夜空に浮かぶ月は、昔から人びとにとって神秘的で特別な存在でした。
メソポタミア神話において、その月をつかさどるのが「ナンナ(Nanna)/ シン(Sin)」という神です。
この記事では、ナンナの知られざる魅力を詳しく解説します。
月のリズムとともに生きてきた人類とナンナの深い関係が、きっと見えてくるでしょう。
名前
ナンナはシュメール語の名前で、アッカド語では「シン」と呼ばれます。
また、「ナンナル」とも呼ばれたりする。
系譜(かぞく)

ナンナ(シン)は、メソポタミア神話の中でも名門中の名門。
彼の血筋をたどると、多くの有名神が関係していることがわかります。
- 父:エンリル(風と秩序の至高神)
- 母:ニンリル(風と豊穣の女神)
- 妻:ニンガル(ウルの女神)
- 子ども:ウトゥ(シャマシュ/太陽神)、イナンナ(イシュタル/愛と戦の女神)
姿・見た目
ナンナ(シン)の姿は、古代のレリーフや印章にさまざまな形で残されています。
- 三日月をかたどった冠(かんむり)
- 時に先端に三日月がついた杖を持っている
- 時には舟(げつしゅう)に乗って夜空を横断する姿も
この冠や杖は、彼の象徴である三日月とセットになっています。
また、「船での夜空横断」のイメージは、月が夜空を移動する様子を表現したものでしょう。
神格・神性

ナンナは、ただの月の神ではありません。
ナンナの神格まとめ:
- 月の神
- 暦(こよみ)の神
- ウル(都市)の守護神
月の満ち欠けが「時間の流れ」を生むことから、暦の神としても信仰されてきました。
また、三日月が牛の角に似ているので、雄牛とも結びつけられる。
神話でのエピソード
ナンナ(シン)はあまり神話には登場しません。
ちょっとした伝承が残されてたり、彼の子供のウトゥやイナンナに神話に登場しているのみ。
ここでは2つの伝承を紹介する。
ニンリルとエンリル

ニンリルは、母から「川で水浴びしたり水路のそばで散歩してはいけない。王に見られたら強引に迫られる」と忠告された。
しかし、ニンリルは母の言いつけを無視し、神々の王エンリルに遭遇してしまう。
若いころのエンリルは、まだ神々の都市ニップルにいたとき、ニンリルに一目惚れします。
それで勢いに任せてニンリルに迫り誘惑し、彼女と無理やり交わります。
この一度の交わりで、ニンリルは月の神シンを妊娠してしまいました。
悪魔・悪霊
月が夜闇を照らすことで、悪魔・悪霊は悪事を働けなかった。
悪魔・悪霊は月の光をどうにかしようと行動し、月の光を消し去ることに成功した。
しかし、マルドゥクが彼らを退治し、ナンナ(シン)の元に月の光が戻った。
6. まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
家族構成 | エンリルとニンリルの子、太陽と金星の父 |
姿・見た目 | 三日月の冠や杖、舟に乗り夜空をかける姿 |
神格 | 月・暦・ウル(都市)の神 |
神話 | 他の神の神話にちょっとだけ登場する。 |
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