海から火の玉が上がって、夜空でぐるぐると舞っているのを見たら、あなたはどう思うでしょうか?
鎌倉時代の真鶴の人々にとって、それは単なる自然現象ではありませんでした。
それは恨みを抱いた3人の武士の首が、今もなお争い続けている恐ろしい光景だったのです。
この記事では、神奈川県真鶴町に伝わる怨霊「舞首(まいくび)」について詳しくご紹介します。
概要

舞首(まいくび) は、神奈川県真鶴町に古くから伝わる怨霊です。
江戸時代の有名な奇談集『絵本百物語』で語られており、鎌倉時代中期の出来事が元になった恐ろしい伝説なんです。
舞首の基本情報
- 分類:怨霊・妖怪
- 出典:『絵本百物語』(江戸時代)
- 発生時期:寛元年間(1243年~1247年)
- 発生場所:伊豆国真鶴(現・神奈川県真鶴町)
- 関連する場所:巴が淵
舞首は、死んでなお憎しみ合う3人の武士の首が生み出した、とても珍しいタイプの怨霊なんですね。
それでは、この恐ろしい妖怪の正体について、もっと詳しく見ていきましょう。
姿・見た目
舞首の姿は、通常の妖怪とは大きく違っています。
なんと3つの人の首だけという、とても衝撃的な見た目をしているんです。
舞首の外見的特徴
- 数:3つの首(小三太、又重、悪五郎)
- 状態:首だけで体はない
- 動き:海上で回転しながら舞う
- 炎:夜中に口から火を吹く
- 波模様:昼間は海に巴模様の波を作る
3つの首は、まるで生きているかのように動き回ります。
お互いに噛み付こうとしたり、罵り合ったりしながら、海の上をぐるぐると舞い続けるのです。
特に印象的なのは、夜になると口から真っ赤な炎を吹くところですね。
この光景を見た人は、きっと腰を抜かしてしまうでしょう。
次に、舞首の持つ恐ろしい特徴について詳しく見ていきます。
特徴
舞首には、他の妖怪にはない独特な行動パターンがあります。
昼と夜で違う現象を起こす
昼間の特徴
- 海水を巻き上げて巴模様の波を作る
- 3つの首が組み合うように回転する
- 海面に渦を巻かせる
夜間の特徴
- 口から炎を吹き上げる
- 火の玉のように海上を舞う
- 互いを罵り合う声が聞こえる
舞首の行動パターン
- 絶え間ない争い:死んでからも3人の争いは終わらない
- 海への執着:常に海の上や海中で活動する
- 炎の演出:夜中の炎は遠くからでも見える
- 巴模様:3つが組み合う様子が巴紋に似ている
この「巴模様」というのは、3つの勾玉が組み合わさったような日本の伝統的な文様のことです。
3つの首が互いに食い合う様子が、まさにこの巴紋のように見えたのでしょう。
それでは、この恐ろしい舞首がどのように生まれたのか、その伝承を見ていきましょう。
伝承
舞首の誕生には、3人の武士の悲劇的な物語があります。
事件の発端
- 時代背景:寛元年間(1243年~1247年)の鎌倉時代中期
- 場所:伊豆国真鶴(現・神奈川県真鶴町)
- きっかけ:祭りの日の酒の席での口論
登場人物
- 小三太(こさんた)
- 又重(またしげ)
- 悪五郎(あくごろう)
この3人は、力自慢の武士でそれぞれ我が強く、互いに対抗意識を燃やしていました。
悲劇的な斬り合い
祭りの日、酒に酔った3人が些細なことから口論を始めます。
事件の流れ
- 口論の激化:つまらないことから言い争いに
- 刀での斬り合い:話し合いでは解決せず
- 小三太の死:悪五郎が小三太の首を斬り落とす
- 又重の逃走:山中へ逃げるが追いかけられる
- 悪五郎の転倒:つまずいて倒れたところを又重が反撃
- 相討ち:2人は組み合いながら海に転落し、互いの首を斬る
怨霊の誕生
驚くべきことに、3人は首を斬られてもなお争いを続けました。
- 又重の首が悪五郎の首に噛み付こうとする
- そこへ小三太の首も現れて悪五郎に噛み付く
- 3つの首が海で食い争いを始める
こうして舞首という恐ろしい怨霊が誕生したのです。
巴が淵の名前の由来
3つの首が争う様子があまりにも印象的だったため、その海は「巴が淵」と名づけられました。
巴模様のような波が立つことから、この名前がついたとされています。
これで舞首という妖怪の全貌が分かりましたね。
最後にまとめてみましょう。
5.まとめ
舞首は、人間の憎しみと争いがもたらした悲劇的な怨霊です。
舞首の重要ポイント
基本情報
- 神奈川県真鶴町に伝わる怨霊
- 『絵本百物語』に記録された伝説
- 鎌倉時代中期の実話が元になっている
外見と特徴
- 3つの人の首だけの姿
- 夜は口から炎を吹く
- 昼は海に巴模様の波を作る
- 絶え間なく争い続ける
ちょっとした言い争いや意地の張り合いが、取り返しのつかない結果を招くかもしれません。
この伝説を通して、争いよりも和解の大切さを学ぶことができるのではないでしょうか。
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