映画『メン・イン・ブラック』を観たことはありますか?
ウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズが黒いスーツに身を包み、宇宙人を取り締まるあの人気シリーズ。
でも実は、この映画には元ネタとなった都市伝説が存在するんです。
UFOを目撃した人のもとに突然現れ、「見たことを誰にも話すな」と脅迫する謎の黒ずくめの男たち。
彼らは1940年代から目撃報告があり、アメリカのUFO研究界では恐怖の象徴として語り継がれてきました。
「本当にそんな人たちがいるの?」「正体は何なの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
この記事では、メン・イン・ブラック(MIB)の起源から代表的な目撃事例、そして彼らの正体に関する様々な説まで、詳しく解説していきます。
メン・イン・ブラック(MIB)って何?

基本的な定義
メン・イン・ブラック(Men in Black、略称MIB)とは、UFOや宇宙人を目撃した人のもとに現れ、警告や脅迫を行う謎の人物、または組織を指します。
日本語では「黒衣の男」「ブラックメン」とも呼ばれることがあります。
典型的な特徴
多くの目撃証言に共通する特徴は以下の通りです。
- 服装:黒いスーツ、黒いネクタイ、黒い革靴、黒いソフト帽、黒いサングラス(白いのはワイシャツだけ)
- 人数:2人から3人で現れることが多い
- 乗り物:ビュイックやキャデラック、メルセデス・ベンツなどの大型黒塗りセダン
- 身分証:政府機関の身分証を提示するが、後で問い合わせると「そんな人物は存在しない」と返答される
- 出没地域:主にアメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアなどの英語圏
なぜ「メン・イン・ブラック」と呼ばれるようになったのか
この名称を最初に広めたのは、アメリカの超常現象研究家ジョン・キールだと言われています。
彼は1970年代に著書『UFOs: Operation Trojan Horse』や『モスマンの黙示』の中で、この謎の訪問者たちを「Men in Black(MIB)」と名付けて紹介しました。
なお、日本にこの言葉を紹介したのは、UFO研究家として知られる矢追純一氏です。
それ以前は「ブラック・マン」と呼ばれていたそうです。
MIB伝説の起源──すべてはここから始まった
最初の目撃報告:モーリー島事件(1947年)
MIB伝説の起源とされているのが、1947年6月27日に起きたモーリー島事件です。
ワシントン州のピュージェット湾に浮かぶモーリー島付近で、ハロルド・ダールという男性が息子と愛犬を連れてボートで航行していました。
すると突然、上空約800メートルの位置に6機のドーナツ型の飛行物体が出現。
そのうち1機が約450メートルほど落下し、金属片のような破片が降り注ぎました。
この破片で息子は腕にやけどを負い、愛犬は命を落としたと言われています。
黒いスーツの男の登場
事件の翌朝、ダールのもとに黒いスーツを着た男が現れました。
男はダールを近くの喫茶店に連れ出し、朝食を共にしながらこう告げたとされています。
「目撃したことについては黙っていた方が身のためだ。もし話せば、あなたと家族に災いが降りかかるだろう」
この出来事が、MIB伝説の原点とされています。
実はでっち上げだった?
ただし、この事件には後日談があります。
FBIの調査を受けたダールと彼の上司フレッド・クリスマンは、「これは自分たちのでっち上げだった」と告白しています。
二人は実際には湾岸パトロールではなく、単なる材木回収業者だったのです。
さらに、当時大けがをしたとされるダールの息子も、後年のインタビューで「そんな事件などなかった」と証言しています。
それでも、この話は口コミで広まり、MIB伝説の出発点として語り継がれることになりました。
MIBを世に広めた男:アルバート・K・ベンダー
MIB伝説を本格的に広めたのは、コネチカット州ブリッジポートに住んでいたアルバート・K・ベンダーという人物です。
1952年、ベンダーはUFO研究団体「国際空飛ぶ円盤事務所(IFSB)」を設立し、会報誌『スペース・レビュー』を発行していました。
ところが1953年、彼は突然組織を解散してしまいます。
その理由について、ベンダーはこう語りました。
「3人の黒いスーツを着た男たちが私のもとを訪れ、UFOに関する情報を公開しないよう警告してきた」
ベンダーの体験は当時注目を集めましたが、懐疑的な見方もありました。
実際、会報誌は赤字続きで、どのみち廃刊は避けられない状況だったからです。
グレイ・バーカーによる神話の拡大
ベンダーの体験を世に広めたのは、同僚のUFO研究家グレイ・バーカーでした。
1956年、バーカーは『彼らは空飛ぶ円盤を知りすぎた(They Knew Too Much About Flying Saucers)』という本を出版。
この中で、モーリー島事件の「黒いスーツの男」とベンダーを訪れた「3人の男」を結びつけ、MIBという概念を体系化しました。
この本がきっかけとなり、MIBはUFO研究界で広く認知される存在となったのです。
9年後の告白
1962年、ベンダーは沈黙を破り、『Flying Saucers and the Three Men』という本を出版しました。
その中で彼が明かした「3人の男の正体」は、予想外のものでした。
なんと惑星カジック(Kazik)から来た怪物だというのです。
この告白に対して、出版者であるバーカー自身も「ただの夢だったのではないか」と私的にコメントしていたそうです。
代表的な目撃事例

MIBの目撃報告は1950年代から現在まで数多く存在します。
その中でも特に詳細で有名な事例を紹介しましょう。
ハーバート・ホプキンス事件(1976年)
最も詳細なMIB遭遇事例として知られるのが、メイン州の医師ハーバート・ホプキンスの体験です。
事件の経緯
1976年9月11日の夜、58歳の催眠療法士だったホプキンス博士は自宅に一人でいました。
彼は当時、UFO誘拐事件の被害者とされる若者を催眠療法で調査していたのです。
そこへ一本の電話がかかってきました。
「私はニュージャージーUFO研究機構の副会長です。その事件について、お話を伺いたいのですが」
ホプキンスは普段なら見知らぬ人を招き入れることはしません。
でもなぜか、このときは承諾してしまいました。
奇妙な訪問者
電話を切ってすぐ、玄関の前にその男が立っていました。
訪問者の外見は次のようなものでした。
- 完全に毛がない(頭髪も、眉毛も、まつ毛もなし)
- 青白い肌
- 口紅を塗ったような真っ赤な唇(実際に手で触れたら口紅が付いた)
- しわひとつない新品同様の黒いスーツ
- 機械的で抑揚のない話し方
男はホプキンスに、調査中のUFO事件について質問しました。
不思議なことに、男はすでに事件の詳細を知っているようで、ホプキンスが答えるたびに「はい、私もそう理解しています」と同じフレーズを繰り返したそうです。
消えるコインと脅迫
会話の途中、男は奇妙なことを言い出しました。
「あなたのポケットにコインが2枚ありますね。1枚を取り出してください」
ホプキンスが言われた通りにすると、男は「そのコインをよく見ていてください」と指示しました。
すると、銅色だったペニー硬貨が銀色に変わり、やがてぼやけて消えてしまったのです。
男はこう告げました。
「このコインは二度と『この次元』では見つからないでしょう。ちなみに、UFO誘拐の被験者バーニー・ヒルを知っていますか? 彼は心臓を持っていませんでした。あなたにコインがなくなったようにね」
これは明らかな脅迫でした。
エネルギー切れで退場
やがて、訪問者の話すスピードが徐々に遅くなっていきました。
そして、ふらふらと立ち上がりながらこう言ったそうです。
「そろそろエネルギーが切れかけてきた。もう帰らなければ……失礼する」
男は玄関の手すりにしがみつくようにして去っていきました。
この体験の後、ホプキンスは調査に関するすべてのテープと記録を廃棄し、UFO研究から完全に手を引いてしまいました。
なお、後日確認したところ、「ニュージャージーUFO研究機構」という団体は実在しませんでした。
ロバート・リチャードソン事件(1967年)
1967年、オハイオ州トレドに住むロバート・リチャードソンは、夜間に車を運転中、道路上の何かに衝突しました。
その物体は衝突した瞬間に消えてしまいましたが、彼は現場で謎の金属片を発見します。
数日後、夜11時に2人の男がリチャードソンの自宅を訪れました。
黒い帽子にサングラス、黒いスーツ姿で、1953年型の黒いキャデラックに乗っていたそうです。
さらに1週間後、別の2人の黒スーツの男が現れ、金属片を渡すよう要求しました。
リチャードソンが「すでに分析のために送ってしまった」と答えると、男たちはこう脅したそうです。
「金属片を取り戻せなければ、奥さんの身に何が起こるかわからないぞ」
日本での目撃例
実は日本でもMIBの目撃例が報告されています。
中山市朗と木原浩勝の著書『新耳袋』には、「黒い男たち」という章があります。
その中には、UFOを撮影した人物のもとにMIBが現れ、写真とネガを廃棄させた事例が記されています。
また、昭和50年代に北海道で「直立する蛙のような生き物」を撮影した人物がMIBと接触した後、消息を絶ったという事例も紹介されています。
当時は矢追純一氏がMIBを日本に紹介する前だったため、関係者の間では「ブラック・マン」と呼ばれていたそうです。
MIBの外見と行動の特徴
多くの目撃証言から浮かび上がるMIBの共通点を整理してみましょう。
外見的特徴
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 服装 | 黒スーツ、黒ネクタイ、白シャツ、黒い靴、黒い帽子(しわひとつない新品同様) |
| 肌 | 「青白い」または「異様に日焼けしている」という両方の証言あり |
| 顔 | 無表情、「外国人のような」印象、時に奇妙な特徴(唇がない、口紅を塗っている等) |
| 毛髪 | 完全に毛がないケースもある |
| 目 | 「光っている」と報告されることも |
行動的特徴
MIBの行動には、いくつかの奇妙なパターンが見られます。
- 人間の日用品に不慣れ:ボールペンを生まれて初めて見るように眺める、ゼリーをスプーンではなくボウルから直接飲もうとする
- 機械的な話し方:抑揚がなく、同じフレーズを繰り返す
- エネルギー切れ:会話の途中で動きが鈍くなり、「エネルギーが切れた」と言って去る
- 存在しない組織を名乗る:後で確認すると、名乗った機関や役職は実在しない
目的
MIBの目的は一貫しています。
UFOや超常現象の目撃情報を口外させないこと
脅迫の方法は「家族に災いが降りかかる」「刑務所に入れられる」といった直接的なものから、超能力をほのめかす威嚇まで様々です。
MIBの正体は何なのか?──5つの主要な説

MIBの正体については、様々な説が唱えられています。
説1:政府機関の秘密工作員
最も現実的な説として、FBIやCIA、または軍の秘密工作員という見方があります。
実際、アメリカ空軍には「プロジェクト・ブルーブック」というUFO調査計画が存在していました。
ただし、この計画の国防省スポークスマンだったジョージ・P・フリーマン大佐は、UFO研究家ジョン・キールに対してこう述べています。
「空軍の制服を着た謎の男たちが、政府機関の身分証明書を携えて目撃者に沈黙を強要しているという報告はある。しかし、この男たちは空軍とは何の関係もない。我々もその正体を突き止められていない」
政府が関与しているとしても、正規のルートではない可能性が示唆されています。
説2:宇宙人またはそのエージェント
人間離れした外見や行動から、MIB自身が宇宙人、または宇宙人に雇われた存在という説もあります。
この説を支持する根拠としては以下が挙げられます。
- 人間の日用品(ペン、食器など)に不慣れな様子
- 「エネルギーが切れた」という発言
- 通常の人間とは思えない身体的特徴(毛がない、唇がない等)
- 瞬時に現れ、消えるように去る能力
説3:異次元からの存在
UFO研究家ジョン・キールは、MIBを「ウルトラテレストリアル(超地球外的存在)」と呼びました。
彼の理論によれば、UFOもMIBも、単なる宇宙人ではなく、私たちの理解を超えた異次元からの存在だとしています。
この存在は人類の歴史を通じて様々な形で現れてきたとされ、MIBはその現代版の姿だという解釈です。
説4:タイムトラベラー
一部では、MIBはUFO目撃事件の歴史を改ざんしようとするタイムトラベラーだという説も唱えられています。
ただし、この説は証拠に乏しく、典型的なMIBの特徴とも一致しない点が多いとされています。
説5:心理的現象・都市伝説
懐疑的な立場からは、MIBは目撃者の心理が生み出した幻覚、または口コミで広まった都市伝説だという見方もあります。
心理学者の中には、「秘密の知識」に触れた人間の内面が、その情報を守るために脅迫的な人物の幻影を作り出すという説を唱える人もいます。
また、都市伝説として有名になったことで、UFO研究家が訪問しただけで「MIBが来た」と勘違いされる事例も実際に報告されています。
ポップカルチャーへの影響
コミック版『メン・イン・ブラック』(1990年)
MIB伝説を現代的なエンターテインメントに昇華させたのが、ローウェル・カニンガムの手によるコミック『The Men in Black』です。
1990年にAircel Comicsから出版されたこの作品では、MIBを「地球外生命体を監視する秘密組織のエージェント」として描きました。
後にAircel ComicsはMalibu Comicsに買収され、さらにMarvel Comicsに買収されたため、映画版には「Marvel Comics原作」のクレジットが付いています。
カニンガムは後にインタビューでこう語っています。
「人生には誰にでも一つ、大きなアイデアがある。これが私の大きなアイデアだった」
映画『メン・イン・ブラック』シリーズ
1997年、カニンガムのコミックを原作とした映画『メン・イン・ブラック』が公開されました。
| 作品 | 公開年 | 主演 |
|---|---|---|
| メン・イン・ブラック | 1997年 | ウィル・スミス、トミー・リー・ジョーンズ |
| メン・イン・ブラック2 | 2002年 | ウィル・スミス、トミー・リー・ジョーンズ |
| メン・イン・ブラック3 | 2012年 | ウィル・スミス、トミー・リー・ジョーンズ |
| メン・イン・ブラック:インターナショナル | 2019年 | クリス・ヘムズワース、テッサ・トンプソン |
シリーズ4作品の全世界興行収入は、合計で約19億4000万ドル(約2900億円)を記録しています。
映画版では、都市伝説の不気味なイメージとは異なり、MIBを「宇宙人を管理し、地球を守るカッコいいエージェント」として描いています。
記憶を消す装置「ニューラライザー」は映画のオリジナル設定ですが、実は都市伝説にも「MIBに記憶を消された」という証言が存在するんです。
その他の影響
MIBは音楽にも影響を与えています。
- Blue Öyster Cult「E.T.I (Extra Terrestrial Intelligence)」(1976年)
- The Stranglers「Meninblack」(1979年)
- Running Wild「Men in Black」
MIB伝説が語り継がれる理由
なぜMIBの都市伝説は、70年以上も語り継がれているのでしょうか?
時代背景との関係
MIB伝説が生まれた1940年代後半は、第二次世界大戦が終わり、冷戦が始まった時代でした。
- 核兵器の登場
- ソ連との対立
- 政府への不信感
このような社会的不安が、「政府が何かを隠している」というMIB伝説の土壌を作ったと考えられています。
人間の普遍的な恐怖
MIB伝説には、人間の根源的な恐怖が反映されています。
- 権力への恐怖:突然現れて脅迫してくる存在
- 未知への恐怖:正体不明の訪問者
- 監視への恐怖:常に見られているという感覚
これらは時代を超えて人々の心に響く要素です。
物語としての魅力
「UFOを見た人のもとに謎の男がやってくる」というストーリーには、ミステリーとスリルがあります。
真偽はともかく、「こんな面白い話を知っている?」と人に話したくなる魅力があるのです。
まとめ
メン・イン・ブラック(MIB)は、1940年代のアメリカで生まれ、現在まで語り継がれている都市伝説です。
MIBの要点
- 起源:1947年のモーリー島事件とされるが、この事件自体は後にでっち上げと判明
- 広まったきっかけ:1950年代のアルバート・ベンダーの体験と、グレイ・バーカーの著書
- 典型的な姿:黒スーツ、黒サングラス、黒い車、2〜3人組
- 目的:UFO目撃情報の口封じ
- 正体の諸説:政府工作員、宇宙人、異次元存在、心理現象など
現代への影響
MIBは映画やコミック、音楽など様々なメディアに影響を与え、今や「宇宙人を管理するクールなエージェント」というポジティブなイメージとしても定着しています。
本当にMIBは存在するのでしょうか?
証拠がある目撃談もあれば、明らかなでっち上げもあります。
政府が何かを隠しているのか、それとも人々の想像力が生み出した幻影なのか。
一つ確かなことは、MIBの謎は解明されていないということ。
そして、その謎こそが、70年以上も人々を惹きつけ続けている理由なのかもしれません。
もしあなたがUFOを目撃したら……黒いスーツの男に気をつけてくださいね。


コメント