「この世界は、どうやって生まれたんだろう?」
子供の頃、一度はこんな疑問を持ったことがあるのではないでしょうか。
実は、今から約1800年前の中国の人々も、同じ疑問を抱いていました。
そして、その答えとして語り継がれてきたのが、巨人の神様「盤古(ばんこ)」の壮大な物語です。
想像してみてください。何もない真っ暗な世界に、たった一人の巨人が目覚める。その巨人が斧を振り下ろすと、天と地が生まれ、さらに自分の体を犠牲にして、太陽や月、山や川を作り出していく——。
まるでファンタジー映画のような展開ですが、これこそが中国最古の天地創造神話なんです。しかも、ただのおとぎ話ではありません。この神話には、古代中国の人々の世界観や、私たちが生きる世界への深い洞察が込められています。
この記事では、盤古がどんな神様なのか、どうやって世界を作ったのか、そして最後にどんな犠牲を払ったのかを、分かりやすくご紹介します。
盤古とは何者か

みなさんは、この世界がどうやってできたか考えたことはありますか?
昔の中国の人々も、同じことを考えていました。そして生まれたのが、盤古という巨人の神様のお話です。
盤古は、中国神話で一番はじめに登場する「天地開闢(てんちかいびゃく)」の神様です。
天地開闢というのは、簡単にいうと「世界の始まり」のこと。
まだ何もなかった時代に、天と地を分けて、この世界を作ったとされています。
盤古のお話が初めて書かれたのは、今から約1800年前の三国時代。『三五歴紀(さんごれきき)』という本に登場します。
道教では「元始天尊(げんしてんそん)」や「盤古真人(ばんこしんじん)」とも呼ばれ、とても大切にされている神様なんですよ。
【ここがポイント!】
- 中国で一番古い創造神
- 天と地を分けた巨人
- 道教でも大切にされている
盤古は、ただの神様ではありません。この世界のすべての元になった、特別な存在なのです。
では、盤古はいったいどんな役割を果たしたのでしょうか?
次の章で、詳しく見ていきましょう。
役割
盤古の役割は、一言でいうと「世界を作ること」でした。
でも、それだけじゃないんです。
まず、盤古がやったのは、ごちゃごちゃに混ざっていた天と地をきれいに分けることでした。
昔の世界は、まるで卵の中身のように、すべてが混ざり合った「混沌(こんとん)」という状態だったそうです。
そこに生まれた盤古が、斧(おの)とノミを使って、天と地を切り離したといわれています。
でも、ただ分けただけでは、またくっついてしまうかもしれません。
そこで盤古は、なんと1万8000年もの間、天を支え続けたのです!
毎日少しずつ背が伸びて、天はどんどん高くなり、地はどんどん深くなっていきました。
【盤古が果たした3つの役割】
- 混沌から秩序を作る
- 天と地を分ける
- 世界を支え続ける
さらに盤古は、ただ世界を作っただけではありません。
自分の体そのものが、やがて世界のすべてになるという、驚きの運命を背負っていたのです。
盤古の役割は、まさに「世界そのものになること」だったといえるでしょう。
では、その壮大な創世の物語は、どのように始まったのでしょうか?
創世の物語

はるか昔、まだ何もなかった頃。
世界は、まるで大きな卵のようでした。
天も地もなく、光も闇もない。
すべてがごちゃ混ぜになった「混沌」という状態が、ずっと続いていたのです。
その混沌の中で、盤古は静かに眠っていました。
なんと1万8000年もの間!
そして、ついに目を覚ます時が来たのです。
目を覚ました盤古は、周りを見回しました。
でも、どこもかしこも、ごちゃごちゃで狭苦しい。
「これではいけない」と思った盤古は、右手に斧、左手にノミを持って、思い切り振り下ろしました。
すると、不思議なことが起こったのです。
軽くて澄んだものは、ふわふわと上に昇って「天」になりました。
重くて濁ったものは、下に沈んで「地」になったのです。
やっと世界に、上と下ができたんですね。
でも盤古の仕事は、まだ終わりません。
せっかく分けた天と地が、また くっつかないように、自分の体で支えることにしました。
頭で天を押し上げ、足で地を踏みしめて、まるで柱のように立ち続けたのです。
【創世の流れ】
- 混沌の中で1万8000年眠る
- 目覚めて斧とノミで混沌を切り開く
- 天と地が分かれる
- 体で支えて、さらに1万8000年
毎日、盤古の背丈は一丈(約3メートル)ずつ伸び、天も一丈ずつ高く、地も一丈ずつ深くなっていきました。
こうして、広々とした世界ができあがったのです。
でも、この壮大な仕事を成し遂げた盤古には、さらに驚くべき運命が待っていました。
盤古の犠牲と世界の誕生

1万8000年もの間、天地を支え続けた盤古は、ついに力尽きてしまいました。
でも、そこからが本当にすごいお話なんです。
倒れた盤古の体から、この世界のありとあらゆるものが生まれたというのです!
まず、盤古が吐いた息は、風や雲になりました。声は雷の音に、左目は太陽に、右目は月になったそうです。
髪の毛やひげは、夜空に輝く星になりました。
体の部分も、いろいろなものに変わっていきました:
【盤古の体が変化したもの】
- 頭や手足 → 山々(五岳という中国の有名な山)
- 血液 → 川や海
- 筋肉 → 大地の豊かな土
- 骨 → 金属や宝石
- 皮膚 → 草や木
- 汗 → 雨や露
なんと、体についていた小さな虫まで、風に吹かれて地上の生き物になったといわれています。
つまり、私たちが今見ているもの、触れるもの、すべてが盤古の体からできているということなんです。
盤古は、ただ世界を作っただけではありません。
自分自身が世界そのものになって、すべての命を支えているのです。
これこそが、盤古の最大の「犠牲」であり、最も素晴らしい「贈り物」だったといえるでしょう。
太陽が昇るたび、川が流れるたび、そこには盤古の命が息づいている。
そう考えると、なんだか世界の見え方が変わってきませんか?
まとめ
盤古の物語を通して、昔の中国の人々が、どのように世界の始まりを考えていたかが分かりましたね。
盤古は、ただの神様ではありませんでした。
混沌から目覚め、天と地を分け、3万6000年という気が遠くなるような時間をかけて世界を作り上げた、偉大な創造神だったのです。
そして最後には、自分の体すべてを捧げて、この世界の元になりました。
中国には、ほかにも女媧(じょか)や伏羲(ふくぎ)といった神様のお話があります。
でも、世界そのものの始まりを語る盤古の物語は、やはり特別な存在として、今も大切にされているのです。
みなさんも、空を見上げたり、山を眺めたりするとき、そこに盤古の姿を思い浮かべてみてください。
きっと、世界がもっと不思議で、もっと素敵に見えてくるはずですよ。
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