山奥の小学校に、ある雨の夜、一人の老人が訪れました。
大きな風呂敷包みを背負ったその老人は、宿直の先生に一晩泊めてほしいと頼みます。
親切な先生は快く老人を招き入れましたが、その夜目撃したのは、信じられない光景でした。
老人が取り出した小さな人形が、まるで生きているかのように手のひらで踊り始めたのです。
この記事では、学校の怪談として語り継がれる不気味な存在「人形使い」について詳しくご紹介します。
概要

人形使いは、数十年前に山奥の小さな小学校で目撃されたとされる怪異です。
大きな風呂敷包みを担いだ老人の姿で現れ、人間の子供を人形に変えてしまう恐ろしい存在として語られています。
常光徹著『学校の怪談2』に収録されているこの話は、筆者匿名で記録されており、実際に体験した先生の証言として伝えられているんです。
人形使いの特徴
- 大きな風呂敷包みを背負った老人の姿
- 入れ子構造の箱の中に小さな人形を隠し持っている
- 人形を手のひらに乗せると、まるで生きているように踊り出す
- 人形に優しく話しかける様子を見せる
- 翌朝には忽然と姿を消してしまう
この怪異の最も恐ろしい点は、老人が持っていた人形が実は行方不明になった子供だったのではないかという暗示です。
伝承

ある雨の夜の出来事
物語は、山奥の小さな小学校で宿直をしていた一人の先生から始まります。
ある秋の夜、ラジオを聴きながら夕食を食べていると、ドンドンと玄関を叩く音が聞こえてきました。
こんな時間に誰だろうと思って玄関を開けると、大きな風呂敷を背負った老人が立っていたんです。
老人は雨に降られて困っているようで、今晩だけ泊めてほしいと頼んできました。
先生は親切にも老人を招き入れ、保健室兼宿直室に通して、二つあるベッドのうちの一つを使ってもらうことにしました。
真夜中の不思議な光景
その夜、間のカーテンを閉めて先生がベッドで寝ていると、隣のベッドから物音がしました。
気になった先生がカーテンの隙間からのぞいてみると、信じられない光景が目に飛び込んできたんです。
老人の奇妙な行動
- 老人は風呂敷を広げて中から大きな箱を取り出した
- その箱から二回り小さな箱を出す
- さらにその小さな箱から、もっと小さな箱を取り出す
- 出てくる箱は次々と小さくなっていく
- 最後に石鹸箱ほど(別の記述ではけん玉ほど)の小さな箱を取り出した
そして老人は、この最も小さな箱の中から小さな女の子の人形を取り出して、大事そうに手のひらに乗せたんです。
踊り出す人形
すると不思議なことに、その人形が動き出しました。
まるで生きているかのように、老人の手のひらの上で踊り始めたんです。
老人は人形が踊るのを見て嬉しそうに微笑みながら、ときどき人形に優しく話しかけるような仕草をしていました。
先生は人形の顔をどこかで見たような気がしていました。でも、人形があまりにも小さいせいもあって、はっきりとは思い出せなかったそうです。
やがて老人は人形を小箱に収めると、一つ一つ箱を元のようにしまっていきました。
恐ろしい真実
翌朝、先生が目を覚ますと、老人の姿はすでにありませんでした。
そして同じ日、学校に恐ろしい知らせが届いたんです。
村の少女が一人、見知らぬ老人に連れ去られたという連絡でした。
先生は、あの夜見た人形の顔に見覚えがあったことを思い出して、背筋が凍るような恐怖を感じたといいます。
もしかしたら、あの小さな人形は…連れ去られた少女だったのかもしれません。
この怪談が語ること
この「人形使い」の話には、いくつかの恐ろしい暗示が含まれています。
- 老人は子供を人形に変える力を持っているのか?
- それとも、子供の魂を人形に閉じ込めているのか?
- 先生が人形の顔に見覚えがあったのは偶然なのか?
- 老人はなぜ人形を大切そうに扱い、話しかけていたのか?
真相は謎のまま残されていますが、親切心から老人を泊めてしまった先生の後悔と恐怖が伝わってくる話なんです。
まとめ

人形使いは、学校の怪談の中でも特に不気味で後味の悪い存在です。
重要なポイント
- 山奥の小学校に現れた風呂敷を背負った老人
- 入れ子の箱の中に小さな人形を隠し持っている
- 人形は手のひらで生きているように踊る
- 老人は人形に優しく話しかける
- 翌朝老人は消え、村の少女が行方不明に
- 常光徹著『学校の怪談2』に収録
この話の恐ろしさは、はっきりとした結末が語られないところにあります。
あの人形は本当に連れ去られた少女だったのか、それとも先生の思い込みだったのか…。
真実は誰にも分かりませんが、見知らぬ人を安易に信用することの危険性を教えてくれる、現代にも通じる教訓が込められた怪談といえるでしょう。


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