お産の時に、亀のような姿をした恐ろしいものが産まれてくることがある…そんな話を聞いたことはありますか?
岡山県では古くから、出産の際に「オケツ」という恐ろしい存在が現れることがあると信じられてきました。
生まれた瞬間から逃げ出そうとし、もし取り逃がせば母親の命を奪うという、恐ろしい産怪なんです。
この記事では、岡山県に伝わる恐怖の妖怪「オケツ」について、その特徴や伝承を分かりやすくご紹介します。
オケツってどんな妖怪なの?

オケツは、岡山県に伝わる産怪(さんかい)と呼ばれる特殊な妖怪です。
産怪というのは、お産の際に現れる妖怪のことで、出産という命がけの場面に関わる恐ろしい存在なんですね。
別名「鬼子(おにご)」とも呼ばれ、普通の赤ちゃんとは全く違う異形のものとして恐れられてきました。
オケツの外見的特徴
- 基本形態: 亀に似た姿をしている
- 背中: 蓑毛(みのげ)のような毛が生えている
- その他の形態: 鬼や蛇の姿をしているという伝承もある
- 異常な特徴: 生まれたばかりなのに歯が生え揃っている、長い髪の毛があるなど
蓑毛というのは、藻や水草のような毛のことで、まるで水辺の亀のような不気味な見た目をしているんです。
オケツの恐ろしい習性
オケツの最も恐ろしいところは、その行動の速さなんです。
生まれた瞬間から以下のような行動を取ります:
- 胎内から出るとすぐに床を這い出す
- 家の縁の下へ猛スピードで逃げ込もうとする
- 取り逃がすと産婦が寝ている真下に潜り込む
- 産婦を殺してしまう
普通の赤ちゃんは生まれたばかりでは動けませんが、オケツは生まれた瞬間から自分で動けるというのが、何とも不気味な特徴なんですね。
他の産怪との関係
オケツは、日本各地に伝わる産怪の一種です。
- 埼玉県南部: 「血塊(けっかい)」と呼ばれるほぼ同じ妖怪がいる
- 総称: このようなお産の妖怪を「産盤(さんばん)」などと呼ぶ
昔のお産は今と比べものにならないほど命がけだったため、そこで命を落とす女性も少なくありませんでした。
そんな恐怖や不安が、オケツのような妖怪を生み出したのかもしれません。
伝承

お産の際の対処法
オケツが現れたら、すぐに捕まえて殺してしまわなければならないとされています。
対処の流れ:
- お産に注意を払い、異形のものが生まれないか見張る
- もしオケツが生まれたら、縁の下に逃げ込む前に捕らえる
- 速やかに殺処分する
時間との勝負なんです。
少しでも手間取ると、オケツは素早く床下に潜り込んでしまい、そうなるともう手遅れだと信じられていました。
オケツを取り逃がしたらどうなる?
もし取り逃がしてしまった場合、恐ろしい結末が待っています。
逃げたオケツの行動:
- 縁の下を這い回る
- 産婦が寝ている真下を探し出す
- その場所に潜り込む
- 産婦は途端に死んでしまう
なぜ真下に来ると産婦が死ぬのかは明確には語られていませんが、おそらくオケツが持つ呪いのような力によるものだと考えられていたんでしょう。
鬼子という呼び名
「鬼子」という呼び名には、深い意味があります。
昔は、普通ではない姿で生まれた子を「鬼子」として忌み嫌い、捨ててしまうということがありました。
鬼子とされた特徴:
- 生まれたばかりなのに歯が生えている
- 異常に長い髪の毛がある
- 体に普通ではない特徴がある
医学が発達していない時代、こうした子どもたちは不吉な存在と見なされてしまったんです。
オケツは、そうした「普通ではない出産」への恐怖が形になったものと言えるでしょう。
産怪が生まれる背景
なぜこのような恐ろしい妖怪の伝承が生まれたのでしょうか?
考えられる理由:
- 出産の危険性: 昔のお産は母子ともに命がけだった
- 医療の未発達: 異常な出産への対処法がなかった
- 精神的な恐怖: 出産への不安を妖怪という形で表現した
- 文化的な背景: 「普通ではない」ものを恐れる心理
ある説では、オケツは最初から女性に取り憑いているのかもしれない、とも言われています。
つまり、出産の際に突然現れるというよりも、妊娠中からすでに潜んでいたという考え方なんですね。
まとめ
オケツは、岡山県に伝わる出産にまつわる恐ろしい妖怪です。
重要なポイント
- 岡山県に伝わる産怪の一種で、別名「鬼子」
- 亀に似た姿で背中に蓑毛が生えている
- 生まれた瞬間から自力で動き、縁の下に逃げ込もうとする
- 取り逃がすと産婦の真下に潜り込み、産婦を殺してしまう
- すぐに捕まえて殺さなければならないとされる
- 埼玉県の「血塊」など、各地に類似の伝承がある
- 昔の危険なお産への恐怖が生み出した妖怪
現代では医療が発達し、安全に出産できるようになりましたが、昔の人々にとって出産は文字通り命がけの出来事でした。
オケツの伝承は、そんな時代の不安と恐怖を今に伝える、貴重な民間伝承なんです。


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