【神話・伝承】東洋の龍の一覧|龍の種類と特徴を徹底解説!

神話・歴史・伝承

空を駆け、雨を降らせ、時に人々を守り、時に災いをもたらす存在——それが「龍」です。

中国や日本をはじめとするアジアの神話には、実にさまざまな龍が登場します。青い龍、黒い龍、海を支配する龍王、そして9人の息子を持つ龍まで。

「龍ってそもそも何種類いるの?」「四神の青龍と普通の龍は何が違うの?」

そんな疑問を持ったことはありませんか?

この記事では、東洋の神話・伝承に登場するさまざまな龍の種類と特徴を、分かりやすく一覧形式でご紹介します。


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概要

龍(りゅう)は、古代中国に起源を持つ想像上の霊獣です。

その概念は日本、朝鮮、ベトナムなど東アジア全域に広がり、それぞれの文化の中で独自の発展を遂げてきました。

東洋の龍の主な特徴をまとめると、以下のようになります。

龍の基本的な特徴

  • 姿:蛇のような長い体、4本の足、角、ひげを持つ
  • 能力:雲を呼び、雨を降らせる水神としての力
  • 性質:神聖な霊獣として崇められる存在
  • 象徴:皇帝の権威、豊穣、幸運の象徴

西洋のドラゴンが「倒すべき悪の象徴」として描かれることが多いのに対し、東洋の龍は神に近い存在として敬われてきたんですね。

では、具体的にどんな龍がいるのか見ていきましょう。


五色の龍(五方龍王)

中国には、五行思想に基づいた5種類の龍が存在します。

それぞれが方角と季節、そして色と結びついているのが特徴的です。

青龍(せいりゅう)

項目内容
方角
季節
五行

青龍は東方を守護する龍で、四神の一つとしても有名です。

春を司り、万物の成長と繁栄を象徴しています。日本では奈良県の薬師寺金堂や、明日香村のキトラ古墳にも青龍の姿が描かれているんですよ。

赤龍(せきりゅう)

項目内容
方角
季節
五行

赤龍は南方を守護する龍です。

全身が真っ赤な鱗で覆われ、太陽や火山から生まれたとされています。口から炎を吐くともいわれ、朱雀と同様に南を守る存在として崇められてきました。

面白い伝承として、前漢を建国した劉邦は「赤龍の子」だという言い伝えがあります。

白龍(はくりゅう)

項目内容
方角西
季節
五行

白龍は西方を守護する龍で、全身が白い鱗に覆われています。

特に空を飛ぶ速度が速いとされ、この龍に乗れば他の龍に追いつかれることはないのだとか。日本では箱根神社や龍田大社で白龍が祀られています。

黒龍(こくりゅう)

項目内容
方角
季節
五行

黒龍は北方を守護する龍で、玄武と同様に北の守り神とされてきました。

「驪龍(りりゅう)」とも呼ばれ、顎の下に貴重な珠を持っているともいわれます。福井県の毛谷黒龍神社など、日本各地で黒龍が祀られていますね。

黄龍(こうりゅう)

項目内容
方角中央
季節土用
五行

黄龍は中央を守護する龍で、四神の長、あるいは五番目の神獣として位置づけられています。

黄金に輝く姿を持ち、皇帝の権威を象徴する最も高貴な龍とされました。「老いた応龍は黄龍と呼ばれる」という伝承もあり、龍の最終形態ともいえる存在なんです。


四神と龍

四神(ししん)は、中国神話において天の四方を守護する霊獣です。

四神の構成

  • :青龍(せいりゅう)
  • :朱雀(すざく)
  • 西:白虎(びゃっこ)
  • :玄武(げんぶ)

この中で龍に該当するのは青龍だけですが、四神の中でも特別な存在として扱われてきました。

なぜかというと、十二支に含まれている動物は龍(辰)だけだからです。四神のうち、龍だけが十二支にも登場する特別な霊獣なんですね。

四神の概念は日本にも伝わり、四神相応という都市設計の思想に取り入れられました。平安京(京都)は、東に川(青龍)、南に池(朱雀)、西に道(白虎)、北に山(玄武)という条件を満たす土地として選ばれたといわれています。


四霊の龍

四霊(しれい)は、中国で最も霊妙とされる4種の瑞獣のことです。

四霊の構成

  • (りん):麒麟
  • (ほう):鳳凰
  • (き):霊亀
  • (りゅう):応龍

四神と混同されやすいのですが、四霊は「めでたい兆しを示す存在」として区別されています。

この中の応龍(おうりゅう)は、翼を持つ特別な龍です。

応龍の特徴

応龍は、黄帝に仕えた龍として神話に登場します。

応龍の主な伝承

  • 4本の足と、コウモリまたは鷹のような翼を持つ
  • 水を蓄えて雨を降らせる能力がある
  • 黄帝と蚩尤(しゆう)の戦いで嵐を起こして黄帝を助けた
  • 禹(う)の治水事業を手伝い、尾で地面に線を引いて川を作った

『述異記』によると、龍は成長過程を経て最終的に応龍になるとされています。

龍の成長過程

  1. 水虺(すいき):水に棲むマムシ → 500年
  2. 蛟(こう):角のない龍 → 1000年
  3. 龍(りゅう):成熟した龍 → 500年
  4. 角龍(かくりゅう):角を持つ龍 → 1000年
  5. 応龍:翼を持つ完全体

つまり、応龍になるまでには3000年もの歳月が必要ということになりますね。


四海龍王

四海龍王(しかいりゅうおう)は、東西南北の四つの海を治める龍王です。

『西遊記』や『封神演義』などの物語にも登場し、中国の龍伝承の中でも特に有名な存在といえるでしょう。

四海龍王の一覧

龍王担当する海名前(西遊記)
東海龍王東シナ海敖広(ごうこう)
南海龍王南シナ海敖欽(ごうきん)
西海龍王青海湖など敖閏(ごうじゅん)
北海龍王バイカル湖など敖順(ごうじゅん)

四海龍王はみな「敖(ごう)」という姓を持っています。

彼らは海中の豪華な水晶宮に住み、エビやカニなどの眷属を従えているとされます。雨を降らせる力を持っていますが、それは玉帝(天上界の皇帝)の命令に従って行うものでした。

西遊記での四海龍王

『西遊記』では、孫悟空が東海龍王の宮殿を訪れ、如意金箍棒(にょいきんこぼう)を持ち去るエピソードが有名です。

また、西海龍王・敖閏の三太子は罪を犯して処刑されそうになったところを観音菩薩に助けられ、三蔵法師の馬として旅に同行することになります。


竜生九子

「龍生九子、各有所好(龍は九子を生み、それぞれ好むものが異なる)」という言葉があります。

これは、龍王には9人の息子がいて、それぞれが異なる性格と姿を持っているという伝承です。

竜生九子の一覧

名前読み特徴よく見られる場所
囚牛しゅうぎゅう音楽を好む琴の頭部
睚眦がいし殺戮を好む刀剣の柄
嘲風ちょうふう険しい場所を好む屋根の角
蒲牢ほろう吼えることを好む鐘の上部
狻猊さんげい煙と火を好む香炉の足
贔屓ひいき重いものを背負うことを好む石碑の台座
狴犴へいかん訴訟を好む牢獄の門
負屭ふき文章を好む石碑の側面
螭吻ちふん呑み込むことを好む屋根の棟

実は「贔屓(ひいき)」という言葉は、この龍の子に由来しています。贔屓は重いものを背負うのが好きで、石碑を支える亀のような姿で描かれることが多いんですね。

誰かを特別に可愛がることを「贔屓にする」というのは、この龍の子が特定のものを好んで背負う性質から来ているといわれています。


日本の龍

日本の龍は、中国から伝来した龍の概念と、日本古来の蛇神信仰が融合して独自の発展を遂げました。

日本神話の龍神

日本神話では、伊邪那岐神(いざなぎのかみ)が迦具土神(かぐつちのかみ)を斬り殺した際に、龍神が生まれたとされています。

日本神話に登場する主な龍神

  • 高龗神(たかおかみのかみ):山の龍神
  • 闇龗神(くらおかみのかみ):谷の龍神
  • 八岐大蛇(やまたのおろち):8つの頭と尾を持つ大蛇

「龗(おかみ)」は龍の古語で、水を司る神として信仰されてきました。

日本各地の龍伝承

日本には、仏教の八大龍王信仰と土着の蛇神信仰が結びついた龍伝承が数多く残っています。

有名な龍伝承

  • 九頭龍:日本各地に伝わる9つの頭を持つ龍
  • 善女龍王:空海が神泉苑で祈り、雨を降らせた龍王
  • 五頭龍:鎌倉・江ノ島の伝説に登場する龍

興味深いのは、日本の龍が「水神」としての性格を強く持っていることです。

沼や淵で行われる雨乞いの儀式、漁村での豊漁祈願など、日本人の生活と龍は深く結びついてきました。「龍神が棲む」とされる場所は、今でも全国各地に残っているんですよ。


仏教の龍王(ナーガ)

仏教における龍王は、インドの蛇神ナーガに起源を持ちます。

ナーガはもともとコブラを神格化した蛇神でしたが、仏教が中国に伝わる際に「龍」と翻訳され、中国の龍と習合しました。

八大龍王

『法華経』には、釈迦の説法を聴いた8人の龍王が登場します。

八大龍王の名前

  1. 難陀(なんだ)
  2. 跋難陀(ばつなんだ)
  3. 娑伽羅(しゃがら)
  4. 和修吉(わしゅきつ)
  5. 徳叉迦(とくしゃか)
  6. 阿那婆達多(あなばだった)
  7. 摩那斯(まなし)
  8. 優鉢羅(うはつら)

これらの龍王は、仏法を守護する天龍八部衆の一つとして位置づけられています。

龍女の成仏

『法華経』の提婆達多品には、娑伽羅龍王の8歳の娘が成仏するという話があります。

この「龍女成仏」の説話は、女性や人間以外の存在でも悟りを開けることを示す重要なエピソードとして知られています。


その他の龍

ここまで紹介した以外にも、さまざまな龍が伝承に登場します。

蛟龍(こうりゅう)

蛟龍は、龍の一種で角を持たない若い龍のことです。

蛟龍の特徴

  • 蛇に似た姿で4本の足を持つ
  • 角がない(または短い)
  • 水中に棲み、時に洪水を起こす

「蛟龍得水(こうりゅうとくすい)」という言葉は、才能ある人が機会を得て活躍することのたとえとして使われます。

虬龍(きゅうりゅう)

虬龍は、角が生えた龍のことです。

まだ完全に成長していない段階の龍とされ、蛟龍が成長すると虬龍になるという説もあります。

螭龍(ちりゅう)

螭龍は、角のない黄色い龍です。

中国の宮殿や神社仏閣の装飾として、柱に巻きついた姿でよく描かれています。


まとめ

東洋の神話・伝承には、実に多種多様な龍が登場します。

この記事で紹介した龍の種類

  • 五色の龍:青龍・赤龍・白龍・黒龍・黄龍
  • 四神の龍:東方を守護する青龍
  • 四霊の龍:翼を持つ応龍
  • 四海龍王:東西南北の海を治める龍王
  • 竜生九子:龍王の9人の息子
  • 日本の龍:八岐大蛇、九頭龍など
  • 仏教の龍王:八大龍王

西洋のドラゴンが「倒すべき敵」として描かれることが多いのに対し、東洋の龍は水を司る神聖な存在として崇められてきました。

雨を降らせ、作物を育て、人々の暮らしを守る——そんな龍への信仰は、農耕文化を基盤とする東アジアの人々の願いそのものだったのかもしれません。

今でも龍は、神社仏閣の装飾、お祭りの龍舞、そして十二支の一つとして、私たちの生活の中に息づいています。

もし神社やお寺を訪れる機会があったら、どんな龍が描かれているか、ぜひ注目してみてくださいね。

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