家の中で一人きりでいるとき、どこからともなく「ポァ」という音と強烈な臭いが漂ってきたら…あなたはどうしますか?
実はそれ、アイヌの人々が恐れた(?)不思議な妖怪「オッケルイペ」の仕業かもしれません。
なんとこの妖怪、屁をひることが唯一の特技という、ちょっと笑ってしまうような存在なんです。
この記事では、アイヌ民族に伝わるユニークな妖怪「オッケルイペ」について、その特徴や伝承を詳しくご紹介します。
概要
オッケルイペは、アイヌ民族、特に樺太アイヌの間で語り継がれてきた妖怪です。
名前はアイヌ語で「オッケ(尻)・ルイ(猛烈)・ぺ(者)」という意味。つまり「猛烈に屁をする者」=「放屁する化け物」という、なんとも直球なネーミングなんですね。
別名で「オッケオヤシ」とも呼ばれ、こちらは「尻っこき野郎」という意味になるそうです。
オッケルイペの主な特徴
- 姿は見えない(透明な存在)
- 囲炉裏の奥から「ポァ」と音を立てる
- 家の中を移動しながら次々と屁をする
- とにかく臭い
- 正体は黒狐とされる
この妖怪が現れるのは、決まって家の中に一人でいるとき。囲炉裏のそばで「ポァ」と音がしたかと思うと、あっちでポァ、こっちでポァと、きりがないほど屁をし続けます。
もちろん姿は見えないのですが、その強烈な臭いだけは容赦なく漂ってくるんです。
退治方法
では、このはた迷惑な妖怪にはどう対処すればいいのでしょうか?
実は、退治法はとてもシンプルです。
オッケルイペの撃退方法
- こちらも屁をしてやり返す → 恐れ入って退散する
- 屁が出ないときは、口で「ポァー」と真似するだけでもOK
なんと、屁には屁で対抗するという、非常にユニークな方法なんですね。
オッケルイペは他人の屁には弱いらしく、やり返されると「恐れ入りました」とばかりに退散してしまうそうです。
伝承
オッケルイペは、樺太アイヌの説話によく登場するおなじみの妖怪だったようです。
中でも有名なのが、船を壊してしまったという昔話。アイヌ研究の第一人者である知里真志保の著書『えぞおばけ列伝』にも収録されています。
船を壊したオッケルイペの話
あるとき、オッケルイペは若い男の姿に化けて、川を下る船に乗せてもらいました。
ところが川の上で、オッケルイペはうっかり盛大に屁をひってしまいます。
その勢いがあまりに凄まじく、なんと船が舳先(へさき)から裂けて壊れてしまったというんです。
屁で船を破壊するとは、さすが「猛烈に屁をする者」の名は伊達ではありませんね。
正体がバレた結末
後日、オッケルイペは再び同じ船頭の船に乗ろうとしました。
しかし船頭は前回のことを覚えていたのでしょう。隙を見てオッケルイペを殴り倒してしまいます。
すると、若者の姿は消え、そこに現れたのは一匹の黒狐でした。
オッケルイペの正体は、黒い毛並みのキツネだったんですね。
アイヌの伝承では、キツネは人を化かす動物として知られています。オッケルイペもまた、そうした化け狐の一種だったのかもしれません。
まとめ
オッケルイペは、アイヌ民族に伝わる「屁の妖怪」という、なんともユニークな存在です。
重要なポイント
- 樺太アイヌに伝わる妖怪で、名前は「放屁する化け物」の意味
- 一人でいるときに現れ、囲炉裏のそばで次々と屁をする
- 姿は見えないが、強烈な臭いで人を困らせる
- 退治法は「屁をやり返す」か「口で音を真似する」
- 船を壊すほどの威力を持ち、正体は黒狐
一見すると笑い話のような妖怪ですが、船を破壊するほどの力を持っていたり、正体が化け狐だったりと、アイヌの精霊信仰や動物観が垣間見える興味深い存在でもあります。
もし一人で家にいるとき、どこからか「ポァ」という音が聞こえてきたら…勇気を出して「ポァ」とやり返してみてください。きっとオッケルイペは退散してくれるはずです。


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