と首のボルトのある怪物の姿は、原作小説には登場しない映画オリジナルのデザインなんです。


まとめ

世界三大怪物は、古代から語り継がれてきた伝説が、20世紀のハリウッド映画によって世界中に広まった存在です。

重要なポイント

  • 世界三大怪物は吸血鬼、狼男、フランケンシュタインの怪物の3体
  • ユニバーサル・ピクチャーズの1930〜40年代のホラー映画がきっかけで名付けられた
  • 吸血鬼は東欧の民間伝承、狼男は古代ギリシャ神話にまで遡る
  • フランケンシュタインの怪物は1818年に18歳の女性作家が創作
  • どの怪物も「悲劇的な存在」という共通点を持つ
  • 日本では『怪物くん』によって知名度が大幅に上がった
  • 半魚人やミイラ男を加えて四大・五大怪物とすることもある

単なる恐怖の象徴ではなく、人間の内なる闘いや孤独を映し出す鏡として、これらの怪物は今も多くの作品に登場し続けています。

もし夜道で不気味な影を見かけたら…それはあなたの想像でしょうか、それとも?

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