山で焚き火をしながら休んでいるとき、毛深い猿のような生き物が現れて「お前は今、恐いと思ったな」と心の中を言い当てられたら、あなたはどう思いますか?
江戸時代の人々にとって、それは単なる野生動物ではありませんでした。
それは人の心を読む不思議な能力を持った妖怪「覚(さとり)」だったのです。
この記事では、飛騨や美濃の山奥に住む心読み妖怪「覚」について詳しくご紹介します。
覚ってどんな妖怪なの?

覚(さとり)は、人の心を読む能力を持った日本の妖怪です。
鳥山石燕の『今昔画図続百鬼』にも記録されており、主に岐阜県(飛騨・美濃)の山奥に住むとされています。
毛深い猿のような姿をしており、人間の心を読んで口に出すという特殊な能力を持っています。
基本的には人を食べる恐ろしい妖怪ですが、時には単なる山の隣人として描かれることもある、複雑な性格を持った存在なんです。
姿・描写
覚の姿は、野生的で印象的です。
基本的な特徴
- 毛深い猿のような姿: 全身が毛で覆われている
- 色黒: 肌の色は黒い
- 人間のような特徴: 猿と人間の中間的な姿
- 山に住む: 深い山奥が住処
古典での記述
『今昔画図続百鬼』での描写
- 色黒く毛が長い
- 人の言葉を話すことができる
- 人の心を察する能力を持つ
- 基本的に人に害をなさない
- 殺そうとすると先に察知して逃げる
特徴
覚には独特な能力と行動パターンがあります。
心を読む能力
- 相手の考えを言い当てる: 「お前は恐いと思ったな」など
- 意図を先読み: 殺されそうになると事前に察知
- 隙を狙う: 心を読んで人を食べる機会を伺う
出現パターン
- 山中での遭遇: 深い山で人間と遭遇
- 焚き火の近く: 特に焚き火をしている時に現れる
- 一人の時: 単独行動の人間を狙う
弱点と退治法
意外な出来事に弱い
- 木片や焚き木が偶然跳ねてぶつかる
- 予想外の出来事に驚いて逃げる
- 「人間とは思わぬことをする」と言って去る
竹の爆ぜる音
中国の類似伝承では、竹が燃えて爆ぜる音に驚いて逃げることから、爆竹の由来になったとも言われています。
伝承

覚の伝承は全国各地に広がっています。
基本的な物語パターン
典型的な遭遇話
- 山中で人間が焚き火をしている
- 覚が現れて心の中を次々と言い当てる
- 隙を見て人を食べようとする
- 偶然、焚き木が跳ねて覚にぶつかる
- 覚が驚いて「思わぬことをする」と言って逃げる
起源と変遷
中国からの影響
- 中国の「玃(やまこ)」が原型
- 『和漢三才図会』の「黒ん坊」の記述
- 「玃」から「覚」への漢字の変化
民俗学的解釈
- 「ワッパ」は童子を意味する
- 本来は心を読む童子の話
- 山神の化身が零落して妖怪化した説
まとめ
覚は、人の心を読む能力を持つ興味深い妖怪です。
重要なポイント
基本的な特徴
- 毛深い猿のような姿で山に住む
- 人の心を読んで口に出す特殊能力
- 基本的に人を食べる恐ろしい妖怪
行動パターン
- 山中の焚き火の近くに現れる
- 相手の心を次々と言い当てる
- 隙を見て人を食べようとする
弱点
- 予想外の出来事に弱い
- 偶然の出来事に驚いて逃げる
- 特に跳ねる焚き木や竹の音が効果的
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