古代エジプトの歴史書から、ある一人の王の名前が完全に消されていることを知っていますか?
それは、ただ暴君だったからではありません。
その王は邪神を崇拝し、人々を恐怖に陥れ、あまりにも邪悪だったため、歴史そのものから抹消されたのです。
この記事では、古代エジプトの「死者の書」から消された暗黒のファラオ「ネフレン=カ」について詳しくご紹介します。
概要
ネフレン=カは、古代エジプトの歴史において最も恐れられた支配者の一人です。
元々は神官という宗教的な立場にいた人物でしたが、やがて王座を奪い取り、「暗黒のファラオ」として君臨しました。
彼が特に恐れられた理由は、邪神ニャルラトテップを主神とする邪教集団を率いて、エジプト中の伝統的な信仰を破壊したことにあります。その支配は血生臭く残虐を極め、やがて大規模な反乱によって追放されることになりました。
追放後、ネフレン=カの名前は「死者の書」から完全に消され、その存在を示す記録は「死霊秘法」や「妖蛆の秘密」といった禁断の書物にしか残されていません。
暗黒のファラオとしての姿

ネフレン=カは、もともと神官という宗教指導者の立場にいた人物でした。
神官から王へ
神官というのは、神殿で儀式を執り行い、神々への祈りを捧げる重要な役職です。しかしネフレン=カは、この立場を利用して権力を掌握し、最終的には王座を簒奪(さんだつ:不正に奪い取ること)してしまったのです。
支配者としての外見
具体的な容姿についての記述は少ないのですが、ファラオとして君臨していた時期には、当然ながら王としての豪華な装飾品や冠を身につけていたと考えられます。
古代エジプトのファラオは、神の化身として扱われるため、通常は荘厳で神聖な姿で描かれるもの。しかしネフレン=カの場合、その姿は歴史から意図的に消されているため、詳細は謎に包まれています。
特徴
ネフレン=カの支配には、いくつかの恐ろしい特徴がありました。
邪神崇拝
最も特徴的なのは、ニャルラトテップという邪神を崇拝していたことです。
ニャルラトテップは「這い寄る混沌」とも呼ばれる恐ろしい存在で、エジプトの伝統的な神々とは全く異なる邪悪な力を持っているとされました。ネフレン=カは、猫神バステや鰐神セベクを中心とした神官たちと共に、この邪神への信仰を強制したのです。
信仰の破壊
ネフレン=カの教団は、ニャルラトテップ以外のすべての信仰を根絶しようとしました。
古代エジプトには、ラー、オシリス、イシスなど、多くの伝統的な神々が崇拝されていました。しかしネフレン=カは、これらの神殿を次々と破壊し、邪神のための新しい神殿を建てていったのです。
生け贄の儀式
最も恐ろしいのは、人間を生け贄として捧げる儀式を頻繁に行っていたことでしょう。
邪神から魔術の力を授かるため、多くの無実の人々が犠牲になったと伝えられています。この残虐な行為が、人々の反乱を招く大きな原因となりました。
伝承

ネフレン=カにまつわる伝承は、恐怖と神秘に満ちています。
反乱と追放
あまりにも残虐な支配に耐えかねた人々は、ついに大規模な反乱を起こしました。
激しい戦いの末、ネフレン=カとその神官たちは王座から追放されることになります。勝利した人々は、この忌まわしい時代を二度と繰り返さないため、徹底的な措置を取ったのです。
歴史からの抹消
人々は、ネフレン=カの痕跡を完全に消し去ろうとしました。
「死者の書」という古代エジプトの重要な宗教文書から、彼の名前はすべて削除されました。これは単なる記録の削除ではなく、魂の存在そのものを歴史から消し去るという、古代エジプト人にとっては究極の罰だったんです。
秘密の墓所への逃亡
追放されたネフレン=カは、神官たちと共にカイロ付近の秘密の地下納骨所に逃れました。
この場所は、外部からは決して見つからないように隠されており、暗黒のファラオの最後の拠り所となったのです。一部の神官たち、特にバステを崇拝していた者たちは、西方の島(おそらくイギリス)へと逃れたとも伝えられています。
最後の儀式と予言の力
地下納骨所で、ネフレン=カは最後にして最大の儀式を行いました。
闇の中で100人の生け贄を捧げ、ニャルラトテップを召喚したのです。この恐ろしい儀式により、彼は予言の力を授かったと言われています。
その力を使って、埋葬部屋の壁一面に未来の歴史を描き残したという伝説があります。何が描かれていたのか、詳細は不明ですが、おそらく恐ろしい未来の予言だったのでしょう。
7000年の眠り
すべてを終えたネフレン=カは、「赤い部屋」と呼ばれる特別な埋葬室にある大理石の石棺に入りました。
そして、そこで7000年の眠りにつくことになったのです。しかし、これは単なる死ではありませんでした。
恐るべき予言
ネフレン=カについて、最も不気味な予言が残されています。
「死せるネフレン=カは7000年後に甦り、再び闇の時代をもたらす」
つまり、いつか彼が目覚め、再び世界に恐怖をもたらすという恐ろしい予言なんです。この伝説は、長い年月を経ても語り継がれ、人々を震え上がらせてきました。
19世紀の発見
1843年、アメリカのプロヴィデンス出身の考古学者イノック・ボウアン教授が、ネフレン=カの墓所を発見したという記録があります。
彼はそこから「輝くトラペゾヘドロン」という神秘的な物体を持ち帰り、その後「星の智慧派」という宗教団体を設立したとされています。この発見が、暗黒のファラオの伝説を現代に蘇らせることになったのです。
起源
ネフレン=カの伝説は、実はクトゥルフ神話という創作神話体系の一部なんです。
クトゥルフ神話とは
クトゥルフ神話は、20世紀のアメリカの作家H.P.ラヴクラフトが生み出した架空の神話体系です。
宇宙的恐怖をテーマにした物語群で、人類よりもはるかに強大で邪悪な「旧支配者」と呼ばれる存在たちが登場します。ネフレン=カは、この神話世界における古代エジプトの暗黒時代を象徴する存在として創作されました。
実在の歴史との関係
重要なのは、ネフレン=カは実在の歴史上の人物ではないということです。
古代エジプトの実際の歴史には、このような名前のファラオは存在しません。しかし、ラヴクラフトと彼に続く作家たちは、古代エジプトの神秘的な雰囲気や、実際にあった宗教改革(アクエンアテン王のアテン信仰など)からインスピレーションを得て、この恐ろしい物語を作り上げたと考えられます。
神話における位置づけ
クトゥルフ神話の中で、ネフレン=カは古代における邪神崇拝の象徴として重要な役割を果たしています。
彼の物語は、「禁断の知識を追求した者の末路」や「邪悪な力との契約の危険性」といったテーマを表現しているんですね。また、「歴史から抹消された恐怖」という設定は、読者の想像力をかき立てる効果的な演出となっています。
まとめ
ネフレン=カは、古代エジプトを舞台にした恐怖の伝説上の支配者です。
重要なポイント
- 古代エジプトの神官から王座を奪った「暗黒のファラオ」
- 邪神ニャルラトテップを崇拝する邪教集団を率いた
- 伝統的な信仰を破壊し、人間の生け贄を捧げる残虐な支配者
- 反乱により追放され、「死者の書」から名前を抹消された
- カイロ近郊の秘密の地下納骨所で7000年の眠りについた
- 「7000年後に甦る」という恐ろしい予言が残されている
- クトゥルフ神話という創作神話の一部で、実在の人物ではない
実在しない伝説とはいえ、ネフレン=カの物語は、権力の腐敗や禁断の知識への警告として、今も多くの人々を魅了し続けています。もしエジプトの砂漠の下に本当に秘密の墓所があるとしたら…そこには今も暗黒のファラオが眠っているのかもしれませんね。
参考文献
- H.P.ラヴクラフト『クトゥルフ神話』関連作品
- 『妖蛆の秘密』(架空の魔導書・クトゥルフ神話内の文献)
- 『死霊秘法』(架空の魔導書・クトゥルフ神話内の文献)
- クトゥルフ神話における古代エジプト関連設定


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