【海底に眠る恐怖の都市】クトゥルフ神話「ルルイエ」とは?その場所・構造・伝説をやさしく解説!

神話・歴史・伝承

南太平洋の深い海の底に、人知を超えた恐ろしい都市が沈んでいるという伝説を聞いたことはありますか?

その名は「ルルイエ」。

狂気の石造建築が立ち並び、その奥深くには「大いなるクトゥルフ」という恐怖の存在が、目覚めの時を待ち続けているというのです。

この記事では、クトゥルフ神話を代表する海底都市「ルルイエ」について、その場所や構造、恐ろしい伝説を分かりやすくご紹介します。

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概要

ルルイエ(R’lyeh)は、アメリカの怪奇小説家H.P.ラヴクラフトが創造した、クトゥルフ神話に登場する架空の海底都市です。

1928年に発表された短編小説『クトゥルフの呼び声』で初めて登場し、以来クトゥルフ神話の中核をなす重要な場所として知られています。

現在は南太平洋の海底深くに沈んでいますが、いつの日か地上に浮上し、そのとき眠り続けていた恐るべき存在「クトゥルフ」が目覚めて世界を支配すると語り継がれているんです。

遥か太古の地殻変動によって海に沈んだこの都市は、人類が誕生するはるか以前から存在していたとされ、「死の眠り」についたクトゥルフとその眷属たちが、復活の日を静かに待ち続けています。

場所・位置

ルルイエがある場所は、実は具体的な座標まで設定されているんです。

正確な座標

南緯47度9分、西経126度43分

この場所は、ニュージーランドとチリ西岸、そして南極大陸の中間付近に広がる南太平洋の絶海の海域です。イースター島を北東に臨む位置にあります。

最も孤独な海域

興味深いことに、この座標は現実世界の「ポイント・ネモ(太平洋到達不能点)」に非常に近い場所なんです。

ポイント・ネモとは?

  • 地球上のどの陸地からも最も遠い海上の地点
  • 最寄りの陸地まで約2,688km
  • 「到達不能極」とも呼ばれる

つまり、ラヴクラフトは恐怖の都市を、地球上で最も人間から隔絶された場所に設定したわけですね。

なお、作品や作家によってルルイエの位置は若干異なることがあります。オーガスト・ダーレスという作家は南緯49度51分、西経128度34分という座標を設定していますし、他の作品ではバルト海やカリフォルニア沖に登場することも。

でも、最も有名なのはやはり、ラヴクラフトが最初に設定した南太平洋の座標です。

姿・構造

ルルイエの建築は、人間の常識では理解できないほど異様なんです。

非ユークリッド幾何学の狂気

ルルイエの最大の特徴は、非ユークリッド幾何学で構成されているということ。

難しい言葉ですが、簡単に言うと「私たちが知っている普通の空間の法則に従っていない」ということなんです。

建築の特徴

  • 常識では考えられない角度と曲線
  • 見る角度によって形が変わるように見える
  • 水平なのか垂直なのか判断できない構造
  • 鋭角なのに鈍角のように振る舞う角
  • 存在してはいけない場所に壁や通路がある

作中では、探検者の一人が「石造りの装飾を登っていった――いや、それが水平だったとしたら、登ると呼べるのかどうか」という混乱した証言を残しています。

別の船員は「存在するはずのない角度に飲み込まれた」とも。この建築を見た者は、現実感を失い、精神に異常をきたすことさえあるそうです。

外観の描写

色と素材

  • 暗緑色、あるいは緑がかった黒色の巨大な石造建築
  • 表面は緑色の泥や粘着物に覆われている
  • ぬめりを帯びた海藻や堆積物が付着

全体構造

  • 無数の石柱と建造物が立ち並ぶ
  • 中心部には山のように聳え立つ巨大な神殿(館)
  • サイクロプス(一つ目の巨人)の仕業かと思わせる巨大な石積み

この神殿こそが、クトゥルフが眠る場所なんです。

クトゥルフとの関係

ルルイエは、恐るべき存在「大いなるクトゥルフ」の居城です。

クトゥルフとは?

クトゥルフは、クトゥルフ神話の中心的存在である邪神の一柱。

外見の特徴

  • タコのような頭部
  • 人間のような体
  • コウモリのような翼
  • ぬらぬらとした緑色の皮膚
  • 巨大な体(山のような大きさ)

このクトゥルフが、ルルイエの神殿の奥深く、緑色のぬめった地下空間で「死の眠り」についているんです。

「死せるクトゥルフ」の意味

クトゥルフは完全に死んでいるわけではありません。「死にも似た深い眠り」の状態にあるんです。

この状態で、クトゥルフは夢を見続けています

そして、この夢が地上の感受性の強い人々、特に芸術家たちに影響を与え、悪夢や狂気をもたらすとされているんですね。

眷属たち

クトゥルフだけでなく、その配下である「眷属(けんぞく)」たちもルルイエに潜んでいます。

深きものども

  • 半魚人のような姿の邪悪な種族
  • ルルイエを守護する役割
  • 海中を自由に泳ぎ回る

これら眷属も、主であるクトゥルフとともに復活の日を待っているのです。

浮上の伝説

ルルイエは永遠に海底に沈んでいるわけではありません。

1925年の浮上事件

『クトゥルフの呼び声』の作中では、1925年3月23日から約1週間、ルルイエの一部が実際に海面上に姿を現したという出来事が描かれています。

浮上の原因

  • 海底火山の活動
  • 地殻変動
  • 一説には、秘密結社「銀の黄昏錬金術会」の儀式が引き起こしたとも

ノルウェーの船員グスタフ・ヨハンセンは、この浮上したルルイエを偶然発見し、上陸してしまいます。そこで彼が見たものは…。

世界規模の狂気

恐ろしいことに、ルルイエの浮上と同時期、世界中で異変が起きました

影響を受けた人々

  • 芸術家たちが次々と精神に異常をきたす
  • 悪夢や幻覚に苦しむ人が続出
  • 奇妙な作品や絵画を残す者も
  • 自殺者が大量に発生
  • 恐怖に耐えきれず発狂する者も

これらはすべて、目覚めかけたクトゥルフの力、その「波動」が原因だったとされています。特に感受性の強い人々が、クトゥルフの夢の影響を受けてしまったんですね。

再び沈むルルイエ

しかし、浮上は長くは続きませんでした。

ヨハンセンたちが命からがら逃げ出した後、ルルイエは再び海底へと沈んでいったのです。

こうして、クトゥルフは再び「死の眠り」へと戻り、世界の狂気も収まっていきました。

完全復活の預言

クトゥルフ教団の信者たちは、こう信じています。

「星辰が正しき位置に並ぶとき、クトゥルフは完全に目覚め、ルルイエは永久に浮上し、世界は支配される」

その日が来るまで、ルルイエは海底で静かに、しかし確実に、その時を待ち続けているのです。

ルルイエ語

ルルイエには、独特の言語も存在します。

発音困難な言語

ルルイエ語は、クトゥルフが外宇宙からもたらした人類以前の古い言語です。

この言語の特徴は、人間の口の構造では正確に発音することが非常に難しいということ。くぐもった歯擦音(「シュー」「ジュー」のような音)が多く含まれ、喉の奥で響かせるような独特の発音が必要なんです。

有名な祈りの言葉

クトゥルフ信者の間で最も有名なのが、この祈りの言葉です。

Ph’nglui mglw’nafh Cthulhu R’lyeh wgah’nagl fhtagn

カタカナ表記すると:
「フングルイ ムグルウナフ クトゥルフ ルルイエ ウガフナグル フタグン」

その意味は:
「ルルイエの館にて死せるクトゥルフ、夢見るままに待ちいたり」

この言葉は、クトゥルフ神話を象徴する最も重要な呪文として、様々な作品に登場します。信者たちは集会でこの言葉を唱え、クトゥルフの復活を祈り続けているんです。

ルルイエ異本

オーガスト・ダーレスという作家が創造した架空の書籍『ルルイエ異本』は、ルルイエとクトゥルフ崇拝について記された禁断の書とされています。

この書物には、ルルイエ語で書かれた儀式や呪文、クトゥルフを目覚めさせる方法などが記されているという設定なんです。

起源・初出

ルルイエは、どのようにして生まれたのでしょうか。

H.P.ラヴクラフトの創造

ルルイエは、1926年に執筆され、1928年2月に雑誌『ウィアード・テイルズ』で発表された短編小説『クトゥルフの呼び声』で初めて登場しました。

作者:ハワード・フィリップス・ラヴクラフト

  • 1890-1937年
  • アメリカの怪奇小説家
  • クトゥルフ神話の創始者
  • 宇宙的恐怖を描く作風で知られる

物語の構成

『クトゥルフの呼び声』は、3つの手記から構成されています。

  1. 死んだ大叔父が残した調査記録
  2. 世界各地で起きた奇妙な事件の報告
  3. ノルウェー船員ヨハンセンの体験談

この第3部で、ヨハンセンがルルイエを発見し、目覚めかけたクト�ュルフと遭遇する恐怖が描かれているんです。

名前の由来

「ルルイエ」という名前は、人間の言葉ではないという設定があります。

R’lyehという綴りは、あくまで英語での当て字に過ぎず、ラヴクラフト自身がどのような発音を想定していたかは明らかになっていません。

日本語では「ルルイエ」「ルルイェ」「ル・リエー」「ラ・イラー」など、様々な表記が存在します。

その後の展開

ラヴクラフトの死後、多くの作家たちがクトゥルフ神話を受け継ぎ、発展させました。

登場作品の例

  • 『永劫の探究』(オーガスト・ダーレス)
  • 『アルハザードのランプ』(ラヴクラフト&ダーレス)
  • 『アーカム計画』(ロバート・ブロック)

日本でも、菊地秀行の『妖神グルメ』、逢空万太の『這いよれ!ニャル子さん』など、多くの作品にルルイエが登場しています。

こうして、ルルイエは一つの小説から生まれ、今や世界中で知られる神話的な場所となったのです。

まとめ

ルルイエは、クトゥルフ神話における恐怖の中心地です。

重要なポイント

  • H.P.ラヴクラフトが創造した架空の海底都市
  • 南太平洋の海底(南緯47度9分、西経126度43分)に沈む
  • 非ユークリッド幾何学の狂気じみた建築構造
  • 大いなるクトゥルフが「死の眠り」についている
  • 1925年に一時的に浮上し、世界中に狂気をもたらした
  • 「星辰が正しき位置に並ぶとき」完全復活すると預言される
  • ルルイエ語という独特の言語が存在する
  • 『クトゥルフの呼び声』(1928年)で初登場

深い海の底で、今もクトゥルフは夢を見続けています。その夢が、いつの日か現実となり、ルルイエが永久に浮上する日が来るのでしょうか。それとも、永遠に海底に封じられたままなのでしょうか。

その答えは、誰にも分かりません。ただ一つ確かなのは、南太平洋の暗い海底で、何かが静かに待ち続けているということだけなのです。

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