【クトゥルフ神話最古の魔道書】ナコト写本とは?人類以前の知識を記した禁断の書

神話・歴史・伝承

もしも、人類が誕生するよりもずっと前の時代に書かれた本があったとしたら、あなたは読んでみたいと思いますか?

クトゥルフ神話の世界には、そんな想像を絶する古さを持つ魔道書が存在します。それが「ナコト写本」です。

人間ではない生物によって記され、失われた古代王国で翻訳されたこの書物には、宇宙の真実と恐るべき儀式が記されているといいます。この記事では、クトゥルフ神話に登場する最古の魔道書「ナコト写本」について、その成り立ちから内容まで詳しくご紹介します。

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概要

ナコト写本(Pnakotic Manuscripts)は、クトゥルフ神話に登場する架空の魔道書の中でも、最も古い時代に書かれたとされる文献です。

この書物の特徴は、人類が誕生する遥か以前に作成されたという点にあります。1920年にH・P・ラヴクラフトが短編小説『北極星』で初めて言及し、その後の多くの作品で重要な役割を果たしてきました。

クトゥルフ神話の代表的な魔道書「ネクロノミコン」よりもさらに古く、人類以前の知識を伝える唯一の記録として、物語の中で重要な位置を占めています。

成立と歴史

ナコト写本の歴史は、想像を絶するほど古い時代まで遡ります。

原本の誕生

この書物の原本を記したのは、なんとウミウシのような姿をした生物だったといわれています。氷河時代よりもさらに前、人類どころか哺乳類すら存在していなかった時代の話なんですね。

当然ながら、人間には読めない記号や文字で書かれていました。

ロマール王国での翻訳

時が流れ、氷河期以前の北極圏に「ロマール王国」という古代文明が栄えました。このロマール人たちが、初めてウミウシ生物の記録を人間の言葉に翻訳したんです。

ロマール王国は、毛むくじゃらの食人種族「ノフ=ケー族」によって滅ぼされてしまいます。その最後の瞬間、ロマール人は最後の一冊を「夢の国(ドリームランド)」と呼ばれる異次元世界に持ち込みました。

現在の保管場所

夢の国に持ち込まれた完全版は、現在も「ウルタール」という都市の神殿に保管されています。夢の国の賢者パルザイは、この書物から「大地の神々」についての知識を学んだといわれているんです。

目覚めの世界(私たちの現実世界)には、15世紀に英訳された不完全な写本が5冊ほど存在しています。ミスカトニック大学附属図書館やロンドンのロジャーズ博物館などに所蔵されているそうです。

記されている内容

ナコト写本には、どんなことが書かれているのでしょうか。

超古代の視点

この書物の最大の特徴は、人類誕生より遥かに以前の視点で書かれていることです。更新世(約260万年前から約1万年前)のウミウシ状生物の記録が含まれているんですね。

ただし、ロマール人が写本を作成した際に彼らの主観が入り込んでいるため、北極圏の地理に関する記述が多くなっています。

登場する存在たち

ナコト写本には、クトゥルフ神話の重要な存在について詳しく書かれています。

記述されている主な存在

  • イスの偉大なる種族:超銀河団からやってきた時間を超越する種族
  • ツァトゥグァ:外宇宙の神。ロマール人にも信仰されていた
  • イタクァ:風を司る恐るしい存在
  • シャッガイ:約300万年前にアラスカに降り立った神性

特にシャッガイについては、ナコト写本が唯一の記録となっているんです。

儀式と魔術

ナコト写本には、実用的な魔術の知識も含まれています。

  • 後催眠による精神操作の方法
  • 銀の鍵を用いた儀式
  • 時間遡行薬の製法(ナコト五角形という護符とセットで使用)

これらの儀式は非常に危険で、誤って実行すると取り返しのつかない結果を招くとされています。

現存する写本

現実世界に存在する写本は、すべて不完全なものです。

英訳版の所蔵先

15世紀に作られた英語翻訳の写本は、以下の場所に保管されているといわれています。

  • ミスカトニック大学附属図書館(マサチューセッツ州アーカム):3冊以上
  • ロジャーズ博物館(ロンドン):1冊
  • 星の智慧派教会(プロヴィデンス):1冊

ミスカトニック大学の所蔵冊数が多いのは、死亡した魔術師たちの遺品として寄贈されたためです。

断片的な記述

完全版は夢の国にしか存在しないため、現実世界の写本はどれも欠落部分があります。「第八断片」には謎の存在ラーン=テゴスについて詳しく書かれているなど、断片ごとに内容が異なるんですね。

関連する文献

ナコト写本と深い関係を持つ文献があります。

エルトダウン・シャーズ

1882年にイギリス南部のエルトダウンで発掘された23枚の粘土板です。三畳紀(約2億年前)の地層から見つかったこの粘土板は、人類以前の言語で刻まれていました。

アーサー・ブルック・ウィンスタース=ホール牧師が一部を英訳し、1912年に小冊子として出版しています。この翻訳内容が、ナコト写本と似ていると指摘されているんです。

どちらも「イスの偉大なる種族」について触れており、宇宙から来た種族と地球の関係について記述しています。

ナコティカ

古代ギリシャ語で書かれた文献「ナコティカ」の存在も確認されています。ナコト写本の書名「ナコト」が何を意味するのかは不明ですが、このギリシャ語文献と関係があるのではないかと考えられているんですね。

もう一つの説として、イスの偉大なる種族の都市「ナコタス」が語源という可能性も指摘されています。

物語での役割

ナコト写本は、多くのクトゥルフ神話作品に登場します。

ラヴクラフト自身が『北極星』『蕃神』『未知なるカダスを夢に求めて』『狂気の山脈にて』『銀の鍵の門を越えて』『時間からの影』など、多数の作品で言及しているんです。

特に『時間からの影』では、主人公がイスの偉大なる種族について調べる際に、ナコト写本が重要な手がかりとなります。

後の作家たちも、オーガスト・ダーレス、リン・カーター、ロバート・M・プライスといった作家たちが自作品でナコト写本を取り上げ、設定を拡張してきました。

まとめ

ナコト写本は、人類以前の知識を伝える最古の魔道書です。

重要なポイント

  • クトゥルフ神話で最も古い時代に書かれた魔道書
  • ウミウシ状の生物が原著者で、ロマール人が人間の言葉に翻訳
  • 完全版は夢の国のウルタールに保管
  • 現実世界には15世紀の英訳版が5冊ほど現存
  • イスの偉大なる種族など、人類以前の存在について詳述
  • 時間遡行薬や精神操作など、危険な儀式も記載
  • エルトダウン・シャーズと内容が類似
  • H・P・ラヴクラフトが1920年に創造

ナコト写本は、クトゥルフ神話における「知識の危険性」を象徴する存在といえるでしょう。人間が知るべきではない太古の真実を記したこの書物は、読む者に恐怖と狂気をもたらすかもしれません。


参考文献

本記事は以下の資料を参考にして作成しました。

  • “ENCYCLOPEDIA CTHULHIANA” Chaosium(クトゥルフ神話事典)
  • Wikipedia日本語版「ナコト写本」項目
  • Wikipedia英語版 “Cthulhu Mythos arcane literature” 項目
  • H・P・ラヴクラフト『ラヴクラフト全集』各作品
  • 『クトゥルフ神話TRPG キーパーコンパニオン』(Chaosium/KADOKAWA)

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