映画やゲームで「霜の巨人」「火の巨人」という言葉を聞いたことはありませんか?
『進撃の巨人』や『ゴッド・オブ・ウォー』など、現代の人気作品にも大きな影響を与えている北欧神話。その中でも巨人たちは、神々と並ぶ重要な存在として描かれています。
でも、「巨人って具体的にどんな存在なの?」「なぜ神様と戦っているの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
実は、北欧神話の巨人たちは単なる「大きな怪物」ではありません。世界の創造から終末まで、神話の根幹に深く関わる存在なんです。
この記事では、北欧神話に登場する巨人たちを種類別・役割別に一覧形式でわかりやすく紹介していきます。
北欧神話の巨人って何?

巨人の基本情報
北欧神話における巨人は、古ノルド語で「ヨトゥン(Jötunn)」と呼ばれています。複数形は「ヨトナル(Jötnar)」です。
日本では「霜の巨人」という訳語がよく使われますが、実際には氷だけでなく、火や山など自然のさまざまな力を体現した存在として登場します。
巨人の主な特徴
- 神々よりも先に存在していた原初の種族
- 自然の力そのものを象徴する存在
- 神々と敵対することもあれば、協力・結婚することもある
- 必ずしも「巨大」とは限らず、神々と同程度の大きさの者も多い
なぜ「ヨトゥン」と呼ぶの?
「ヨトゥン」という言葉の語源は、古ノルド語で「食べる」を意味する言葉と関連があるとされています。これは巨人たちが「貪り食う者」「破壊者」として、世界の秩序を乱す存在と考えられていたからかもしれません。
ちなみに、現在のノルウェーには「ヨートゥンヘイメン山地」という実在の山脈があります。これは「巨人の住処」を意味する神話上の世界「ヨトゥンヘイム」に由来しているんです。
巨人の住む世界
北欧神話では、世界は9つの領域(世界)に分かれています。巨人たちが住む主な世界は以下の3つです。
| 世界の名前 | 読み方 | 住んでいる巨人 |
|---|---|---|
| ヨトゥンヘイム | Jötunheimr | 霜の巨人(ヨトゥン) |
| ムスペルヘイム | Muspelheim | 火の巨人(ムスペル) |
| ニヴルヘイム | Niflheim | 氷と霧の巨人 |
ヨトゥンヘイムは高い山々や深い森に隔てられた厳しい土地で、人間の住むミズガルズ(地上世界)の東に位置しています。その中心には「ウトガルズ」という巨大な城塞があり、巨人の王が住んでいるとされています。
北欧神話の巨人の種類
北欧神話に登場する巨人は、住む場所や性質によっていくつかの種類に分けられます。
霜の巨人(フリームスルス)
最も有名な巨人の種族で、「フリームスルス」とも呼ばれています。
主な特徴
- 氷と寒さを司る巨人たち
- ヨトゥンヘイムに住む
- アース神族・ヴァン神族と敵対関係にあることが多い
- 一部は神々と友好的で、結婚することもある
霜の巨人は北欧の厳しい冬を象徴する存在です。彼らは神々の敵として描かれることが多いですが、実際には複雑な関係を持っていました。
火の巨人(ムスペル)
南方の火の世界「ムスペルヘイム」に住む巨人たちです。
主な特徴
- 炎と灼熱を司る
- スルトがリーダー
- 普段は神話にあまり登場しない
- ラグナロク(終末の日)で重要な役割を果たす
火の巨人たちは、世界の終わりまでムスペルヘイムに閉じ込められています。ラグナロクの時に初めて解放され、神々との最終決戦に参加するのです。
山の巨人(ベルグリシ)
山に住む巨人で、「ベルグリシ」と呼ばれます。
主な特徴
- 山岳地帯を支配する
- スカディやスィアチが有名
- ヨトゥンと同じ世界に住むが、別の種族とされることも
山の巨人は、北欧の人々が感じていた山への畏敬の念を反映した存在といえるでしょう。
原初の巨人たち──世界の始まりに関わる存在
ユミル(Ymir)──すべての巨人の祖
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | ユミル(Ymir) |
| 別名 | アウルゲルミル |
| 種類 | 原初の巨人 |
| 役割 | すべての巨人の始祖、世界の材料 |
どんな存在?
ユミルは、北欧神話における最初の生命体です。世界がまだ何もない「ギンヌンガガプ」という大きな裂け目だった頃、北の氷の世界ニヴルヘイムと南の火の世界ムスペルヘイムがぶつかり合いました。
その氷と炎が混ざり合った場所から、ユミルは誕生したのです。
有名なエピソード
ユミルは眠っている間に、脇の下の汗から男女一組の巨人が生まれ、両足からは息子が生まれました。こうして巨人族は増えていきます。
やがてオーディンと兄弟たちは、増えすぎた巨人に危機感を覚え、ユミルを殺害します。そして彼の巨大な体を使って世界を創造しました。
ユミルの体から作られたもの
- 肉体 → 大地
- 血 → 海と湖
- 骨 → 山
- 歯 → 岩
- 頭蓋骨 → 空
- 脳みそ → 雲
- まつ毛 → ミズガルズを囲む壁
つまり、私たちが住む世界は巨人の死体でできているという、ちょっと不思議な設定なんです。
ベルゲルミル(Bergelmir)──生き残った巨人
ユミルが殺されたとき、その血で大洪水が起こり、ほとんどの巨人が溺死しました。
しかし、ベルゲルミルとその妻だけは石臼に乗って逃げ延びることができたのです。現在の巨人族は、すべてこのベルゲルミルの子孫とされています。
アウズンブラ(Auðumbla)──原初の雌牛
ユミルと同時期に氷から生まれた神聖な雌牛です。ユミルは彼女の乳を飲んで成長し、アウズンブラは塩気のある氷を舐めて生きていました。
彼女が氷を舐め続けると、そこから神々の祖先であるブーリが現れたのです。巨人ではありませんが、世界の創造に欠かせない存在といえるでしょう。
ラグナロクで活躍する巨人たち
スルト(Surtr)──世界を焼き尽くす炎の巨人
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | スルト(Surtr)、スルトル |
| 種類 | 火の巨人 |
| 住処 | ムスペルヘイム |
| 武器 | 太陽より明るく輝く炎の剣 |
| 役割 | ラグナロクで世界を滅ぼす |
どんな存在?
スルトは火の巨人たちのリーダーで、北欧神話における最強クラスの存在です。ムスペルヘイムの入り口で炎の剣を持って立ち、世界の終わりを待ち続けています。
一説によると、スルトはユミルよりも古い存在かもしれないとも言われています。
ラグナロクでの役割
ラグナロク(神々の黄昏)が始まると、スルトは火の巨人たちを率いて虹の橋ビフレストを渡り、アースガルズに攻め込みます。
彼はヴァン神族のフレイと戦い、相討ちになります。そして最後に、炎の剣を振るって世界全体を焼き尽くすのです。
ただし、北欧神話では破壊の後に新しい世界が再生するとされています。スルトは単なる破壊者ではなく、「再生のための浄化」を担う存在ともいえるでしょう。
フェンリル(Fenrir)──オーディンを飲み込む狼
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | フェンリル(Fenrir) |
| 別名 | フェンリス狼 |
| 父親 | ロキ |
| 母親 | アングルボザ(巨人) |
| 運命 | オーディンを殺し、ヴィーザルに殺される |
どんな存在?
フェンリルは巨大な狼の姿をした怪物で、ロキと女巨人アングルボザの子どもです。狼ですが、巨人の血を引くため巨人族の一員と見なされることもあります。
有名なエピソード
神々はフェンリルが「オーディンを殺す」という予言を恐れ、彼を縛り上げることにしました。しかし普通の鎖では簡単に引きちぎられてしまいます。
そこでドワーフたちに「グレイプニル」という魔法の縄を作らせました。猫の足音、女の髭、山の根、熊の腱、魚の息、鳥の唾液という「存在しないもの」で作られた、決して切れない縄です。
フェンリルは罠だと疑いましたが、勇敢な神テュールが口の中に手を入れることを条件に縄に縛られることを承諾。そして縛られた瞬間、テュールの手を噛みちぎりました。
ラグナロクの日、フェンリルは縄を引きちぎって解放され、予言通りオーディンを丸呑みにします。しかし直後にオーディンの息子ヴィーザルによって殺されるのです。
ヨルムンガンド(Jörmungandr)──世界を囲む大蛇
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | ヨルムンガンド(Jörmungandr) |
| 別名 | ミズガルズの蛇、世界蛇 |
| 父親 | ロキ |
| 母親 | アングルボザ(巨人) |
| 住処 | 世界を囲む海の底 |
| 宿敵 | トール |
どんな存在?
フェンリルの兄弟で、巨大な海蛇の姿をした怪物です。オーディンによって海に投げ込まれ、成長して世界全体を囲むほど巨大になりました。自分の尻尾をくわえた姿は「ウロボロス」(永遠の象徴)として知られています。
トールとの因縁
ヨルムンガンドとトールは宿敵同士です。トールは何度か大蛇を釣り上げようとしましたが、成功したことはありません。
ラグナロクでは、ヨルムンガンドが尻尾を離すことが終末の合図になります。大蛇は陸に上がり、毒をまき散らしながらトールと対決。トールはついに大蛇を倒しますが、9歩歩いたところで毒に倒れて死んでしまうのです。
ヘル(Hel)──冥界の女王
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | ヘル(Hel) |
| 父親 | ロキ |
| 母親 | アングルボザ(巨人) |
| 住処 | ニヴルヘイム/ヘルヘイム |
| 役割 | 死者の世界の支配者 |
どんな存在?
ロキとアングルボザの娘で、半分が生きた人間、半分が腐った死体という姿をしています。オーディンによって冥界の支配者に任命され、病気や老いで死んだ者の魂を管理しています。
ラグナロクでは、死者の軍勢を率いて神々と戦うことになります。
神話で活躍する有名な巨人たち

スリュム(Þrymr)──トールの槌を盗んだ王
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | スリュム(Þrymr) |
| 種類 | 霜の巨人 |
| 地位 | ヨトゥンヘイムの王 |
| 有名な話 | トールの槌を盗んだ |
有名なエピソード:トールの女装
スリュムはトールが眠っている隙に、雷神の槌「ミョルニル」を盗み出しました。返す条件として、美の女神フレイヤを嫁にもらうことを要求します。
もちろん神々がそんな条件を飲むはずがありません。そこで立てられた作戦が、なんとトール自身がフレイヤに変装するというものでした。
花嫁衣装を着たトールは、介添人役のロキと共に巨人の国へ。結婚式でミョルニルが持ち出されると、トールはすかさず槌を奪い取り、スリュムと巨人たちを皆殺しにしたのです。
北欧神話の中でも特にユーモラスなエピソードとして知られています。
スカディ(Skaði)──狩りとスキーの女神
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | スカディ(Skaði) |
| 種類 | 山の巨人 |
| 父親 | スィアチ |
| 配偶者 | ニョルズ(海の神) |
| 司る分野 | 狩猟、スキー、冬、山 |
どんな存在?
スカディは山の巨人スィアチの娘で、非常に美しい女巨人です。彼女は巨人でありながら、後に神々の一員として迎え入れられました。
有名なエピソード
父スィアチが神々に殺された後、スカディは武装してアースガルズに復讐に向かいます。しかし神々との交渉の結果、以下の条件で和解しました。
- 神々の中から夫を選ぶ権利(ただし足だけを見て選ぶ)
- 彼女を笑わせること
スカディは最も美しい足の持ち主を選びましたが、それは美男神バルドルではなく、海の神ニョルズでした。また、ロキの滑稽な行動によって笑わされ、和解が成立したのです。
しかし山を愛するスカディと海を愛するニョルズは合わず、結局別れてしまいました。現代では「スカンジナビア」の語源ともされています。
ミーミル(Mímir)──知恵の泉の番人
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | ミーミル(Mímir) |
| 種類 | 巨人(または神とも) |
| 住処 | ミーミルの泉(知恵の泉) |
| 役割 | 知恵の守護者、オーディンの相談役 |
どんな存在?
ミーミルは戦う巨人ではなく、智者として知られる珍しい存在です。世界樹ユグドラシルの根元にある「ミーミルの泉」を守っており、この泉の水を飲むと宇宙の知識を得られるとされています。
有名なエピソード:オーディンの片目
知識を求めてやってきたオーディンに、ミーミルは泉の水を飲む代価として「片目を差し出せ」と要求しました。オーディンは迷わず自分の目を犠牲にし、宇宙の知恵を手に入れたのです。
後にミーミルは首を切られますが、オーディンは魔法でその首を保存し、重要な時には助言を求め続けました。
ウトガルザ=ロキ(Útgarða-Loki)──幻術の王
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | ウトガルザ=ロキ(Útgarða-Loki) |
| 種類 | 巨人 |
| 住処 | ウトガルズ(巨人の城塞) |
| 能力 | 幻術、変身 |
どんな存在?
トリックスター神ロキとは別人で、ウトガルズを支配する巨人の王です。幻術の達人として知られ、トールたちを見事に欺きました。
有名なエピソード:トールへの試練
トールがウトガルズを訪れた際、ウトガルザ=ロキはさまざまな試練を課しました。
- 大食い競争 → 相手は「火」そのものだった
- かけっこ → 相手は「思考」だった
- 角杯の酒を飲み干す → 杯は海につながっていた
- 猫を持ち上げる → 猫はヨルムンガンドが変身した姿だった
- 老婆との相撲 → 老婆は「老い」そのものだった
トールはすべての試練に「失敗」しましたが、実は相手が不可能な存在だったと明かされます。海を少し減らし、世界蛇の足を地面から離したトールの力に、巨人たちは恐れおののいたのです。
フルングニル(Hrungnir)──最強の巨人戦士
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | フルングニル(Hrungnir) |
| 種類 | 巨人 |
| 特徴 | 頭と心臓が石でできている |
| 武器 | 巨大な砥石 |
どんな存在?
フルングニルは巨人の中でも最強の戦士とされ、頭も心臓も石でできていました。
有名なエピソード:トールとの一騎打ち
オーディンと馬競争をして負けた後、酔っ払ってアースガルズで暴れたフルングニル。トールが戻ってくると、神々の領域外での一騎打ちを申し込みました。
決闘でトールはミョルニルを投げ、フルングニルは巨大な砥石を投げました。ミョルニルはフルングニルの頭を粉砕しましたが、砥石の破片がトールの頭に突き刺さってしまいます。
倒れたフルングニルの足がトールの首を押さえつけ、誰も持ち上げることができませんでした。最終的にトールの息子マグニだけが、父を救い出すことができたのです。
スィアチ(Þjazi)──イズンを誘拐した巨人
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | スィアチ(Þjazi) |
| 種類 | 山の巨人 |
| 娘 | スカディ |
| 能力 | 鷲に変身できる |
どんな存在?
スィアチは強力な魔法を使う巨人で、鷲の姿に変身する能力を持っていました。
有名なエピソード:イズンの誘拐
スィアチは魔法でオーディンたちの料理を邪魔し、ロキを脅迫して若さの女神イズンを誘拐させました。イズンが持つ黄金のリンゴがなければ、神々は老いて死んでしまいます。
追い詰められたロキはフレイヤから鷹の羽衣を借り、イズンを救出。追ってきたスィアチは神々に焼き殺されました。この復讐のためにスカディがアースガルズに乗り込んできたのです。
神々と血縁関係にある巨人たち
北欧神話では、神々と巨人の間にははっきりとした境界線がありません。多くの神々が巨人の血を引いています。
ベストラ(Bestla)──オーディンの母
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | ベストラ(Bestla) |
| 種類 | 巨人(女巨人) |
| 夫 | ボル(神) |
| 子ども | オーディン、ヴィリ、ヴェー |
ベストラは巨人ベルソルンの娘で、神ボルと結婚しました。つまり、最高神オーディンは半分巨人の血を引いているのです。
ヨルズ(Jörð)──トールの母
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | ヨルズ(Jörð) |
| 意味 | 「大地」 |
| 種類 | 巨人(女巨人) |
| 息子 | トール |
ヨルズは大地を擬人化した女巨人で、オーディンとの間にトールをもうけました。つまり、巨人の最大の敵であるトール自身も巨人の血を引いているという皮肉な関係があるのです。
ロキ(Loki)──トリックスターの神
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | ロキ(Loki) |
| 父親 | ファールバウティ(巨人) |
| 母親 | ラウフェイ(巨人または女神) |
| 配偶者 | シギュン(神)、アングルボザ(巨人) |
ロキは両親ともに巨人(または片方が女神)で、純粋な巨人の血を引いています。しかしオーディンと義兄弟の契りを結び、神々の仲間として暮らしていました。
彼は神々を助けることもあれば、災いをもたらすこともあるトリックスター。最終的にはバルドルの死の原因となり、ラグナロクでは巨人側に付いて神々と戦うことになります。
アングルボザ(Angrboða)──怪物たちの母
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | アングルボザ(Angrboða) |
| 意味 | 「悲しみをもたらす者」 |
| 種類 | 巨人(女巨人) |
| 子ども | フェンリル、ヨルムンガンド、ヘル |
アングルボザはヨトゥンヘイムに住む女巨人で、ロキとの間に3体の怪物的な子どもをもうけました。その名の通り、彼女の子孫たちは神々とラグナロクで世界に多大な悲しみをもたらすことになります。
その他の重要な巨人たち
ゲルズ(Gerðr)──フレイの妻となった美女
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | ゲルズ(Gerðr) |
| 種類 | 巨人(女巨人) |
| 夫 | フレイ(豊穣の神) |
| 父親 | ギューミル |
ゲルズは輝くような美しさを持つ女巨人で、豊穣の神フレイがオーディンの玉座から彼女を見て一目惚れしました。フレイは使者スキールニルを送り、脅しと贈り物の末に彼女を妻に迎えます。
この結婚のためにフレイは魔法の剣を手放しており、そのためラグナロクでスルトに敗れることになるのです。
グリーズ(Gríðr)──トールを助けた巨人
友好的な女巨人で、オーディンの息子ヴィーザルの母親です。トールが武器を持たずに巨人ゲイルロズのもとへ向かおうとした時、彼女は自分の魔法のベルト、杖、手袋を貸し与えました。
この道具のおかげでトールは生き延びることができたのです。
エーギル(Ægir)──海の巨人
海を司る巨人で、妻のラーンとともに海の力を支配しています。神々とは友好的な関係にあり、しばしば彼の館で神々のための宴会が開かれました。
一般的にはヨトナルの一員とされていますが、アース神族やヴァン神族とも見なされることがある曖昧な存在です。
スクリューミル(Skrýmir)──巨大な眠り巨人
トールたちがヨトゥンヘイムを旅した時に出会った巨大な巨人です。彼のいびきが地震と間違えられるほどの大きさでした。
実はこれはウトガルザ=ロキが変身した姿だったという説もあり、北欧神話における巨人の幻術能力を示す存在といえるでしょう。
北欧神話の巨人 完全一覧
ここでは、北欧神話に登場する主要な巨人をカテゴリ別にまとめました。
原初・創世の巨人
| 名前 | 読み方 | 役割・特徴 |
|---|---|---|
| ユミル | Ymir | 最初の巨人、世界の材料となった |
| ベルゲルミル | Bergelmir | 大洪水から生き残った巨人の祖 |
| スルーズゲルミル | Þrúðgelmir | 6つの頭を持つユミルの息子 |
火の巨人(ムスペル)
| 名前 | 読み方 | 役割・特徴 |
|---|---|---|
| スルト | Surtr | 火の巨人の王、ラグナロクで世界を焼く |
| シンモラ | Sinmora | スルトの妻 |
ロキの子どもたち
| 名前 | 読み方 | 役割・特徴 |
|---|---|---|
| フェンリル | Fenrir | 巨大な狼、オーディンを殺す |
| ヨルムンガンド | Jörmungandr | 世界を囲む大蛇、トールと相討ち |
| ヘル | Hel | 冥界の女王 |
霜の巨人・ヨトゥンの王族
| 名前 | 読み方 | 役割・特徴 |
|---|---|---|
| スリュム | Þrymr | 巨人の王、ミョルニルを盗んだ |
| ウトガルザ=ロキ | Útgarða-Loki | ウトガルズの支配者、幻術の達人 |
| フリュム | Hrymr | ラグナロクで死者の船を操る |
神話で重要な巨人
| 名前 | 読み方 | 役割・特徴 |
|---|---|---|
| フルングニル | Hrungnir | 最強の戦士、トールと一騎打ち |
| スィアチ | Þjazi | イズンを誘拐、スカディの父 |
| ゲイルロズ | Geirröðr | トールを罠にかけようとした |
| ヴァフスルーズニル | Vafþrúðnir | オーディンと知恵比べをした |
| スットゥング | Suttungr | 詩の蜜酒を所有していた |
女巨人(ギューグル)
| 名前 | 読み方 | 役割・特徴 |
|---|---|---|
| スカディ | Skaði | 狩りの女神、ニョルズの元妻 |
| ゲルズ | Gerðr | フレイの妻となった美女 |
| アングルボザ | Angrboða | ロキの妻、怪物たちの母 |
| グリーズ | Gríðr | トールを助けた友好的な巨人 |
| ベストラ | Bestla | オーディンの母 |
| ヨルズ | Jörð | トールの母、大地の女神 |
| グンロズ | Gunnlöð | 詩の蜜酒の番人 |
| ラーン | Rán | 海の女巨人、エーギルの妻 |
| エリ | Elli | 「老い」を擬人化した老婆 |
知恵・海の巨人
| 名前 | 読み方 | 役割・特徴 |
|---|---|---|
| ミーミル | Mímir | 知恵の泉の番人 |
| エーギル | Ægir | 海を司る巨人 |
| ヒュミル | Hymir | トールと釣りに行った巨人 |
巨人と神々の複雑な関係
敵対と協力
北欧神話における巨人と神々の関係は、単純な「善対悪」ではありません。
敵対する場面
- トールは多くの巨人を退治している
- オーディンはユミルを殺して世界を作った
- ラグナロクでは全面戦争になる
協力・友好的な場面
- 神々の多くは巨人の血を引いている
- 巨人が神々に知恵や道具を与えることもある
- 結婚して家族になることも多い
巨人が象徴するもの
北欧神話の巨人たちは、古代スカンジナビアの人々が感じていた自然への畏怖を象徴しています。
- 霜の巨人 → 厳しい冬、寒さ
- 火の巨人 → 火山、森林火災
- 山の巨人 → 雄大な山々
- 海の巨人 → 荒れ狂う海
神々が「秩序」を代表するなら、巨人は「混沌」や「自然の力」を代表する存在です。しかし、両者は対立しながらも互いに必要とし合う関係にあったのです。
現代文化への影響
ゲーム・映画での登場
北欧神話の巨人たちは、現代のエンターテイメントでも大活躍しています。
ゲーム
- 『ゴッド・オブ・ウォー』シリーズ:ヨトゥンヘイムや多くの巨人が登場
- 『アサシンクリード ヴァルハラ』:スルト、フェンリルなどが登場
- 『スカイリム』:霜の巨人がモンスターとして登場
映画・ドラマ
- マーベル映画『マイティ・ソー』シリーズ:霜の巨人が敵として登場
- ドラマ『ヴァイキング』:ラグナロクの神話が描かれる
アニメ・漫画
- 『進撃の巨人』:北欧神話の巨人からインスピレーションを受けている
- 『ヴィンランド・サガ』:北欧の世界観が基盤
まとめ
北欧神話の巨人たちは、単なる怪物ではありません。
巨人たちの本質
- 世界の創造から終末まで関わる根源的な存在
- 自然の力そのものを象徴している
- 神々とは敵対しながらも血縁関係にある
- 混沌と秩序、破壊と再生の循環を体現している
ユミルの死体から世界が生まれ、スルトの炎で世界が滅び、そしてまた新しい世界が始まる。この壮大なサイクルの中で、巨人たちは欠かせない役割を果たしています。
北欧の厳しい自然環境の中で生きた人々は、巨人という存在を通して、人間の力では抗えない自然の脅威と、それでも共存していかなければならない現実を表現したのかもしれません。
興味を持った巨人がいたら、ぜひ原典の『エッダ』や関連作品にも触れてみてください。きっと新しい発見があるはずです。


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