あなたは「密厳夜叉(みつごんやしゃ)」という名前を聞いたことがありますか?
恐ろしい響きの名前ですが、実はこの夜叉、祈りを捧げる人を守ってくれる守護神なんです。
密厳夜叉は、仏教において毘沙門天に仕える「八大夜叉大将」の一人。
元は人を襲う恐ろしい鬼神でしたが、仏教に帰依してからは善神として人々を守護する存在になりました。
この記事では、密厳夜叉の正体や役割、そして八大夜叉大将について詳しく解説します。
密厳夜叉の概要
密厳夜叉は、仏教における守護神の一柱です。
「夜叉(やしゃ)」とは、古代インド神話に起源を持つ鬼神のこと。
サンスクリット語では「yakṣa(ヤクシャ)」と呼ばれ、元々は顔が恐ろしく、性質が猛悪で人を食べる存在でした。
ところが、財宝の神であり夜叉の王だった毘沙門天(クベーラ)が仏教に帰依したことで、その配下の夜叉たちも仏教に帰依。
悪鬼から善神へと生まれ変わり、仏法を守護する存在になったんですね。
密厳夜叉は、その夜叉の中でも特に重要な「八大夜叉大将」の一角を占めています。
密厳夜叉の名前の意味
「密厳夜叉」という名前には、深い仏教的な意味が込められています。
密厳(みつごん)
密教における「三密(身密・口密・意密)」によって荘厳された世界を意味します。
「密厳浄土」といえば、真言密教の教主である大日如来の浄土のこと。
三密とは:
- 身密(しんみつ):身体・行動
- 口密(くみつ):言葉・発言
- 意密(いみつ):心・考え
つまり「密厳夜叉」とは、「密教の三密によって荘厳された世界に関わる夜叉」という意味を持つのです。
八大夜叉大将とは
密厳夜叉が属する「八大夜叉大将(はちだいやしゃたいしょう)」について見ていきましょう。
毘沙門天の配下には5,000もの夜叉がいるとされています。
その頂点に立つのが八大夜叉大将なんです。
常に毘沙門天の指示に従い、祈願する者を守護すると伝えられています。
そのため「守護八大夜叉神」とも呼ばれるんですね。
八大夜叉大将の名前一覧
密厳夜叉とともに八大夜叉大将を構成する7人の夜叉を紹介します。
| 名前 | 読み方 | サンスクリット名 |
|---|---|---|
| 宝賢夜叉 | ほうけんやしゃ | Manibhadra(マニバドラ) |
| 満賢夜叉 | まんけんやしゃ | Purnabhadra(プールナバドラ) |
| 散支夜叉 | さんしやしゃ | Pancika(パーンチカ) |
| 衆徳夜叉 | しゅうとくやしゃ | – |
| 応念夜叉 | おうねんやしゃ | – |
| 大満夜叉 | だいまんやしゃ | – |
| 無比力夜叉 | むひりきやしゃ | – |
| 密厳夜叉 | みつごんやしゃ | – |
※経典によって名称に若干の違いが存在します。
毘沙門天との関係
密厳夜叉を理解するには、主君である毘沙門天について知っておく必要があります。
毘沙門天は、仏教における天部の武神。
四天王の一人として「多聞天(たもんてん)」とも呼ばれ、北方を守護しています。
元々はインド神話の財宝の神「クベーラ」で、夜叉鬼神の長とされていました。
そのクベーラが仏教に帰依したことで、配下の悪鬼羅刹夜叉なども仏教に帰依。
元々悪鬼だった夜叉たちは、善神として毘沙門天やその他の神々とともに祀られるようになったのです。
日本では、七福神の一柱として「五穀豊穣、商売繁盛、家内安全」などの現世利益を授ける神として信仰されています。
夜叉の種類
仏教には様々な夜叉が存在します。
八大夜叉大将
本記事で紹介している、毘沙門天に仕える8人の夜叉大将。
十二神将(十二夜叉大将)
薬師如来に仕える12人の夜叉。
八大夜叉大将とは別のグループです。
各神将がそれぞれ7,000の夜叉を率いており、合計84,000の夜叉軍団を指揮しています。
二十八使者
毘沙門天に仕える別の眷属グループ。
信貴山朝護孫子寺の毘沙門天二十八使者が有名です。
密厳夜叉の役割
密厳夜叉の主な役割は、仏法と祈願する人々を守護することです。
八大夜叉大将として、密厳夜叉は:
- 毘沙門天の指示に従って行動する
- 祈願する者を守護する
- 仏法を守護する
- 配下の夜叉を率いる
元は恐ろしい鬼神でしたが、仏教に帰依してからはその力を善のために使う存在に変わったんですね。
八大夜叉大将の文献上の記録
八大夜叉大将の名前は、『大日経疏(大毘盧遮那成佛經疏)』に記載されています。
『大日経疏』は、空海が日本に伝えた真言密教の根本経典である『大日経』の注釈書です。
また、毘沙門天二十八使者とともに、同じ眷属グループとして記録されています。
夜叉信仰の広がり
夜叉信仰は、インドから中国、日本へと伝わりました。
インド
元々は古代インド神話の鬼神。
財宝の神クベーラの眷属とされていました。
中国
仏教とともに伝来し、「夜叉」という音訳が定着。
日本
奈良時代以降、仏教とともに伝わりました。
毘沙門天信仰とともに、八大夜叉大将も信仰の対象となりました。
タイでは「ヤック」、スリランカでは「ヤカ」と呼ばれるなど、アジア各地で夜叉信仰が見られます。
まとめ
密厳夜叉についてポイントをまとめます。
- 密厳夜叉は八大夜叉大将の一人で、毘沙門天の眷属
- 元は恐ろしい鬼神だったが、仏教に帰依して善神になった
- 「密厳」は密教の三密によって荘厳された世界を意味する
- 祈願する者を守護する役割を持つ
- 八大夜叉大将は毘沙門天配下5,000の夜叉の頂点に立つ存在
恐ろしい名前とは裏腹に、実は私たちを守ってくれる心強い存在なんですね。
仏教の守護神として、今も信仰され続けています。


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