クトゥルフ神話TRPGやホラー作品で「ムーンビースト」という名前を聞いたことはありませんか?
この不気味な生物は、クトゥルフ神話の中でも特に恐ろしい神格ニャルラトホテプに仕える存在として知られています。
でも、「どうして月の獣がニャルラトホテプに従っているの?」「両者の関係って具体的にどんなもの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ムーンビーストとニャルラトホテプの関係性を、原典小説やTRPGの設定をもとにわかりやすく解説していきます。
ムーンビーストとは何者?
月の裏側に住む異形の種族
ムーンビースト(Moon-Beast)は、クトゥルフ神話における「独立種族」の一つです。
日本語では「月棲獣」や「月の獣」とも呼ばれています。
彼らが住んでいるのは、ドリームランド(幻夢境)の月の裏側。
そこには人間が見たこともないような奇妙な都市が存在し、窓のない石造りの建物が立ち並んでいます。
外見と特徴
ムーンビーストの姿はとても気味が悪いものです。
主な特徴:
- 灰色でゼリー状の体を持つ
- 巨大なヒキガエルのような姿
- 顔には目がなく、代わりにピンク色の触手が生えている
- 吐き気を催すほどの悪臭を放つ
性格は残虐な快楽主義者として知られています。
彼らは拷問や殺戮を楽しみ、慈悲や同情といった感情を持ちません。
長い槍を武器として使い、犠牲者を惨殺することに喜びを感じるという恐ろしい存在なんです。
ニャルラトホテプとは何者?
「這い寄る混沌」の異名を持つ邪神
ニャルラトホテプ(Nyarlathotep)は、クトゥルフ神話に登場する「外なる神」の一柱です。
「ナイアーラトテップ」「ナイアルラトホテップ」など、複数の日本語表記が存在します。
主な異名:
- 這い寄る混沌(Crawling Chaos)
- 千の貌を持つ者
- 外なる神々の魂と使者
- 黒きファラオ
他の外なる神とニャルラトホテプには決定的な違いがあります。
アザトースやヨグ=ソトースといった神々が人類に無関心であるのに対し、ニャルラトホテプは積極的に人類と関わり、堕落させることを楽しむのです。
独特な立ち位置
ニャルラトホテプは、盲目にして白痴の神アザトースの使者として活動しています。
彼はアザトースに仕えながらも、ドリームランドの「大いなるものたち」(地球の神々)を支配下に置いています。
1000以上の化身(アバター)を持ち、人間の姿で現れることも多いんです。
古代エジプト風の装束を着た浅黒い肌の男として描かれることが一般的ですね。
ムーンビーストとニャルラトホテプの関係
「奉仕種族」としてのムーンビースト
ここからが本題です。
ムーンビーストとニャルラトホテプの関係は、主従関係にあります。
原典となるラヴクラフトの小説では、次のように記されています。
「無限の形を持つ恐怖であり、外なる神々の魂と使者であるニャルラトホテプに、あの菌類めいた月の獣どもは仕えているのだ」
つまり、ムーンビーストはニャルラトホテプの奉仕種族として位置づけられています。
彼らはニャルラトホテプを崇拝し、その命令に従って行動するのです。
崇拝の階層構造
興味深いことに、ムーンビーストを取り巻く崇拝には階層構造があります。
崇拝の階層:
- 最上位:ニャルラトホテプ(外なる神)
- 中間:ムーンビースト(ニャルラトホテプを崇拝)
- 最下層:レンの人間もどき(ムーンビーストを崇拝)
「レンの人間もどき」とは、角と蹄を持つ人間に似た生物です。
彼らはムーンビーストに奴隷として使われ、黒いガレー船の乗組員を務めています。
この三層構造によって、ニャルラトホテプは直接手を下すことなく、ドリームランドで様々な謀略を実行できるわけです。
初出作品『未知なるカダスを夢に求めて』での活躍
ラヴクラフトの長編小説
ムーンビーストとニャルラトホテプの関係が明確に描かれたのは、H.P.ラヴクラフトの小説『未知なるカダスを夢に求めて』(1927年執筆、1943年出版)です。
この作品は、ドリームランドを舞台にした冒険譚。
主人公ランドルフ・カーターが、神々の住む山「カダス」を目指して旅をする物語です。
ストーリーにおけるムーンビーストの役割
カーターは旅の途中、ターバンを巻いた奇妙な商人たちに捕らえられてしまいます。
この商人たちは「レンの人間もどき」で、カーターを黒いガレー船で月まで連れていきました。
月に到着したカーターを待っていたのが、恐ろしいムーンビーストの群れです。
彼らはカーターをニャルラトホテプのもとへ届けようとしていたのです。
しかしカーターは、ウルタールの猫たちの助けによって救出されます。
ドリームランドの猫は地球と月を行き来できる特別な存在で、ムーンビーストを倒して彼を地上に連れ戻しました。
物語の終盤で明かされる真実
最終的にカーターはカダスにたどり着きますが、そこでニャルラトホテプ自身と対面します。
ニャルラトホテプはファラオのような姿で現れ、カーターを騙してアザトースの宮廷へ送り込もうとしました。
この物語を通じて、ムーンビーストがニャルラトホテプの手先として、人間を捕らえて主人のもとへ届ける役割を担っていることがわかります。
ムーンビーストの活動範囲と拠点
ドリームランドでの拠点
ムーンビーストは月の裏側を本拠地としていますが、それだけではありません。
主な拠点:
- 月の裏側:窓のない石造りの都市がある本拠地
- 名もなき岩:インクアノクの近くにある花崗岩の島、前哨基地として機能
- レン高原:奴隷であるレンの人間もどきの居住地
彼らは黒いガレー船を使って、これらの拠点とドリームランドの各地を行き来しています。
この船は見えないオールで驚異的な速度で航行し、空を飛ぶことさえできるという設定です。
奴隷貿易という恐ろしい活動
ムーンビーストは、ルビーと引き換えに人間の奴隷を買い取る取引を行っています。
彼ら自身は異形すぎて人間と直接交渉できないため、「レンの人間もどき」がターバンで角を隠して代理人を務めます。
買い取られた奴隷は月へ連れていかれ、恐ろしい運命が待っているんです。
クトゥルフ神話TRPGでの扱い

神話生物としてのデータ
クトゥルフ神話TRPGでは、ムーンビーストは手強い敵として登場します。
特徴的な能力:
- 狂乱:敵の血を味わうと戦闘が激化し、1ターンに2回攻撃できる
- 跳躍:助走なしで3メートル、助走ありで6メートル以上跳べる
- 儀式魔法:ニャルラトホテプを召喚する儀式を使用可能
正気度(SAN値)の減少量も大きく、遭遇するだけで探索者の精神にダメージを与えます。
シナリオでの活用
TRPGのシナリオでは、ムーンビーストは「ニャルラトホテプが関わる事件」の手先として登場させやすい存在です。
例えば、謎の失踪事件の裏にムーンビーストによる誘拐があったり、邪教団の背後にニャルラトホテプとムーンビーストの影があったりといった展開が考えられます。
残念ながら、新クトゥルフ神話TRPG(7版)の日本語版基本ルールブックや『マレウス・モンストロルム』には収録されていませんが、英語版のサプリメントや旧版(6版)のルールブックでデータを確認できます。
他の種族との関係
敵対する存在
ムーンビーストには天敵ともいえる存在がいます。
ドリームランドの猫:
ウルタールの猫をはじめとするドリームランドの猫は、地球と月を行き来できます。
彼らはムーンビーストの天敵であり、『未知なるカダスを夢に求めて』ではカーターを救出しました。
食屍鬼(グール):
ランドルフ・カーター率いる食屍鬼の軍勢は、名もなき岩でムーンビーストの拠点を攻撃しました。
協力関係にある存在
ムーンビーストは、ニャルラトホテプに仕える他の種族とも協力関係にあります。
シャンタク鳥:
巨大な翼を持つ怪鳥で、同じくニャルラトホテプに仕えています。
ムーンビーストと共に行動することもあります。
まとめ
ムーンビーストとニャルラトホテプの関係について整理しましょう。
ポイント:
- ムーンビーストは月の裏側に住む残虐な異形の種族
- 彼らはニャルラトホテプを崇拝し、奉仕種族として仕えている
- 「レンの人間もどき」を奴隷として使い、人間の誘拐や奴隷貿易を行う
- 初出は1927年の『未知なるカダスを夢に求めて』
- ニャルラトホテプの謀略を実行する手足として機能している
ムーンビーストは、クトゥルフ神話の壮大な世界観を象徴する存在の一つです。
彼らを知ることで、ニャルラトホテプという邪神がいかに巧妙に世界に影響を及ぼしているかが理解できます。
TRPGのシナリオを書いたり、クトゥルフ神話の物語を楽しんだりする際には、ぜひこの主従関係を意識してみてください。
きっと物語の奥行きが深まるはずです。



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